HitoShinkaが原作との落差世界一のクソ映画をレビュー(2)
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

HitoShinkaが原作との落差世界一のクソ映画をレビュー(2)

2018-06-23 18:27

     ファンタージエンでは、早く不良どもを止めろと急かす小人たちに、バスチアンは「だめだよ、本がないと戻れないよ」と答えます。
     前の2回はどうやって戻ったのか思い出せ。いつのまに記憶と引き換えに願い事したんだ。
    (エンギウック)異なる世界を移動するには他にひとつだけ方法がある アウリンじゃよ
    (ウルグル)アウリンは象牙の塔の女王様がお持ちだ ほれ、銀の都へ出発だよ!
     前作で人間界へのワープゾーンだった滝を思い出さないフリをしたり、銀の都に象牙の塔があるという地味な設定変更に気を取り直したりしていると、上空から情けない泣き言が聞こえてきます。
     (注:今作で引用している台詞は吹き替えだったり字幕だったりしていますが、面白いと思った方を採用しております。御了承下さい。)
     うおおお~ もうやだ~ 絶対にやだ~ これが最後だ~ これからは誰がなんといったって空を飛ぶもんか~
     バスチアン達が空を見上げると、泣き言の主は幸いの竜ファルコンでした。

     前回冒頭、原作『はてしない物語』は世界的な神作であると述べましたが、正直言って、この原作も相当な御都合主義的偶然で話が進むことが多々あります。
     たとえばアトレーユは、ファンタージエンを救う方法を知るには、“南のお告げ所”に行かなければならないが、そのお告げ所はアトレーユが一生旅しても辿り着けない遠方にあるという絶望的な情報を聞きます。ファンタージエンは今にも滅びつつあるというのに。さらに目の前には強力なモンスターが迫っており絶体絶命。
     ところがこのシーンで、モンスターは事情を聞くと大意つぎのような事を教えてくれます。

     モンスター「そうか大変やな。ところでここだけの話だが、俺の毒を受けると一回だけどこへでも瞬間移動できるようになる副作用があるぞ
     アトレーユ「まじか。頼むわ」

     そして南のお告げ所にワープ。
     しかし着いたはいいものの、毒は普通に毒なのでアトレーユは死にかけています。ところがお告げ所の近くに住んでいる小人のお婆さんが医術に秀でており、ボランティア精神でもってアトレーユを助け、毒も治療してくれるのです。アトレーユはそんな人がいることは事前には全く知りません。
     しかもその旦那さんがお告げ所の厳しい試練について研究している専門家で、アドバイスまでしてくれるのです。

     普通なら本をそっと閉じるレベルの御都合主義です。
     が、こういうことが起こる理由が作中にきちんとあるのです。
     それが有名なキャラクター、《幸いの竜》フッフールです。
    自分自身のほか周囲にいる人々にも桁外れの幸運をもたらすとされるドラゴンで、彼がアトレーユの相棒でいる限り、どんな都合のいい偶然も彼のお陰という事になるわけです。
     その姿はこう描写されています。
    幸いの竜というのは、ファンタージエン国の動物の中でも、最も珍しいものの一つだった。(中略)幸いの竜は大気と熱とあふれんばかりの歓びの子だった。並はずれて大きな体にもかかわらず、夏空に浮かぶ雲のようにかろやかなので、飛翔のための翼はいらなかった。水の中の魚のように大空を泳ぐさまは、地上から見ていると、ゆっくりと通り過ぎる稲妻のようだった。中でも一番すばらしいのは、かれらの歌声だった。大きな鐘のどよめきにも似た見事な声で、静かにはなすときにはその鐘の音がどこか遠くからひびいてくるようだった。かれらのうたうのを一度でも聞くことのできたものは生涯忘れることができず、孫子の代までも語り伝えるという。
     どんなに「詰んだ」と思われる状況でも希望を捨てずに幸運を信じることを呼びかけ、実際に幸運をはこんでくれる。決して高圧的になることがないながらも強大な味方。それが幸いの竜フッフールでした。



     ……という存在が、なぜか映画では顔は犬に、名前はハヤブサにされました。それがこのファルコン。
     こんな泣き言は原作はもちろん1・2でも言ったことがありません。飛ぶことへの希望を捨て去っている幸いの竜などというのは、ファンタージエン国の動物の中でも、最も珍しいものの一つと言えます。

