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気がつくとツクール作っていました・後編(重歳謙治)【自作ゲームwikiに寄せて】
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気がつくとツクール作っていました・後編(重歳謙治)【自作ゲームwikiに寄せて】

2015-06-26 19:00
  • 5
気がつくとツクール作っていました・前編(重歳謙治)

引き続き、自作ゲームwiki編集委員に寄稿いただいた文章を公開します。

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重歳謙治

学生時代になんとなく手にしたツクールがキッカケで、無職から開発側の人間に。RPGツクール95でアスキーエンタテインメントソフトウェア コンテスト(略称:Aコン)にチャレンジしたり、RPGツクール2000、RPGツクールXPでサンプルゲーム制作、 RPGツクールVX、RPGツクールVX Aceでは開発ディレクターをやらせていただいたりと、かれこれ20年以上ツクールと付き合っています。あと、インターネットコンテストパークの審査ス タッフもやったりしていました。好きな言葉は「明日から本気出す」です。

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作品を通して作者の魂と向き合うお仕事


 おれはアスキーに入ったと思ったら、エンターブレインに入っていた。催眠術だとか超スピードだとか(以下略)。当時は、ツクール開発部ではなくデジタルファミ通編集部という部署名でした。そこは、のちに和尚と呼ばれる杉内P率いる30人以上の大所帯でした。全盛期は100人ほどいたそうですが。
 ちなみに、全員がツクール開発に携わっていたわけではありません。担当するソフトごとに細かくチーム分けされておりました。

 僕の最初のお仕事は雑用&web更新&インターネットコンテストパーク(コンパク)担当だったと思います。話の流れもありますので、ここではコンパクに絞ってお話します。
 審査担当は、入れ替わりはありましたが、常時4人くらいいました。毎月、10~20作品が届き、このころはエントリー制をとっていたので、届いた作品は、全作品を掲載していました。公開と同時に審査担当者が作品のプレイを始めます。更新日の10日くらい前になると、全員でそれぞれの作品の評価を述べます。そのときに「この作品は●賞」みたいな感じで賞も決めていきました。
 コンパクの特徴としては、受賞を逃してしまった作品にも、ちゃんとコメントを書くルールがあったことです。落選の理由を書くだけでなく、なるべくアドバイスを添えるように意識していました。

 そして、一番みなさんが気になる作品の評価ポイントは“魂”。誰も言葉には出しませんでしたが、完成度、おもしろさを見ながらも、作品に内に込められた“魂”を感じ取るのが審査の核だったと信じています。入ったばかりの僕は、まともに文章を書いたことがなかったのでコメントひとつ書くのにも、原稿に赤を入れられまくりでした。
 また、受賞者に連絡するのも僕の役割で、先方のお母さんにセールスの電話だと思われて切られたり、電話が苦手な受賞者に連絡したときにはご家族を通して会話させてもらうなど、いろんなことがありました。


個性豊かな作品との出会い


 『インターネットコンテストパーク』には、実に個性的な作品が投稿されました。最年少は9歳の女の子が作った『ポチの大冒険』。最年長は66歳の好きやねん(P.N)さんが作った『魔の蘇る日』だったと思います。
 好きやねんさんの作品は、中学生の孫のために作ったという力作RPGで、驚いたのはフラグによる管理が一切されていないこと。いちどクリアした町やダンジョンに入ると、何度でも同じイベントが発生します。あとからお手紙でそのことをお伝えしたところ、ご本人はまったく気づいておらず、そこからしばらく文通になって(メールがよくわからないとのことで)、いろいろなことをレクチャーさせていただきました(笑)
 そのほかにも、BGMが作者の鼻歌(そして曲はドラクエのアレフガルドのテーマ)の作品や、作者自らが全キャラ分のヴォイスを当てた(もちろん女性キャラも)意欲作など、受賞は逃しながらも、我々の予想をフルスイングで吹き飛ばすような作品に出会いました。

