浦和競馬場が“おらが街の誇り”になった日-2019JBC戦評
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浦和競馬場が“おらが街の誇り”になった日-2019JBC戦評

2019-11-06 22:00
    -この日、今まで見たことのない浦和になる。-

    このキャッチコピーのもと、南関東で唯一未開催だった浦和競馬場で開催された今年のJBCは、確かに普段足を運んでいるファンが見たことがない浦和競馬場がそこにあった。30分繰り上げられた開門時には私を含む1000人以上が列を作り、1レースが始まる頃にはスタンド前の石畳はファンで埋め尽くされていた。競馬場を目指す人の列は最後まで途切れることはなく、最終的にJBC史上最高となる29191人の観客を呑み込んだのである。

    また最寄り駅や主要駅に巨大広告を設けられ、各地でJBCを特集した埼玉新聞の特別版が配布。さらに浦和駅前で実施したサテライトイベントも賑わいを見せ、普段競馬に興味を持たない人にも浦和競馬場やJBCの存在を知ってもらう機会になった。そして無料バスの増発や徒歩ルートへの誘導員配置、場内の導線整理といった混乱回避の対応が機能したことで、大きなトラブルを起こさず終えたことも称賛に値するだろう。

    レースに目を向ければ、スプリントで地元浦和所属のブルドッグボスが制したことが最大のハイライトだった。これまで浦和競馬は、南関東4場で唯一、統一GⅠ優勝馬を輩出していなかった。その悲願を特別な日に成就させたことは、浦和JBCの成功を象徴する出来事になっただけでなく、埼玉県民にとって浦和競馬場が“おらが街の誇り”に昇華させる役割も担ったと思う。だからこそこれから、更に地元から愛される浦和競馬になる努力が、関係者に求められるはず。その決意を新たにする1日になっていたらと思っている。

    最後に結果について総括すると、戦前は浦和コースに対する適性が結果を左右するのではと思われていたが、蓋を開ければコース適性で評価を下げたと思われる馬の活躍が目立った。今年はクラシックでコース形態を理由に有力馬の回避が相次いだが、真に強い馬は舞台など選ばないもの。そんな視点を踏まえつつ、日本一の称号をかけて争われた3レースを駆け足で振り返っていきたい。

    <11月7日18時追記>
    掲載時点で取りまとめが終わっていなかった、JBCクラシックの振り返りを追記しました。



    ここでは格が違ったヤマニンアンプリメ。渾身のロングスパートで、牝馬路線を戦ってきた馬たちを圧倒!-JBCレディスクラシック

    まずはスタート直後のアクシデントに触れなければいけないだろう。タイセイラナキラが好スタートで前に出て、これに後れを取ったモンペルデュが巻き返しに行ったところ、行き場を失ったモンペルデュが内ラチを飛び越えようとして、大きな落馬事故になってしまった
    確かにタイセイラナキラは内に寄っているが、スタート直後の2~3完歩で半馬身余り前に出ていた。ダッシュ力のある徹底先行タイプがこれだけリードを奪えれば、もう来られないと思うのも無理はない。しかしトップスピードに乗ってからのモンペルデュが速く、いないはずの場所までモンペルデュが来ていたことで起こったというのが私の見解だ。

    だからこれは浦和コースだから起こったとは思わないし、最初のコーナーまで1000mあったって起こりうる事象。2頭が持っていたスピードが悪い形で噛み合った結果であり、制裁云々も現行のルール下では適切に処理されたと思っている。ただし鞍上の戸崎圭太騎手が右肘開放骨折の疑い(最終診断は現時点で不明)で、その後の騎乗を取りやめたのは事実。早期の回復を願わずにはいられないところである。


