「トキメキア・セカンド」第八章 鋼鉄の魔神(2)
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「トキメキア・セカンド」第八章 鋼鉄の魔神(2)

2015-07-19 18:49
    「残念でございましたな。まさか逃げ出すとは…」
    「…言うことはそれだけか?」
    「…は?」

    と、梅田はとぼけた顔をする。

    「…まあいい。俺は会うことができたからな」
    「ほう…どちらで?」
    「海…だな」
    「…」
    「新しい研究の試作機で、軽く遊んでやったよ」
    「ほう…」

    たぶん海岸での事件は、梅田の耳にも入っているだろう。
    あれだけ派手に暴れたからな…

    「驚いたよ」

    「何をでしょう」
    「あの魔物の顔だ…なぜ黙っていた」
    「…変に混乱させても…と思いまして。お会いする直前にお伝えするつもりでした」
    「…で?なぜ奴が「おやじの顔」を持っているのか…聞き出せたのか?」
    「…いえ…本人も分からないと言っておりました。ですが…これは私の勘ですが、あの魔物は…たける様のお父様とは…違う存在」
    「…それは分かっている。俺も別物と感じた」
    「掘り出して以降、部下の者が魔物の体について調べました。これがそのレポートです」
    「うむ…」

    光の子はレポートに目を下ろす。

    超高層ビルの最上階。
    窓からは都会の街が水平線の向こうまで続いている。

    かねてから一極集中を言われてきた首都だが、光の子の出現でその傾向はさらに強まった。
    純粋な人口の増加に加え、各地方や海外からも人が集まってきた。
    その都市の規模は西方面…富士山麓まで続いている。

    今、まさにその富士山の方向へと夕日が沈んていく。
    山や谷は削り埋められ、アスファルトとコンクリートが侵食を続けていった。
    人口一億に迫るスーパーメガロポリス。
    その中心にそびえ立つランドマークとしての高層ビル。
    夕日が差す部屋の中で、梅田と向かい合わせにソファーに座っている。

    「…なるほどな…」
    「はぁ…結局は、何も分からなかったのです」
    「いや…これだけでも想像はつく。魔物の持っている力がな」
    「長く地中にいたために弱っておりました。その報告はその時のもの」
    「元気になったら超人的な筋力も…か…。正月の報告にも一致する」
    「はい。普通の兵では止められません」
    「この右手の紋章が気になる」

    光の子はレポートにある写真を指で弾いた。

    「あるいは…受体と似たような力かもしれません」
    「…だろうな…確かに田舎で会った二人の女も…妖しい術を使っていたが…これとはまったく別の物だった」
    「その者達には、私は会っておりませんので…何とも…」
    「青いノイズの女…こいつは多少の癒しの力がある」
    「ほう…」
    「だが、俺ほどの力は無いようだった…変化する前まではな…」
    「…変化した?…その女がですか…どう変化したのでしょう?」
    「急激に力が上がった。治癒能力と…防御力…」
    「…ほう…」
    「光の子としての破壊の能力を、まったく受け付けなかった」


    梅田は身を乗り出して聞いている。

    「赤いノイズの女は、俺を殴った奴だ」

    「怪我をされた時の…」
    「そうだ。こいつは手足が欠けていたが…運動能力は凄いものがあった」
    「報告にあった、商店街から逃げた二人の…女の方ですな。最後の目撃では大怪我を負っている様に見えたと」
    「だろう。だが変化した青いノイズの女によって、体は瞬時に復元されたよ」
    「なるほど…まるで…たける様のような…」
    「…ふん…まぁ青いノイズの方はやっかいだ。だが新しい研究の成果もある。次に遅れをとることはないだろう」
    「…その後…その女達の気配は?」
    「…上手にノイズを消している。黒い奴…魔物の方は朝に始末したはずだが…この報告書を読む限りにおいては…まだ生きているかもな」
    「ほう…」
    「まぁ魔物の方は対処可能だ。恐れるに足りん。今朝それを確信できた」
    「では…女の方を探しますか…」

    俺は立ち上がった。

    「…ここではっきり言っておく」
    「…なんでしょう」
    「奴らは悪魔だ」

    「…悪魔…」
    「魔物と、どんな話をしたかは知らないが…我が目的の達成を邪魔する悪魔と認定する」
    「はい…」
    「全国…いや…全世界に告知しろ。決して悪魔と関わってはならぬ」
    「すぐ…準備させましょう」
    「魔物と女達の顔は、俺が画像を作る。行き場を無くし、あぶり出せ。俺が始末をつけよう」
    「かしこまりました」
    梅田…」
    「…はい」
    「俺に賭けろ。悪いことは言わん」
    「もとより」
    「では、頼んだぞ」
    「はい、では早速。松本と打ち合わせを…では…」

    梅田はドアを出て行った。
    窓辺に移動し、暮れゆく町並みを眺める。

    切っても切れず、潰れても復元。
    受体を受けた信者とは、あきらかに違う能力。
    もちろん俺とも違う。
    だが…今日の戦いで、確実にダメージを与える事ができている…と思う。
    力では、圧倒的に俺の方が優っていた。

    この世界の異教徒を撲滅させる戦いなら、俺の力を使う必要もなく終わるだろう。
    だが、あの悪魔達との戦いは…俺以外に闘える奴はいない。
    あの紋章の秘密さえ分かれば…
    俺は最強の下僕を持てる…

    いや…必要は無い!
    俺一人でいい。
    負けるはずがない。
    神が悪魔に負けるなど…あるはずが無いではないか。

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