『ネトウヨ兄のデマを正す妹ゲーム』をHitoShinkaがレビュー(1)
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『ネトウヨ兄のデマを正す妹ゲーム』をHitoShinkaがレビュー(1)

2018-09-06 09:42

     こんなものがツイッターで流れて来ました。

     というわけで、やってみることにします。デマに突っ込みいれるコンテンツって好きなんですよ。早速試してみましょう。
     製作者のツイッターアイコンに比べ、えらく懐かしい絵柄の妹がこんなことを言ってきます。
    前クラスで、私のお兄ちゃんがネトウヨかって話になってたの。恥ずかしい……。今から問題出して、外で質問された時上手く答えられるか試すから! いい?
     そんなことが露呈する過程が気になりますが。本人が特定されてしまったのか、妹がバラしているのか。バラしておいて恥ずかしがっているなら妹も理不尽です。と思ってたら数回目にこんなバージョンが。
    まーたお兄ちゃん、ツイッターで変なデマRTしてたでしょ。リア垢でそういう恥ずかしいことはやめて! これから質問することにちゃんと答えられなかったら、フォロー外すからね!
     リア垢か……。
     これはクイズゲームなのですが、問題内容はこの出題者が普段ツイートしていることを問題にしているようです。
     ところで筆者はネトウヨと呼ばれる人々についてあまり詳しくありません。たまたま自分が知っていることについてネトウヨらしき人が騒いでいるとき「何バカなこと言ってんだ?」と思うことがあったくらいです。

     そこで本稿の方針としては、自分でネットをカンニングしながら問題を解いていき、それがどうネトウヨと関係あるのかは後からbotを直接カンニングするという方法で、分かる範囲で解説実況していきたいと思います。カンニングしながらやれるのは回答時間制限がないからです。
     とりあえず、順番にやっていきましょう。
    問題1 次のうち、沿岸国にしか認められていないものはどれか
    1 排他的経済水域(EEZ)での海洋の科学的調査に関する管轄権
    2 接続海域での航行の自由
    3 排他的経済水域(EEZ)での海底パイプラインの敷設
     妹のボイスは「普通にちゃんと勉強してれば分かる」などと言ってたのですが、結構それなりの問題です。さすがに2を選ぶ人は、領海と接続水域・経済水域の違いが分かっていればいないと思われます。普通の人は1か3で迷うのではないでしょうか。
     海洋法に関する国際連合条約に、こう書かれています。
    第五十八条 排他的経済水域における他の国の権利及び義務
    1 すベての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、この条約の関連する規定に定めるところにより、第八十七条に定める航行及び上空飛行の自由並びに海底電線及び海底パイプラインの敷設の自由並びにこれらの自由に関連し及びこの条約のその他の規定と両立するその他の国際的に適法な海洋の利用(船舶及び航空機の運航並びに海底電線及び海底パイプラインの運用に係る海洋の利用等)の自由を享有する。
     パイプラインおk。これで正解は1と分かりましたが、ということはネトウヨは2を誤って主張したということなのか? botの方を見てみました。
     なるほど、違法扱いしていた人がいたのでしょう。とはいえ、これだけだと件のそのネトウヨが「宮古海峡がEEZでなく領海だと思っていた」のか「EEZを他国船が航行できないと思っていた」のかは分かりませんが。

    問題2 パチンコチェーンストア協会の政治分野アドバイザー議員の、各党ごとの人数として、正しいものを選べ。
    1 自民24人、維新7人、国民民主9人、立憲民主3人、無所属3人、共産党0人
    2 自民20人、維新11人、国民民主7人、立憲民主4人、無所属2人、共産党2人
    3 自民14人、維新8人、国民民主9人、立憲民主6人、無所属4人、共産党5人
     これは何が言いたいのか分かりやすいですね。
     いわゆるネトウヨがパチンコを目の敵にしてることぐらいは筆者でも知ってます(その割に実際の自民党は、カジノ法案でも分かるように比較的ギャンブルに寛容であることも。ついでながら筆者は、馬鹿がギャンブルで身を持ち崩すのは自業自得と思っており、カジノ法案には特に文句ありません)。
     このゲームはネトウヨを正したがっているわけですから、自民党が一番多いのが正解っぽいと思いました。暫定的に答えを1と見当つけときましょう。
     で、調べるとパチンコチェーンストア協会の理事・会員リストなるものが普通にネットで公開されてました。これの1番下に「政治分野アドバイザー」のリスト(最終更新2018年8月27日)で、カンニングの結果1の通り。このゲーム、ちゃんと新しいデータを使ってるんですね。
     なおツイッター。
     出題者の意図は「自民党議員が多い」より「共産党議員がいない」事だったようです。

    問題3 次のうち、2017年度について日本が世界で2位なのは?
    1 ユニセフへの国民一人当たりの拠出額
    2 政府など公的部門から ユニセフ予算への日本政府の拠出額
    3 各国のユニセフ国内委員会のうち、日本ユニセフ協会の拠出額
     知らん。
     と言うかどれが2位だったらネトウヨ的にどうなのかも分からん!
     なので、選択肢を直接検索にぶち込むことにしました……ら、意外とあっさり見つかったわw 日本ユニセフ協会に統計が載ってました。
     1の「国民ひとり当たり拠出額」は16位。2の「公的部門からの拠出額」は7位。3の「ユニセフ協会の拠出額」がアメリカに次いで2位となっています。正解は3。
     ちなみにどの項目もアメリカはまあ当然として、ヨーロッパがやたら強いです。とくに一人当たり拠出額はノルウェーはじめ北欧最強状態となっています。
     ……でもネトウヨや出題者的にそれがどうしたのか。出題者のbotでユニセフが出て来るのはこれだけでした。
     募金の中抜きという話なら、何位かは直接の関係ないんじゃないでしょうか……? とはいえ抜いておいて世界2位だったらそれも凄いですけど。
     ともかく日本ユニセフ協会は収支決算もサイトで公開してます。概要の一部を紹介しますと、こうなってます。

