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今、小説が売れない。
それは、作家や編集者が、「人々が読みたい小説」を着想・企画できていないからだ。
それができていれば、今の時代でも大ヒット、あるいはベストセラーを生み出すことができる。また、大ヒット、ベストセラーを生み出せれば、作家、編集者として、このエンタメ不況の時代も生き抜いていける。
そこで今回は、「今、人々が読みたい小説」――言い換えるなら「今、出版されるべき小説」を、どのように着想、また企画すればいいのか?――その方法論と、具体例について考えてゆく。
ところで、小説の最も本質的な役割とは何か?
それは、「人々がそれをどう受け止めていいか分からず『もやもや』としていることに『物語』を与える」というものだ。
その意味で、最も小説らしい小説の一つが、19世紀後半に書かれたドストエフスキーの『罪と罰』だ。
『罪と罰』は、当時のロシアで起きた実在の殺人事件をモチーフにしている。当時のロシアの人々は、その殺人事件をどう受け止めていいのか分からず、「もやもや」としていた。
ドストエフスキーは、そこに小説という形で「物語」を与えた。そのため人々は、自らの「もやもや」を解消したいと思い、『罪と罰』を読んだ。いや、読まずにはいられなかった。「もやもや」は、それが解消されないと何をしても楽しくなく、なんとも生きづらいからだ。
おかげで、『罪と罰』は大ヒットし、ベストセラーとなったのである。
この方程式を、現代日本に当てはめてみる。
すなわち、「現代の日本人がどう受け止めていいか分からず、『もやもや』としているもの」をモチーフとして採択し、それに物語を与えるのだ。そうすれば、その事象に「もやもや」としている人は、読まずにはいられなくなる。
では、現代人が「もやもや」としているものとは何か?
その一つが、「ネトウヨ」だろう。
「ネトウヨ」に対しては、多くの人が「もやもや」としている。
「もやもや」する理由は、「彼らがなぜネトウヨになったのか?」ということや、「ネトウヨはこれからどうなるのか?」というのが分からない――ということだ。「もやもや」というのは、たいていの場合、「彼らがどこから来て、これからどこへ行くのか?」ということが分からないことによって生じる。
そこで、それを「物語」として提示するのである。「ネトウヨがどこから来て、どこへ行くのか」を小説として描くのだ。
ただし、小説というのは一つの「もやもや」だけを描いても面白くない。小説の妙味は、複数の「もやもや」を組み合わせて描くところにある。そうすることによって、物語に幅と奥行きとが生まれる。すると自然、読みたいと思う人の数も増えるのだ。
そこでここでは、「ネトウヨ」に組み合わせるための「もやもや」を、もう一つ考える。
その「もやもや」とは何か?
今の日本人は、一体何に「もやもや」しているのか?
――と、ここでこれを読んでいる方にもぜひ考えてほしいのだが、あなたは一体、何に「もやもや」しているだろうか?
マーケティングの基本は、自分の「もやもや」を知ることである。
あなたは一体、何の正体を知りたいと思っていますか?
あなたは一体、何の来歴を知りたいと思っていますか?
あなたは一体、何の行く末に興味がありますか?
それを見つけることこそ、人々の「もやもや」にアプローチするたった一つの方法といっても過言でない。
どうだろうか?
思いつくことができたであろうか?
それではここで、ぼくが「もやもや」としているものを発表したい。
ぼくが「もやもや」しているもの……それは「YouTube」である。
もっといえば「Hikakin」だ。
ぼくは、「Hikakin」に「もやもや」としている。
ぼくは、Hikakinの正体を知りたいと思っている。
ぼくは、Hikakinの来歴を知りたいと思っている。
ぼくは、Hikakinの行く末に興味がある。
そこでここでは、そんな「Hikakin」を「ネトウヨ」と組み合わせてみる。
それは、こんな物語である。
======================
あるとき、ネット上に一人のスターが誕生した。
彼の名はHidekin(ヒデキン)。丸い縁なしメガネが特徴の、高速ラップやボイスパーカッションを超絶技巧で奏でるミュージシャンだ。
Hidekinは、YouTubeを舞台にあれよあれよという間にスターダムの座にのし上がる。その登録者数は、いつしか1000万人を突破した。
しかし、話はそれだけでは終わらなかった。彼はその人気を背景に、衆議院選に打って出ると、圧倒的な得票数で当選する。さらに、自身のYouTuber仲間をも次々と当選させ、一大政党を形作っていく。
ちなみに、Hidekinの豊富な政治資金は、ほとんどがYouTubeで賄われていた。彼のチャンネルの登録者数は、今では5000万を突破し、収入は50億円とも100億ともいわれている。
ちょうどその頃、Hidekinはもう一つの側面を表し始める。
それは「ネトウヨ」。
Hidekinは、日本を彼がいうところの「誇りを持った国」へと変貌させるため、憲法九条改正を目標とする、右翼だった。
やがてHidekinは、一気に首相の座にまで登り詰める。
そうして、その就任演説を彼自身のYouTubeチャンネルで行うのだが、そこで驚愕の発言をくり出すのだった……
========================
このような小説をリアリティをもって描ければ、必ずや大ヒットし、ベストセラーになるだろう。
ちなみに、エンタメのマーケティングやマネタイズを学ぶためのイベントを、11月8日(土)に、東京の渋谷で開催します。
このイベントは、今現在エンタメ業界で働いている人や、これから働きたいと考えている人に、いかにして「マーケティング」や「マネタイズ」を身につけていくべきか、そのノウハウを伝授していくものです。
ご興味がおありの方は、ぜひご参加ください。
詳細はこちらです。
「岩崎夏海のエンタメサロン2014秋」
それは、作家や編集者が、「人々が読みたい小説」を着想・企画できていないからだ。
それができていれば、今の時代でも大ヒット、あるいはベストセラーを生み出すことができる。また、大ヒット、ベストセラーを生み出せれば、作家、編集者として、このエンタメ不況の時代も生き抜いていける。
そこで今回は、「今、人々が読みたい小説」――言い換えるなら「今、出版されるべき小説」を、どのように着想、また企画すればいいのか?――その方法論と、具体例について考えてゆく。
ところで、小説の最も本質的な役割とは何か?
