ぼくが30代のときはずっと人生のどん底のような感じだった。ぼくは29歳で離婚し、寂しいままに30歳を迎えた。1998年のことだった。私生活が寂しいだけではなく、仕事も段々と目減りしていった。

31のときの年収が99万円で、32のときの年収が95万だった。ここからさらに税金や保険を引かれるのである。今なら生活保護を受ける資格があったともいえよう。少なくとも税金や保険はもっと減額されてしかるべきだったが、ぼくは生活が荒れ、心もすさんでいたので、そういうことをする余裕がなかった。ただ生きているという感じだった。

ただ、未来に希望がないわけではなかった。それは蜘蛛の糸のようにごく細い、ほんのかすかな希望だったが、ぼくは小説が好きで、小説を書きたいと思っていた。そして実際に小説を書いていた。この小説がいつか売れたらぼくはもう少し生きていられる……そう思うことが当時の唯一の希望だった。今思えば、それがある