    その影響もあって、激しくなると予想された先行争いは、1コーナーで前に出たゴールドクイーンの単騎逃げで決着。ところがそのラップは前半3ハロン34.4秒という、記憶にないほどのハイペースになり、追いかけた好位勢は早々に苦しくなった。ゴールドクイーンはその後も快調にリードを広げたが、そこに後方から猛然と追い上げたのがヤマニンアンプリメ。残り400m付近で2番手に上がった時には、まだ5馬身ほど前と差があったが、4コーナーで追いつくと直線でアッサリ交わし、女王の座を射止めることになった。

    勝ったヤマニンアンプリメは前走、同じ舞台のオーバルスプリントを選択。仕掛けたタイミングはほとんど変わらなかったが、当時は3着止まり。状態ひと息だったクラスターCで快勝した反動など様々な要因が考えられるが、この結果を受けて目標としていたJBCスプリントから、こちらに転じることを決断。しかし牡馬相手にコースを経験したことで、前走とは一変した動きを披露。終わってみればメンバー唯一の統一グレード2勝馬が、貫録を見せつけた結果になった。
    そして勝ち時計は、後述するJBCスプリントより0.4秒速い1分24秒5。以前にも1200mでは1番強いと指摘したことがあるが、この時計を見せられれば、誰もがスプリント路線に於ける主役級という評価を与えるはずだ。年齢的にここで牧場にという判断もありそうだが、現役を続けるなら、来年はJBCスプリントで2カテゴリー制覇を目指してもらいたい。それが可能な力はあると思っている。


    そしてハイペースで逃げたゴールドクイーンも、最後までヤマニンアンプリメに喰らいついて2着に入った。かきつばた記念では影を踏ませなかった相手に今回は差されてしまったが、3着を6馬身千切ったのだから相手を褒めるだけ。自身もJBCスプリントの勝ちタイムと同じ時計で走っているので、この先スプリント路線で主役級の活躍を期待できるはず。しかも現在は絶対的なフロントランナーがいないため、かつてこの路線を快速で鳴らしたダノンレジェンドのような立場になる可能性もあると思っている。

    結果的に1200mをベストとする2頭がスプリント能力で圧倒したため、スプリント戦がない牝馬路線を歩んできた馬は、総じて速さ負けを喫することになった。特に3着のファッショニスタは一旦2番手に上がったものの、ヤマニンアンプリメに交わされてからは、ついていくことが出来ず。条件戦時代に1400mを主戦場としていた馬でこれでは、今年の牝馬路線はJBCという最高峰に向けては、ほとんど意味をなさなかった。これは統一グレード路線全体の問題として、検証すべきと考えている。

    最後に期待したラーゴブルーに触れると、道中は中団で構えていたが、後ろからヤマニンアンプリメが来た時に反応しきれなかった。それでも最後まで前を追って、地方馬最先着の4着と意地は見せた。自身は昨年のしらさぎ賞を勝った時より0.7秒時計を詰めたものの、時計的にこれが目一杯と映ったのは確か。今後はどこかでペースが緩む、マイル以上をベースにしてはと思った。


    強烈だったノブワイルド包囲網・・・それを味方に“浦和の悲願”を最後に叶えたブルドッグボス-JBCスプリント

    最後の直線をコパノキッキングが先頭で迎えた時には、日本人女性騎手初のGⅠ制覇の偉業がなるかと場内は大いに沸いた。しかし最後一杯になったところ、中団から鋭く伸びてきたブルドッグボスがゴール寸前で差し切り勝ち。史上3頭目となる地方所属馬のJBC制覇を果たすとともに、浦和所属馬として初めて統一GⅠ制覇の偉業を成し遂げた。スタンド前に戻ってきた御神本訓史騎手がファンの声援に応えて右手を上げた姿は、JBCの名シーンとして、そして浦和競馬場の歴史の1ページとして、私たちの心に刻まれたはずである。