 とても不思議なことですが、インターネットコンテストパークには、ガチで作られた作品も、ネタで作られた作品も、等しく受け入れる器があったのです。その中でも、特に印象に残った作者さんについてお話させていただきたいと思います。(ボリュームの関係上、ここでご紹介できなかった方、ホント申し訳ありません!)
 まず、トップバッターは、クソゲー(自己申告)『ときめきメロディー』を作ったH&Kサファリパークさん(酢さん)。この作品は、おそらく今後も現れることはないであろう、正真正銘の“クソゲー”です。トラウマ100%のキャラ、ヒフミちゃんの存在からして、とにかく画面内はう○こ尽くし。たぶん、これを選んだ担当者(実はO貫さんですが)は、徹夜時に突然おとずれるハイテンションタイムに選んでしまったのか、怒られたら焼き土下座も辞さない覚悟で受賞させたのだと思います。
 続いては、ゆわかさん。代表作はひとつに絞れないほど、たくさんの作品を生み出された方で、強いて挙げるならば『RPGツクール2000』のサンプルゲーム『修道院』でしょうか。『修道院』はいわば『RPGツクール2000』初のアクションゲームで、コープスパーティーを作られた祁答院さんも、僕も大好きな作品です(関係者によるRPGツクール2000のサンプルゲームで、どれが好きかアンケート調べ)。ゆわかさんのすごいところは無限の創作意欲。ゆるさと楽しさが織り交ざった空気感は誰にも真似ることができない、アマチュアクリエイターの鑑です。
 また『ログインソフコン』時代から活躍されていたSKさんは、独特の風格を感じさせる世界観をお持ちで、限界までツクールを使い込んだ作品をたくさん投稿していただきました。
 神無月サスケさんは、作品名を聞けばピンとくるであろう『Moon Whistle』(ムンホイ)の作者さんです。ノスタルジーと心の弱さをテーマにしたシナリオは、繊細なハートをもつ、多くのプレイヤー、ツクールユーザーから共感を得ました。

 そして、コンパクを語る上で外せないのはリィさん。特に『RPGツクール2000』を使った彼のアクションゲームは、完成度、エンターテインメイント性、そして魂、どれをとっても最高レベルで、『旋風仮面』は、ツクール国宝とも言えるでしょう。彼の作品には、すべて“リィ節”がきいていて、穏やかでありながら、内に秘めたる闘志を感じさせる、スーパーサイヤ人みたいな作風が印象的でした。
 夢幻台さんは、2D格闘ツクールの使い手で、マスターレベル。彼は『カレンダーパーティー』シリーズという暦になぞらえたオリジナルキャラクターがバトルを繰り広げる格闘ゲームを、ブレることなくコンスタントに投稿してくださいました。また、2D格闘ツクールユーザーの有志をとりまとめて、ツクールでは困難とされていた、複数クリエイターによる合作企画も見事に実現されています。そして、“カレンダーシリーズ”は、いまもRPGツクール作品として引き継がれています。
 ヒデさんは、当時から志の高いクリエイターでした。彼の作品の源流は『Inde Terminate』という作品で『RPGツクール2000』を使ったサイドビューバトルが大きな特徴でした。制作に取り組む姿勢は真摯で、コツコツと自身の作品をパワーアップさせていき『今の風を感じて』というコンパク史上に残る傑作を残してくださいました。彼は『アルファナッツ』というチームを立ち上げ、早い時期からプロとして活動を始めた点でも、ツクールユーザーが目指すべき、ひとつの目標を示したと言えます。ちなみに『アルファナッツ』さんの作品は、海を越え、Steamでも販売が開始されるそうです。
 また、ショウさんも、ヒデさんとは方向性が違いますが、ツクールユーザーのひとつの在り方を示されたクリエイターです。彼が投稿してくれた作品は多くありませんが『不協和音のレクイエム』『月夜に響くノクターン』のうち、後者については、おそらくフリーゲームを愛するひとで、知らないひとはいないのではないでしょうか(特に有名なのは、あとでリメイクされた『月夜に響くノクターン Rebirth』かもしれません)。彼の作品の特徴は、世界観とシステムの共存、そして、やり込み要素を極めた点です。通常、ツクールでRPGを作る場合、ストーリー派とシステム派に分かれやすく、両者のバランスをとることが難しいのですが、彼は、両方をこなしてしまうクリエイターでした。そこにやり込み要素を加えることで、中毒性をもたせることに成功しています。また、彼は、のちに『RPGツクールXP』でスクリプト編集機能が実装された際、いち早くスクリプト素材をユーザーに提供してくれた方でもあります。


