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泉和良さんのホームページ「あばたえくぼ」はコチラ。
―――『エレGY』のテーマを泉さんご自身とアンディー・メンテ(泉さんが主宰する自作ゲーム制作サークル)にされた理由はなんだったのでしょうか。
―――それが『ジスカルド・デッドエンド』といった作品に?
―――かつてファンの方から「小説家になって自作ゲームを捨てるのか」と言われたという泉さんですが、実際は小説の執筆が中心となった現在でも変わらずゲームを作り続けています。あれから時間が経ち、ファンの方の反応も変わられたりしましたか?
※泉和良さんによるニコニコ自作ゲームフェス投稿作品はコチラ
【インタビュー記事一覧】
・ならむら「英語圏で出したいというアクションを起こせば機会は増える」(代表作:『GR3』『LA-MULANA』『薔薇と椿』)
・八百谷真「ゲーム作りは欲求不満放出の場」(代表作:『囚人へのペル・エム・フル』)
・なりた「商業に応用できるアイデアや可能性を同人ゲームで探っていた」(代表作:『MELTY BLOOD』)
・cutlass「これからのノベルゲーム文化を自分が背負わないで誰が背負うんだ!」(代表作:『NOeSIS~嘘を吐いた記憶の物語~』)
・海原海豚(黄昏フロンティア)「自作ゲーム制作にはブッ飛んだ愛が必要」(代表作:『東方萃夢想』『ひぐらしデイブレイク』)
・奥井晶久「ニコニコはゲームとユーザーの接点を作ってくれる」(代表作:『ワンナイト人狼』)
・支倉凍砂「目標はハリウッドで映画化でした」(代表作:『狼と香辛料』『ワールドエンドエコノミカ』)
・竜騎士07「ニコニコ自作ゲームフェスはいい“試練の場”になる!」 (代表作:『ひぐらしのなく頃に』)
・オガワコウサク「それはもう、祁答院が作るゲームが面白いからですよね」(代表作:『コープスパーティー』)
・ZUN「『東方Project』は自分のライフワークみたいなものになっている」(代表作:『東方』シリーズ)
・SmokingWOLF「2Dゲームでできることはほぼなんでもできてしまうんですよ」(代表作:『シルフェイド見聞録』)
・【前編】泉和良「自作ゲームしかなくなっちゃったんですよ」(代表作:『自給自足』『エレGY』)
・八百谷真「ゲーム作りは欲求不満放出の場」(代表作:『囚人へのペル・エム・フル』)
・飯田和敏「自分が面白いと思うゲームを作るのが一番!」(代表作:『アクアノートの休日』)
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ファンの『エレGY』への反応
―――『エレGY』のテーマを泉さんご自身とアンディー・メンテ(泉さんが主宰する自作ゲーム制作サークル)にされた理由はなんだったのでしょうか。
泉 『エレGY』を書くことで、自作ゲームに区切りをつけたかったんです。だからこそ、真っ先に自分のゲームを好きだと言ってくれるファンの人たちの存在にアンサーを返さないといけないと考えていました。
―――ファンの方へのけじめというか。
泉 そうです。自作ゲームだけで生活していたころに、「自分はお金を払ってくれるファンに生かされているんだ」という意識が本当に根深く刻まれたんですよ。小説家になるんであれば、まずは自分の自作ゲームのファンに向けての小説を書かないと恩義に反すると。
―――『エレGY』を発表して、アンディー・メンテのファンからはどういった反応が返ってきたんですか?
泉 一部には喜んでくれた方もいたのですが、反発的なものが多かったような印象があります。
―――それは……泉さんにとっては予想外の反応でしたか?
泉 完全に予想外で、ショックでした。正直、ファンの人たちはアンディー・メンテのことを書いていることを喜んでくれるだろうと思っていたんですよ。でも、ホームページで来た意見には「裏切られた」とか「自作ゲームを捨てたんですね」といったものが多かった。
―――それはつらい。
泉 だから当時、ホームページに「アンディー・メンテを捨てたわけじゃない。信じて欲しいんだ!」と書いた覚えがあります。「自分は絶対アンディー・メンテを裏切らない。アンディー・メンテのことはこれからも書いていく」と訴えながら、「こういう反応もあるということを受け止めろ、傷つくな」と自分に言い聞かせていました。
―――自作ゲームに対してけじめをつけることができなかった。
泉 そうですね。『エレGY』が発表されて小説家になったとき、正直、自作ゲームを辞めようとしていました。けど結局辞めなかったし、『エレGY』の後も自分は「制作者とファン」の関係をテーマにした作品をいくつか書くことになるんです。
『ジスカルド・デッドエンド』と未だに書けずじまいの小説
―――それが『ジスカルド・デッドエンド』といった作品に?