     しかしまあ、こんなのに成り果てても飛べることは飛べるのでバスチアンはファルコンに降りてきてくれるよう呼びかけます。ですが「そんなところには降りられない」と拒否。
    (ファルコン)滑走路がないじゃないか
     そういうのいいから。
    (バスチアン)何言ってるんだ! 君はラッキードラゴンじゃないか!
     バスチアンよく言った。
     この映画、ファンタージエンの連中がやたら人間界の現代ネタを口にします。いや、そういう面白さもあるとは思いますし、そもそも設定上ファンタージエンは人間世界のあらゆるファンタジーの国なのですから、現代風の物語だってあっておかしくないわけです。
     ですがこういう方向のギャグはこれまでにシリーズになく、幻想的で神秘的な雰囲気はぶちこわしになっています。他にも下のような台詞が目白押しです。
    (ロックバイターの奥さん)ジュニア ランチの前にロックはダメよ

    (エンギウック)ドラゴンなもんか 育ち過ぎたプードルさ

    (バークトロル)俺が幸運のドラゴンならラスベガスに ひとっ飛び

    (エンギウック)↓
     ところで女王は銀の都から避難し、さすらい山の古老のいる洞窟に行っていました。銀の都のシーンは予算不足のためかありません。ファルコンが口頭で「ひどいありさま」だったと教えてくれるだけです。銀の都は2に出てきたので、その画像加工とか最悪流用とか無理だったんでしょうか。
     古老は女王を歓待します。
    (古老)女王様! どうぞ どうぞようこそお越しで 光栄に存じます おそれ多いことで……
    原作の反応↓
    モドレ! モドレ! 帰レ! 帰レ!
    イカナル時ニモ イカナル所デモ、
    君ガワタシニアウコトハナラヌ、ヤメヨ!
    君ニコソ ソシテ 君ニノミ、
    ワタシハコノ道ヲコバマネバナラヌ。
    モドレ! ワタシノコトバニシタガエ!
    君ガ古老ノワタシニ会エバ、
    起コッテハナラヌコトガ 起コル。
    始メガ終ワリヲサガシダシテシマウ。
    モドレ! モドレ! 登ルノヲヤメヨ!
    サモナクバ 君ハ タダ、
    カツテナイ混乱ニ トウタツスルノミ!
     誰も女王に二度会うことはできない、とか、上述の通りさすらい山の古老と女王は決して出会ってはならない、とかいった原作設定はなかったことになっています。あまり目くじらを立てず、原作との違いを思い出しながら原作をなつかしむのが、この映画を少しは楽しむコツです。
     女王に追いついたバスチアンはアウリンを受け取り、人間界に戻れるよう願い事をかけます。がどうも出力が足りないらしく、パータッチの要領で手を繋いで願うと……他の連中も人間界にワープしてしまいました。

     人間界に行ったメンバーと登場過去作は次のとおりです。注:アトレーユは出ません。
      ・幸いの竜ファルコン(シリーズ皆勤)
      ・地霊小人エンギウックとウルグルの夫婦(原作と1)
      ・バークトロル(原作のみ。樹皮トロルのこと)
      ・ロックバイターJr.(原作の岩喰い男ピョルンラハツァルクの息子。2に登場)

     しかも散り散りになってしまい、困ったことにアウリンでファンタージエンを戻す前に集合させないと、彼らは消えてしまうことが分かりました。
     
     さて彼らが何をしていたかというと、ファルコンはどっかの空で飛行機を仲間と思って話しかけていました。


    (ファルコン)失礼ですが奥様 ここはどこですか
           道に迷ってしまったんです
     滑走路は知ってても飛行機は知らないファルコン。
     一方、バークトロルは普通の木を仲間と思って返事しないただの木に話し掛けたり、ロックバイターJrがラシュモア山で大統領の顔を自分のおじさんと間違えたりと、現代に紛れ込んだ異世界人ギャグに勤しんでおります。ファルコンはチャイナタウンの龍舞に欲情もしています。

     ようするに、この映画におけるファンタジーの住人たちは、ファンタージエンでは「異世界人が平気で現代ネタを口にするというギャグ」をやり、現代に来てからは「異世界人が現代のことを知らずにズレたことをするというギャグ」をやっているわけです。
     同じ作品内で節操なくこれらを織り交ぜると、こういう頓珍漢なことになります。これから異世界モノを書こうとしているなろう作家の皆さんは気をつけましょう
     ていうかバークトロルが普通の木を知らないとか、Jrがおじさんだと思ってるはずの大統領の顔の岩を喰おうとするとか。ファンタージエン人としてもおかしな描写が散見されます。ファンタージエンに普通の木もいくらでもあるし、岩喰い男は岩を食うだけであって共食いはしないと思うんですがね。

