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「残さなければ残らない、それが歴史」(タイニーP)【自作ゲームwikiに寄せて】
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「残さなければ残らない、それが歴史」(タイニーP)【自作ゲームwikiに寄せて】

2015-09-04 17:00
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    タイニーP(やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史)

    1983年末、「ファミコンかパソコンが欲しい」と親にねだったところファミコンがNGとなったことが、ある意味すべての始まり。足かけ30年後の2013年3月、ブログで「やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史」の掲載を開始。
    話のストックがほとんどない状態で見切り発車のように載せ始めたため、当初は1983年から1985年ごろの話を書くところまで続けるのが目標だったのが、書いては載せを繰り返していくうちに、1997年ごろまでの20年を描くという長大シリーズへ発展。2015年3月に約2年間の連載を完結、その後の展開を模索中。

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     こんにちは、タイニーPです。私は、自分のブログにて、日本のパソコン……特に入門やゲームなど趣味に使われることの多い「ホビーパソコン」を紹介する、「やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史」というシリーズを書いていました。その中で調べたことをもとに、先日開催されたニコニコ闘会議の「自作ゲーム大年表」に付箋でいろいろツッコミを入れていたところ、お声がかかりまして、このWikiをお手伝いさせていただくことになりました。

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    やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史 第1話

     私の「タイニーP」という名前は、ニコニコ動画に「143,000円の機械シリーズ」を投稿し始めたころに、動画をご覧になった方からいただいたものです。
     「143,000円の機械」というのは、NECのパソコン「PC-6601」のことです。標準価格がその値段だったんですね。音声合成機能を持ち、さらに歌うこともできたパソコンで、動画には「昭和のボーカロイド」なんていうタグも付きました。
     残念ながら、1983年に私が買ってもらったものは、いろいろ故障してしまったので、動画は実際の機械から収録したものではないのですが。

     ところで「タイニーP」の命名は、PC-6601をはじめとする機種向けに発売された、ナムコの「ゼビウス」を原作とするゲームソフト「タイニーゼビウス」にちなんでいます(名付けた方が直接言及したわけではありませんが、そう解釈するのが一番無理がないでしょう)。
     このソフトは、ナムコのアーケードゲームのパソコンへの移植を募っていた電波新聞社に投稿されたものでしたが、その作者の松島徹さんは、当時中学生。その後もアーケードゲームの移植を含め、数々のゲームソフトに携わられた、私たちの世代にとっての「伝説のプログラマー」の一人です。なお最近では、「SF特攻空母ベルーガ」で改めてその名を轟かせています。


    「パソコンを楽しむ」≒「自作ゲームに触れる」だった頃


     一方、そんな伝説を仰ぎ見るしかなかった私ですが、1980年代中盤からパソコンに親しんできたわけで、やはり何かにつけ、投稿ゲームや同人ゲームなどの、今で言う自作ゲームに触れてきました。

     まず、PC-6601を入手した直後の1984年。
     PC-6601は、NECのパソコンでは初めて3.5インチのフロッピーディスクドライブを内蔵した、先進的な機種でしたが、フロッピーディスク版の市販ゲームソフトがあまり増えないのが泣き所でした。それを救ってくれたのが、先に挙げた電波新聞社の「マイコンBASICマガジン」、通称ベーマガ。主にBASICを使った、短めのゲームプログラムのリストを掲載している雑誌です。
     そもそもPC-6601を選んだのは、すがやみつる先生の漫画「こんにちはマイコン」シリーズで題材となった、PC-6001の姉妹機だからというのが最大の理由でした。この漫画のおかげで、BASICの基礎はある程度わかっていましたから、ベーマガのプログラムを入力したり、改造したりして楽しむことができました。
     ただ、居間のテレビにつないで使っていたこともあり、プログラミングにじっくり取り組むというところまではいきませんでした。その後は、ベーマガに載っているゲーム音楽の楽譜を入力して、演奏させるといった使い方のほうが増えていきます。