それは、「人々がそれをどう受け止めていいか分からず『もやもや』としていることに『物語』を与える」というものだ。
その意味で、最も小説らしい小説の一つが、19世紀後半に書かれたドストエフスキーの『罪と罰』だ。
『罪と罰』は、当時のロシアで起きた実在の殺人事件をモチーフにしている。当時のロシアの人々は、その殺人事件をどう受け止めていいのか分からず、「もやもや」としていた。
ドストエフスキーは、そこに小説という形で「物語」を与えた。そのため人々は、自らの「もやもや」を解消したいと思い、『罪と罰』を読んだ。いや、読まずにはいられなかった。「もやもや」は、それが解消されないと何をしても楽しくなく、なんとも生きづらいからだ。
おかげで、『罪と罰』は大ヒットし、ベストセラーとなったのである。
この方程式を、現代日本に当てはめてみる。
すなわち、「現代の日本人がどう受け止めていいか分からず、『もやもや』としているもの」をモチーフとして採択し、それに物語を与えるのだ。そうすれば、その事象に「もやもや」としている人は、読まずにはいられなくなる。
では、現代人が「もやもや」としているものとは何か?
その一つが、「ネトウヨ」だろう。
「ネトウヨ」に対しては、多くの人が「もやもや」としている。
「もやもや」する理由は、「彼らがなぜネトウヨになったのか?」ということや、「ネトウヨはこれからどうなるのか?」というのが分からない――ということだ。「もやもや」というのは、たいていの場合、「彼らがどこから来て、これからどこへ行くのか?」ということが分からないことによって生じる。
そこで、それを「物語」として提示するのである。「ネトウヨがどこから来て、どこへ行くのか」を小説として描くのだ。
ただし、小説というのは一つの「もやもや」だけを描いても面白くない。小説の妙味は、複数の「もやもや」を組み合わせて描くところにある。そうすることによって、物語に幅と奥行きとが生まれる。すると自然、読みたいと思う人の数も増えるのだ。
そこでここでは、「ネトウヨ」に組み合わせるための「もやもや」を、もう一つ考える。
その「もやもや」とは何か?
今の日本人は、一体何に「もやもや」しているのか?
――と、ここでこれを読んでいる方にもぜひ考えてほしいのだが、あなたは一体、何に「もやもや」しているだろうか?
マーケティングの基本は、自分の「もやもや」を知ることである。
あなたは一体、何の正体を知りたいと思っていますか?
あなたは一体、何の来歴を知りたいと思っていますか?
あなたは一体、何の行く末に興味がありますか?
それを見つけることこそ、人々の「もやもや」にアプローチするたった一つの方法といっても過言でない。
どうだろうか?
思いつくことができたであろうか?
それではここで、ぼくが「もやもや」としているものを発表したい。
ぼくが「もやもや」しているもの……それは「YouTube」である。
もっといえば「Hikakin」だ。
ぼくは、「Hikakin」に「もやもや」としている。
ぼくは、Hikakinの正体を知りたいと思っている。
ぼくは、Hikakinの来歴を知りたいと思っている。
ぼくは、Hikakinの行く末に興味がある。
そこでここでは、そんな「Hikakin」を「ネトウヨ」と組み合わせてみる。
それは、こんな物語である。
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あるとき、ネット上に一人のスターが誕生した。
彼の名はHidekin(ヒデキン)。丸い縁なしメガネが特徴の、高速ラップやボイスパーカッションを超絶技巧で奏でるミュージシャンだ。
Hidekinは、YouTubeを舞台にあれよあれよという間にスターダムの座にのし上がる。その登録者数は、いつしか1000万人を突破した。
しかし、話はそれだけでは終わらなかった。彼はその人気を背景に、衆議院選に打って出ると、圧倒的な得票数で当選する。さらに、自身のYouTuber仲間をも次々と当選させ、一大政党を形作っていく。
ちなみに、Hidekinの豊富な政治資金は、ほとんどがYouTubeで賄われていた。彼のチャンネルの登録者数は、今では5000万を突破し、収入は50億円とも100億ともいわれている。
ちょうどその頃、Hidekinはもう一つの側面を表し始める。
それは「ネトウヨ」。
Hidekinは、日本を彼がいうところの「誇りを持った国」へと変貌させるため、憲法九条改正を目標とする、右翼だった。
やがてHidekinは、一気に首相の座にまで登り詰める。
そうして、その就任演説を彼自身のYouTubeチャンネルで行うのだが、そこで驚愕の発言をくり出すのだった……
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ちなみに、エンタメのマーケティングやマネタイズを学ぶためのイベントを、11月8日(土)に、東京の渋谷で開催します。
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