HitoShinkaが映画『アフター・アース』をレビュー
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HitoShinkaが映画『アフター・アース』をレビュー

2018-04-08 13:32
    今回は、アニメ情弱なHitoShinkaが『GODZILLA 怪獣惑星』を記憶レビュー(2)で少し触れた映画『アフター・アース』をレビューしていきたいと思います。
     2013年公開の一応SF。大スターのウィル=スミスが自分で考えた話を息子を主役にすえて撮らせ、自身は劇中でもその「偉大な父親」役に居座ったというコネ臭の強さが叩きどころとなっていました。あと「シャマランまたクソ撮ったよ」とも。
     ついでながら、米国最大級のカルト教団・サイエントロジー教会の教えに世界観が似ているという指摘もあるようです。まあ、あそこ教祖がSF作家だし多少はね?

     では早速見ていきましょう。
     なんか森の中で倒れている少年――ウィル=スミスの息子であるジェイデン=スミス君。作中ではキタイ=レイジという少年兵士です。
     彼のモノローグがざっくり世界観を説明してくれます。
     地球の話は知ってる
     楽園だったけど――人類が滅ぼした
     ここで災害の資料映像。







     劇場とNetflixで見たときには津波の場面もこの中にあったんですが、DVDではカットされている模様。東日本大震災の2年後ですからね。別に津波は人類のせいじゃないと気付いたからとかじゃないと思います。竜巻は入ったままだし。
    1000年前に結成されたレンジャー部隊は地球脱出のための世界規模の軍隊だ
    人類が向かった新しい星はノヴァ・プライム
    そこには異星人がいた
    異星人は“アーサ”を放った
    人間を殺す怪物だ
    アーサに目はないが怯えた人間のフェロモンを嗅ぎ取って見つける
    再び人類は絶滅に瀕し再びレンジャーに頼った
    人類を救ったのは総司令官のサイファ・レイジ
    最初の”ゴースト”だ 
    恐怖をまったく感じない彼はアーサに感知されない
    この現象を”幽霊化(ゴースティング)”と呼ぶ
     えらい不自由なモンスターです。
     フェロモン出さなければいいなら、宇宙服着っぱなしなだけで対応できるだろというツッコミは却下です(テレパシーとか言ってりゃいいのに)。
     本編で主人公の少年が地球を冒険するときでも、着ているSF便利スーツは擬態で色が自動で変わったり空を飛べたりするんですが、全身を覆うという発想は頑なにありません。しょうがないのです。でないと人類を絶滅の危機においやった恐るべきモンスターが何もできなくなるのです。
     ちなみにどういうわけか銃器もなく、武器は剣に変形する棒です。十徳ナイフと如意棒を足して割ったようなもんだと思ってください。これで割と簡単にアーサをぶった斬れます。

     で、なんやかんやあって↑の総司令官とその息子の主人公君が、宇宙船の事故にあって緊急ワープの果てに手近の惑星に不時着します。そこは”クラス1隔離惑星”と化した地球。生き残りは親子水入らずの2人と輸送中の”アーサ”1匹。親父は負傷。
     宇宙船が壊れたときにSOS発信機が飛んでってしまったので、100㎞ほど歩いて少年が拾いに行くというお話です。勿論アーサは逃げ出しており、主人公を襲ってきます。

     人類が脱出した未来の地球で、戻って来た人間がモンスターと戦う、という点ではアニメゴジラの先行作品です。とはいえ敵はアーサだけではないらしく、父は息子にこう警告。



     人類がいなくなってから人類を殺すように進化する生物も意味不明ですし、地球生物との「戦い」と呼べるシーンは鳥のヒナをジャガー(?)から助けた一戦だけですが。
     この星の気温は変わりやすくて危険だ
     どこも夜は完全に凍りつく
     温かい場所は――地熱が集中する発熱地だ
     そこなら凍えない 
     夜になる前に 必ずそこにたどり着け
     いやそうはならんやろ。
     人間の環境破壊の結果……なんだよね? 何をやったんでしょうか人類は。
     
     現実にも砂漠地方なんかは昼夜の寒暖差が激しいですが、その理由は
      1.熱の出入りを遮るものがないこと。
      2.比熱の大きい水分がほぼないこと。
     が挙げられます。
     アフター・アースはどちらかというと熱帯雨林地方みたいで、動植物の外見は現代のものとあまり変わりませんが。父親の発言に反し、動物達もやたらめったら人間に襲い掛かってきたりもしません。
     
     ちなみに、人間はアフター・アースでは呼吸できません。
     酸素がないわけではなく、あるのに素では呼吸できないという謎大気です。でも宇宙服なんか着たら当然アーサが活躍できないわけで、呼吸薬というものが存在します。24時間に1回これを喘息の吸入器みたいに使う必要があるらしいです。



     ビスケットか。
     いえいえ、1000年後の技術で作られた呼吸薬です。
     旅立つ主人公。司令官は宇宙船のメカを操作し、なんか触手?が3本ほどある空飛ぶスパイロボット的なものを多数打ち上げます。こいつらが散らばって、周囲の地形とか状況とか動物がいるかどうかとかのデータを全部送ってくれます。主人公君ではなく司令官に。そのデータでほぼ何でも知ってる状態の司令官=ウィル・スミス=このお話の作者が、神様が啓示を与えるごとく息子にどうしろこうしろと命令を出していく。こういう構造になっています。
     作者の願望が見える気がしますが、このスパイロボにSOS発信機を取って来てもらうわけにはいかないんでしょうか。

