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商業のゲームではこんなひどい殺し方はできない
―――八百谷さんはいつゲーム作りを始められたんですか?
八百谷 かつて「ログイン」という雑誌に自作ゲームを紹介する「未確認クリエイターズ」というコーナーがあったんですけど、そこでRPGツクールの原点ともいえるコンストラクションツールである「チャイムズクエスト」の作品が紹介されていたので、自分でも購入して使ってみたのが始まりでした。それでゲーム作りに興味を持って、はじめて完成した作品が「RPGツクール Dante98II」で作った『ペル・エム・フル』でしたね。
―――『ペル・エム・フル』が処女作とは! 「はじめて完成した」ということは挫折もあったんですか?
八百谷 そうですね。作り始めのころはグラフィック一枚作っては挫折し、イベントを一個作っては挫折し、という状態でした。
―――しかし『ペル・エム・フル』は処女作とは思えないほど、細やかな作り込みがされている作品でした。システムももちろんのこと、グラフィックも特に一枚絵は何枚も何枚丁寧に描かれていますが、グラフィックにはこだわりがあったんですか?
八百谷 ありました。Dante98 IIでは16色しか使えなかったんですけど、「16色でどこまで表現できるか」というのをやりたかったんですよ。制作途中は友人と16色でどこまで表現できるか競い合いもしていました。

※主人公・朝木歩人はエジプト旅行中、ピラミッドの中でミイラを発見したことをキッカケに惨劇に巻き込まれてしまう
―――では『ペル・エム・フル』を作るときに影響を受けたり、参考にした作品はありますか?
八百谷 やっぱり『コープスパーティー』(Dante98で制作されたホラーゲーム。2010年には商業作品としてPSPでリメイクされた)にはとても影響を受けました。あの設定から演出まで、プレイしていて「今までにやったことのないゲームだ!」という感じで衝撃を受けて。『コープスパーティー』は確実に『ペル・エム・フル』を作ろうと思った動機のひとつです。あと、探検ものであるという部分では映画の『インディー・ジョーンズ』だったり、謎解きの部分では『シャーロック・ホームズ』や『ブラウン神父』などの推理小説とかに影響を受けました。あとは漫画家の伊藤潤二さんの大ファンなんで、伊藤潤二さんの作品のような雰囲気をゲームに取り入れたいと思って作っていました。
―――必ずしも商業作品のゲームから影響を受けたというわけではないんですね。
八百谷 そうですね。むしろ、商業作品のゲームもそうですけど、他のゲーム制作者にはできないような残酷な表現をやってやろうと思って作っていました。ストーリーにしても『ペル・エム・フル』のように、物語のピークに来たら後はエンディングまで怒涛の展開になるような作品は少なかったと思うんですよ。
―――本当にジェットコースターのような展開でした。
八百谷 商業のゲームではこんなひどい殺し方はされないとか、他の人はこんな音楽の使い方はしないだろうとかを考えていました。音楽は友人に書いてもらったんですけれど、作中で怖さを一番表現したいシーンで流れるBGMなんかは、もっと音で怖さを引き出す方法はないかと、何度もNGを出して作り直してもらったなあという思い出がありますね。
RPGツクールの名作に「ただのRPG」が少ないわけ
―――八百谷さんはRPGツクールで多くのゲームを制作されていますが、RPGツクールのコンストラクションツールとしての魅力というのはどこにあるのでしょうか。
八百谷 イベントを作りやすい、ということは魅力のひとつだと思います。あと、マップにデフォルトの素材を置くだけで、とりあえずテストプレイができるというのもいいですね。カンタンにゲームになるというところも魅力だと思います。
―――RPGツクールの名作と言われる作品には『ペル・エム・フル』をはじめとして、ただのRPGではない作品が多いかと思うのですが、八百谷さんの場合、『ペル・エム・フル』における「行動システム」や、アドベンチャーゲームのような展開など、RPGツクールの機能の限界を逆手に取ったようなデームデザインはどうやって考えられたのでしょうか。
