岩崎夏海クリエイター塾
そこでは、「面白いとは何か?」を教えていく。それによって、受講した人に「面白い」を作れるようになってもらいたい。
そうすれば、例えば営業マンなら、「面白い」を活かして新規顧客を開拓できるようになる。レストランのシェフなら、「面白い」を活かして新しいメニューを開発できるようになる。音楽家だったら、「面白い」を活かして新しい曲を作れるようになる。若者なら「面白い」を活かして新しい恋人を見つけられるようになる。
そういう、誰にとっても必要な「面白い」をクリエイトできるようになることを目的とした塾である。
そこでは、どういう授業が行われるのか?
――それは、古今東西の「面白い」コンテンツを紐解いて、その要諦を解説していくというものだ。
例えば、「スター・ウォーズ」と「桃太郎」には、奇妙な相似形がいくつもある――という話をしていく。
まず、両者の主人公はともに「親以外の人物に育てられている」という共通項がある。ルーク・スカイウォーカーは叔父夫婦だし、桃太郎は拾ってくれたおじいさんとおばあさんだ。
次に、両者は「悪を倒すため旅に出る」という共通項がある。ルークはレイア姫を救出するため住んでいた星を離れるし、桃太郎はおじいさんとおばあさんのもとを旅立って鬼ヶ島に向かう。
それから、ルークと桃太郎は、共に「お供を引き連れて旅をする」という共通項があるのだが、面白いことに、そのお供はどちらも「3人」なのである。ルークは、オビ=ワン・ケノービ、ハン・ソロ、チューバッカ。「桃太郎」は、言わずとしれた犬、猿、キジである。
しかも、この三者にはそれぞれ「賢い」「猿」「飛ぶ」という共通の性格が割り当てられている。「スター・ウォーズ」の「賢い」はオビ=ワン、「猿」はチューバッカで、「飛ぶ」は宇宙船の船長であるハン・ソロだ。一方「桃太郎」は、犬が「賢い」役回りで、それから「猿」はもちろん猿。そして「飛ぶ」は、キジが担っているのである。
こうしてみると、「スター・ウォーズ」はまるで「桃太郎」のパロディ作品のようでもあるのだが、もちろん「スター・ウォーズ」は必ずしも「桃太郎」を真似たわけではない。実は、世界中の昔話や民話には、これと同じような構造を持った物語がいくつもあり、「スター・ウォーズ」はその構造を採り入れたのだ。
アメリカの神話学者ジョセフ・キャンベルは、世界の神話を比較研究した「千の顔を持つ英雄」という本を書き、世界中でベストセラーになった。
「スター・ウォーズ」の作者であるジョージ・ルーカスは、この本を読んで「スター・ウォーズ」を書いたのだ。だから、両者が似ているのは、共に神話を祖型に持っているからなのである。
ではなぜ、例えば「両親に育てられていない主人公」というのは、世界中の神話に登場するのか?
実は、その理由こそが「面白い」からなのである。
人は、両親に育てられていない人物――孤児を「面白い」と思う傾向がある。そのため、古今東西の物語には、孤児が主人公のものが本当に多い。「トム・ソーヤの冒険」や「赤毛のアン」、今年の夏にジブリが作る映画「思い出のマーニー」の主人公も、やっぱり孤児なのである。
では、孤児を主人公にするとなぜ面白いのか?
――それは、その物語を読む人が、感情移入できるからである。
子供にとって、「親」というのは非常に重要な存在である。親がいなければ、生きていくことさえままならない。
それゆえ、子供は「親がいなくなったらどうしよう」という不安を抱えている。そうして、その不安が「自分はこの人たちの子供ではないのかもしれない」という想像に、すぐに結びつくのである。
そういう、誰しもが持っている不安や想像力というものを、「孤児」という存在はかき立てるのだ。だから、孤児が主人公だと多くの人がそこに感情移入し、物語にのめり込みやすいのである。そしてのめり込めれば、その物語をより面白く感じられるのだ。
そういうふうに、他者に「面白い」と思ってもらうのには「感情移入させる」という秘訣がある。だから、「面白い」ものを作ろうと思ったら、他者に感情移入をさせることを目標としなければならないのだが、では、他者に「感情移入」をしてもらうためには、一体どうすればいいのか?
そのことを、この塾では教えていきたいと考えているのである。
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