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記事 21件
  • 石原莞爾と東條英機:その7(2,075字)

    2023-07-17 06:00  
    110pt
    石原莞爾は1902年、13歳のときに仙台陸軍地方幼年学校に試験を受けて合格し、編入する。
    仙台陸軍地方幼年学校は、それより5年前の1897年にできたばかりだった。陸軍「地方」幼年学校は、仙台のみならず名古屋、大阪、広島、熊本にあり、東京は陸軍「中央」幼年学校と呼ばれた。地方で優等の者は、やがて中央に上がるようなシステムだった。
    この学校の目的は、陸軍の幹部候補生を幼少時から養成することに他ならない。全寮制で、各地方の優秀な子供たちが集められた。そんな、超エリートの集団だった。
    当時、仙台陸軍地方幼年学校の生徒数は全部合わせて50名ほど。東北各地から優秀な子供たちが集められていたが、その中で完爾は、運動こそ相変わらず苦手だったものの、学業はやはり抜群の成績を残した。完爾は、東北のトップ集団の中でも、頭脳だけは群を抜いていたのである。
    1905年、16歳のときに晴れて陸軍中央幼年学校に進む。い

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  • 庭について:その38(1,718字)

    2023-07-14 06:00  
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    ハロルド・ペートゥは1899年、45歳のときにアイフォード・マナー・ガーデンを購入する。それから78歳で死ぬまでの34年間、ここに住み、庭を作り続けた。
    その設計思想のベースには、アーツ・アンド・クラフツ運動がある。つまり醜い工業製品ではなく、美しい工芸作品を用いようというものだ。あるいは、名もなき職人の作った何気ない作品の中に、静かな美しさを見出そうというものである。
    ペートゥは、収集家の側面も持っていた。特に美しい工芸品を集めるのが趣味だった。そのため、アイフォード・マナーは、彼の建築作品でもあると同時に、一種の美術館でもあった。
    ペートゥは旅行好きで、毎年のように海外に出かけていた。世界中の数多くの国を回り、日本にも訪れたという。そうして、中国の庭や日本の庭にも独特の美しさを見出した。当時野ヨーロッパでは東アジアの美術品がブームだったので、その流れに乗ったということもあった。
    しかし

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  • お金にまつわる思考実験:その37(1,719字)

    2023-07-13 06:00  
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    今回でこの連載は最終回とする。
    人類史を紐解くと、お金と「道」とは、きわめて深い関係があることが分かった。道の発展こそが、経済を発展させる。そのため、「これからの道の発展」を読み解ければ、これからの経済がどう発展するかも読み解けるだろう。
    そうなると、一にも二にも道についての知見を深めることが重要になる。寡聞にして「道学」というものがあるのかどうかは分からないが、それでも学ぶ方法はいくつもある。まず都市計画的なアプローチがあるし、土木工学的にも知る必要がある。あるいは人間工学や自動車などからも、道を読み解くことができるだろう。
    さらに、道というとローマ街道や日本の五街道など、歴史とも深い相関関係にある。特にローマと江戸は、政治が積極的に道に介入し、それによって社会を大きく変革させた代表的な事例だ。
    だから、ローマ史や江戸史を「道」という視点から概観するのも面白い。さらに、この両時代の共通点

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  • [Q&A]山下達郎氏の発言についてどう思うか?(2,703字)

    2023-07-12 06:00  
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    1
    [質問]
    私は昔から人とのコミュニケーションが苦手です。理由はいろいろあるのですが、1番大きい理由は、相手に合わせての話題の調整ができないからです。相手と共通の話題があったとしても、どれを話したらいいのか、どれを話したら相手が不快な気持ちになるのかの判断ができません。なので失敗を恐れて、自分から話しかけることに躊躇してしまいます。
    けれど、人と交流したい欲求はとてもあるので、このことを克服したいです。ハックルさん、教えていただけると嬉しいです。
    [回答]
    実はぼくも以前、同じ悩みを抱えていまして、それを解決した過去があります。
    高校生の頃に人と(特に女の子と)全くコミュニケーションできなかったことから、大学卒業後に秋元康さんに弟子入りして、師匠の秋元さんや先輩の放送作家、あるいはテレビ番組の打合せで日本トップのタレントさんたちを間近に見て、彼らの話術を一生懸命盗み、分析したり真似したりしま

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  • アーティストとして生きるには:その13(1,622字)

    2023-07-11 06:00  
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    2020年代の今、「偽物の新時代」が到来している。これが本格化するのは20年後だが、その先駆けとして「偽物」がやってきているのだ。
    では、その「偽物の新時代」とは何か?
    1920年代は、偽物の「資本主義社会」がやってきた。1970年代は、偽物の「情報化社会」がやってきた。
    では、2020年代は何か?
    それは、偽物の「個人社会」だ。
    これから、個人社会が一般化する。「個人」が際立つのだ。そのため、相対的に「社会」や「家族」の力が弱まってくる。
    実際、今現在、社会の力は急速に弱まりつつある。あるいは、家族の力も急速に弱まりつつある。
    それは、政治に端的に表れている。「社会主義」の政党は、全くといっていいほど支持を得られなくなった。「共産党」や「社会党」あるいはその流れを汲む「民主党」は、凋落の一途を辿っている。
    逆に、「個人」に重きを置いた自民党は、支持を拡大する一方だ。ただ、自民党にも弱点が