泉 はい。『ジスカルド・デッドエンド』は、「制作者とファン」がテーマのいくつかの作品のなかで最後の作品でした。「創作者が創作の理由を失ってしまって死ぬ」というストーリーの小説ですからね(笑)。「ジスカルド」はまさに自分のことです。
※「反(アンチ)自伝的フィクション」と銘打たれた『ジスカルド・デッドエンド』。イラストは『ブラック★ロックシューター』などで知られるイラストレーター・hukeが担当している。
―――「制作者とファン」という視点にもいろいろあるかと思うのですが、どのような見つめ方で書かれた小説だったんでしょうか。
泉 自作ゲームで生活していたときの自分の心境を思いながら書いていました。
―――自作ゲームで生活していたときの心境ですか?
泉 自問自答みたいなものです。当時の自分は、人気がでるゲームならなんでも作ると息巻いていた一方で、「自分は一体なんのために自作ゲームを作っているんだろう」という問にずっとさいなまれていたんです。そして出した答えは「自分は自作ゲームという手法でしか誰かと気持ちを共有できない」、というものだった。
―――泉さんがゲームを作る理由がそこに。
泉 だからずっとゲームを作り続けて来たんだなと。『ジスカルド・デッドエンド』を書いていたら、そのときの気持ちがよみがえってきたんです。作品を作ってファンの人と気持ちを共有することが自分なりの手法なら、小説でも変わらずそうやっていけばいいと。
―――なるほど。
泉 デビューして反発が大きかったころは、「アンディー・メンテのジスカルド」と「小説家の泉和良」の2つの人格を無理にでも分けて、別々のやり方でゲームを作って、小説を書こうとしていたんです。でも無理に遠ざけることはそもそも非効率的でもあったんです。『ジスカルド・デッドエンド』を書いた後には、「作品を作ってファンの人と気持ちを交流させるという手法は自分の根底に流れるもので、その上にジスカルドもあるし泉和良もあるってことかな」と納得するようになって。
―――自らの手法や泉さんによっての「制作者とファンの関係」を納得された上で、改めてご自身や自作ゲームについて描かれた小説はあるんでしょうか。
泉 それはたぶん、まだ書いてないんですよ。『ジスカルド・デッドエンド』で、自分のなかでは私小説的なテーマというのは一旦クリアした感覚がありましたから。『ジスカルド・デッドエンド』以後から今に至るまでは、小説家としてはフィクションを描くことに力を入れるようになったので、そこはまだ書けずじまいですね。でも、いつか書ければいいなと思っています。
―――新作『猫の彼女のESP』もフィクションに力を入れた作品のひとつ?
泉 そうですね。「世界各地の猫が超能力を使えるようになって……」というストーリーの作品なので、残念ながら自作ゲーム的な要素も私小説的要素もまったくないです(笑)。
※3月15日に星海社から発売される『猫の彼女のESP』。「最前線」で作品の詳細が告知されている。
―――でもイラストはうめ先生(漫画家。ゲーム制作をテーマにした『東京トイボックス』の作者)ですね。
泉 ああ、ここでもゲームとつながるんですね。ははは。うめさんが『猫の彼女のESP』のゲラを読んで感情移入していただいたということもお聞きしています。かなりいい本に仕上がったと思いますよ。
自作ゲームは「癒し」になった
―――かつてファンの方から「小説家になって自作ゲームを捨てるのか」と言われたという泉さんですが、実際は小説の執筆が中心となった現在でも変わらずゲームを作り続けています。あれから時間が経ち、ファンの方の反応も変わられたりしましたか?
泉 あの時反発した人がそれでも見届けてくれてそうなったのか、単にいなくなっただけなのかはわからないですけれど、今はゲームも小説も応援してくれている人が多くなったように思います。なかには「泉和良の小説もアンディー・メンテの作品のひとつなんだ」と言ってくれる人もいて……心強いですね。
―――小説家になったとき以外にも、ゲーム作りを辞めようと思ったことはなかったんでしょうか。
泉 もし僕がゲーム会社にずっと勤めていたら、いつか自作ゲームを辞めていたと思います。あのまま暮らしが安定していたら、たぶん別の趣味を見つけて自然消滅していっただろうなって。でも、やっぱり辞めることはなかったですからね。
―――では、なぜずっと自作ゲームを作り続けてきた、作り続けてこられたんだと思いますか?