アクションゲーム『旋風仮面』


 新境地を拓いた方としては、焼城ユブさん。魅力的なキャラクターたちを異様な世界観にブチ込むことで、プレイヤーを強く惹きつけたクリエイターです。代表作はホラーゲーム『Gu-L』。祁答院さんの『コープスパーティー』、八百谷さんの『囚人へのペル・エム・フル』を意識した、サバイバル系ホラーです。荒削りなところはありますが、そんな細かいことは気にさせない“魅せる”オーラをもった作品でした。この作品以降、キャラクター+ホラーをテーマにした作品が増えるようになったと思っています。
 デビルアニキさんは、なんといってもグラフィックのインパクト! 独特の色彩と影を使って描かれた濃い絵は、いちど見たら忘れられません。彼の作品『ドンザレス』シリーズは、投稿されるたびに「ドンザレスがきたッッ!」と編集部の一部(おもに僕とかですが)がどよめくほどファンがいました。彼の作品では“男らしさ”が貫かれており、評価のポイントもゲーム性と並んで作品から放たれる“破壊力”が注目されていたと思います。
 そして、ヘルメスさん。彼の『へっぽこ二人組みの何でも屋セロリー』の自己申告ジャンルは“見るRPG”。それはさながら、お笑いライブを見ているかのように、小気味良いボケとツッコミを楽しむ作品でした。RPGからRPG取っ払うのはアリなのか? という、作者なら誰もが当たる壁に、ギャグゲーという答えを出したクリエイターです。そして実際に、同じように作者の考えたギャグを詰め込んだネタゲーがたくさん作られるようになりました。


ホラーゲーム『Gu-L』


 最後は、越石新之介さんの『炎帝セイバー』で締めくくらせていただきます。コンパクで受賞するために才能は必要なのか? この問いに「否!」と応えてくれたのが彼です。彼の作品は、グラフィックがすごくキレイなわけではありません。ストーリーが斬新なわけでもありません。しかし、僕たちは彼の作品を称えずにはいられませんでした。
 そこにあったのは“熱さ”、魂の叫びです。ゲームに“熱さ”を込めるときには、決してひとりよがりであってはいけません。いかにプレイヤーにも同じ“熱さ”を感じとってもらうか。彼は、その見せ方を努力で編み出しました。アニメの神回を見たときのような、あの背筋がゾワッとくる感覚。この作品にはそれがあったのです。作中に登場する絶対的な悪、マッドギアの生き様に、漢を感じたプレイヤーは僕だけではないはず。

 こうして、たくさんの名作、迷作に恵まれながら、少しずつコンパクは規模が大きくなっていきました。しかし、それは僕たちにとって苦渋の選択を迫られることにもなっていったのです。


インターネットコンテストパーク終了、そして、RPGツクール開発へ


 コンパク運営の影には、いろいろな苦労がありました。公式が審査するといっても、自分たちの基準で作品に順番をつけるようなものです。作品を投稿してくださった方々の中には、結果に満足できなかったこともあったかと思います。
 実際のところ、僕自身、「自分たちの基準だけで作品を評価していいのだろうか?」と、常に自らに問いかけておりました。

 そして、コンパクを運営するスタッフの人数の問題もありました。通常は4人前後で審査を行なっていましたが、コンパクだけやっていればいいわけではありません。全員がほかのお仕事もしながらプレイ&審査をこなす、割とギリギリのスケジュールで動いていました。
 僕も難病を抱えていることもあって、年に1回くらいは入院していたと思います。入院中、お見舞いの『逆境ナイン』全巻と一緒に、投稿作品の入ったCDが差し入れられることも(笑)もちろん、病室ではノートPCは禁止なので、病院の談話室に行って点滴しながらゲームをやっていました。当然、看護婦さんにもよく怒られました。

 やがて、コンパクには月に20作品くらい届くようになり、全作品をプレイするのがきびしくなってきました。しっかり作り込まれた作品が多く、1日でプレイが終わらないこともよくありました。
 以降も、さらにたくさんの作品を投稿いただくことになり(とてもありがたいことだったのですが)、最終的に、僕たちはつらい決断をしなければならなくなりました。審査の質を維持するのが困難になってしまったのです。審査を簡略化して数をこなす、という選択肢はありませんでした。ガチの作品、ネタに走った作品、どんな作品とも真正面から向き合う姿勢、それこそが僕たちの守ってきたコンパクであり、おそらく、みなさんから求められていたコンパクだったと思います。完成度やゲーム性以外の良さも受け入れる“ゆるさ”、コンパクの魂はそこにあったと、いまでも信じています。