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  • 石原莞爾と東條英機:その6(1,943字)

    2023-07-10 06:00  
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    石原莞爾は1889年、明治22年に山形県鶴岡市で生まれる。ほんの四半世紀前まで庄内藩の中心地だったところだ。
    庄内藩は、幕府の味方につき明治政府に最後まで抵抗したが、趨勢が決すると潔く降参した。そうしてすぐさま武家社会を廃止すると、蚕の養殖に乗り出していち早く成功する。そのため、いわゆる「朝敵」の中でもそれなりに豊かな地域だった。
    そういう土地柄は、石原莞爾の性格にも反映されている。判官贔屓で長いものに巻かれる調子のいいやつが大嫌い。きっちりと筋を通すが、しかしけっして頑ななだけではない。大胆な方向転換をも辞さない柔軟さを兼ね備えている。
    完爾は三男だが、二人の兄はすでに亡くなっていたので実質的に長男として育った。父は警官でもともとは庄内藩の武士(庄内藩士)の家系だった。母もやはり庄内藩士の家系だったが、親戚には学者も多かった。
    完爾は、多分にこの母の血を受け継いだ。幼い頃から抜群に頭が良

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  • 庭について:その37(2,117字)

    2023-07-07 06:00  
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    20世紀に入ると、庭を巡る状況は混沌としてくる。都市が進化、また巨大化することで、中産階級が再び庭を持てなくなったのだ。
    まず建築技法の進化によって、都市部では高層建築による集合住宅が一般化し、人口が過密化した。そうなると、庭を持たないことの方が再び一般的になった。
    さらに都市は巨大化し、農村からたくさんの若者を吸い寄せた。そうして、多くの中産階級が都市部に住むようになった。おかげで、庭から縁遠くなる人の割合も増えたのだ。
    そんなふうに、19世紀には一度、一般の人々の手にも渡った庭は、20世紀に入ると再びお金持ちの専有物になったのである。
    そうした中で、お金持ちが郊外に広大な邸宅を構え、そこで庭を作る――という復古的な流れが生まれた。
    そこで、2つの歴史的傑作庭園が生まれる。それは、「アイフォード・マナー・ガーデン」と「ヒドコート・マナー・ガーデン」だ。これらを順に見ていきたい。
    まずアイ

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  • お金にまつわる思考実験:その36(1,883字)

    2023-07-06 06:00  
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    ここまでお金について考えてきて、やはり「道」の未来が「経済」の未来、引いては「お金」の未来と思うようになった。これからの道の在り方が、お金の、社会の、そして世界の在り方を決めるのだ。
    では、これからの道はどうなるのか?
    それは、ここまで見てきたように、TPS――トヨタ生産方式によって決められるだろう。
    TPSによって、道はどう決まるのか?
    例えばテスラは、TPSで新しい道……ではないが、新しい「自動運転」を模索している。
    テスラの車は、運転データーが逐一中央のコンピューターに記録される。それがビッグデータとして集約され、新しい自動運転の開発に活かされている。
    しかも、それはテスラの試作車ではなく、実際に販売した100万台超だ。だから、そのデータは他のメーカーと比べると桁違いである。しかも、その量は今なおものすごいスピードで増え続けているので、この差はなかなか埋めにくい。
    その桁違いのデータ

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  • [Q&A]大谷翔平選手はなぜ驚異的な成績を残せるのか?(2,081字)

    2023-07-05 06:00  
    110pt
    [質問]
    ハックルさんの暑さ対策は何ですか?
    [回答]
    そういえば暑さ対策をあまりしたことがありません。夏生まれなので、そもそも暑さに強いということはありますね。ただ最近は加齢もあってさすがに疲れやすくはなっています。
    暑さに対して普段から気をつけていることは「汗をかく」ということでしょうか。汗をかくことが暑さ対策には一番いいそうですが、そのためには普段から汗をかくことがだいじです。
    普段から汗をかいていないと、暑いところにいっても汗をかけず、深刻な熱中症などになります。ですから、汗をかくのが嫌いな人ほど暑さに弱く、熱中症になりやすいですね。そのためぼくは、冬でも運動したりゆっくりお風呂に浸かったりなどして、汗をかくよう心がけています。
    [質問]
    この前、断捨離のやましたひでこさんが「徹子の部屋」に出ていました。徹子さんは、あまり乗り気でない様子で話をしていました。もっともそれは、歳だから

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  • アーティストとして生きるには:その12(2,043字)

    2023-07-04 06:00  
    110pt
    70年代は「アートの10年」であった。どう「アートの時代」だったかというと、新時代の息吹が世界に到来したのだ。その風を受け、各ジャンルのアーティストの感性が爆発した。そうして、すぐれたアートがいくつも生まれた。そんな10年だった。
    20世紀以降を10年単位で区切ると、「アートの時代」は2つあった。それは1970年代と、もう1つは1920年代だ。
    ここで、1900年以降の全ての時代を概観してみる。
    1900年代は、近代化が加速した。
    1910年代は、近代化がきしみ、世界大戦が起こって、ソ連が生まれた。
    1920年代は、「資本主義」の息吹が到来する。バブルが起こった。ただし、この資本主義は長続きせず、1929年の世界恐慌で一旦終息する。
    1930年代は、来るべき時代の方向性が見えず、人類が迷走した。第二次世界大戦へと向かう暗い10年だった。
    1940年代は、地獄のような戦争と、そこからの復興の

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