• このエントリーをはてなブックマークに追加

今なら、継続入会で月額会員費が1ヶ月分無料!

支倉凍砂「目標はハリウッドで映画化でした」(代表作:『狼と香辛料』『ワールドエンドエコノミカ』)
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

支倉凍砂「目標はハリウッドで映画化でした」(代表作:『狼と香辛料』『ワールドエンドエコノミカ』)

2013-08-08 20:00

    3c217ff67d55f08fa6356ae71a9d2497ecc1865e

    Spicy Tails 公式サイト
    支倉凍砂 公式ブログ
    支倉凍砂 公式Twitter

    株式市場を舞台にした青春劇がつくりたかった

    6a85d0eaa95d8ef1925c3dd76f9dcc202eabe3e8
    月を舞台に繰り広げられる“株”の物語。それが『ワールドエンドエコノミカ』だ


    ―――さっそくではありますが「ワールドエンドエコノミカ」の方を1・2までプレイさせていただきました。大変面白い作品で早く続編が読みたくて仕方がないのですが。

    支倉 ありがとうございます!『ワールドエンドエコノミカ』シリーズは三部作になっていて、その最後のシリーズが今年の夏コミに発表になるので是非お願いします(笑)

    ―――これまで支倉凍砂さんといえば『狼と香辛料』、『マグダラで眠れ』といった中世ヨーロッパ的な世界観の小説作品がとても印象的でしたが、この『ワールドエンドエコノミカ』はなんと月が舞台の近未来SFで、しかも登場人物たちのやっていることは“株”というとても斬新な設定に驚きました。

    支倉 この作品を手がけるにあたり、一番最初に金融モノがやりたいという発想がありました。もともと、株や金融をめぐる逸話がとても好きで、例えば、ジョージソロスが2週間で2000億円儲けたとか、そんな面白いエピソードをずっと集めていたんです。それで大体一作作れるくらいに集まったところで、株式市場を舞台にした青春劇を書き始めました。

    ―――さらに、演出、音楽、キャラクター、背景までハイクオリティで、テーマ曲も岸田教団さんがゲームと同タイトルの曲を手がけるなど実に豪華な仕上がりとなっていますね。

    支倉 私がかつてゲームを作った経験のあるスタッフさんを、共通の知り合いなどを通じてお呼びかけして制作することができました。メインスタッフさん6人と2010年に企画を開始したので、まる3年ゲーム制作をしていましたね。岸田教団さんは、もともとのつながりがtwitterで1度絡んだことのある程度だったのですが、私がとても好きなバンドだったこともあり図々しくお願いしてみたら了承をいただけましたね。

    岸田教団とはニコニコ動画などで同人音楽を中心に活躍したバンド。
    2010年にメジャーデビュー。


    目標はハリウッドで映画化でした

    f76ecae4faa1afcf9e895276a2eb91d25975fc44
    主人公の前に現れる謎多き女性キャラクターたち。彼女たちは一体……?


    ―――そもそも、この作品はどういった経緯から生まれたものなのでしょうか?

    支倉 もともと、作家としてデビューする前から文章系の同人サークルで地道に活動していました。14歳のころによくアーケードゲームにはまっていて、今はなきゲーム雑誌『ゲーメスト』に影響されていわゆるオタクカルチャーに目覚めて、16歳ぐらいの頃から小説を書き始め、次の年には夏コミに初参戦していました。当時は、まだまだ3部くらい売れればという感じでしたが(笑)

    ―――およそ14年くらい前から小説を書かれていたということですね!

    支倉 いわゆる中二病ですよ(笑)あ、でもひとつ自慢があるのですが、まだ今のようなメイドブームがくるまえに、メイドオンリーイベントが開催されたことがあったんです。私も出席したのですが、自分のサークルのとなりのとなりが『エマ』で有名な森薫先生でした(笑)

    ―――おお!それは何と貴重な機会に(笑)

    支倉 ちょうど森薫先生が『シャーリー』を出される前後くらいだったと記憶していますね。そんなこともありつつ、二次創作とオリジナル作品を半々くらいの割合で発表していたんですけど、ちょうどそういう活動をはじめて3年か4年くらい経った時に、奈須きのこさんの『月姫』に出会ったんですよ。とても衝撃を受けまして……ジュアルノベルゲームであれだけのクオリティの作品が出来て、しかもそれが売れるということに驚いたわけです。昔は同人でビジュアルノベルゲームが売れるというイメージはとてもありませんでしたから。

    ―――では、ゲーム制作のきっかけとなった作品は『月姫』ということですね。

    支倉 そういうことですね。ただ、当時はひとりじゃとても制作できないものの、知り合いにいっしょに作ろうぜって言っては挫折の繰り返しでした。中には一人でプログラムから絵からシナリオから音楽までやってゲームを作った七月隆文さんのような方もいらっしゃいますが、私にはとても無理なので、作家としてデビューしてからできた人のつながりを作ってゲーム制作にまでもっていくことができたという具合です。

    ―――ひとつ気になっていたのですが、この『ワールドエンドエコノミカ』、フランス語版、英語版も制作されていますよね。これは一体どういった理由からだったのでしょうか?