八百谷 ゲーム作りに制約があることも、RPGツクールでのゲーム作りの面白さのひとつだと思うんですよ。『ペル・エム・フル』でも、Dante98 IIのできることを利用してどうやって人とは違うことをやろうかなということを考えた結果として、「行動システム」が生まれたんです。

※『ペル・エム・フル』では、ダンジョン内の仕掛けを作動させたり罠を回避する際に「押す」「叫ぶ」「しゃがむ」などの“行動”をコマンドを選択して行う
―――RPGツクールはいろいろな制約があったからこそ、『ペル・エム・フル』や『コープスパーティー』といった、ただのRPGじゃない、個性が際立った名作が数々生まれたということでしょうか。
八百谷 そうかもしれないです。ゲームの舞台をピラミッドにした理由も、使用できる色数が16色しかない中で、むしろ土色ばっかりの舞台設定にしてしまえば数少ないパレットの大半を壁や床のドット絵や人物の肌を描くために充てられるから、という苦肉の策だったりしますから(笑)。制約があるなかでどう表現していくかと考えだしたアイディアがゲームの個性だったり、特徴になってくるんだと思います。
―――現在八百谷さんはRPGツクールVXを使って『ペル・エム・フル』を14年ぶりにリメイクされているそうですが、進化したRPGツクールを触ってみてどういう印象を受けていますか?
八百谷 やっぱり、できることは増えていますね。格段にRPGを作りやすくなっているなとは作っていて思います。でもやっぱりデフォルトの素材やデータをいじっているだけじゃ面白くないですし、RPGツクールならではの機能もちゃんと残っているので、機能を活かしてやりたいなとも考えたりしていますね。
社会人ゲーム制作者はつらいよ
―――現在、八百谷さんは会社の代表としてご多忙な日々を送られているかと思いますが、お仕事をされながらのゲーム制作はどのように行なっているのでしょうか。
八百谷 仕事しながらはやっぱりきついです。仕事に行く前の1時間だったり、仕事が終わった後に2時間ぐらい使ってコツコツ作ってるんですけれど、なかなか進まなくて。じゃあ休日に一日かけてモンスターの絵を描こうと思って描いて、できあがった絵を見てると『これは気持ち悪い敵キャラが仕上がった!』と自分のなかで盛り上がるんですけど、全体の進捗状況からしたら0.1%ぐらいしか進んでなかったり(笑)。

※リメイク版の『ペル・エム・フル』。グラフィックはより美しく、モンスターはより不気味に進化している
―――ある程度、期間の目処を立ててゲームを作ったほうがいいんでしょうか?
八百谷 自分のなかで期間を決めてやったほうがいいと思います。ゲーム作る人はたいてい制限時間をオーバーしても作り続けますから。だからコンテストに応募するのは、期間が制限されているという意味でもいいことなんですよ。今から作り始めるような人がニコニコ自作ゲームフェスに応募するなら、アイディアを練り込んでというよりは、アイディアをそのままゲームにしたようなもののほうがいいかもしれないです。
―――自作ゲームを作るときに重要な要素はなんだと思いますか?
八百谷 「俺はこのゲームでこのシーンが描きたい!」という具体的な意志と、友達です。
―――友逹ですか?
八百谷 はい。『ペル・エム・フル』のときからそうなんですけれど、ちゃんと見てくれる友逹に見せることは、ゲームを作る大きなモチベーションになっていたんです。
―――ゲーム制作はチームで行ったほうが良いのでしょうか。
八百谷 うーん、実際のゲーム作りではチームを組むよりは自分1人でやってるつもりで作ったほうがいいですよ。チームだと、ついつい他の人をあてにして進まなかったりすることが多いと思いますし。もし何人かでやるとしても「俺はどうしてもこの作品が作りたい!」ていう当事者意識の強いリーダー的な人が1人いたほうが形にはなりやすいと思います。
―――もし八百谷さんがニコニコ自作ゲームフェスの審査員になるとしたら、どんなゲームをやってみたいですか?