     そして旅立った主人公。
     そこには恐るべきクラス1隔離惑星の、戦慄すべき光景が広がっていました。

    (群れはたぶん牛)

     目に優しいっすね。

     さて、第一の敵が現れます。
    「西から生き物がくるぞ」と司令官は警告し、主人公は警戒します(西だと言ってるのにやたらキョロキョロします)。
     そして左側から突然現われたのは――ただのサル。
     ということは主人公は北を警戒してたのか。西だっつてんだろ信用ねーな親父。
    絶対に動くんじゃない
    自分の力を認識しろ
    自力で乗り越えろ
     主人公は先制攻撃に出ました。信用ねーな親父。
     かといってSF武器も使わず、石ころを投げつけます。なんかいつの間にかいた群れに追いかけられ、主人公は一目散に逃げ出して、川に飛び込みました。
     緊張の余り命令に背いたっぽい描写ですが、後半のクソ抽象的な命令のせいだと思います。
     サルたちは諦めて帰っていきました。人類を殺すため1000年分進化したアフター・サルは、現実のサルと違って泳げなかったようです。

     川から上がって一段落した後、重大な事実が発覚。
     なんと呼吸薬が5個中2個も砕けていました。


     ビスケットか(強度が)。
     ちゃんとケースに入れた状態で、ちょっと走って泳いだだけです。
     
      わりゆく時代とともに、
        失われてゆく伝統の技術…… 


     地層の中でゆっくりと熟成された石油。その自然の恵みから造りあげたプラスチック部品を、工場でひとつひとつ丁寧に組み上げる機械仕事……そうやって、およそ千年前の吸入器(喘息用)は作られていました。
     鞄に入れたまま走っても当然壊れない、しっかりした造り。
     31世紀の今、そんな昔ながらの仕事が求められているのかもしれません……。

     主人公は呼吸薬が壊れたことを隠そうとしますがバレます。
     ちょうど、主人公が断崖絶壁の上に出たところでした。予定していた「地上ルート」では、どうしても呼吸薬不足。「空中ルート」なら辛うじて生存可能らしいですが、司令は諦めて帰還を指示します(そうするとどうしても詰むんですが)が、主人公はこれを固辞。ばっと断崖から身を投げます。これが空中ルートのようです。
     ここで初めて「このスーツは飛べる」ということが判明します。しかも徒歩とは比べ物にならないスピードで。なぜ最初から飛ばない。
     まず主人公、ちょっと前は「スーツの色変わったけど何これ何これ」って感じで、機能を理解してなかったんですけどね。空中ルートの説明何も受けてないし。きっと画面外で説明されてたんでしょうね。
     でも、そもそも地上ルート予定で歩いてたのになぜ断崖に出たのかは謎のままです。

     で、このあと猛禽類につかまって、その巣に行くんですけどジャガーみたいなのが来てヒナを守ろうとして、その恩返しで夜の寒さから助けてもらうとかのエピソードが挟まりまして、
    ついに発信機のある壊れた宇宙船の片割れに辿り着きます。

     しかし発信機が通じません。
     主人公のいる辺りの上空にはイオン層があって通信障害が生じているんだそうです。これ、宇宙の彼方まで超光速通信する装置だよね? どんな環境の星で使わなきゃいけないか分からない宇宙レンジャーのSOS発信機なんだよね?
     
     そもそも地球は回ってるわけですが、助けを求めるべき連絡先は本当に「上」の方向にいるんでしょうか?
     もしそうなら自転をしばらく待ってれば連絡先は「横」になるわけで、イオン層を回避して通信できそうな気がします。司令は「その辺」「お前の真上」という表現をしており、地球全体を覆ってるわけではなさそうなんですが。

     しかし彼らの選んだ解決策は、近くの山の上から発信するというものでした。
     その山に登る途中でアーサが襲ってきて、主人公はもちろん”幽霊化”の境地に目覚めてアーサを普通に倒し、頂上で通信してハッピーエンドです。
     なお通信機は途中で岩にぶつかったりアーサに蹴っ飛ばされたりしますが、もちろん無事。呼吸薬にこの頑丈さがあれば……。

     まとめるとこの映画の舞台「アフター・アース」は、人類の環境破壊によって
    ・大気は酸素はあるけど普通には呼吸できず、
    ・1000年後のスーパーSOS発信機が効かない超電波妨害層があり、
    ・夜の半分は10分で5℃のペースで気温低下して凍り付き、
    ・にもかかわらず動植物の見た目はほとんど変わらず、
    ・むしろアマゾンのごとく緑でいっぱいで、
    ・人類がいなくなってから人類を殺すために生物が進化したにもかかわらず
    ・1000年前も普通に肉食獣だった連中しか襲ってこない

     という感じになっています。
     全体としては、演技とかCGの美しさについてはそんなに文句がないんですよ。ただ、師匠の教えを思い出して悟りをキメただけで、主人公があっさり敵をやっつけちゃうというカンフー映画の展開ですね。それと舞台の壮大さがチグハグなわけです。
     ようするにカンフー映画並みの主人公の成長譚という物語スケールに合わせて、出て来るモンスターや未来技術の方をしょぼめに(かつ結構デタラメに)修正していったために、おかしなことになっているわけです。

     そういうわけで結構さんたんたることになったこの舞台装置を、「環境破壊の結果としての1000年後の地球」ということにしたウィル=スミスに↓の言葉を送りたいと思います。


    (アフィリエイト画像です。)






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