 そして、2002年6月分の発表をもって、インターネットコンテストパークは幕を閉じることになりました。最後の更新となった6月分には過去最多、約70作品を応募いただきました。しっかり作り込んだ作品、ギリギリまでがんばったけど作成途中のまま送られてきた作品、コンパク終了をモチーフに、作者自らが最後の作品を届けるまでをゲームにした作品など、その内容は実にさまざまでした。
 最後の最後で印象的だったのは『時代の底辺脱出戦記 スラムガイ』という『恋愛シミュレーションツクール』で作られた、かなり本格的な恋愛シミュレーション(?)作品です。ひとことで表すと“変態”です。作者のセンスは恐るべきものでした。公序良俗的にアレなので、コンパク的に評価を高くすることはできませんでしたが、個人的にはプラチナ賞でした。これほどの才能のムダ使い(ゴメンナサイ! ほかにたとえようがないんです……)は、あとにも先にも見たことがありません。

 その後、コンパク終了の話を聞きつけたテックウィンさんから、引き継いでくださるとの申し出があり、少し形は変わりましたが“コンパク”の歴史は続くことになりました。ここから先のコンパクは、僕は1読者でしかありませんでしたので、読者目線のコメントになりますが、本気の作品の割合が増えたと思います。選ぶ側もプロ寄りの基準で作品を評価していたのだろうと感じました。
 受賞者も実力派ぞろいで、のちに『WOLF RPGエディター』を開発されるSmokingWOLFさんや、個人製作でありながら『魁!!男塾』の公認格闘ゲームを作ってしまった岩本三四郎さん、インターネットコンテストパークで『偽りの神話』を投稿してくれたd-sakaさん、『SPY』で、コンパク史上2作品目のプラチナ賞を勝ち取ったコウさん、そして、最近、『つぐのひ』シリーズが映画化されたアイムシアンさん(ロヴァさん)など、挙げだしたらキリがありませんが、彼らはツクールの歴史を語るにあたって、欠かすことのできない存在であったと断言いたします。

 そして、新たなコンパクでのみなさんの活躍を拝見しながら、僕は2004年に発売されることになる『RPGツクールXP』のアシスタントディレクターとしてがんばることになりました。


RPGツクールXP、RPGツクールVX、そしてRPGツクールVX Ace

 開発に関する裏話はたくさんありますが、ここではいくつかピックアップしてお話させていただきます。

 『RPGツクールXP』は、ご存じの方も多いと思いますが、RPGツクールとしては画期的なスクリプト編集機能が初めて実装されたRPGツクールです。スクリプト編集機能というのは、簡単に言えばプログラムが書ける機能ということになります。
 プログラムがわからなくてもRPG制作を楽しめるというのがツクールの基本コンセプトでしたから、逆行しているように思われるかもしれませんが、実際には多くのユーザーから切望されていた機能でした。また、『RPGツクール2000』に比べて基本機能もシンプルに構成され、スクリプトの活用を意識した設計となりました。そのほか、解像度は前作の2倍の640*480、多層化されたマップレイヤーなど表現力も格段にアップ、ツクールの歴史でひとつのターニングポイントとなったソフトでした。
 サンプルゲームも話題性をもたせる意味で、『今の風を感じて』を作られ、当時からプロとしても活動されていたアルファナッツさん、『囚人たちのペル・エム・フル』の制作であり友人でもある八百谷さんなど、実力のある作り手に依頼しました。パッケージイラストは個人的な趣味でもあったのですが、日本ファルコム作品(特にイースシリーズ)で有名な、イラストレーターの岩崎美奈子さんに依頼させていただきました。
 その後、『RPGツクールVX』をリリースするまでの間に、iモード用サービス『ツクール for mobile』にもチャレンジしました。1年ほどでサービスは終了してしまいましたが、『俺の屍を越えてゆけ』で有名な桝田省治さんや『ポポロクロイス物語』のシナリオライター・和智正喜さんともお仕事をさせていただきました。祁答院慎さんにも、モバイル版の『コープスパーティー』を作っていただいたりしました。連載形式で未完となってしまいましたが、のちのPC版のベースにもなったと記憶しています。