    支倉 それはですね。この作品を一番最初に制作する時に決めた目標が「ハリウッドで映画化」だったからです。

    ―――ええ!!それはハリウッドにシナリオを売るということですか?

    支倉 そうですね。マジで考えてました。ちょうど桜坂洋さんの『All You Need Is Kill』がハリウッドリメイクされるという発表もされていたし、『フルメタル・パニック』もハリウッド映画化の噂があがっていた頃だったので、そうしたブームに合わせていこうと。それに、株式市場を舞台にした青春劇ってそもそもこんなシナリオは海外にもあまり例がないだろうからいけるのではないかと感じてましたね。三部作が完結したあかつきにはそうなると良いのですが……(笑)

    ―――そうした面も含め、かなり広い視野のもと作品を作られているのですね。

    支倉 この作品を通じて、やりたいことを全部やってみようという気持ちがありました。普段小説家として物語を発表していると、書いて担当さんに渡したら書籍になるし、編集部や営業部の方が主導で私とあまり関係のないところで話が進んでいく中で、「なんで俺には何もできないんだ。」っていう不甲斐なく思ってたのです。だから自分で全部やってみたらどうなるのだろうというところからスタートしたと言えますね。


    スタッフ「ゲームはどんなインターフェイスにしますか?」支倉「え?」

    9c176dd95337b71d1fcd1daa90da48c062d34f23
    月面世界の風景はどこも美しい。思わずゲームをストップして見とれてしまうほどだ。


    ―――そうした経緯の中でゲームを制作されることになったわけですね。一から初めてのゲーム制作は大変ではなかったでしょうか?

    支倉 作る前にこんなに大変だと分かっていたらやらなかったですね(笑)スケジュール管理が特に大変。
    執筆から打ち合わせから全部スケジュールを管理しないといけない。自分のシナリオがいつまでに書きあがって、その間にイラスト、原画の人にこれだけの作業量を依頼して、でもこの納期に間に合わせるためににはこれだけの時間がかかりそうだから何人用意してっていう大変さ、これにつきます。もちろん、スタッフの皆さんが協力してくれたからできたものですが。

    ―――制作するにあたって、ゲーム部分で参考にされた作品などはありましたか?

    支倉 いえ、行き当たりばったりでしたね。もちろんノベルゲームはこれまでプレイしたことありますし、『Natural -身も心も-』 というゲームは繰り返しやるほど大好きです。ただ、そもそもあまりゲームのインターフェイスにこだわる性格ではなかったんです。これまで遊んだゲームも内容はもちろん覚えているのですが、どういった画面構成だったかというところまで気が回っていなかったんです。だからスタッフさんに打ち合わせで、「ゲームはどんなユーザーインターフェイスにしますか」って言われて、「え?」って聞き返しちゃったんですよ(笑)。大雑把にいっても全画面に文章を表示するのか、それとも普通のノベルゲームのように下に表示するのかだけでも、見せ方はずいぶん違ってくるし、今なら、漫画みたいに吹き出しにしたりといろいろ工夫できることが多いらしくて、指摘されてはじめて気がついたところでしたね。

    ―――『ワールドエンドエコノミカ』でも、電車の中を通るシーンでは場面が暗転して線路を走る音が聞こえてくるシーンがあり、あたかもトンネルの中を走っているように感じられる工夫などが凝らされていますよね。

    支倉 ああいったシーンは演出さんが非常に頑張ってくれましたね。あらためて自分でゲームをプレイすると、やっぱり自分は小説家なんだなって思いました。今まで完全に消費者目線でゲームをプレイしていて。作る側の視点というのに気づいてなかったので、完全にそうしたところは盲点でした。だからこそ制作しはじめて、たいへんいろんなことに気づかされましたし、勉強になりました。

    ―――ゲームを制作するのと、小説を執筆するのとでは意識にどういった違いがありましたか?

