コラム ジャパンダートダービーと、2020ダービーシリーズを振り返る
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コラム ジャパンダートダービーと、2020ダービーシリーズを振り返る

2020-07-14 18:00
    7月8日に行われたジャパンダートダービーは1強ムードが漂っていたが、レース史上最大の大波乱が待っていた。この結果に対して様々な声が飛び交う中で、ダート競馬全体を見据えた背景を、冷静に考える必要があると私は判断した。またこのブロマガでは今年、ツイッター上で簡単に各レースを振り返ってはいたが、世代全体について詳しく振り返る機会を設けていなかった。そこでこの機会にジャパンダートダービーを振り返るとともに、ダービーシリーズについても簡単に振り返ることにした。

    <タフな馬場で繰り広げられたサバイバル戦を演出し、頂点に立ったダノンファラオ>

    まずはジャパンダートダービーを振り返りたい。ハナを奪ったのは戦前に“逃げたい”という声も出していたダイメイコリーダで、これを追走したのがダノンファラオ。断然人気を背負ったカフェファラオは、この2頭を見る3番手で1コーナーに入っていった。

    そのダイメイコリーダが刻んだペースは、前半3ハロン35.9秒に同5ハロン61.3秒5ハロン61秒台前半は高速馬場の名残があった2011年(34.8-61.2秒)以来だが、近年は62秒を切るかどうかが平均だったので、数字だけ見れば特別速いといえない。しかし今年の春に全面的に砂を入れ替えてからの大井コースは、道悪になると時計がかかる傾向があった。その視点に立てば、数字以上にタフな流れだったといえるだろう。

    それが露見したのが3コーナーを迎えてからだった。ペースが落ちずに引っ張るダイメイコリーダダノンファラオに対し、3番手のカフェファラオ以下が、ここからついていけなくなる。すると前を行く2頭が4コーナーを回った時、後続は既に5馬身以上離されてしまい、最後の直線は2頭のマッチレースに。この競り合いは、残り200mを切ったところでダイメイコリーダを交わしたダノンファラオが制し、3歳ダート王の称号を得ることになった

    勝ったダノンファラオは、後続も力を使わずに追走しやすい中央の比較的軽いダートにおけるOP級では、後続に呑まれる競馬が続いていた。しかし追っかけた方が苦しくなるタフな馬場になったことで、速いラップで先行しても簡単にバテない持ち味を発揮できる条件が揃い、状態面の良さも相まって勝利を掴み取った1戦だった。2着のダイメイコリーダにもいえるが、今後もこういったタフさを求められる競馬になれば、力を発揮してくれるはず。もっともこの日のような馬場が、そう頻繁にあるとは思えないが。

    <カフェファラオが惨敗した、これだけの理由>

    一方で断然人気に推されながら7着と崩れたカフェファラオは、前走ユニコーンSの内容が強かっただけに、失望の声が広がった。その敗因として1コーナーで躓いたことでリズムを崩したことなど、様々な理由が上がっているが、私にはその前から気になる場面があった。それは枠入りの直前、口元から盛大に泡を吹き出したシーンが映ったこと。大した場面ではないかも知れないが、私自身はここに、レース前から平常心を保てていなかったことが示されていたと考えている。

    それを意識してパドックをもう一度見直してみると、力強く迫力満点で周回していた姿は、実は気負いだったのではないか。初物尽くしの環境に平常心を失い、消耗したことが、1コーナーで躓いたことなどに現れていたとすれば辻褄が合う気がする。そうであれば次に同様の環境になった際、克服する可能性は十分にあるけれど、更に指摘しないといけない話がある。それはユニコーンSで求められる能力が関係している。

    レース前日にツイッターでもつぶやいたが、ユニコーンSが春開催になった2001年以降、これとジャパンダートダービーを連勝したのはわずか3頭(注1)。だがそれ以上に注目すべきは、春開催になってからのユニコーンS優勝馬が、その後2頭(注2)しか2000m以上の古馬統一GⅠを制していないことである。

