1938年5月、東條英機は陸軍の事務次官に就任した。このとき、最初は就任を渋ったという。理由は、政治の世界に足を踏み入れたくなかったからだ。

東條もまた複雑な人物である。ほとんどが俗っぽいが、純粋なところは純粋で、軍人は政治をすべきではないと考えていた。
しかし後に豹変し、軍のためという建前こそあったものの、これ以上ないというほど政治の世界にどっぷりと浸かる。しかも東條は、政治の世界にそれなりの適性があった。生まれついての政治家向きなところがあったのだ。

しかしこのときまで軍人一筋で、政治の世界とは無縁だった。それが事務次官となれば、片足ではあるが政治の世界に足を突っ込むことになる。それを躊躇したのだ。東條は政治を「水商売」とバカにしていた。

それでも「日中戦争拡大」という使命があったので、最後は引き受けた。そうして事務次官になると、次第に板垣と対立していく。板垣はやはり日中戦争不拡大の立