コラム 「ロンジン ワールドベストレースホースランキング」2019発表
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コラム 「ロンジン ワールドベストレースホースランキング」2019発表

2020-02-07 17:00
    先日、毎年恒例となった「ロンジン ワールドベストレースホースランキング」の2019年版が発表された。日本調教馬の海外遠征が日常的になり、またそこで活躍する馬も増えた今、日本国内の競馬に対する評価は世界的に注目されている。だが実際に日本の競馬が、それに見合う争いを繰り広げられているかを検証する必要もあると思っている。そこで今年も、国内向けに発表される「JPNサラブレッドランキング」のダート部門について、個人的な考察を加えながらコラムとしてまとめさせていただいた

    おことわり・本文中の“今年”は2019年を、“昨年”は2018年を示します。

    ・今年も最高評価は3歳馬。クリソベリルが昨年のルヴァンスレーヴに並ぶ118を獲得

    昨年、ルヴァンスレーヴが3歳馬として13年ぶりに年間1位に輝き、更なる活躍が期待された今年のダート競馬界。しかしフェブラリーSを故障で回避すると、その後も態勢が整わず、1度も競馬場に姿を見せなかった。そのため、暫定王者の座を争う側面もあった1年だったが、今年も最高評価を得たのは3歳馬。春のジャパンダートダービーのみならず、秋のチャンピオンズCまで無敗で制したクリソベリルが、今年の頂点に立つことになった。

    最終的に手にした評価はチャンピオンズCにおける118だが、これは昨年のルヴァンスレーヴと同じ。ただしジャパンダートダービー時点にさかのぼると、ルヴァンスレーヴの112を上回る113の評価を、この段階で手にしていた。それだけ無敗で制したことが評価に反映されたことを示しているが、ではそれに値する凄みのある走りを見せたかとなれば、必ずしも同意できないところはある。

    それはチャンピオンズCが、レーティングが上振れする象徴的なレースだからだ。しかも今年の場合、2着ゴールドドリームと3着インティが、それ以前の競走で今年117の評価を得ていたことで、勝ち馬が高い評価をもらいやすい環境も揃っていた。そういった要因が重なった上で起こった、国内ダート競馬史上11頭目となる118(以上)獲得馬になったというのが現実。逆にいえばこの見識を覆す活躍を見せてくれることを、2020年のクリソベリルに期待したいところである。

    なお100以上の評価を受けた3歳馬は26頭と、歴代最高だった昨年より7頭減っているが、これでも2017年に並ぶ歴代2位タイ。3歳限定の重賞路線が未成熟な現状において、ランキングされる頭数が増えているのは、それだけ底上げが進んでいることを意味している。更なる路線整備が進み、評価されやすい環境が作られていけば、この頭数はさらに増えていく可能性は高いと考えている。

    ちなみに100以上の評価を受けた26頭には、アメリカ3歳3冠に遠征して好走したマスターフェンサーも含まれる。同馬に対する115は、2008年のカジノドライヴと2016年のラニが得た113を上回る、海外で得たこの部門の評価としては歴代最高となったことを付け加えておきたい。

    ・古馬最高のゴールドドリームは、3年連続の117。オメガパフュームは昨年より上積みできず

    対する古馬勢は、かしわ記念におけるゴールドドリームと、フェブラリーSにおけるインティが、ともに117で最高評価となった。ゴールドドリームはこれで3年連続となる117となったが、そもそもこの数字自体が高過ぎ。相変わらずこの馬が勝つと数字が高くなるし、しかも今年はこの馬が最高レーティングを持っていたレースが大半だったため、2着になることで勝った馬の評価を高める効果もあったインティの117も前述したクリソベリルの118も、それによって引き上げられた評価と、個人的には考えている。

    一方で帝王賞と東京大賞典を制したオメガパフュームは、昨年と同じ115に止まった。大井での2戦以外は未勝利に終わったことで、スケールアップしなかったと捉えられたことが、上積みできなかった最大の要因だ。ただしそこまでレースの質が低かったと思えなかっただけに、妥当かどうか議論の余地はありそうだ。

    そしてJBCクラシックでオメガパフュームを破り、統一GⅠ初制覇を果たしたチュウワウィザードも同じ115の評価。対オメガパフュームに限れば3勝1敗と優位だったが、2頭が1-2着となった統一GⅠで1勝1敗なら、オメガパフュームと横並びという意味では妥当といえるだろう。

    古馬勢の115以上は、ここまで紹介した4頭。川崎記念を制したミツバは114、マイルチャンピオンシップ南部杯を制したサンライズノヴァ113で、昨年116だったケイティブレイブノンコノユメは、ともに113に落とした。意外だったのは、後述する短距離部門を含めて110以上の評価を得た古馬が、昨年の22頭から5頭減の17頭になったこと。昨年高い評価を得た黄金世代が加わりながら数字が伸び悩んだのは、黄金世代が大挙して統一GⅠ路線に乗れた訳ではなかったことが理由だろう。

    ・短距離部門の最高はコパノキッキングの112。JBCスプリント・レディスクラシックの覇者は、評価抑えられる

    ここでは部門毎の評価をまとめておきたい。新たな主役登場が待たれた短距離路線は、統一グレード3勝を挙げたコパノキッキングがその全ての競走で112を獲得し、トップに立った。JBCスプリントは2着に敗れたものの、JBCスプリント覇者が例年獲得している数字を得たことで、この路線における主役級に躍り出たことを示した。