    つまり現在のユニコーンSは、後のチャンピオンディスタンスで活躍する馬を輩出するレースになっていない事実がある(注3)。更にかねてから指摘するように、東京競馬場のダートコースは特殊な適性を求められる傾向にある。つまりチャンピオンディスタンスで活躍する馬を輩出する競走としての可能性は、もはや限界を迎えていたのだ。それを棲み分ければいい気もするが、歴史的にJRA主催の競走は誤った認識を植え付けやすい。これを放置してしまえば、ダート競馬の未来に悪い影響が出る可能性もあると感じている。

    (注1)カネヒキリ、ノンコノユメ、ルヴァンスレーヴ
    (注2)カネヒキリ、ゴールドドリーム。3着馬まで広げても、サウンドトゥルーが加わるだけ

    (注3)昨年まで直近5年の優勝馬は、全てマイルの古馬統一GⅠを制している


    <ブラヴールの好走に見えた、南関東3歳世代のハイレベル>

    ここでは東京ダービー(6月3日・大井)の話を交えながら、南関東勢の走りを振り返りたい。地方馬最先着の4着に入ったブラヴールは、有力馬に数えられていた東京ダービーを、当日になってザ石により競走除外。ここから立て直して間に合わせてきたが、その仕上げでは最後方から脚を測る戦い方しかできなかったのも事実だ。

    それでも地元馬同士で発揮していた豪脚が通用したのは確かで、その意味では収穫は大きかったが、もし万全の出来だったらという想いも捨てきれない。もっと凄い脚で前に迫れただろうし、道中の位置取りも変わっていた可能性が。展開は間違いなくこの馬に向いただけに、全馬を差し切っていたシーンまであったかもしれない。それを今後の戦いで現実になることを、期待せずにはいられないだろう。

    その東京ダービーを制したエメリミットは、当時は序盤逃げたファルコンウィングに絡んで序盤のペースを上げさせると、一旦控えて直線で抜け出す味な競馬。ブラヴールの除外でレース全体が前がかりになる中、先行して差し馬を凌いだレース内容は中身が濃かった。戦前の前評判は高くなかったが、力でもぎ取った東京ダービー馬の称号だったと思う。

    今回も地方勢では1番前で戦ったように、東京ダービーと同じような戦い方を意識していたと思うが、向正面から追走に汲々としたのは相手のレベルが上がったから。それでも最後まで下がることなく6着に踏ん張ったなら、悪い評価は必要ないだろう。こちらも更なるスケールアップができるなら、中央勢相手に通用する未来はあると思っている。

    南関東全体を2歳戦から振り返れば、その時々の舞台や展開によって勝ち馬がコロコロ変わったものの、個々の勝ち馬は総じてレベルが高かった。ジャパンダートダービーにおけるブラウールの健闘は、それを証明するに十分だったと考えている。なお羽田盃を制したゴールドホイヤーは、5着に終わった東京ダービーのレース後に骨折が判明。首を長くして再起を待ちたいと思う。

    <1冠目を制した馬が軒並み勝てなかった、今年のダービーシリーズ>

    最後に今年のダービーシリーズ各競走から、すでに触れた東京ダービー以外に印象に残ったレースを、開催順にいくつか紹介したい

    先陣を切った九州ダービー栄城賞(5月31日・佐賀)は、地元無敗での戴冠を目指したミスカゴシマが、好スタートを切りながら控えたことでチグハグな競馬になってしまい、後方からの向正面まくりを決めたトップレベルに屈して3着に敗れた。
    どうしても地方競馬のダービーは初距離で迎えることが多いため、距離延長を受けて戦い方が慎重になりやすい今回のミスカゴシマはその落とし穴に嵌り、余所行きの競馬になったことによる敗戦とみている。しかし7月4日の古馬A級戦で見せ場なく敗れた走りを見ると、地元無敗という部分に踊らされた部分もあったかもしれない。