     赤で示したように、「受取寄付金・募金」17,947,894,254円に対し、「本部拠出金」14,700,000,000円は確かに約82%です。残りの額は確かに「啓発宣伝事業費」(刊行物やシンポジウム、広報など)、や「募金活動事業費」などに使われています。これらを「自分で使っている」という意味なら、強いて言えば中抜きと言えるかもしれません。
     しかし常識的に考えて、これだけ大きな組織が動くには少なくないお金を必要とするのが当たり前で、当然職員だってボランティアで済むわけがありません。募金する人達だって、団体自体の活動費に全く使われないと考えてるわけじゃないでしょう。それに元のページではこの表の下に各項の用途が列挙してありますが、読む限りではそこまで不当なことに使ってるようにも見えません。
     また、いくらなんでも「本部業務分担金」(ユニセフ本部との共同キャンペーンなどの分担金)は拠出金と同じように見るべきではないでしょうか。これを足すと86%が本部と使ってるお金です。14%(四捨五入しても2割にならない)しかなく、それ以外の用途も不正でないのであれば、「2割が中抜き」というのはおかしいと私も思います。

     ……まあしかし、私もユニセフではないですが赤十字に、以前に勤めていた職場からの寄付金を持って行ったことがあるんですが。
     赤十字でもやはりパンフとかに使うお金と、実際に途上国などに送る分とのバランスというのは苦慮しておられると聞きました。あまり節約しても宣伝効果が出ないし、かといってそっちに使い過ぎても批判も来るし、じっさい本末転倒にもなりかねないと。

    問題4 ポパーが『開かれた社会とその敵』で言うように、「自由のパラドックス」とは「無制限な自由は、自由自身を殺してしまう」ということである。同じことは「寛容」についても言える。次の記述のうち、不適切なものを選べ。
    1 プラトンは、民主制(多数派支配)のパラドックスとして、「多数派自身が、専制君主が支配すべきと決定するかもしれない」と論じている
    2 ポパーによれば、この種のパラドックスは避けることができる。それは、「全ての寛容な人々に対して寛容である政府」を要求することである
    3 ポパーによれば、不寛容な者は合理的議論そのものを非難してくるので、つねに力づくででも抑え込むことが肝要である
     ポパーとはイギリスの哲学者カール・ライムント・ポパー(1902~1994)です。
     なんじゃこれと思うかもしれませんが、これはアレです。ニコニコニュースとかで差別事件のニュースが出て来ると、絶対コメ欄に「嫌いだという自由も認めろ!」と言い出す手合いが出て来るじゃないですか。あのタイプがインテリを装おうとするときに、ポパーの「寛容のパラドックス」を出してくることがあるんですね。これは筆者でもたまに見たことがあります。
     寛容のパラドックス――もし無制限に寛容であれば、寛容自身が寛容を殺してしまう――つまり不寛容な者が気に入らない者に好きなだけ迫害を加えるのを放置しなければなくなる。そうすると結局社会から寛容が失われてしまうということについて、確かにポパーは言及しています。
     しかしポパーが本当に言いたいのはその次です。だから「寛容な者に寛容を、不寛容な者に不寛容を」もってするのがバランスの取れた社会だ、とポパーは言っているのです。ネトウヨ?は前振りの部分だけ引用して、「寛容なんて矛盾だ!えらい人もそう言ってたんだ!」と叫んでいるに過ぎないのです。

     

     というわけでポパーが言いたかったのは2で、誤った選択肢は3ということになります。

     ちなみに1の民主制のパラドックスについては有名ですね。
     古代ギリシアの都市国家ではしばしば扇動家が大衆的人気を博して、素晴らしい人を処刑したり、独裁者になりおおせるということがありました。プラトンは師匠のソクラテスをアテネ民主制のもとで処刑され、「大衆なんてすぐ暴走するし、人気取りの上手い奴(僭主)にコロコロ騙されるバカでゴミでカスだ」と思いました。そこで小数の賢者様が国を統治する「哲人政治」を理想としたのです。
     のちにアテネでは「僭主になりそうな奴」を投票で決めて追放するオストラキスモス(陶片追放)が導入されました。

     なお、この問題については出題者のツイートに該当するものが見当たりませんでした。



     さて、ワンクリア8問なのでここで半分です。
     ここまでと、事前に何度かプレイした感想なんですが

    ・妹のボイスに反して、一般国民の皆さんが「普通に勉強してればできる」範囲はかなり超えてる気がする。
    ・不正解のとき、正解がどれだったのかは示されない仕様。
    ・どういう「ネトウヨのデマ」を訂正したいのか正解しても分かりづらい問題も散見される(逆にそれだけで答えの検討がついても簡単になってしまうでしょうけど)。
    ・総問題数は多くないようで、2回目3回目くらいで普通に被った問題が何個も出る。

     といったところでしょうか。

    (続く)
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