    一方でJBCスプリントを制したブルドッグボスは、歴代覇者より低い111に止まった。他に統一グレードタイトルがなかったことや、同日同条件のJBCレディスクラシックより勝ちタイムが遅かった点が反映された嫌いはあるが、2年前のJBCスプリント3着時が110。この時から上積みがほぼなかったと評するのが、正解かもしれない。

    そのためか、牝馬のトップとなったJBCレディスクラシックを制したヤマニンアンプリメも、過去2年の同競走優勝馬と同じ107。アローワンスを加味すると、ブルドッグボスと同等の評価に止まった。ただヤマニンアンプリメの場合、その前に1200mの統一グレード連勝があり、その中にはコパノキッキングとブルドッグボスを完封したクラスターCもあった。そのクラスターCにおける104は、今振り返れば相当評価が低い。穿った見方かもしれないが、コパノキッキングが負けたり不在だったレースの評価が過度に抑えられた影響が、大舞台での低評価にも反映された気がしている。

    そして2歳馬は、全日本2歳優駿を制したヴァケーション108を獲得した。昨年のノーヴァレンダに1ポイント及ばなかったものの、2013年に地方所属で制したハッピースプリントと同じ評価なら、おおむね妥当と考える。また100以上の評価を得た馬が11頭と、初めて2桁に乗ったことは大きなポイントだ。地方から優秀な2歳馬が多く輩出したことに加え、中央では早い段階からダートの高いレベルを目指して使われる馬が増えていることが、有機的に噛み合った結果と考えている。

    ・モジアナフレイバーは、南関東生え抜きとしてフリオーソ以来の評価。3歳最高のミューチャリーは、昨年のクリスタルシルバーと同評価

    ここからは、これまで登場していない地方所属馬のレーティングを取り上げるが、まずはダート統一グレードの結果を基にした評価を中心に紹介する。

    南関東の古馬路線を牽引した大井生え抜きのモジアナフレイバーは、東京大賞典3着で110の評価を獲得した。同じ大井生え抜きとしては、ソルテが2016年に111の評価を得ていたが、これはマイルのカテゴリー。ダートのチャンピオンディスタンスに相当するインターミディエイトで、110以上の評価を得た南関東生え抜きとなると、実に2012年のフリオーソまで遡る。ここにきて南関東生え抜きの復権が注目されているが、レーティングでもそれが証明された。

    更に南関東勢の活躍が目立った短距離路線では、東京スプリントを制したキタサンミカヅキ109。昨年、東京盃で得た110より下がったものの、一定の評価は得た。またオーバルスプリントを制したノブワイルドは、昨年より2ポイント高い106となり、今期の充実ぶりが現れた評価となった。

    また3歳馬では、ジャパンダートダービーで掲示板に入った3頭が、揃ってランクイン。ここで地方馬最先着となったミューチャリー108の評価を得て、地方所属の3歳馬としては最高位となったが、昨年同レース4着のクリスタルシルバーと同じと聞くと、もっと高くても良かった気になる。もっともそうなれば、同レースでクリソベリルが得た113も更に上積みされてしまうので、仕方がないのだが。なおヒカリオーソは、ジャパンダートダービー5着で得た103を上回る104の評価を、東京ダービーと戸塚記念で手にしている

    ・評価が遅れたリンゾウチャネル。地方重賞も積極的な評価を

    今年地方競馬関連のレーティングで最もエポックメイキングだった事として、ホッカイドウ競馬の3歳3冠を達成したリンゾウチャネルと、夏以降に黒潮盃・ダービーGP・道営記念と3連勝したリンノレジェンドが、ともに100の評価を得たことを挙げたい。その年に統一グレード出走歴がない地方所属の3歳馬が100以上の評価を得たのは、これまで南関東所属馬のみ。それがホッカイドウ競馬から、それも同時に2頭名前が載ったことは大きな価値があった

    だがこの評価は、ストレートに得られたものではなかった。それは東京大賞典のプレレーティングで、選定されていたリンゾウチャネル(回避)が100の評価を得ていないとされていたからだ。その後に修正が入って名前が載ることになったが、その理由としてダート統一グレードではない地方重賞を、積極的に評価しようとしない現状があると考えている。

    詳細をみれば勝ち馬が100以上の評価を得るレースは増えているし、勝島王冠のように(勝ったモジアナフレイバーは、帝王賞・マイルチャンピオンシップ南部杯で自身が得た評価と同じ106)統一グレード並みの数字が出た地方重賞も今年はあった。しかしJBCスプリントで111の評価を得たブルドッグボスが、直後のゴールドCで102(推定)に止まるなど、中央所属馬がいないことで評価を押し下げたと感じる競走はある。しかしそれを放置することは、レーティングそのものの信頼度を揺るがせてはいないだろうか

    以前に地方所属馬だけの競走で高いレーティングを得られるなら、有力馬の統一グレード離れを加速する可能性があると指摘したが、一方で統一グレードタイトルを持つ馬は、統一グレードの方が地方ローカルより酷量を背負う状況もある。それを改善する競走条件を考えることも必要だが、色眼鏡を捨てることは今日からでもできること出走馬のレベルもレースの質も高い競走であれば、出走条件に囚われず、臆することなく正しい高い評価を与える姿勢を望みたいと思う。


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