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なりた「商業に応用できるアイデアや可能性を同人ゲームで探っていた」(代表作:『MELTY BLOOD』)
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なりた「商業に応用できるアイデアや可能性を同人ゲームで探っていた」(代表作:『MELTY BLOOD』)

2013-12-13 15:59
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    怒ってくれるメンバーがいるから頑張れる

    高校時代、いっしょに格闘ゲームの攻略同人誌を作っていた、なりた氏と藤崎氏。「渡辺製作所」として参加したコミケで同人ゲーム文化に触れ、自分たちでもゲーム制作を始めることに。
    その後、ゲーム制作会社に2人で就職したものの、1年ほどで倒産。これによりできた時間で、二次創作格闘ゲーム『THE QUEEN OF HEART』('98年)を完成させたという。以降、数多くの同人ゲームを公表。'03年には体制を変え、サークル「フランスパン」をスタートした。


    ―――サークル「フランスパン」さん、今は何人体制なんですか?

    なりた 今は内部で10人ですね。外注的にお願いしてる方もいます。

    ―――人が増えるのはどういうタイミングなんでしょう。

    なりた 飲み会などで接点を持って、“人柄に惚れる”相手を誘うことが多いですね。楽しい人だったり、技術がすごい人だったりと理由はさまざまです。ネットでの応募なども多いですが、やはりお会いした際の人柄は重要ですね。集団制作なだけに。

    ―――チームでゲームを制作する良さを感じるのは、どういう時でしょう。

    藤崎 なりたと実際にゲームを作り始めたのは高校卒業後なんですが、その前に自分ひとりでゲームを作っても、完成させられなかったんですよ。でもなりたが引っ張ってくれると、ゲームを完成させられるということが分かって。
    チームで制作していると「さぼるんじゃない!」と怒ってくれる人がいるので、頑張ることができる(笑)。ひとりじゃできなかったものが、2人、3人で作ることでゲームが完成する、やっとそこで「ゲーム作りって楽しいな」と思えたんです。

    ―――逆にチーム制作でネックだなと思ったところは?

    なりた 組織が同人サークルとして始まるとメンバーの立場が横並びになるので、決定権を持つ人が明確でなくなりがちです。僕らも20年近く悩んだところではありますね。

    藤崎 みんながみんな決定権を持っていると、会議で結論が出ないまま終わったりとか。

    なりた 何か決めなきゃいけない時に、「じゃあ誰が決めるの?」というところから決めないといけないとなると余計ね。


    “持ち回り代表”で全員が責任者の苦労を味わうとうまく行く


    ―――そういう問題が起こった時は、どうやって対処しているんですか?
     
    藤崎 僕らの場合だと「今回は自分の言うこと聞いてくれ、次はキミが好きなもの作っていいから」という感じで、ゲームごとに決定権を持つ人を変えていたりします。“アメとムチ”じゃないですけど(笑)。

    なりた そう、“持ち回り代表”的なことでね。でもこれをやると、各自が代表者の苦労が分かるからいいと思いますよ。

    藤崎 同人ゲームはみんなが平等、各自が決定権を持つことがよくて始めたりするので、すごいジレンマだと思います。でも、たとえばゲームが1本ヒットして、少し規模を大きくしたい、人を増やしたいとなった時、絶対に“誰が責任者になるの”という問題が起こってくる。

    ―――そこで編み出したのが“持ち回り代表”制なんですね。ちなみに、過去にサークル解散の危機が起こったことは?

    なりた そこまではないですかね。

    藤崎 大きなものはなかったですが、ゲームを作っているとどうしても意見の衝突はあります。

    なりた 格闘ゲームのシステムでAがいい、Bがいいと衝突した時は、まずAでゲームを完成させて、その後にBがいいと言い出した人が責任者になって、別のゲームを完成させればいい。ひとつのゲームにすべての思想を混ぜてしまうと、“混ぜるな危険”でよく分からないゲームになってしまうと思うんですよね。

    藤崎 責任者が他人の意見を聞かずに何もかも決定するトップダウン形式は、さらにもめごとが起こりやすい気がします。うちでは、意見はきちんと聞くけれど、取り入れるかどうかは責任者が決めています。


    “好き勝手できる”のは同人ゲームならでは


    ―――話は変わって、具体的なゲームタイトルについて伺います。'02年頃、渡辺製作所さんがTYPE-MOONさんとの共同制作、しかも公認ゲームとして『MELTY BLOOD』を制作されたことに当時は驚いたのですが、『メルブラ』の制作はどなたが決定されたんですか?

    なりた あれは特に明確な始動があったわけではなく、元々知り合いの同人誌へのゲスト原稿が始まりでした。冗談企画として描いたら、それを見たTYPE-MOONさんが面白がってくれて、さぁじゃぁどうやってこれ作りましょう、みたいな感じで(笑)。

    藤崎 いやもう、こちらとしては声を掛けられて恐縮しきりでしたよ。半分冗談だったものが「えっ、ご本人たちが!?」という感じで、TYPE-MOONさんとの共同制作という形にまでして貰ったものですから。

    なりた 『メルブラ』の“公認”化は、僕らの転機になりました。ネットとPCの爆発的な普及で同人ソフトが一気に大きくなった時代で、人様の版権を踏み荒らしながらゲームを作り続けることの危うさを感じていたので、どこかで改めたいと思っていたんです。だからお話をいただいたことは嬉しかった。
     
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    '02年公開の『MELTY BLOOD』は、同人サークル「TYPE-MOON」との共同制作作品。テレビアニメ化もされた人気ゲーム『月姫』のキャラクターが登場する2D格闘ゲームで、同人ゲームから始まり、アーケードやPS2、Windowsへと移植が行われた。

    ―――なるほど。『メルブラ』はコミケで発表後、アーケードゲーム、つまり商業のフィールドでも展開していくことになりました。

    なりた あれはエコールさんの手柄というか先見の明でしたね。もちろん商業タイトルを出すということ自体も、僕にとってやりたかったことだったんですが。

    ―――それはなぜでしょう?

