コラム 可能性の箱はいつ開くのか? 今年、地方所属で活躍した3歳馬の“今”
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コラム 可能性の箱はいつ開くのか? 今年、地方所属で活躍した3歳馬の“今”

2019-12-15 17:00
    毎年のようにダービーグランプリ(以降、ダービーGP)の終了を目処に3歳路線を総括していたが、今年は同レースが10月上旬に前倒しされ、JBC関連の対応と重なってしまったこと。またJBC以降に多くの記事を書く必要に迫られ、この時期まで手を付けられなかった。この点について、まずはお詫びしたい。
    さて、ダービーGPが10月上旬への前倒しにより、3歳路線の実質的なシーズン終了も早くなった。ただしこれはJBC創設で、当時統一GⅠだったダービーGPが9月に移設された時代に戻った格好。このレースからJBCという可能性が提示されただけでなく、3歳馬が古馬重賞路線に加わりやすくもなった。そこで時期的なこともあり、今年の3歳路線で活躍した地方所属馬の“今”について、ここでまとめてみることにした。


    ・レース後に明暗が分かれた、ダービーグランプリ出走組

    まず取り上げたいのは、ダービーGPに出走した馬の“その後”である。南関東からの参戦がなく、ダービーシリーズ優勝馬もバンローズキングス1頭だけに止まったが、8月以降に重賞を制した馬が5頭参戦。勢いのある馬が集結した結果、勝ったのは黒潮盃を制して参戦した、ホッカイドウ競馬のリンノレジェンド。好スタートからハナを奪うと、そのまま後続に影を踏ませぬ圧勝劇。道営3歳3冠では後述するリンゾウチャネルの前に屈したが、夏以降、一気に全国区の能力を全開させるパフォーマンスを披露した

    そのリンノレジェンドは、この直後に地元ナンバー1決定戦の道営記念に出走。スーパーステションとリンゾウチャネルは不在でも、統一GⅠホースのヒガシウィルウィンにかつて時代を築いたオヤコダカらが揃った豪華メンバー。ここでも敢然とハナに立つと、淀みないペースで好位勢のスタミナを奪い、最後追い込んできたステージインパクトも凌いで逃げ切り勝ち。ホッカイドウ競馬最大のビッグタイトルまで奪い取ったのである。

    これだけ変わったのは黒潮盃以降に手綱を取った岡部誠騎手が、秘めたポテンシャルを引き出したこともあるが、豊富な遠征経験や冬期に南関東へ移籍したことが地力の底上げに役立っていたことも見逃せないだろう。ホッカイドウ競馬所属馬はレベル的にも地理的にも、遠征や移籍を避けて通ることが出来ない。それ故に遠征競馬でも力を出せるノウハウや、馬が成長する環境を選ぶ術が長けているこの秋披露したパフォーマンスは、その真骨頂を見せたといえるのではないだろうか。

    一方で2着となった金沢のタンクティーエーに、3着に終わった園田のバンローズキングスは、その後古馬相手の他地区重賞のみならず、地元の一般戦でも敗れるなど、苦戦が続いているどちらも遠征競馬のダメージがあるためと考えられるが、見る側からすれば過度に求めがちな遠征競馬も、それで馬がダメージを負っては元も子もない。遠征しない際の理論武装と共に、遠征競馬でダメージを受けないノウハウを、主催者レベルで構築することが早急に求められるだろう。

    ・春の王者たちが見せている、未来への可能性

    ここではダービーGPに出走しなかった、ダービーシリーズ優勝馬を中心に触れていく。まず道営3歳3冠を達成したリンゾウチャネルを取り上げると、体調を崩したことで秋の復帰は10月24日までずれ込んだが、そこで古馬相手に快勝。その後園田の楠賞に遠征すると、持ったままで圧勝し、力の違いを見せつけている。直後に船橋へ移籍し、次走は浦和のゴールドCが最有力とされる中、東京大賞典の選定馬にも名を連ねている。どちらになっても現役トップクラスとぶつかることから、世代レベルを測る上でも注目されそうだ

    ダービー以降の活躍となると、九州ダービー栄城賞を制したスーパージンガも忘れられない。初の古馬相手になった7月の佐賀王冠賞で、いきなり古馬勢を撃破。この段階で3歳馬が古馬重賞を制することは珍しく、相手も当時佐賀転入後11戦無敗で重賞まで制していたハッピーハッピーなら、レベル的にも悪くなかった。斤量のアドバンテージが無くなった秋2走は古馬の壁に屈しているが、年末の中島記念で雪辱成るか、注目されるところである。