    レースのポイントは、ノブワイルドに対する強烈な包囲網だった。今回も好スタートを切ったものの、最初のゴール板の時点では3~4番手。外の馬が前に出ていることに気付いたノブワイルドの左海誠二騎手は、ここからゴール前のようなアクションで再加速。何とかハナを奪うことに成功したが、2ハロン目のラップは何と10.5秒。これで一気に厳しくなり、コパノキッキングが迫って来た時に抵抗する脚が残っていなかった。それでも5着に踏ん張れたのは、力をつけている証拠。今後もマークは厳しいだろうが、浦和以外で統一グレードタイトルを手にするチャンスもあると思っている。

    これを勝負所から負かしに動いたコパノキッキングは、1コーナーでは3番手。ハイペースの外枠だったので、逃げなくともスムーズな競馬は出来たが、2頭の間にファンタジスト(10着)がいた分だけ外を回らされたのが後々響いた。もしファンタジストがいなければ、もう少しロスのない競馬が出来ただろうし、仕掛けを我慢することもできたはず。ちょっとの差が最後に響いた格好で2着に敗れたが、1番強い競馬をしたのは間違いなくこの馬。1年後の雪辱に向けて、捲土重来を期してほしいものである。

    さて、勝ったブルドッグボスである。これまで地元浦和を始めとする、コーナー4つの競馬における統一グレードは未勝利。ただし地元戦は万全の状態で走ったことがなかったといえ、結果ほど苦にしていなかった可能性はあった。そして今回は地元で初めて万全に近い出来で戦えた上に、前が激しくやり合う展開が後押し。一昨年のこのレースで同タイム3着の無念を晴らすかのように、ゴール寸前で測ったようにコパノキッキングを捉え、前走東京盃でつけられた4馬身差をひっくり返すことに成功した。
    忘れてはいけないのは、この馬は今年の5月まで、1年を超す長期休養があったこと。復帰後は道営への短期移籍も挟むなど、様々な手段を用いて立て直すことにかかわった全ての関係者を称賛しなければいけない。今後についても長期休養があったために、今回が30戦目と年齢の割に使われておらず、すぐに衰えていくこともないだろう。まだまだ統一グレード戦線を、そして南関東の競馬を賑わせてくれることは間違いないと思っている。


    3着には後方から追い込んだトロヴァオが入り、JBC史上2度目の100万馬券を演出した。予想で印を入れたように、以前から世代トップクラスの実力の持ち主として高く評価していたし、浦和コースもスムーズな競馬が出来れば問題なかった。だが今日の結果は大健闘ではなく、統一グレードを戦った経験の少なさが敗因になったと評してもいい程。厳しい相手を求め続ければ、統一GⅠだって夢物語でない可能性を持っているはずだ。

    この他の馬については、4着ノボバカラは最後方からの競馬になったが、それが奏功してあわやのシーンを作った。脚質転換のきっかけになる可能性があり、今後の戦い振りに注意したい。芝路線から転じたミスターメロディは、先行勢に喰らいつこうとしたが、最後は息切れして6着。久々のダートを考えれば良く走っており、今後ダートに専念すれば逆転可能な素質はあると思うが・・・。あと11着のサクセスエナジーは、1コーナーで内外から来られて手綱を引いた直後から、ズルズル後退して終了。気性的な問題なのか、何らかのアクシデントがあったのか、気になるところである。

    最後になるが、勝ちタイムがレディスクラシックより遅い1分24秒9。序盤2ハロン目までが速かった反動で、ラスト1ハロンで大きく落ち込んだことがその理由だが、もし今年のJBCスプリントが1200mだったら、ヤマニンアンプリメは前走で東京盃を使ったはずその選択が今回の結果と時計に影を落としていることは、両レースを比較する上で見逃してはいけないと考えている。


    帝王賞1-2着馬による白熱のマッチレース! ハナ差で制したチュウワウィザードが、最高峰の座に-JBCクラシック

    最後の直線に入ってからは、先頭に立って粘るチュウワウィザードと、これに一歩一歩差を詰めていったオメガパフュームのマッチレース。ゴールした時にはオメガパフュームがキッチリ捉えたように映り、鞍上のミルコ・デムーロ騎手も勝利を確信して引き揚げてきた。しかし写真判定の結果は、1着チュウワウィザード。帝王賞で敗れた相手に雪辱を果たすとともに、初の統一GⅠタイトルを最高峰の舞台で手にすることになった。

