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今、出版されるべき小説を着想・企画するたった一つの方法(2,318字)
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今、出版されるべき小説を着想・企画するたった一つの方法(2,318字)

2014-10-27 06:00
    今、小説が売れない。

    それは、作家や編集者が、「人々が読みたい小説」を着想・企画できていないからだ。
    それができていれば、今の時代でも大ヒット、あるいはベストセラーを生み出すことができる。また、大ヒット、ベストセラーを生み出せれば、作家、編集者として、このエンタメ不況の時代も生き抜いていける。

    そこで今回は、「今、人々が読みたい小説」――言い換えるなら「今、出版されるべき小説」を、どのように着想、また企画すればいいのか?――その方法論と、具体例について考えてゆく。


    ところで、小説の最も本質的な役割とは何か?
    それは、「人々がそれをどう受け止めていいか分からず『もやもや』としていることに『物語』を与える」というものだ。
    その意味で、最も小説らしい小説の一つが、19世紀後半に書かれたドストエフスキーの『罪と罰』だ。

    『罪と罰』は、当時のロシアで起きた実在の殺人事件をモチーフにしている。当時のロシアの人々は、その殺人事件をどう受け止めていいのか分からず、「もやもや」としていた。
    ドストエフスキーは、そこに小説という形で「物語」を与えた。そのため人々は、自らの「もやもや」を解消したいと思い、『罪と罰』を読んだ。いや、読まずにはいられなかった。「もやもや」は、それが解消されないと何をしても楽しくなく、なんとも生きづらいからだ。
    おかげで、『罪と罰』は大ヒットし、ベストセラーとなったのである。

    この方程式を、現代日本に当てはめてみる。
    すなわち、「現代の日本人がどう受け止めていいか分からず、『もやもや』としているもの」をモチーフとして採択し、それに物語を与えるのだ。そうすれば、その事象に「もやもや」としている人は、読まずにはいられなくなる。


    では、現代人が「もやもや」としているものとは何か?
    その一つが、「ネトウヨ」だろう。

    「ネトウヨ」に対しては、多くの人が「もやもや」としている。
    「もやもや」する理由は、「彼らがなぜネトウヨになったのか?」ということや、「ネトウヨはこれからどうなるのか?」というのが分からない――ということだ。「もやもや」というのは、たいていの場合、「彼らがどこから来て、これからどこへ行くのか?」ということが分からないことによって生じる。

    そこで、それを「物語」として提示するのである。「ネトウヨがどこから来て、どこへ行くのか」を小説として描くのだ。

    ただし、小説というのは一つの「もやもや」だけを描いても面白くない。小説の妙味は、複数の「もやもや」を組み合わせて描くところにある。そうすることによって、物語に幅と奥行きとが生まれる。すると自然、読みたいと思う人の数も増えるのだ。

    そこでここでは、「ネトウヨ」に組み合わせるための「もやもや」を、もう一つ考える。
    その「もやもや」とは何か?
    今の日本人は、一体何に「もやもや」しているのか?

    ――と、ここでこれを読んでいる方にもぜひ考えてほしいのだが、あなたは一体、何に「もやもや」しているだろうか?
    マーケティングの基本は、自分の「もやもや」を知ることである。
    あなたは一体、何の正体を知りたいと思っていますか?
    あなたは一体、何の来歴を知りたいと思っていますか?
    あなたは一体、何の行く末に興味がありますか?
    それを見つけることこそ、人々の「もやもや」にアプローチするたった一つの方法といっても過言でない。


    どうだろうか?
    思いつくことができたであろうか?

    それではここで、ぼくが「もやもや」としているものを発表したい。
    ぼくが「もやもや」しているもの……それは「YouTube」である。
    もっといえば「Hikakin」だ。
    ぼくは、「Hikakin」に「もやもや」としている。


    ぼくは、Hikakinの正体を知りたいと思っている。
    ぼくは、Hikakinの来歴を知りたいと思っている。
    ぼくは、Hikakinの行く末に興味がある。

    そこでここでは、そんな「Hikakin」を「ネトウヨ」と組み合わせてみる。
    それは、こんな物語である。

    ======================
    あるとき、ネット上に一人のスターが誕生した。
    彼の名はHidekin(ヒデキン)。丸い縁なしメガネが特徴の、高速ラップやボイスパーカッションを超絶技巧で奏でるミュージシャンだ。
    Hidekinは、YouTubeを舞台にあれよあれよという間にスターダムの座にのし上がる。その登録者数は、いつしか1000万人を突破した。

    しかし、話はそれだけでは終わらなかった。彼はその人気を背景に、衆議院選に打って出ると、圧倒的な得票数で当選する。さらに、自身のYouTuber仲間をも次々と当選させ、一大政党を形作っていく。
    ちなみに、Hidekinの豊富な政治資金は、ほとんどがYouTubeで賄われていた。彼のチャンネルの登録者数は、今では5000万を突破し、収入は50億円とも100億ともいわれている。

    ちょうどその頃、Hidekinはもう一つの側面を表し始める。
    それは「ネトウヨ」。
    Hidekinは、日本を彼がいうところの「誇りを持った国」へと変貌させるため、憲法九条改正を目標とする、右翼だった。

    やがてHidekinは、一気に首相の座にまで登り詰める。
    そうして、その就任演説を彼自身のYouTubeチャンネルで行うのだが、そこで驚愕の発言をくり出すのだった……
    ========================

    このような小説をリアリティをもって描ければ、必ずや大ヒットし、ベストセラーになるだろう。

    ちなみに、エンタメのマーケティングやマネタイズを学ぶためのイベントを、11月8日(土)に、東京の渋谷で開催します。

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    このイベントは、今現在エンタメ業界で働いている人や、これから働きたいと考えている人に、いかにして「マーケティング」や「マネタイズ」を身につけていくべきか、そのノウハウを伝授していくものです。
    ご興味がおありの方は、ぜひご参加ください。
    詳細はこちらです。

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