     1986年ごろになると、近所の友人の親御さんが、会社の仕事の残りを家でやるために、同じくNECのPC-9801VM2を買いこむという「事件」が発生します。本体とディスプレイだけで標準価格では50万円をくだらないという、子供には当然手が出ないもので、これ幸いと、よく遊ばせてもらいました。
     友人宅のパソコンデスクには、出所不明のゲームが複数入った、謎のフロッピーディスクがいくつかあったのですが、今振り返ると、どうやら投稿ゲームのレベルの高さで知られた雑誌「I/O」の掲載作品が多く含まれていたようです。友人はその後、日本ファルコムの「イース」や「ソーサリアン」を買って遊んでいたのですが、受験を迎えたころに全部捨てられてしまったとか。ああ、もったいない。

     1989年には、別の同級生が、MSX2をフロッピーディスクドライブ付きで3万円と、なかなかの安さで譲ってくれました。PC-6601にはすっかり出なくなった、市販のゲームを楽しみたいというのが大きな目的でしたが、翌1990年、思いがけず、同人ゲームに特化した即売会「パソケット」に足を運んで、その世界を垣間見ることになります。このころの同人ゲームは、NECのPC-8800とPC-9800の両シリーズ、シャープのX68000、そしてMSXが4大勢力でした。
     パソケットは、サークルがパソコンやディスプレイを持ち込んでの派手なデモンストレーションが目立ち、コミケとはだいぶ違う雰囲気の即売会でした。コンセントが使えないコミケでは、同人ゲームのデモンストレーションは、わりと珍しかったのです。というのも、今挙げた4シリーズの中で、バッテリーだけで動作できるラップトップ型やノート型の機種があったのは、PC-9800だけだったからです。

     1992年には、フロッピーディスクの付録が売りの「MSX・FAN」を買い始め、ゲームに限らず、バラエティとアイデアに富んだ投稿ソフトに舌を巻いたり、パソコン通信で流通するフリーソフトの使い方を学んだりしていました。そして年末には、中古でエプソンのPC-9800互換機を入手。PC-9800シリーズ用のフリーソフトを探す中で、Bio_100%の「Super Depth」などの作品群に触れ、またPC-9800用の同人ゲームに触れるようになります。
     このころには、秋葉原にも同人ゲームの委託販売コーナーを設ける販売店が出てきていて、即売会で完売して入手できなかったものを、店頭で買うことができるようになっていました。


    「やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史」を書いたわけ


     さて、こんな私が「やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史」を書き始めるそもそものきっかけとなったのは、PC-6601も含め、1980年代中盤のパソコンがいつ、つまり何年何月に発売されたのかをいくつか調べたことです。
     なぜそれを調べたのかと言えば、ニコニコ大百科の「PC-6601」の項目で、発売日についてはっきり述べられていなかったからです。私自身、2009年にこの項目に一度手を加えましたが、そのときからずっと、頭の中で引っかかっていたのです

     このころのパソコンは、特にファミコンブーム以降の家庭用ゲーム機とは違って、何月何日発売という情報が、それほど細かく気にされていたとは言えません。またパソコン雑誌は月刊誌が多かったため、雑誌の発売前に製品が発売される場合、新製品を紹介する記事でも、発売年月を省いて書かれてしまいがちでした。
     つまり、後から発売日の情報を追うのも、意外に面倒だったということです。PC-6601についても、1983年末に発売されていたことはわかっていましたが、ではそれが12月なのか、11月なのかということが、手近な情報源でははっきりしませんでした。

     つまるところは個人的な興味から始めた調査ではありましたが、あやふやな情報を確かめ直すことで、出来事の前後関係を整理できるようになり、新たな発見を得られ、時には勘違いに気付けるということが改めてわかりました。
     さらに調査を広げて、その結果をまとめれば、自分だけでなく、当時の出来事を直接体験した人たちにも、新たな発見、新たな視点を提供できるのではないかと考えたわけです。

     「やる夫と学ぶ~」を書き始めた動機としてはもうひとつ、日本のパソコンの歴史についてまとめた書籍にいくつか目を通して、1980年代後半から、16ビット以上の実用向けパソコンの話題が中心になっているところに、食い足りないものを感じたことも挙げられます。
     もちろん、パソコン関連技術の進展という点でも、またパソコン市場の成長という点でも、PC-9800シリーズをはじめとする実用向けの機種が主役になるのは、当然のことでしょう。
     しかし一方で、PC-8800、富士通のFM-77、シャープのX1、そしてMSXといった低価格帯の機種は、高機能化を続ける家庭用ゲーム機と比べられながらも、家庭で使われるパソコンを目指して各社が試行錯誤していました。また実用向けパソコンと同じような価格帯にも、NECのPC-88VA、X68000、富士通のFMタウンズといった、より高度な映像機能やサウンド機能を追求した機種が、いくつも登場しています。
     そして、これらホビー向けと言われる機種を中心に黎明期から続いてきた、実用とは異なるパソコンの使い方からも、後の世の中に影響を与えるものが現れています。これらの一部でも、パソコンの歴史とつながっているということを、自分よりも後の世代に知ってもらえればと考えたのです。

