ハックルベリーに会いに行く
開戦前夜、東條英機は自宅である首相官邸で一人嗚咽したという。同居していた家族がそう証言している。泣いていた理由は分からない。しかし妻と娘は、そんな夫や父を情けないと思ったという。それはいかにも男らしくない行為だったからだ。
東條はなぜ泣いたのか?
それは約束を破った天皇への申し訳なさもあっただろうが、もう一つ大きいのは自分をドラマのヒーローとして見ていたことだ。そのことに感極まって泣いたのである。
「劇場型」という言葉がある。それは現実のことがまるで芝居がかったみたいに進む現象やそういう心性にある人を指す言葉だが、東條はまさにこの劇場型の人物であった。常に自分を自分が作ったナラティブの中に位置づけ、その中に生きた。
東條がそれをしたのはどれくらいの時期からだっただろうか。しかし少なくとも父が山縣有朋によってクビになり、その後で陸軍大学に入った頃にはすでに始めていただろう。
陸大に入
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