    レースは出遅れ気味になったシュテルングランツを制して、ワークアンドラブが逃げる展開。平均やや遅めのゆったりした流れを、チュウワウィザードは4番手から、先頭が視界に入る位置で進めていた。そして2周目の向正面に入ると、外から来たセンチュリオンを前に出さないように気合いを入れられると、3コーナー過ぎで一気に先頭に。直線では急追したオメガパフュームハナ差まで迫られるヒヤヒヤの勝利となったが、その走りに非の打ちどころは見られなかった

    チュウワウィザードの勝因は、オメガパフュームより小回りや左回りの経験値で上回っていたことと、前で戦える利があったこと。特に位置取りや仕掛けどころに関しては、オメガパフュームが来る前に、前に出ることを意識していたように映った。並みの馬なら早仕掛けで最後に脚が上がりかねない格好だが、最後の1ハロンを12.5秒でまとめられるのが統一GⅠ級の底力。頂点に立つにふさわしい内容だったと思っている。
    この馬にウイークポイントがあるとすれば、逃げ馬に楽をさせた時。そうさせない競馬を続ければ、更にタイトルを積み重ねる力はあるが、この戦い方は直線勝負型を引き出す格好になりやすい。現在のダート競馬界は、オメガパフュームをはじめトップホースに差し馬が多いので、今回披露したような最後に振り切れる末脚を磨くことも、同時に求められると考えている。

    一方のオメガパフュームは、いつものように後方から進め、2周目の向正面から追い上げを開始。しかしチュウワウィザードとの差を2馬身ほどまで詰めた3コーナーの入り口でもう一度離されたところに、初体験の小回りコースと、左回りへの適性が垣間見えた。最後の直線で変わったかの末脚を披露しながら、交わすことが出来なかったのは、ここで後れを取った分。それでも未来に向けた経験値は手にできたといえ、今度同じ舞台で戦えば逆転することも可能ではと感じている。

    ただしこの2頭以外の中央勢は、冴えない競馬になってしまった。アンデスクイーンは後方から追い上げて4着まで来たが、ソコソコまで追い込んでも先頭までは届かない馬。他の馬が動けなかったために、入着圏まで来たという印象。そして7着のロードゴラッソと8着のアンデスクイーンは、どちらも中団で全く動けず。レースレベルにも小回りコースにも、対応できずに終わった1戦になった。

    対して地方勢は、センチュリオンが3着に入って気を吐いた。向正面からチュウワウィザードに喰らいつき、もしやと思わせたが、4コーナーで離されてしまった。それでもバテることなく3着争いを制したのは価値があり、左回りでこれだけ走れるなら、右回りならどこまでという期待感は膨らんだ。場合によっては右回りを求め、他地区や中央への遠征も視野に入れても面白いと思う。

    また5着となったストライクイーグルは、道中3番手も勝負所でズルズル後退したように、浦和コースに対応できていなかった。それでも最後の直線で盛り返し、3着争いに加わった走りを見ると、広いコースだったらわからなかったのでは。いい方に馬が変わって来た印象もあるので、これから追いかけてみる価値もありそうである。

    全体的には2強こそ順当に力を発揮したが、それを脅かす馬が浦和コースに対応できなかったために、レースとしての膨らみに乏しかった印象がある。コース経験のある馬が、着外1回だった馬を除くとセンチュリオン1頭しかおらず、過去の浦和記念上位組がいなかったことも理由の1つ。再度浦和でJBCを行うためには、それまでにOP馬が数多くこの距離を経験できる環境を用意する必要が、あるのかもしれない。

    (詳細なレース結果は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)

    JBCに関しては、後日コラムを掲載する予定もあります。





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