泉 やっぱり、自作ゲーム1本で暮らしていかなきゃいけない期間があったからだと思います。あそこでもう怨念みたいになっちゃって、あそこで自作ゲームは一生自分の体から離れないものになった感覚がありました。
―――今までのお話をお聞きしていると、学生時代は自由奔放なミニゲーム、会社員時代は余裕ができてRPG、そして自作ゲーム1本のときはとにかく人気が出るBLゲーと、泉さんの作る自作ゲームは泉さんの人生の移り変わりをハイライトのように表しているようにも思います。
泉 ははは。自分では実感してないですけど、たしかに人生と作るゲームがシンクロしているのかもしれないです。
―――では小説家になった今、泉さんはどんなゲームを作っていらっしゃいますか?
泉 小説家になったここ2、3年ほどはオンラインゲームが多いです。MMOみたいな本格的なものじゃなくて、一部のデータを共有する非同期型と言われるものなんですけど。
―――なぜオンラインゲームなんでしょうか。
泉 小説をひとりで書いていると寂しいんですよね。今は小説を書くことが生活の中心になっているんですが、どうしても孤独になっていくんです。ファンの人と気持ちを共有できる機会のスパンが長くなっちゃうんですよ。1作を半年で書けたとしても、1年に2回しかないことになりますし。だからみんなとつながるオンラインゲームを作って、寂しさを紛らわそうとしているんでしょう。今の自分の生活のなかでは、自作ゲームは「癒し」になっているんだと思います。

※オンラインゲーム『その炭鉱の名は』。炭鉱を探索するRPG的な要素と画面上に現れる敵をクリックで倒すアクション的な要素がよい塩梅で融合されており、シンプルながらも中毒性が高い。
―――「自由奔放」や「趣味」や「怨念」を経て、今は「癒し」。
泉 癒しであり、楽しい息抜きですよね。
―――新作ができましたらぜひ『ニコニコ自作ゲームフェス』に応募してほしいです。
泉 いや、本当に応募しようかなって考えていたんですよ。でも新作じゃないとダメですよね? 自分が1月に公開したゲームを応募すればよかったなあって考えたんですが。
―――すでに発表された作品でも、2013年に発表されたものだったらそのまま応募してもOKなんです。
泉 ああ、それはいいですね。でもそのゲームは内容が政治的に非常に取り扱いにくいものなんでスルーされるんじゃないかなあ。それでもいいんだったら、スルーされること前提で応募してみます(笑)。
※泉和良さんによるニコニコ自作ゲームフェス投稿作品はコチラ
【インタビュー記事一覧】
・ならむら「英語圏で出したいというアクションを起こせば機会は増える」(代表作:『GR3』『LA-MULANA』『薔薇と椿』)
・八百谷真「ゲーム作りは欲求不満放出の場」(代表作:『囚人へのペル・エム・フル』)
・なりた「商業に応用できるアイデアや可能性を同人ゲームで探っていた」(代表作:『MELTY BLOOD』)
・cutlass「これからのノベルゲーム文化を自分が背負わないで誰が背負うんだ!」(代表作:『NOeSIS~嘘を吐いた記憶の物語~』)
・海原海豚(黄昏フロンティア)「自作ゲーム制作にはブッ飛んだ愛が必要」(代表作:『東方萃夢想』『ひぐらしデイブレイク』)
・奥井晶久「ニコニコはゲームとユーザーの接点を作ってくれる」(代表作:『ワンナイト人狼』)
・支倉凍砂「目標はハリウッドで映画化でした」(代表作:『狼と香辛料』『ワールドエンドエコノミカ』)
・竜騎士07「ニコニコ自作ゲームフェスはいい“試練の場”になる!」 (代表作:『ひぐらしのなく頃に』)
・オガワコウサク「それはもう、祁答院が作るゲームが面白いからですよね」(代表作:『コープスパーティー』)
・ZUN「『東方Project』は自分のライフワークみたいなものになっている」(代表作:『東方』シリーズ)
・SmokingWOLF「2Dゲームでできることはほぼなんでもできてしまうんですよ」(代表作:『シルフェイド見聞録』)
・【前編】泉和良「自作ゲームしかなくなっちゃったんですよ」(代表作:『自給自足』『エレGY』)
・八百谷真「ゲーム作りは欲求不満放出の場」(代表作:『囚人へのペル・エム・フル』)
・飯田和敏「自分が面白いと思うゲームを作るのが一番!」(代表作:『アクアノートの休日』)