「フェブラリーステークス」戦評-2着ケイティブレイブが、モズアスコットに負けない感動を呼んだ根本にある、この舞台の“障害物”
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

「フェブラリーステークス」戦評-2着ケイティブレイブが、モズアスコットに負けない感動を呼んだ根本にある、この舞台の“障害物”

2020-02-28 12:00
    直線半ばでモズアスコットが抜け出し、焦点が2着争いに移った時、そこからケイティブレイブが抜け出したことを信じられなかった人は多かっただろう。1年前に生死の境を彷徨ったことや、大きな落馬事故を乗り越えてGⅠ格初騎乗にこぎつけた長岡禎仁<よしひと>騎手が初コンビで導いたこともあり、この2着に対しては勝ち馬に負けない感動の声があった。そして冷静に分析すると、このレースに横たわっている“障害物”との関わりによって、より増幅されたことがわかった。それは何度も指摘している、このレースが統一GⅠを名乗って良いのかにも、つながる話である。

    <ダート2戦目で統一GⅠホルダーとなったモズアスコット。次に見るのは1年後?>

    芝スタートの部分で好ダッシュを決めたワイドファラオがハナを奪い、前半3ハロン34.6秒・同5ハロン58.7秒と、このレースとしては平均的なラップになった。この流れをモズアスコットは、やはり芝スタートで好ダッシュを決めた後、ダートに入ってから下げて中団から。すると馬群が縦長になったこともあり、見事に前後左右に馬がいない位置に嵌った。これで揉まれて動けなくなる恐怖がなくなり、勝負所まで気分よく走らせられたのが、勝因の1つになった。

    こうなれば直線でゴーサインを出すだけで、不利を受けない・与えないコースを1つ1つ探しながら前との差を詰めると、残り200m手前で先頭に。あとは後続との差を広げる一方となり、ダート2戦目で史上5頭目となる芝・ダート両GⅠ制覇(注)を果たした。上手く行きすぎた面があるにしても非の打ちどころのない完勝で、同じメンバーなら何度戦っても勝てるのではと思わせる、強い競馬だった。

    ただしこの評価には“東京ダート1600mなら”という注釈がつく。それは芝・ダート両GⅠ制覇を果たした馬のうち、イーグルカフェ以外はフェブラリーSと同じ東京1600mの統一グレード勝ち馬という事実がある。つまり芝適性の高い馬が、ダートでも能力を発揮しやすいのがこの舞台。それだけに東京以外でダート競馬を経験していない現状では、ダート適性も高いと評するのは早計だと思っている。

    しかもモズアスコットは、次走に芝のマイル戦で行われるオーストラリアのGⅠレースを予定するなど、今後は海外中心のローテーションが検討されている。そのため国内のダート戦でその雄姿を見るのは、もしかしたら来年のこのレースまでない可能性も。海外から吉報を届けてほしいのは当然としても、ダート競馬の枠内に於いて正しく評価される機会が、一生ないかもしれないのは残念である。

    (注)過去の達成馬は、アグネスデジタル・クロフネ・アドマイヤドン・イーグルカフェ(達成順)

    <“スペシャリストに割って入った”ことが感動を増幅させたケイティブレイブ>

    冒頭でも紹介したように、2着にはケイティブレイブが突っ込んだ。モズアスコットを見る位置まで下げて進めると、直線で外に持ち出して一緒に伸びたワンダーリーデルを競り落とし、最後迫ったサンライズノヴァも凌いで波乱を演出した。そもそも統一GⅠ3勝の実績はここでは断トツで、また帰国初戦の浦和記念で圧勝したように、完全に衰えた訳ではなかった。しかも今回マークした1分35秒6は、3年前と同じ走破タイムとなれば、既に披露していたポテンシャルを発揮しただけともいえたのだ。

    ただし忘れてはいけないのは、近年のこのレースは、この条件で結果を残しているスペシャリストが上位を独占していたことだ。過去にスタートにある芝はダート競馬の“障害物”と評したこともあるが、特に東京1600mはその障害物を味方にできる馬でなければ結果を出せなくなっている、統一GⅠにふさわしくない状況が放置されているのだ。