    支倉 シナリオ執筆自体はとても楽しいものでした。小説の枠組みとは違うので、これを一冊にした時にどうなってしまうんだろうと考えずにいられたおかげかもしれません。例えば、小説だと構成する際に、一冊の本にするために余分な日常パートを削ったりしなくてはならない場合というのがありますが、ゲームだとその辺りがかなり緩い。また、この『ワールドエンドエコノミカ』は原稿用紙で3500枚くらいなのですが、もしこれを小説シリーズにしても、相当分厚くなるし上下巻に構成できる内容じゃない。そうした縛りにとらわれず自由に書けたというところが楽しさにつながったと感じます。
    ※例えば、電撃文庫では400字詰め原稿用紙換算250~370枚が長編部門の枚数。原稿用紙3500枚とは、電撃文庫7冊~9冊の間ということになる。

    ―――そうしたシナリオをゲームに落とし込んでいく中で工夫した点はどういったところでしょう?

    支倉 『ワールドエンドエコノミカ』だと、画面に表示される文字数が35文字なので、一文がふたつにまたがると頭の中に説明が入ってこないんです。小説だとあまり感じなかったことなのですが、ゲームだとちょっと文章が長くなっただけで、自分でも何を書いてあるのか分からなくなってしまう。なので、そういうところは説明自体を変えたりしましたね。文章は同じなのに見せ方でこんなにも受け方が変わるものなのかと思いました。これを例えば、オートモードにして読んでみるだけでも、さらに読み方は変わるだろうし、細かい伏線などは自分でも読み飛ばしてしまうことがあったりしますから。

    ―――他にもゲームをつくる上で、こころがけたことはなんでしょうか?

    支倉 とにかく「背景はきれいに」ということですね。背景専門の絵師さんにお声がけしましてそこは丁寧に仕上げていただきました。

    ―――たしかに、舞台となる月に天井がかかっていて、そこからスプリンクラーのような雨が降ったり晴れたりするという背景が一枚絵でとても綺麗に描かれていましたね。

    支倉 設定自体は私が考えて、細かいディテールについては背景さんにお願いしました。そもそも背景に凝った理由も、長々と文章の描写で説明しても難しいと感じたし、会話文を多めにしたいという気持ちもあったので、作品世界にリアリティをもたせ、重厚な仕上がりにするためにも、背景には特に力を入れなければと考えていたからですね。考えてみればそういうところにも小説とゲームの違いというものはありましたね。

    これきっかけで株を勉強してみたくなったりしたら……

    ―――そういった苦労と工夫のすえに完成した『ワールドエンドエコノミカ』ですが、ユーザーからはどういった反応が返ってきていますか?

    支倉 プレイしてくださった方は面白いと言ってくださいますね。夏コミで販売したときは20歳以上の人達が中心に購入してくださいました。もともとこのゲーム「どんな中身なんですか?」って言われるとちょっと説明しづらくて困ることもあるのですが、手にとってくれた人からは、「今まで株なんて全然知らなかったけれども、おもしろかったです。」って言ってくださる方もいて、それはとても嬉しいです。

    ―――この作品は、どういった人たちに届けたいと考えていますか?

    支倉 一番メインで手にとってほしいのは、株をちょっとやってみたいとか、経済をやってみたい人ですね。
    もちろん、ドップリとハマり込んでいる人からの反応も嬉しいですし、デイトレーダーやっている方からTwitterで返信がきて驚いたこともありました。ただ、これきっかけで株を勉強してみたくなったりしてくれると大変嬉しいですね。

    ―――思えば、14歳のころから今に至るまで、ずっと本やゲームといった創作活動を続けていらっしゃるわけですが、モチベーションは一体なんでしょうか?

    支倉 会話する相手がいないから、自分の話を聞いてもらう手段がないから、その気持ちを糧に本やゲームにしています(笑)。私にとっては「俺の話を聞け!」っていう思いを発散する場所なので。
    それから、読んですごい面白い本が一冊あって、これをぜひみんなに知ってほしいというオタク心ですかね。面白い本があったらレビューを書きたくなるような感じです。

    ―――実際、『狼と香辛料』もネットの感想の中には、「これを読んで経営に目覚めた。商学部に入った」といった声も見受けられます。

    支倉 たまに見かけますね。本当だったらとても嬉しいことです。『狼と香辛料』にしても、面白さを伝えたいという気持ちがあって書いたものなので。

    ―――『ワールドエンドエコノミカ』にしても、今まで金融モノの青春劇というものに触れたことすらありませんでしたが、その詳しい描かれ方に、「これは全然手を抜いて書かれてないな」っていう感じが伝わってきましたね。

    支倉 本当ですか!!それは嬉しいですね。どこまで金融的なギミックが成立しているかわからないけれど、勉強欲なんかを掻き立てていただければとも考えています。

    ―――今後もまだゲーム作りは継続していくのでしょうか?