     投稿ゲームや同人ゲームから商業ゲーム作品への発展は、そのようなつながりの典型ですが、他にも例えば、「通信カラオケ」を挙げることができます。
     通信カラオケの草分けのひとつで、1992年に登場したエクシングの「JOYSOUND」。このシステムは、親会社にあたるブラザー工業が1986年に正式運用を始めた、パソコンゲームのデータをフロッピーディスクなどに書き込んで販売するという自動販売機、「ソフトベンダー武尊(タケル)」の通信システムやサーバーをもとに構築されたものでした。

     通信カラオケは、これ以前に、音楽を圧縮してデジタル通信回線で送る「Kシステム」をアムカードという企業が開発していました。しかし当時の圧縮技術と通信速度では、音楽をモノラルで送るのが精一杯で、実用上は課題が多いものでした。一方JOYSOUNDなど、このころ商用運用にこぎつけた通信カラオケは、端末にはシンセサイザーを内蔵し、音楽そのものの代わりに、楽譜に相当する演奏データを送るという形にすることで、通信費用を大幅に削減したのです。
     そしてこういった端末を安く提供できるようになったのには、1台で複数の音色やパーカッションを同時に発音できるシンセサイザーをパソコンと接続して、個人で作曲や演奏を楽しむという、「デスクトップ・ミュージック」のブームも、背景のひとつとして挙げられるでしょう。


    残さなければ残らない、それが歴史


     この通信カラオケに限らず、今当たり前に使っているものが、その源流をたどっていくと意外なものにつながっているということは、珍しくありません。逆に言えば、今あるものがこの後何につながっていくのかを予測するのは、なかなか難しいということでもあります。

     ところで先に挙げた話のうち、JOYSOUNDについては、テレビ番組でも取り上げられたことがあるくらいで、それなりに知られていると思いますが、一方でKシステムについては、私もブログを書くにあたって当時の新聞を調べていて、初めて知ったものです。今となっては、少なくともウェブ上には資料はまるで見当たりません。
     これがもし、運悪く新聞記事にもならなかったとしたら、カラオケの歴史からはまったくなかったことになっていたかもしれません。いやむしろ、まったくなかったことになっているようなものは既にいくらでもあって、Kシステムは、運よく新聞記事になっていたというだけなのでしょう。

     自作ゲームについても、同じことが言えます。つまり、今ある自作ゲームが今後の何とつながっていくのかを予測するのは難しいのですが、ある時点から過去を見直す必要が出てきたとき、記録が残っているのは、とても大事なことです。記録がなければ、過去とのつながりがわからなかったり、うまく掴めなかったりしてしまいます。
     そして、パソコン通信やウェブで配布されたゲーム、あるいは即売会でだけ頒布されたゲームなどは、運よく雑誌で取り上げられればまだしも、記録されなかったものは、本当に残らないと考えてまず間違いないでしょう。

     少し堅い話になってしまいましたが、まずはこのWikiを、肩肘張らずに、あなたのお気に入りの自作ゲームについての情報を書き込んだり、読んだりして楽しんでください。
     そしてもし余裕があれば、「自分以外に誰が知ってるんだ!?」というような、いわば「誰得」な自作ゲームも、ぜひこのWikiに書き込んでみてください。もしかしたら、あなた以外にそのゲームを知っている人が、あなたの知らない情報を書き加えてくれるかもしれません。

     それでは、よろしくお願いします!

    (了)


    今月より放送を開始する「月刊ニコニコ自作ゲームフェス」、第1回は「夏コミ特集」です。夏コミで頒布された同人ゲームのピックアップ、名作自作ゲームや動画の紹介、ニコニコ自作ゲームフェス投稿作品の紹介やゲームの制作講座など盛りだくさんの内容でお届けする予定です。ぜひご覧ください!



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