「東京大賞典」戦評-偉業と希望がクロスしたゴール前
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「東京大賞典」戦評-偉業と希望がクロスしたゴール前

2021-01-11 16:30

    戦前から話題はオメガパフュームの3連覇なるかに集中し、結果レース史上初の3連覇を達成。2020年のダート競馬を大団円で締めくくった格好になったが、裏を返せば他に話題になるようなメンバーが集まらなかったことを意味している。しかし2021年に向けた希望も、この日私たちは感じることができた。そんな未来の展望も含め、この1戦を振り返ってみたい。

    <超スローの展開で、自滅した先行馬たち>

    戦前はハイペースで逃げた時に結果を出していたワークアンドラブや、厳しい流れを作ったジャパンダートダービーでそのまま押し切った経験のあるダノンファラオに加え、前で戦いたい馬が多いことから、ある程度速い流れを予想する声が多かった。しかし蓋を開ければ好スタートを決めたワークアンドラブがアッサリ抜け出すと、他の先行勢も競りかけず、早々と位置取りが決着。すると最初のゴール板を過ぎてから一気にペースを落とし、後続との差を広げながら超スローの展開に持ち込んだ。

    結果、前半1000mは64.9秒。やはり超スローといわれた半年前の帝王賞が同63.9秒だったから、いかに遅いかがわかるだろう。だがワークアンドラブスローに落としても後続を封じる末脚は持っていないので、これでは差し馬の軍門に下るだけ。4角までほぼプレッシャーなく逃げられたが、最後の直線で抵抗できずに10着に終わったのは、自滅の一言で片づけていいと思っている。

    そして自滅したのは、結果を出せなかった他の先行勢も同様だった。特にモジアナフレイバーは、3~4番手という一見絶好の位置で進めたものの、実際は終始行きたがっていて、直線で全く伸びず9着。戦前にスピードに任せた競馬をさせるべきではと指摘したが、これまでの競馬に固執して力を発揮できなかった。また12着に終わったダノンファラオはゲート内で暴れていた影響か、位置を取るために出ムチを入れる始末。レースが始まる前に終わってしまった格好で、この後遺症がないか不安を覚える1戦になってしまった。

    <戦い方が変わらなかったことが勝利を呼んだ、オメガパフューム&ミルコ・デムーロ>

    こういった力を発揮でない馬が多かった先行勢を、直後でみていたのが勝ったオメガパフュームだった。前走JBCクラシックで今までより前で戦う姿をみせたが、今回も似たような位置取り。ただし前にクリソベリルという絶対的な馬がいて、負かすために早めに動いた当時と違い、余裕をもって動くタイミングを待っていた

    ただし直線に向いてゴーサインが出ても、2番手から先に抜け出したカジノフォンテンをなかなか交わせない。それでもジワジワと差を詰めて、残り50m付近で逆転。最後はクビ差だったが、そもそも差をつけて勝つ馬ではないので(デビュー2連勝を除き、勝った時の最大着差は1馬身4分の1)、着差以上に危なげなかったと思っている。

    これでレース史上初の3連覇を達成した訳だが、その勝因は他の実力馬が軒並み回避して勝たなければいけない立場に変わっても、戦い方が変わらなかったことにある。ライバルを負かしに行く立場が、いきなり1強ムードの主役に祭り上げられ、戦い方を見失うケースは何度も見てきた。しかし今回は、長年手綱を取って手の内に入れていたミルコ・デムーロ騎手が、大井コースに対する絶対的な信頼をオメガパフュームに対して持って臨んでいた。もっともこれは、今までも“大井では負けられない”という意識で戦っていたのを、私たちが理解していなかっただけかもしれないが。

    逆にいえばその信頼を持てない舞台で、まだ統一GⅠタイトルを手にしていないことを意味している。昨年も左回りでの統一GⅠタイトルを手にしないと評価は上がらないと指摘したが、その課題から逃げない2021年であってほしい。その意味で次走に川崎記念を検討していることは、正しいと考えている。

    <2着カジノフォンテンがみせた、希望と課題>

    このレースを盛り上げたのは、統一グレード初出走ながら2着に入ったカジノフォンテンで間違いないだろう。超スローの流れで先行馬が軒並み力を発揮できない中、離れた2番手でピッタリ折り合いをつけて流れに乗ると、直線で抜け出してからはそのまま押し切るかと思わせた。最後はオメガパフュームの貫録に屈することになったが、強敵に臆せず戦った姿は大きな希望を与えたはずだ。