    なりた 端的に言うと口惜しさがあったんですよね。格ゲー好きがきっかけで憧れのゲーム業界に入ったのに、実際にはほとんど制作に携われずに会社が倒産してしまって(笑)。だからメルブラのアーケード化の当時は「今度こそ!」と意気込んでいました。

    ―――では、商業と同人の2足のわらじを履いてみて分かった、同人ゲームを制作することの魅力は?

    なりた 初歩的ですけど、商業はやっぱり絶対的な納期がありますよね。同人はそこがゆるいのがいいと思います。コミケの締め切りの方が動かせないってのはありますけど(笑)。

    藤崎 自由度の高さという点は同人は本当に良いですね。開発途中ぐらいまではスケジュールをある程度変えても、当事者以外そこまで迷惑がかからないですからね。

    なりた まあ実際、最近は同人も商業も垣根がない時代だとは思いますけど。作り方も考え方も。ちょっと前までは「商業に行ったら同人に戻ってくるのは出戻りみたいで恥ずかしい」って風潮が僕の中にはあったんですけど、最近この辺の境界線気にしてるの僕だけだなーって(笑)。商業が絶対上だって考えるのはもうナンセンスだと思いますね。

    藤崎 同人のメリットであるフットワークの軽さを利用して実験的な試みも出来ますしね。『メルブラ』を商業ゲームにする時も、当時同人で考えていたアイデアを加えていたりしますし。

    なりた 同人ではいわゆる「ネタゲー」みたいなワンアイデアを見せるためだけにゲームを作れますが商業だと気楽にはいかない。アイデアを中心にして、商品としてのボリュームをいろいろ足さなければいけなくなる。本来やりたいこと以外も作業が増えて、最終的にゲームを作るのがつまらなくなるくらいだったら、同人で好きなことをやるのもいいと思いますね。
    同人では小さい規模のゲームをそれこそ好きに作れる。この箱庭的な楽しさは「同人ならではだな」と感じます。

    藤崎 最近は『UNDER NIGHT IN-BIRTH』('12年)を作っていたので、同人活動が全然できてないんですけど、いつかまた始めたいですね。
     
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    『UNDER NIGHT IN-BIRTH』はアーケード用の2D対戦格闘ゲーム。フランスパン初の完全新作の商業ゲームでもあり、精微に書き込まれたドット絵の美しさが目を引く。現在も全国のゲームセンターで稼働中。


    「なんだそれ」というゲームも動画を見ればプレイしたくなる


    ―――これからの話が出ましたが、お2人が個人として、そしてフランスパンさんとして、これから作ってみたいゲームはありますか?

    なりた 僕自身はこれからも格ゲーを作り続けていきたいです。あとはスマホゲーも作ってみたいですね。スマホの格ゲーは無理でしょうけど(笑)。課金したくなるゲーム作りたいんですよ。あ、これも格ゲーは無理ですけど(笑)。

    藤崎 僕もいろいろ考えていますけど、ひとりでは作れないですからね。みんなに次のゲーム案をいつ言い出そうかって考えています(笑)。

    なりた ゲームを見たりプレイしたりして、自分だったらこう作るのに、自分だったらもっと上手く面白く作ってやるのに、って気持ちはすごい大事だと思うんですよ。僕が格ゲー最初に作ったのも、好きだったゲームの不満な点や改良したいという点を僕なりにアレンジしていった感じでしたし。今のゲームに不満があるなら自分で作れ、というのはまぁこういった自作ゲームフェスに興味のある皆さんには言わずとも解って貰えると思います。


    ―――最後に、ニコニコ自作ゲームフェスについてはどう思われますか?

    藤崎 僕らはいわゆるコミケでやるような“同人ゲーム”文化しか持ってなくて、今話題のインディーズゲームや、ニコニコ動画さんがやられているような自作ゲームの文化は1ユーザーとして楽しませてもらっている感じなんですが、面白いですよね。まずは動画を見てみんなで盛り上がったりくさしたりして、評価していくっていうプロセスがまさに「ならでは」で。

    なりた ゲームをプレイしてもらう導線として、まずは動画があるっていうのは解りやすいし面白いよね。

    藤崎 概要だけ聞かされると「なんだそれ」っていうゲームも、とりあえず動画を見ると、ダウンロードしてみようかな、プレイしてみようかなとなるんですよね。自作ゲームフェスでウケやすいのは、気軽にコメントできてぶっ飛んだ一発ネタ系のゲームなんでしょうけど、そういうのだけじゃなくいろんな作品が出てきてほしいです。

    なりた そうですね。動画で気軽に内容を見れる良い時代になりましたので、是非活用して盛り上がって欲しいです。ゲームってプレイするのもそれを見るのも面白いですが、作るっていうのはまた別格なおもしろさがあるので、多くの方に制作側にまで踏み込んでもらいたいですね。

    ―――ぜひ、フランスパンさんの活動同人再始動時は、ニコニコ自作ゲームフェスにも!

    なりた ハハハ。何か思い付いたら、ばれないようにコッソリ投稿しておきます(笑)。


    (インタビュー・村井克成/構成・市川美穂)



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    竜騎士07「ニコニコ自作ゲームフェスはいい“試練の場”になる!」 (代表作:『ひぐらしのなく頃に』)
    オガワコウサク「それはもう、祁答院が作るゲームが面白いからですよね」(代表作:『コープスパーティー』)
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