 2008年に発売された『RPGツクールVX』は、僕が初めてメインでディレクションを任された思い出深いソフトです。前作XPでは、特に初心者の方にとってハードルが高くなってしまったこともあり、ユーザーフレンドリーさを重視した構成を心がけました。
 素材規格やマップ構成もシンプルにし、原点に戻るような作りを目指した感じです。この背景には、上級者向けに高機能化が求められていた反面、仕様の複雑化からニッチな商品になってしまうことに対する懸念がありました。VXのリリースが近づいたころ、そのときの開発部の局長はM川さんでした。M川さんは、ツクールのもつ可能性、楽しさを理解してくださるひとで、いろいろとネタを思いついては「やってみろ」と背中を押してくださる存在でした。
 ツクールBlogも、M川さんのそんな思いつきから始めたものでした。Blogなんてものは書いたこともなかったので最初は戸惑いましたが、VX発売日に秋葉原でサンドイッチマンやってみたあたりから、なんか吹っ切れた感じがして書けるようになりました(笑)

 このころになると、テックウィンさんのコンテンストパークも終了し、作品の発表の場も公式ではなく、「ベクター」や「ふりーむ!」などのダウンロードサイトに移っていくようになりました。個人的には、コンパクを復活させようという気持ちはありましたが、状況が許してはくれませんでした。
 意外と思われるか、そうだったんだろうなと思われるかわかりませんが、当時、ツクールの社内評価は、決して高くはなかったのです。ちょうどPCソフト全体の市場が縮小傾向にあったこともあり、コンシューマのソフトに比べると販売数は10分の1程度、いわゆるギリギリ元をとり返していた状態で、部署消滅の危機もありました。そのたびに底力を発揮してくださったのが、住職こと杉内P、いまのツクールがあるのは杉内Pのおかげです。
 杉内Pは、ログイン編集部時代を経てツクールを黎明期から支えてきた方で、僕もアスキーに入った当初は、おそろしくコワモテで(のちに坊主頭になって怖さアップ)いつも怒っているようなおっさんに見えましたが、実は怒ってるんじゃなくて目つきが鋭いだけだということが判明しました。
 ……ですので、決して怖いひとではありません(笑) 新しいものに目がない、たくさんの引き出しをもったひとでした。最近ではYoutuberを目指すとか言っていましたが、どうやらあきらめたようです。

 そして、2011年にリリースした『RPGツクールVX Ace』は、ひとつの完成形に達したと言えます。前作VXをベースに、ゲーム制作初心者の方への配慮と制作機能の強化の両立させたのが、Aceのコンセプトであり、狙いでもありました。


ツクール作品の新たな広まり


 コンパクの終了以降、急速に進化するwebサービスの中で、ツクール作品の広まりに大きな変革をもたらしたのは、ニコニコ動画、Youtubeでのゲームのプレイ動画、ゲーム実況だったと思っています。それまでは、実際に遊んだひとにしか認知されなかったツクール作品が、動画を通じて、プレイしなくても(いわゆるゲーマーでない方々にも)、作品を知ってもらえるようになりました。
 プレイ動画をアップしたり、プレイ実況をしてくださるひとのキャラクターもあって、攻略や、やりこみといった従来の遊び方以外の楽しみ方で、ツクール作品が親しまれるようになったことは、僕にとっても大変喜ばしいことでした。あえて挙げる必要はないかもしれませんが、nopropsさんの『青鬼』、kouriさんの『Ib』などの作品は、作品の魅力だけでなく、プレイ動画の人気もあって、その爆発的な広がりを見せてくれたのだと思っています。
 個人による動画配信の文化が育ち、さまざまなコンテンツが生まれていく中で、手軽にゲーム(もしくはゲームのようなもの)を作ることができるツクールは、ある種、非常に相性がいいと考えています。たまに、ようやく時代が我々(ツクール)に追いついてきた、とかエラソーなコメントをしていたかもしれませんが、それは結果論であって、ぶっちゃけ結果オーライです。


ボルゾイ企画が投稿した「青鬼」の実況動画は500万再生を超える人気動画となっている


 人気作品の中でも、特に、近年のツクール作品の展開を象徴するのは、やはり『青鬼』でしょう。『青鬼』は、お化け屋敷と鬼ごっこが融合した、いわゆる“逃げゲー”です。無人の館に閉じ込められた主人公たちが、神出鬼没の青鬼(見た目は大きな顔をした青い巨人)に追われるのですが、特異な風貌をした青鬼のインパクトと、いつ現れるかわからないお化け屋敷のような緊張感が多くのプレイヤー、そして動画の視聴者を恐怖のドン底に叩き込みました。
 僕も初見プレイのときには、青鬼の登場シーンで何度も「ヒッ!」と声出しちゃいました。青鬼に捕まると即ゲームオーバー、登場時の独特のBGMという恐怖感をあおる演出も、ゲームとしての『青鬼』の魅力のひとつであり、プレイ動画やプレイ実況向けに映える部分でもあったと分析しています。