八百谷 過去、RPGツクールのゲームコンテストの審査員をやったことがあるんですけど、やっぱりデフォルトの素材を多く使った真っ当なRPGより、グラフィックやテーマが独特な作品のほうが作者の伝えたい面白さに気付きやすかったんですよ。ゴキブリが主人公のPRGとか、人間の建前と本音を聞き分けられるRPGだとか。だからRPGツクールを使う場合でも、グラフィックの1枚でもいいから自分で1から書いてみたりしてみてほしいです。逆に全部デフォルトの素材を使って、システムが突飛なゲームを作るのも面白そうですけどね。
―――先ほどもお話がありましたが、「人と違うことをやりたい!」という気持ちが個性になるというか。
八百谷 自分にとってゲーム作りは「欲求不満の放出の場」という感覚もあるんです。欲求不満というのは他のゲームからだけじゃなくて、日頃の欲求不満からでもいいんです。2年半前に発表した『セイギノミカタ』ってゲームは、団地にいるイヤな人に嫌がらせを仕掛けて追い出すというゲームなんですけれど、そういうゲームもあっていいんじゃないかという欲求から作ったものだったんですね。例えば口うるさい上司のカツラを風で飛ばしたいとか、イチャイチャしてるバカップルにマッチョな悪者を派遣して彼氏を泣かせたいとか、そういう欲求不満から出てきたアイディアをゲームにできるのも、自主制作ゲームだからこそだと思うんです。
―――ニコニコ自作ゲームフェスに期待することはありますか?
八百谷 自作ゲームを作っている人たちにとっては久々の大きな発表の場だと思うので、とても期待しています。RPGツクールで作ったゲームが応募できるコンテストも行われなくなって久しいので、RPGツクールにとってもニコニコ自作ゲームフェスがまた「コンテストパーク」(アスキーが主催していたデジタル作品コンテスト。『ペル・エム・フル』は1998年8月期のプラチナ賞を受賞している)のときのような盛り上がりを起こしてくれたら嬉しいですね。自作ゲーム制作者の欲求不満が放出される場になってほしいと思います(笑)。
【インタビュー記事一覧】
・ならむら「英語圏で出したいというアクションを起こせば機会は増える」(代表作:『GR3』『LA-MULANA』『薔薇と椿』)
・八百谷真「ゲーム作りは欲求不満放出の場」(代表作:『囚人へのペル・エム・フル』)
・なりた「商業に応用できるアイデアや可能性を同人ゲームで探っていた」(代表作:『MELTY BLOOD』)
・cutlass「これからのノベルゲーム文化を自分が背負わないで誰が背負うんだ!」(代表作:『NOeSIS~嘘を吐いた記憶の物語~』)
・海原海豚(黄昏フロンティア)「自作ゲーム制作にはブッ飛んだ愛が必要」(代表作:『東方萃夢想』『ひぐらしデイブレイク』)
・奥井晶久「ニコニコはゲームとユーザーの接点を作ってくれる」(代表作:『ワンナイト人狼』)
・支倉凍砂「目標はハリウッドで映画化でした」(代表作:『狼と香辛料』『ワールドエンドエコノミカ』)
・竜騎士07「ニコニコ自作ゲームフェスはいい“試練の場”になる!」 (代表作:『ひぐらしのなく頃に』)
・オガワコウサク「それはもう、祁答院が作るゲームが面白いからですよね」(代表作:『コープスパーティー』)
・ZUN「『東方Project』は自分のライフワークみたいなものになっている」(代表作:『東方』シリーズ)
・SmokingWOLF「2Dゲームでできることはほぼなんでもできてしまうんですよ」(代表作:『シルフェイド見聞録』)
・【後編】泉和良「自作ゲームは一生自分の体から離れないものになった」(代表作:『自給自足』『エレGY』)
・【前編】泉和良「自作ゲームしかなくなっちゃったんですよ」(代表作:『自給自足』『エレGY』)
・飯田和敏「自分が面白いと思うゲームを作るのが一番!」(代表作:『アクアノートの休日』)
(村井 克成)
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リメイクは引かんか買ってもいいですから完成させてくださいまってます
誤字っちゃった時間がかかってもいいんで待ってます