    支倉 そうですね。『ワールドエンドエコノミカ』は資料を集めて読むのに三年はかかっているので、新しい企画が出るとしたら三年後になりますかね。(笑)次は現実とリンクした作品が作りたいと考えています。

    全く違うジャンルに挑戦することで新たな表現は生まれる

    ―――この記事が掲載されるニコニコ自作ゲームフェス2のサイトには今でもたくさんのゲームが公開されていますが、現状のゲーム制作の盛り上がりをどのように感じられていますか?

    支倉 見ましたけど、みんなすごいですよね。プロの人大変だなと思います(笑)

    ―――こうしてゲーム制作している人たちに支倉さんからアドバイスできることはなんでしょうか?

    支倉 たまに全く別ジャンルの活動をすると面白いことがあると思います。たまにはゲーム以外の作品を作ってみたりしてるといったことです。私にとってもゲーム制作は本業の小説を書く行為とは違うものだったので、書いているうちにたくさん学ぶことが多くありました。逆にゲームを作ってる人も、小説を書いてみたりしても新しい発見があるかもしれません。

    ―――実際にゲームを制作されて支倉さんが学ばれたものはどういったことだったでしょうか?

    支倉 シナリオを書くというリソースをどこに向けるかという発想ですね。小説だけ書いているとどうしても発想が小説一方向に向いてしまいがちになります。しかし、ゲーム作ってみたおかげで、そこからもう一歩先が視野に入ってきました。そこには自分が利用できるツールにはこんなのもあるんだっていう驚きや、新しい表現との出会いがあります。

    ―――つまり、違う表現を学ぶことでゲーム制作のヒントになるということですか?

    支倉 それだけじゃなく、あるいは全く新しい何かが生まれるかもしれない。そんな可能性もあるので、どんどん別ジャンルに飛び込んでみてください。

    ―――大変貴重なアドバイスありがとうございました!


    【インタビュー記事一覧】


    八百谷真「ゲーム作りは欲求不満放出の場」(代表作:『囚人へのペル・エム・フル』)
    なりた「商業に応用できるアイデアや可能性を同人ゲームで探っていた」(代表作:『MELTY BLOOD』)
    cutlass「これからのノベルゲーム文化を自分が背負わないで誰が背負うんだ!」(代表作:『NOeSIS~嘘を吐いた記憶の物語~』)
    海原海豚(黄昏フロンティア)「自作ゲーム制作にはブッ飛んだ愛が必要」(代表作:『東方萃夢想』『ひぐらしデイブレイク』)
    奥井晶久「ニコニコはゲームとユーザーの接点を作ってくれる」(代表作:『ワンナイト人狼』)
    竜騎士07「ニコニコ自作ゲームフェスはいい“試練の場”になる!」 (代表作:『ひぐらしのなく頃に』)
    オガワコウサク「それはもう、祁答院が作るゲームが面白いからですよね」(代表作:『コープスパーティー』)
    ZUN「『東方Project』は自分のライフワークみたいなものになっている」(代表作:『東方』シリーズ)
    SmokingWOLF「2Dゲームでできることはほぼなんでもできてしまうんですよ」(代表作:『シルフェイド見聞録』)
    【後編】泉和良「自作ゲームは一生自分の体から離れないものになった」(代表作:『自給自足』『エレGY』)
    【前編】泉和良「自作ゲームしかなくなっちゃったんですよ」(代表作:『自給自足』『エレGY』)
    八百谷真「ゲーム作りは欲求不満放出の場」(代表作:『囚人へのペル・エム・フル』)
    飯田和敏「自分が面白いと思うゲームを作るのが一番!」(代表作:『アクアノートの休日』)
    チャンネル会員ならもっと楽しめる!
    • 会員限定の新着記事が読み放題!※1
    • 動画や生放送などの追加コンテンツが見放題!※2
      • ※1、入会月以降の記事が対象になります。
      • ※2、チャンネルによって、見放題になるコンテンツは異なります。
    ブログイメージ
    RPGアツマール
    更新頻度: 不定期
    最終更新日:
    チャンネル月額: ¥550 (税込)

    チャンネルに入会して購読

    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。