    そして今年も、同じ舞台の武蔵野Sを勝った経験のあるサンライズノヴァとワンダーリーデルが3-4着。5着のタイムフライヤーは、唯一のダート連対が昨年の武蔵野Sで、勝ったモズアスコットも東京以外のダート戦を使っていないことから、この枠内に加えていい。そうしたスペシャリストが上位を占めた1戦で割って入ったことが、ケイティブレイブの好走による感動が増幅された理由にあると、私は考えている。

    もう1つケイティブレイブについて触れると、これまでは逃げてこそという評価をしてきたが、近2走は先行力が通用しなかったという側面もあった。つまり今回の走りは、差し馬へのイメージチェンジを完全に終えたことへのメッセージともいえた。過去の記憶を引きずるのではなく、今のケイティブレイブが持ち味を出す形を基に、これから評価する必要があると思っている。

    <届かなかったスペシャリスト組と、大敗したポテンシャル組>

    ここから3着以下の中央勢を、簡単にまとめていく。3着のサンライズノヴァは、以前のような4角最後方近辺からの追い込み。大外から良く伸びていたが、位置取りが後ろだった分だけ届かなかった。マイルチャンピオンシップ南部杯で勝利に導いた吉原寛人騎手と、今回手綱を取った松山弘平騎手との、判断力の差も少なからずあったのではないだろうか。

    4着に終わったワンダーリーデルは、最後の直線でケイティブレイブと一緒に伸びて来たものの、最後に振り切られてしまった。この馬自身の能力は出し切ったといえ、それでこの結果では、統一GⅠ級では力が足りなかったと判断していいだろう。

    5着のタイムフライヤーは、先行勢で唯一踏ん張った点は評価できるものの、芝を使っていた当時に長距離戦で好走したスタミナが活きただけともいえる。本質的にダートがハッキリ良いという馬ではないので、これが精一杯と考える。

    逃げたワイドファラオを追いかけたアルクトスは、ハイラップにも関わらず4角先頭では踏ん張れない。結局9着まで崩れてしまったが、もしかしたらオールダートの方が道中の抑えが利き、末脚を伸ばせる馬かもしれない。

    あと14着に沈んだインティは、逃げることができなかった段階で終了。自身以上のスピードを持っている馬がいれば、叩かれるのはある意味当然で、昨年が恵まれた勝利だったことを示しただけだった。

    <“障害物”が壁になった地方生え抜きの無念>

    最後に地方所属の3頭を振り返るが、総論として芝スタートという“障害物”が壁になった印象が強い。予想記事でも触れたように、様々な理由で地方所属馬の参戦が多い競走であるが、障害物を理由に極端なスペシャリスト性が要求されるなら、参戦する価値がどこまであるのか疑問だ。戦わなければわからないことはわかっているが、このレースに地方競馬関係者がこだわる必要は、もうないはずと考えている。

    中でも影響が大きかったのはモジアナフレイバーだった。芝部分でバランスを崩し、ダートに入ったところでは1頭だけ大きく離れた最後方。腹をくくって直線勝負に賭けるしかなく、馬群を縫うように良い脚を使ったものの、脚を余す形で6着に終わった。普段の位置取りであの末脚を使えていれば、間違いなく勝ち負けに加われたはず。それでもドバイ遠征(ゴドルフィンマイル)に向けて、前向きになれる材料はあった1戦だった。

    また期待したミューチャリーは、芝で置かれただけでなく、未経験の時計勝負に対応できずに11着。自慢の切れ味を発揮する前に、全く勝負をさせてもらえなかった。ただしこれは経験不足から来るもので、慣れれば対応できるはず。ちょうど今年から特指競走の規定が変わり、同馬は今年一杯中央の特指競走を使える。そこで地元に使いたいレースがない時期に、中央のオールダートのレースに遠征し、慣らすことも出来そうに思うが。

    最後に2年前の覇者ノンコノユメに触れると、スタートは危惧された程悪くなかったが、位置を守るためにおっつけ通しの競馬をしたのはどうか。それでも最後までバテずに8着なら、今回のモジアナフレイバーのように腹をくくれれば、もっといい着を取れたかも。ただ現状ではマイルは距離不足であることもハッキリした印象で、昨年帝王賞と東京大賞典でモジアナフレイバーに先着した理由も、これで理解できた気がする。

    (詳細なレース結果は日本中央競馬会のオフィシャルサイト等で確認してください)


    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。