夜の帳が城下町を包む。
良い子が眠り、悪い子もそろそろ眠い、そんな丑三つ時。

ゴミ集積所と見紛うばかりの足軽長屋の一室に蠢く影が二つあった。


この部屋にはゴミの神様が住んでいる。
そう言われて何人が信じるだろうか。

きっと五人に一人ぐらいは納得するのではなかろうかと、つばめは思った。


「詰め込めるだけ詰め込め、全部持っていくぞ!」


ゴミ山という名の私物を選別しているのは三郎左衛門である。

物が溢れる現代の世でなかろうとも、ゴミは溜まるしホコリも積もる。
それらが幾重にも重なった地層から次々とガラクタをサルベージするさまは、さながら化石発掘隊である。


「三郎左、牢から出してくれたことには礼を言う」

「礼は言え、たくさん言え。だけど俺だって何も下心なくお前を助けてやったわけじゃねえ。せめて荷物持ちぐらいの役には立ってもらわねえとな」

「これじゃまるで夜逃げじゃないか」

「まるでもくそも夜逃げそのものだけどな。お互い捕まったらケツひっぱたかれるだけじゃ済まねえぜ。ほらよっ!」


渋々ながらも、つばめは投げ渡されたガラクタを手早く風呂敷に包んでいく。

三郎左衛門はもとより、牢を破ったつばめ自身も今や追われる身である。
むしろこの三郎左衛門という男は、それを理解した上でつばめを脱獄させたわけだが。


「今更怖気づいてんじゃねえよ。ほら、そいつで最後だ。さっさとずらかるぞ!」


荷物をまとめ上げた三郎左衛門が部屋を出ようとしたその時である。