『クリスマス・イブ』と『ちびまる子ちゃん』は実は全く同じ時期にヒットしている。牧瀬里穂のCMが国民的ヒットとなったのが1989年暮れ。そして『ちびまる子ちゃん』のアニメがスタートしたのは、その数週間後の1990年1月7日である。これは偶然ではない。両者はともに、当時の世の中をビビッドに反映していた。だからこそ、同じ時期に同じくらいヒットしたのである。

その「当時の世の中」を表すキーワードは「不安」である。80年代の暮れ頃から、日本には言い知れぬ不安というものが押し寄せていた。それはバブル崩壊への不安と同時に、予想もしていなかった「失われた30年」に対する不安でもあった。とにかく当時の日本人の多くが、バブルが長く続かないことは無意識のうちに分かっていた。

そこで「安心」が求められた。『クリスマス・イブ』と『ちびまる子ちゃん』はその安心を提供するものだった。しかも全く同じ形で提供するものだった