ひとりスナック一人旅、はじめました7【The Red Strings Club】
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ひとりスナック一人旅、はじめました7【The Red Strings Club】

2018-11-20 17:47
    いらっしゃいませ。The Red Strings Clubへようこそ。
    先週の放送で無事に1周目をクリアしました。ソーシャル・メンタル・ケアをめぐるスーパーコンチネント社との戦いはひとまず幕を閉じたことになります。

    今回はネタバレにもなるクライマックスの記述を避けながら、その直前の部分、主にラディカについての話を小説化して残しておこうと思います。
    また、記事の末尾にお知らせを掲載しておきました。そちらも是非ご覧ください。

    ※この記事は「The Red Strings Club」の二次創作小説です



     受話器からは乱れもしない電子シグナルがかすかに漏れ聞こえていた。サーバーに直接データをアップロード可能な端末である「オフィスSRAID」の起動キーがわからないまま、もう3回はこの無情な音を聞いていた。

    「新たな課題だ。ラディカの生体プロフィールを偽造する必要が出てきた。スーパーコンチネント社のデータストリームにプログラムをアップするには、CEOの署名が必要らしいんだ」

     起動しないコンピューターから気を紛らすために、俺はドノヴァンに話しかけた。腐った町の底にあるレッド・ストリングス・クラブから、ドノヴァンならこの問題を解決するかもしれない。あいつはそういう男だ。

    「そのようだな。まったく用心深い小娘だ。お前がその情報をつかんだ直後にアカラと話をしたんだが……」

     アカラ。このところドノヴァンはまったくアカラに入れ込んでしまっている。俺が店から出ている間、ずっとあの融通のきかないロボ子と話しているのだから無理もない。しかし人間の感情を愛しているはずのドノヴァンが、アンドロイドにそこまで入れ込むのは不自然でもあった。

    「ラディカの声そのものを再現することは難しくても、プログラムに署名するくらいの最低限のデータなら複製できるのではないかということだ」

    「そいつはいい! じゃあ、今すぐデータをくれ」

    「そのためには、お前の方でいくらか仕事をしてもらう必要がある……」

    …………

     ドノヴァンはアカラから耳写しされたような口ぶりで、俺の仕事を説明した。つまりは、社内でラディカに関わる情報を集め、それをドノヴァンもといアカラに転送して偽装するという算段のようだ。しかし、どうにも秘密の多い新CEOの情報がそうも簡単に集まるとは思えなかった。

     ヨハンナ・セプティスの生体データをロードして、人事部の番号を押す。人事部のカレンもまた疑わしい存在だ。社内の何から何までも把握しながら、同時に何一つ特徴を持たないようにデータがクリーニングされている。あるいはカレンなどという人物は……

    「はい、人事部のカレンです。どんなご用件でしょう?」

    「「ええと、カレン、ラディカの存在を貶めるようなデータに心当たりは?」」

    「貶めるってどういう意味かしら?」

     受話器の向こうに動揺が走るかと思ったが、まったく変わらぬトーンで言葉が続いた。彼女はアンドロイドなのだろうか。

    「「彼女はすぐに私たちの正式なCEOになるわ。だから私たちの競合相手につけ込まれないように、弱みとなるようなものはすべて排除しておきたいの。新しいCEOが15歳の少女だと発表すれば、彼らはやっきになって攻撃してくるでしょうからね」」

    「なるほど……」

     カレンは思案を巡らせているようだった。靴紐が変に絡んでいるのに気づいて、軽く左手で払う。勝負の日は決まってこの靴にしていたが、よりにもよってこんな豪雨に当たるとは思わなかった。帰ったら手入れしてやらなければ。

    「でもラディカは非の打ちどころのない人生を送っているわ。犯罪歴もないし、オンラインに足跡も残していない。ただ……」

     ただ?

    「このことは話すべきではないとされているけれど……つまり……前CEOのジャック・E・ゲイナーの死についてよ」

    「彼女の関与を証明する証拠は存在するの?」

    「すべてデータベースの54310Rに保管されてるわ」

     なぜそれをお前が知っている? ただの人事部が知るにはあまりに重大な情報だ。各種の業務責任者を差し置いて、社内でも完全に秘匿されていたはずの殺害の証拠のありかを、人事部の女性一人が知っているのはあまりに異常だ。思わず眉を顰めてしまったが、いまならその動作も気取られずに済む。

    「「どうもありがとう!」」 

     軽い挨拶を交わして通話を落とす。また一つ稲光がきらめいて、街の明かりをかき消した。

     コネクションケーブルをコンピューターに接続し、指定されたデータベースにアクセスする。情報収拾スクリプトを走らせながら、グラスデバイスに次々と映し出される情報を脳に移植したプロセッサが処理していく。
     これまで聞いた話では、前のCEOであるジャック・E・ゲイナーはすでに死亡していて、それを仕掛けたのがラディカではないかと言われていた。ラディカが実権を掌握してからスーパーコンチネント社は活動を強硬化させ、なにか大きな目標達成のために邁進している。あまりの専心ぶりは従業員たちを不安にさせているほどだ。

     だが、表示された真実はそれとは随分違っていた。

    「こいつは驚いたな……」

    「もったいぶってないで、さっさと言えよ」

     音象通信でのみ繋がったドノヴァンが俺を急かした。もっとも、そのリアクションが聴きたくて資料の言葉を一切口に出さなかったのだが。

    「やつは死んでないぞ!」



    ……いやぁ、もちろん僕だって、クライマックスの部分が書きたいところです。
    しかし、このゲームは大変面白かったので、是非ご自身でもプレイしていただきたく思います。

    と、言いつつもお知らせです。


    The Red Strings Club字幕動画化決定
    現在投稿中の「Call of Cthulhuをプレイします」シリーズの投稿が終わったら、「The Red Strings Club」の字幕プレイ動画を投稿します。
    全てのセリフを読めるように字幕として再入力しつつ、こちらで周回的にプレイして、もっとも物語の全容が理解できる道筋を探し出して、それを収録してお届けする予定です。

    すでに攻略チャートの作成を開始して、2周目のプレイを終えております。
    忙しい中ですが、動画の投稿をお楽しみに!


    本日の放送予定
    さてもう一つのお知らせは本日の放送予定です。
    先週の放送でいくつか話題も出たので、また新たなゲームをプレイします。
    消息を絶った船で起きた悲劇を解き明かすミステリーアドベンチャー、
    「Return of the Obra Dinn」をプレイしていきます。

    予定が変更になりました。スナック一人旅3人のスケジュールが合うということで、
    久しぶりに3人での雑談放送をお届けします!


    放送は本日10時からです。お楽しみに!
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