    この馬はかつて右回りで結果が出なかったこと、また右回り初勝利を挙げた前走勝島王冠が逃げ切りだったことから、ここで通用するには注文が多いと思われていた。しかし離れた2番手になって単騎逃げに近い状況を作れたといっても、かつて右回りで結果が出なかった時代を払拭するに十分だったのは間違いない。これを受けて統一GⅠタイトルを争うグループに加わっただけでなく、一躍地方競馬のエースにのし上ったといえよう。

    ただ今回は中央勢7頭中、古馬統一GⅠ優勝馬はオメガパフュームのみ。統一グレード未勝利馬も3頭出走と、メンバーが小粒だったことを忘れてはならない。またタフさが要求されない流れもあり、真の底力があることを証明できる競馬ではなかった。だからこそ、それが問われるような舞台を積極的に選び、その力があることを見せてほしい。オメガパフュームと違い、左回りで動きが良くなる馬なのだから。

    <差し馬も、スローペースを活かせなかった馬ばかり>

    この他に上位に入った馬に触れると、3着ウェスタールンドは得意とするスローペースの爆発力勝負になったが、向正面で中途半端に位置を上げたことで、その爆発力を削いでしまった。前走浦和記念もそうだったが、こういう動きをするなら一気に先頭まで出てしまった方が遥かにいい。地方に遠征すると仕掛けどころに悩んでいる印象はあるが、それによって中途半端な戦い方になっているのは確かだ。

    4着には中団から馬群を縫って伸びたヒストリーメイカーが喰い込んだ。統一グレードではこれまでも掲示板クラスだったが、統一GⅠでも層が薄かったことで台頭してきた。ただこの馬は金沢競馬で出世の足掛かりをつかんだように、地方の馬場に対する適応力は高い。メンバーが薄くなった地方主催の舞台なら、統一グレードタイトル獲得のチャンスがあるのではないか。

    JBCクラシックで4着に追い込んだミューチャリーは、最後追い込んだものの5着止まり。大外枠から距離ロスを嫌って馬群に入れたところ、道中は力んだ走りに。これもスローペースの爆発力勝負が良い馬で、大外に持ち出してからの脚も良かったが、その展開を活かせなかった印象。今後は周りに馬がいない状況を作ることも、好走の要件になる気がしている。

    あと6着のテーオーケインズは、最後の直線でオメガパフュームの背後から伸びてきそうで伸び切れなかった。充実ぶりの一端は示したものの、勝ち負けまで届かないところに力をつけ切っていない点が現れていたか。ただし明けて4歳となる2021年、飛躍を期待したくなる1頭が出てきた印象は抱いている。


    <2021年のダート競馬界・・・時計の針を戻さない、希望の星は>

    最後に2021年のダート競馬界を展望したいが、東京大賞典終了後の2020年末、立て続けに大きなニュースが入ってきた。1つはゴールドドリームの引退、そしてもう1つは脚部不安によりクリソベリルのスケジュールが白紙になったというニュースである。特にクリソベリルは、ルヴァンスレーヴも苦しめられた“けい靭帯炎”に近く、その上で患部は非常に珍しいものという。もし長期離脱となれば“黄金世代”の生き残りであるオメガパフュームとチュウワウィザードが、ダート競馬界を牽引することになるはずだ。

    しかしそれでは、時計の針を戻すことになってしまう。そうさせない2021年とする筆頭格として名前が挙がるのは、マスターフェンサーであろう。3歳時に米3冠路線を戦った影響で出世が遅れていたが、2020年にマーキュリーCと白山大賞典を制覇。檜舞台に立つのがいつかに注目が集まっており、早ければそれが川崎記念になるといわれている。黄金世代2頭がともに未対決でもあり、この初対決が実現すれば、大きな注目を集めるはずである。

    そしてもう1頭は、東京大賞典で2着に入ったカジノフォンテンだ。元々デビュー当時から期待を集めた良血馬だったが、地方生え抜きがいきなり統一GⅠで結果を出すのは相当な素質だ。しかもここ2戦は結果が出なかった右回りで結果を出しているだけでなく、まだ成長途上感もある。期待する成長を見せた時、2011年の川崎記念を制したフリオーソ以来遠ざかる、地方所属馬による古馬チャンピオンディスタンスの統一GⅠ制覇という姿が見られるかもしれない。

    ここに古馬路線に本格参戦する明け4歳世代が台頭すれば、2020年とは違った盛り上がりを期待できるはず。黄金世代にいつまでも大きな顔をさせないことが、2021年のダート競馬が盛り上がるカギとなると思っている。

    (詳細なレース結果は地方競馬全国協会のオフィシャルサイト等で確認してください)

    このあと、2020NARグランプリに関するコラムを掲載します。


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