    一方で東海ダービーを無傷の11連勝で制したエムエスクイーンには、物足りなさを抱く人もいるだろう。直後の名港盃で控える競馬をすると、勝負所から後退して8着。その後も名港盃を制したポルタディソーニの前に2度も2着に敗れ、まだ古馬相手に勝利を挙げられていない。相性の悪さもあるし、控える競馬を続けていることも関係していそうだが、きっかけを掴むには勝利が欲しいところ。後にこの日々があったから飛躍できたといえる活躍が見られると良いのだが。

    この他、石川ダービーを制したロンキングルックは、秋のサラブレッド大賞典でタンクティーエーに敗れたものの、先日行われた中日杯で3着。安定した走りは古馬相手でも通用しており、更なる成長があれば来年楽しみになる。東北優駿を制したパンプキンズは、マイルチャンピオンシップ南部杯に出走した意欲は見られたが、不来方賞で再転入組に屈してからは、勝てていないのが現状。きっかけを掴みたいところだ。

    最後に今年は高知で行われた西日本ダービーを地元で制したアルネゴーに触れると、楠賞5着の後、秋に転入したモズヘラクレス相手に2連敗。地区レベルの問題なのか、遠征競馬の反動によるものか、少し様子を見たいと思う。

    ・秋になって姿を消した南関東トップ3。古馬との対戦は何時になるのか?

    秋シーズンの3歳世代を語る上で残念だったのは、南関東の実力馬が姿を消してしまったことだ。特に南関東3歳3冠の主役を演じ、ジャパンダートダービーでも掲示板に入ったミューチャリー・ヒカリオーソ・ウィンターフェルの3頭が、古馬と戦わずして今年を終えたのは、現4歳世代がこの記事既に古馬重賞を勝っていただけに尚更である。

    羽田盃を制したミューチャリーは、秋初戦に中央のセントライト記念を選択。さすがに初芝で対応できなかったが、直後に大井の準重賞を楽勝したところで年内休養を発表。東京ダービー馬のヒカリオーソウィンターフェルも、戸塚記念でマッチレースを演じてから未出走。ヒカリオーソは何度か“使う”という話も聞かれたが、結局使わずじまいで、東京大賞典にも2頭とも登録はなかった。

    これを復帰した時が楽しみと捉えることもできるが、復帰が延びれば延びる程、レースの選択が難しくなる。楽な相手を探して負けるようなら評価が急落するし、さりとて厳しい相手を選んだ場合、休み明けでも仕上げに抜かりが許されない。それが負けても希望を失いにくい3歳時と違うところで、閉じ込められた可能性の箱が、開かないままにならないことを願うばかりである。

    ・今の3歳路線は“遅れてきた大物”が、活躍できる土壌はあるのか

    ところで地方競馬では2017年から、ダービーGPを頂点する“3歳秋のチャンピオンシップ”を制定し、各地で実施された指定競走(以降、前哨戦)を制した馬か、ジャパンダートダービー地方最先着馬が優勝した場合、褒賞金が支給されるシステムが作られた。今年のダービーGPには、褒賞金を得る資格を持つ馬が4頭出走したことで、システムの認知度が上がっているのは間違いないと思う。

    一方でダービーGPを10月上旬に繰り上げた今年、前哨戦の日程もそれに併せて繰り上げられた。しかしそれによってダービーシリーズの段階でトップクラスに追いついていない3歳馬が出世する機会を失い、前哨戦が春の実績馬にとってボーナスレースになったケースも見られたのは気になっている。

    一例をあげると、10月から馬なりの大差勝ちで条件戦を3連勝中である、船橋所属のカジノフォンテンがいる。時計も重賞級を飛び越えて、統一グレードでも期待したくなる次元に達しているが、同馬はいまだA2級古馬重賞に出るまで、まだ時間がかかりそうな現実があるのだ。

    比較的出世しやすいとされる南関東で、しかも春に3歳3冠路線に出ていた馬でこれでは、他地区では更に難しい。そういった馬をすくい上げる番組作りとして“3歳秋のチャンピオンシップ”の前哨戦を賞金別定に変えたり、条件級の3歳馬だけを集めた高額賞金レースを組んだりするのも一つの手かもしれない。そしてそれは3歳路線の層を厚くするだけでなく、その先にある舞台を充実させることにもつながる話である。


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