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記事 21件
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第二章(1)

    2015-12-02 07:00  
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    本掲載内容は、2015年11月13日から2015年11月27日の間に配信された「カエルの楽園」第二章(第7回~第9回)を一つの記事にまとめて再録したものです。
    第1話から継続してお読み頂けている皆様は、既読の内容となりますので、予めご了承ください。
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第一章まとめ

    2015-12-01 07:00  
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    本記事の掲載内容は、2015年10月02日から2015年11月06年の間に配信された「カエルの楽園」第一章(第1回~第6回)を一つの記事にまとめて再録したものです。
    第1回から継続してお読み頂けている皆様は、既読の内容となりますので、予めご了承ください。
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第九回

    2015-11-27 13:30  
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    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』第二章
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     翌日、またもや平和な空気を切り裂くような悲鳴が轟きました。
     それは昨日と同じ南の崖から聞こえてきました。たくさんのカエルたちが南の崖に向かうと、崖のふちに一匹のウシガエルが仁王立ちしているのを目にしました。
     ツチガエルたちは間近に見る巨大で醜悪なウシガエルの姿に悲鳴を上げ、後ずさりました。ソクラテスもまた、その恐ろしい姿にふるえあがりました。
     ウシガエルは無表情のままツチガエルたちをなめるように見つめています。
     南の崖のふちにウシガエルが立っているという信じられない光景を目の前にして、ツチガエルたちはどうしていいかわからないようです。その中にはデイブレイクもいましたが、彼もただ全身をガタガタとふるわせているだけでした。
     ウシガエルもツチガエルも動かないまま、恐ろしい緊張に満ちた時間だけが刻々と過ぎていきました。ウシガエルの吐く臭い息がツチガエルたちにも匂ってきます。
     そのとき、「ハンニバルが来たぞ!」と言う声が聞こえました。 
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第八回

    2015-11-20 07:00  
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    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』第二章
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    「ところで、ウシガエルを見たというツチガエルは本当に勘違いだったんだろうか」

     ソクラテスは言いました。
    「デイブレイクはそう言っていた」
    「でも、あの怯えようは、単なる勘違いだとも思えない」
    「たしかにガタガタ震えていたな。だとすると、真相はどうなんだろう」
    「鍵を握っているのはハンニバルだよ」
     ソクラテスの言葉にロベルトもうなずきました。
    「ハンニバルに話を聞いてみよう」
    「でも、ローラはハンニバルに近づくなと言
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第七回

    2015-11-13 07:00  
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    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』第二章
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     ソクラテスとロベルトがナパージュにやってきて数日が過ぎました。
     その間、ナパージュには何ひとつ事件のようなものは起こりませんでした。毎日がのどかで平和な日々でした。
     ソクラテスとロベルトは、別世界にきたような気がしていました。ここに来るまでの過酷な旅を思うと、ナパージュはまさに夢のような楽園です。
     池がいくつもあり、水は美味しく、草木が豊かで、食べ物となる虫はいたるところにいました。何よりもカエルたちをおび
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第六回

    2015-11-06 07:00  
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    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』
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     「三戒」を作ったのはスチームボートだったというのは衝撃的な事実でした。
     でもそれ以上にソクラテスたちを驚かせたのは、「三戒」の中にある「カエルを信じろ」も「カエルと争うな」も、もともとは「スチームボートを信じろ」「スチームボートと争うな」というものだったことです。長い年月の間に「スチームボート」がいつのまにか「カエル」に変わっていたのです。
     ただ、ナパージュの国が平和でいられるのは「三戒」のお蔭なのか、それともスチ
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第五回

    2015-10-30 07:00  
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    ★【お知らせ】今週は特別に「カエルの楽園」だけ配信致します。「ニュースに一言」の配信はありませんので、ご注意ください。★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』
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     ハンドレッドによれば、スチームボートはナパージュの東の端にある岩山の頂きに棲んでいるということです。
    「そこは誰も近付かないところだ」
    「そこにいけばスチームボートに会えるのか」
    「それはわからない。いないときも多いと聞いている。あの方は世界を飛び歩いているからな」
    「スチームボートって何者なの?」
     ハンドレッドはにやりと笑いました。
    「見ればわかるさ」 
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第四回

    2015-10-23 07:00  
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    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』
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     ナポレオン岩場でローラと別れて池の近くに戻ったソクラテスとロベルトは、岩場で見たことを話し合いました。
    「やっぱり、この国のカエルたちの考え方は尊敬に値する」
     ロベルトの言葉に、ソクラテスは答えました。
    「たしかに、不思議な考え方だけど、魅力的だ」
    「魅力的? そんなものじゃないだろう。俺はカエルたちの思想の究極に行き着いたものだと思う。ソクラテスもそう思わないか」
    「いや、少し待ってくれ。ぼくにはまだこの考え方は深すぎて、すぐにはついていけないんだ」
    「何を言ってるんだ。目の前にこんな素晴らしい実例があるのに、まだ理解できないなんて――。『贖罪の歌』はお前も聞いただろう。『原罪』を背負い、すべてのものに向かって謝る思想というのは、もはや思想を超えた美とも言えるものだよ。そして、ただ美しいだけじゃない。それを確固としたものにする力がある。それが『三戒』だ。お前も南の崖を見たじゃないか。あのウシガエルが崖を登るのを諦めたんだぜ。あれが『三戒』の力でなくて何だ」
    「『三戒』の素晴らしさはぼくも認めるよ。でも、ウシガエルが崖を登ってこないのは、本当に『三戒』のせいだろうか」
    「ほかに何があるって言うんだ?」
     そう言われると、ソクラテスには何も答えられませんでした。
    「とにかく、この国は何もかも素晴らしいんだよ! ナパージュ、万歳だ!」 
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第三回

    2015-10-16 13:00  
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    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』
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     ハインツが去った後、ロベルトが感極まったように、「すごい!」と声を上げました。
    「なにがすごいんだ?」
    「何がって、ソクラテスはわからないのか。この国の教えだよ。この国が長く平和でいられたのは『三戒』のお蔭だったんだ!」
    「そうなのかなあ」
    「そうに決まってるじゃないか。この国のカエルたちを見ただろう。俺たちみたいなよそ者で、しかもツチガエルでもないのに、警戒するどころか、親切にエサ場まで教えてくれる。これまでこんなカエルに
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第二回

    2015-10-09 12:13  
    102pt
    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』
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     ソクラテスとロベルトはしばらく池の中に体を浮かべていました。
     もうハトの姿はありません。
     水の温もりが二匹のアマガエルの疲れた体を癒しました。
    「ロベルト、大丈夫か」
     ソクラテスはロベルトに声をかけました。
    「足を痛めたみたいだけど、たいしたことはない」
    「それはよかった」
     その時、後ろから「あなたたちは誰?」という声がしました。
     振り返ると、岸辺から一匹のメスのツチガエルがこちらを見ていました。
    「ぼくらはソクラ