蔦文也の監督人生には幾度となく「チビッコ」が現れる。すなわち背の低い選手である。その選手が、池田高校を助けるのだ。

それは、池田高校にはそもそもチビッコが多かったということがある。池田高校の西側には勾配の険しい山間地帯が広がっているが、そこで育った子供たちは、昭和の後半になっても背の低い子が多かった。それは、そこだけ暮らしが西洋風になるのが遅れたからである。

そのため、いち早く西洋化した平地（街）の子供たちに比べると、明らかに身長で見劣りしていた。池田高校の生徒の約半分は、そんな山間地帯出身の子供たち――つまりチビッコたちで占められていた。そのため文也も、そんなチビッコたちを使う必要に迫られていたのである。

しかし、文也の元でチビッコたちが活躍した理由はそれだけではない。それは文也の思想に因るところが大きい。文也には強く、そして明確に、ある一つの主張があった。それは、「持って生まれた