     ともあれファルコンが見つけて来たり、荷物に紛れ込んで送られてきたりと、なんとか全員がバスチアンの家まで集まることができました。
     そして郵便物に隠れて配達されてきたエンギウックとウルグルの夫婦隠者を、不測の事態が襲います。

    (エ)早く開けてくれ! もう我慢できない! もれちゃうよ~
       ここにはトイレがないんじゃ
    (ウ)もれちゃうよ~!
    (エ)開けてくれ早く! はやくはやく~! 
     しかし妹がアウリンを持って行ってしまいました。
     尿意を訴える夫婦隠者を箱に入れて持ったまま、奪還に急ぐバスチアンたち。エンギウックとウルグルはそのまま箱の中でトイレを要求し続けることになります。
     大変申し上げにくい事実なのですが、彼らはひたすらエンディングまでこれを天丼し続けます。それ以外は全編を通してクソの役にも立ちません。これが夫婦隠者の今作での役割なのです。 
     
     そしてアウリンが願い事を叶えてくれると知った妹は、学校帰りにショッピングセンターでタダ買いを始めます(別に記憶は失いません)、なおかつ、不良にアウリンを盗まれてしまいます。
     始まるセンター内での追っかけっこ。
     さて、ファンタジーな存在たちは、この攻防にどのような特殊能力を発揮するのでしょうか。あなたならどんな展開を準備します? 次から選んでみてください。
    1.ハンサムな岩喰い男のJrは設定を活かし、コンクリート壁を食べるなどして道を開く。
    2.同じくJrが怪力で不良たちをやっつける。
    3.ハンサムなエンギウック夫婦が小さな体を活かしてアウリンを盗み返す。
    4.ハンサムなバークトロルが他の木と話せることにし、不良たちの居場所を聞き出す。
    5.ハンサムなファルコンが設定を活かして運招き能力を発揮し、ピタゴラスイッチ的アクシンデントを経てアウリンが戻る。
     正解⇒ 6.活躍できない。現実は非情である。
     現実はともかくファンタジー映画まで非情だったとは知りませんでした。
     そもそも真面目に追いかけっこをしてるっぽいのが不良とバスチアン兄妹だけ。あとは適当にうろついてるか箱の中で便所に行きたがってます。バークトロルだけは少し真面目ですが、Jrのお守りをさせられているので結局活躍できません。
     
     しかしまあ、なんとかアウリン奪還は成りましたが、不良リーダーは「来いよ! アウリンなんか捨ててかかってこい!」とバスチアンを挑発します。にらみあう両雄的な何か。
     ですがここで、妹が本に不思議な記述があるのを発見し、読み上げます。
    (妹)バスチアンはアウリンを置いた。

       こうしていよいよ、自慢のカラテを見せるときが来た。

       「ハハハ自慢のカラテ?」と言ってスリップ(不良ボス)は笑った。
       バスチアンは円を描いて攻撃の機会を狙った。

       その瞬間、バスチアンはまるでブルース・リー、スティーブン・セガール、
       ジャン・クロード・ヴァンダムの力を兼ね備えたかのようであった。   

       バスチアンは攻撃を防ぐと反撃を開始した。
       そしてスリップを蹴り飛ばした!
       そしてバスチアンは、必殺の飛び蹴りをドッグ(不良グループでボス以外に
       唯一台詞がある人。ボスにバカにされる役)にお見舞いした。
     実際にもバスチアンはこの通りに敵を倒し、この後ハッピーエンドとなります。
     バスチアンにカラテ熟練者のパワーが宿ったことは誰かがアウリンに願ったわけでもなく、本に書かれていたことは読んだ妹にも意外だったのですが、どういう理屈でこれが起こったことになってるのかは、全く説明されません。些細なことですね。

     感動()のエンディングです。バスチアンはついに最後の冒険に勝利し、ファンタージエンに平和が戻ったのです。
     それぞれの日常に帰るファンタージエンの生き物たち。(の一例↙)
     




     家庭でも男女別なのか? とか枝葉末節に突っ込む気にもなりません。

     ファンタジー小説の世界最高傑作といっても過言ではない『はてしない物語』。その映画3部作のラストシーンは、老人が必死で便所に駆け込むシーンで締めくくられることになりました。
     ああ、あと現代で不良たちが優等生に現実改変されて出て来るシーンとかあるか。



     めでたし。めでたし。




     ……ちなみにこの『はてしない物語』には、のちに作られた『ネバーエンディング・ストーリー~遥かなる冒険~』という別シリーズの映像作品もあるのです――が、それはまた別の物語、いつかまた別のときにはなすことにしましょう。
    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。