    歴史的に順当な決着が多かった東北優駿(6月7日・盛岡)は、人気を分けたグランコージーマイランコントルが、スタートから競り合う意外な展開。結果ハイペースとなり共倒れとなったところ、後方からレースを進めたフレッチャビアンカが、直線で先に抜け出していたピアノマンを差し切り、ダイヤモンドC2着からの巻き返しに成功した。
    これはスタートから3コーナーまで上り坂が続く盛岡2000m戦ゆえに起こった乱戦で、平坦の水沢コースだったら、あのペースでも2頭で最後まで押し切った可能性はあった。それだけコースの違いが結果に影響したといえ、またマイランコントルが6月28日のウイナーCを制したことから、2頭に力がなかった訳ではないことも申し添えたい。


    シリーズ8戦中、1番人気で制した馬は3頭いたが、その中で最も危なげなかったのが東海ダービー(6月9日・名古屋)を制したニュータウンガールだ。一連の路線で力関係がわかっていたことと、好位抜出の安定感ある戦い振りで、道中の3番手からアッサリ抜け出して楽勝。前哨戦に当たる1冠目を制した馬が軒並みダービーでは敗れた今年、唯一の2冠馬となったことも評価を高めた。
    ただしこのレース単体の盛り上がりを考えると、昨年まで別路線の競走として行われていたぎふ清流Cが距離短縮の上、6月4日に組んだのはどうだったのか。ダービーに向けた路線が一本道になってしまい、レースの興味が膨らみにくくなった嫌いがあり、今後路線の再検討をお願いしたいところだ。


    今年から1着賞金2000万円と、大幅に引き上げられたことが話題になった兵庫ダービー(6月11日・園田)は、1冠目の菊水賞で逃げ切ったステラモナークを制してハナを奪ったディアタイザンが、そのまま最後まで踏ん張って逃げ切り勝ち。重賞では苦戦が続いていたが、得意の単騎逃げを叶えたことで、ダービー馬の称号を引き寄せることができた。
    ただし近年、園田の中長距離重賞では、差し馬勢の無策による逃げ切り決着が目立つ。その傾向に助けられた凡戦という指摘をレース直後にしたが、一方で2番手から交わせなかったステラモナーク“いつでも交わせる”と思っただろうし、差し馬勢もディアタイザンの逃げなら“先行勢は怖くない”と感じたはず。人気薄の逃げだっただけに、その心理的な要因を無視して批判したのは、言い過ぎだったかもしれない。


    最後までわからなかった好勝負という意味では、勝ったアベニンドリームと2着に逃げ粘ったシンボが、長い直線でマッチレースを演じた北海優駿(6月18日・門別)も忘れられない。今期は2歳時の実績馬がほとんど残らなかった中、アベニンドリームは数少ない実績馬として牽引役を期待されていたが、1冠目の北斗盃では崩れていた。それだけにこの舞台で巻き返したことは、地区全体としても救われたと思っている。
    そして2着だったシンボはその後、7月12日に中央1000万下に遠征して勝利。これは芝だったとはいえ、北海優駿は出走馬のネームヴァリュー以上にレベルが高かったと感じ始めている。23日に迫った3冠最終戦王冠賞が、ここにきて俄然楽しみになって来た。


    総体的には質量ともに豪華だった南関東勢を除けば、統一グレード級で可能性を感じる馬は、現時点では見当たらなかった。ただしそれは、牡馬に関してはという話。牝馬は東海ダービーを制したニュータウンガールや、年明けデビューから無敗で石川ダービー(6月2日・金沢)を制したハクサンアマゾネスなど、充実している地方競馬の牝馬路線において、活躍を期待したくなる存在は登場したと思っている。
    もっとも牝馬の地方ナンバー1は、南関東牝馬3冠路線で2冠を達成し、関東オークスでも2着に入ったアクアリーブルで揺るがないだろう。距離が延びるにつれて粗削りなところが解消されたのも好感が持て、牡馬トップクラス相手にどこまで戦えるか、見てみたいとも思っている。


    (詳細なレース結果は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)


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