 動画での人気もあって、その後、『青鬼』は小説化され、続いて映画化、コミカライズと、近年のコンシューマゲームでは定番のクロスメディア展開が、アマチュア作品でありながら実現されました。ツクール作品をベースにした、横の展開は、祁答院慎さんの『コープスパーティー』以降、なかなかお目にかかれなかったのですが、ここにきて(おそらく『青鬼』の成功をキッカケに)、そのほかの作品でも実現されるようになりました。
 ツクール作品のメジャー展開は、長年、僕らが思い描き、願ってきた成功パターンでしたので、みなさんの努力の結晶が日の目を見て、ゲーム史の1ページを刻んでくれるだけで嬉しく思います。


最後に、ゲームクリエイターを目指すみなさんへ


 ここでは、プロフェッショナル、アマチュアを問わずゲームを作るひとすべてを“ゲームクリエイター”と呼ばさせていただきます。

 まず、ゲームで遊んだり、ゲームのプレイ動画を見たりして、自分でもゲームを作ってみようかな、と思ったみなさんへ。ぜひともチャレンジしてみてください。受け手としてのプレイヤー視点では見えなかった、新しい世界が拓けます。ビジネスに携わる者としては失格かもしれませんが、必ずしもツクールを使っていただく必要はありません。
 あまりお金をかけたくない方は、無料で使える『WOLF RPGエディター』さんや『吉里吉里』さんなどをご利用いただければよろしいと思います。本格的な作品制作を目指すのであれば『Unity』さんも選択肢に入ってくるでしょう。もちろんプログラムを勉強されている方であれば、プログラムから組まれてもいいと思います。ツールやソフトウェアは道具であり、手段です。どれがいい、どれが悪いといったことはありません。あなたが表現したいものにあった手段を探してみてください。

 次に、すでにゲームを作られている(もしくは作っていた)みなさんへ。たとえ作りかけのゲームが完成しなくても、決して無駄な時間を過ごしたと嘆かないでください。制作途中で、あなたの考えたキャラクター、あなたの考えたテキストが画面に表示されただけでも、すごくワクワクされたと思います。その感動は、やってみなければ味わえないものです。その瞬間を体験しただけでも、あなたにとって大きな収穫だったと思います。
 そして、完成したら、作品を公開する勇気をもってください。せっかくできたのですから、見てもらいましょう! だって、あなたの作品は、誰かに遊んでもらいたくて作ったのですよね? 自信がもてないひともいるかもしれませんが、あなたの作品はあなただけにしか作ることができないものです。胸を張って、みなさんに見せてあげてください。感想をもらえたときの達成感はハンパないですよ!
 作品の公開を躊躇されている方々のなかには、批判や謂れのない罵声をおそれているひともいるかもしれません。そういうときは、こう考えてください。もし、作品の悪い点を挙げるコメントであれば、それはあなたの作品をよりよくするチャンスです。貴重なフィードバックとして活かしましょう。
 まったく的外れな、悪口に近いコメントだった場合、「うっせぇ、だまれ!」と心の中で3回繰り返してからスルーしましょう。100人のうち、99人から評価されなかったとしても、必ずひとりは「いいね!」と言ってくれるはずです。なぜなら、そのひとりは僕だからです。

 長々と書いてしまいましたが、このあたりで締めたいと思います。これまで、たくさんのツクール作品を作っていただいたみなさん、ツクールで楽しんでいただいて、誠にありがとうございました。これからもたくさんの作品(名作や迷作)が生まれると期待させていただきます。
 僕がお役に立てることは、それほどないかもしれませんが、みなさんのご活躍を見守らさせていただきます。それでは!

(了)


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いいね( ゜ω゜)b
43ヶ月前
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面白い内容で、興味深く読ませて頂きました。
ツクールblogも復活してくれたらな~(チラ
43ヶ月前
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ツクール愛がビンビンに伝わる内容で面白かったです。(そしてこの長さw)
トシ重さんの書かれる文章って前向きなのがホントに魅力的で、
ゲームは楽しいものなんだっていうハートが伝わってくるのが凄く好きです。
コンパクの文章も読むだけで楽しかったなぁ。
43ヶ月前
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懐かしいなぁ。Knight Bladeはいまだにかっこいいと思っている作品のひとつです
35ヶ月前
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(^^♪
24ヶ月前
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