2013年11月21日発行 第0774号 特別
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■■■ 日本国の研究
■■■ 不安との訣別/再生のカルテ
■■■ 編集長 猪瀬直樹
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「地方の財布に手を入れる前に国は歳出削減努力を」
11月15日金曜日の朝日新聞夕刊一面に「地方税の一部国税化、知事反発『国
費1兆円超、未消化のまま』」という見出しのトップ記事が出ました。
「猪瀬直樹知事は15日午後、『2011年度の国の事業で予算執行率が5割未満の
事業』が16パーセントにのぼり、1兆円超が使われていない」とする調査結果
を公表する。猪瀬知事は『余った国費をあてるべきだ』とし、安倍政権と真っ
向対立する構えだ」
本日のメルマガは、同日午後3時の定例記者会見の冒頭発言録から。
○猪瀬○ 先週の金曜日(11月8日)に、政府主催の全国知事会に出席しまし
た。安倍総理に対し「国の財政規律が非常に緩くなっている中で、
現在、検討されている法人事業税の暫定措置や法人住民税の一部国税化につい
ては考え直していただきたいと」申し入れをしました。
今日は、国の事業にはまだまだ見直すべき事業が多々あると、相当無駄遣い
しているのではないですかと。ちょっと国の予算執行がずさんであるというこ
との例として、国の予算の執行状況等を含めた財務省のデータを分析しました。
まず、歳出の予算の中で、実際に2011年度決算で不用額(執行残)が3兆円
ある。毎年2兆円~3兆円の不用額があるのではないか。7030もある国の一般
会計事業を一つひとつチェックしてみました。すると99パーセント執行してい
るところもあれば50パーセント以下のところもある。
さらに調べていくと、0.3パーセントしか執行していない事業をはじめと
して、予算の半分以上が余った事業は、7030事業のうち16パーセントの1129事
業。その執行残の金額を積み上げると1兆1300億円になる。1兆1300億円も使
ってないではないか。
国の一般会計決算は、財務省のホームページをのぞくと、すべて公開されて
います(http://www.bb.mof.go.jp/hdocs/bxss010bh23a.html )。ただ、調べ
る人はいない。
□執行率0.3%、1000億円が余った事業□
一例を挙げます。国土交通省の事業で、借り上げ住宅の建設改良や空き家対
策などへの補助を行う公営住宅整備費補助、これ、1112億円も計上されていて、
決算で見たら0.3パーセント、ほとんど使っていない。こういうずさんな予
算の状況が、国の歳出であります。
もう一つ、ちょっと小さいものでも、例を出します。厚生労働省の中小企業
最低賃金引上げ支援対策費補助金は、執行率20パーセント。22億円の予算に対
して17億円は使っていない不用額。こうしてどんどん、出てくるのです。
繰り返すが、決算で見ると、国の歳出は90兆円近い。しかし執行率50パーセ
ント未満の執行残が1兆円以上ある、50パーセント未満。財務省自身も、決算
で不用額3兆円だと、こう言っているのです。この金をどうするか。この金を
きちんと、財源が足りない地方に回せばいい。まず、それが第一点。
そして、予算は執行されているものの、当初の計画が過大になって、今とな
っては施設自体が無駄になっているもの、わかりやすい例を挙げます。長崎県
の大村市にある大村入国管理センター、これは強制退去される外国人のうち、
早期送還が困難な人を収容する施設で、定員800人の立派なものです。しか
し、その活用実績を調べてみると、2011年度の収容されている人の数は、1日
20人しかいない。いちばん直近で20人、職員数は49人。
職員が49人いて、800人用の建物を造って、20人しか収容されていない。
何をやっているのかと。
2008年が分岐点ですがね、職員の数と収容者の数はこの時点から逆転です。
もう職員の数が圧倒的で、収容者が20人、職員は49人。こういうものは、もう
やめるか、どこかに合併するか、すればいいのです。この建物、何でこれだけ
のでっかいものを造ったのかという、まず見積もりが間違っている。800人
収容なのに多い最初のころでも130人ですよ。こんな無駄がある。
この件に関しては、財務省の予算執行調査においても、収容体制の見直しや
維持管理費の縮減が指摘されています。費用の見直しはある程度行っているよ
うですが、抜本的な対策はやってない。
□センター試験の「天下り法人」□
つぎに民間と比較していかに非効率的な運営をしておるのかという例を挙げ
ましょう。皆さんよく知っているように、大学の入試センター試験は受験料が
1万8000円です。ふつうの民間の予備校、駿台予備校とか民間ではいろいろな
予備校がありますが、だいたい受験料は5000円です。つまり、センター試験は
3倍の値段をつけてやっている。
それはどうしてかというと、試験を実施している独立行政法人大学入試セン
ターという組織は、役職員が(文部科学省から)天下りして、そして緩い給料
でやっているからです。コスト意識もない。それで民間の3倍の値段でやって
いて、でいいんですか。
この組織は国から116億円の出資を受けている。毎年10億円程度の人件費
がかかっている。高コスト体質、割高な受験料、おかしな話です。
最後に、事業内容というものを調べてみる。そうすると、例えばこういうの
がある。地域グリーンニューディール基金。これ、リーマン・ショック対策で
始めた。地球温暖化対策事業の推進というのを目的に、2009年度の補正予算で
創設された。自治体に活用しろと言われて、こういうものをやれよと、やった
らお金くれるよ、こう言うんです。例えば、ここに書いてある県や市庁舎への
LED照明の導入、それから公民館の省エネの改修にこの基金が充てられるか
ら、どうぞこのような事業で使ってくださいねといって各自治体に配るという
基金なの。全額国の補助金でできてしまう。これこそばらまきです。
ところが、みんなやる必要ないものだから、使ってない。東京都も、最初の
年に使おうと思って、わずかな金額申請したが、使いようがないのです。だか
ら使わない。これが、基金積んだまんま、国の予算で2950億円もある。裁量に
任せて本当にその地方が欲しいというものを渡せばいい。そしてそうでなくて、
こういう事業だったらつけるよといって、何も結局使い道がないから残ってい
る。
□国がぶらさげる毒まんじゅう□
国には事業の見直しや再構築など歳出削減の余地があるものが多々あります。
地方の財布に手を入れる前に、自らの歳出削減努力をすべきである。僕は第1
次安倍内閣で地方分権改革推進委員をやりました。地方分権について随分議論
を積み重ねてきました。
先週も言いましたが、我われの課題としてやってきたことは、国と地方の歳
出の比率です。国が4割、地方が6割歳出があるけれども、税源は国が6割、
地方が4割と。この2割の差が、国が地方へ仕送りする根拠なのね。
それではおかしいから6対4を5対5に持って行こうということで、地方分
権推進委員会で勧告もした。税源移譲でほぼ5対5に近づいたら、法人事業税
の暫定税率で国が地方から金を召し上げるということになったから、また6対
4になってしまった。法人住民税を国税化すると、6対4は固定する。地方の
財布に手を突っ込んで、国、地方の基幹税を国が持っていくとなれば、地方分
権に全く逆行する。
一旦決めた方針が時間たつと簡単に覆されてしまうというのは、その場その
場のつじつま合わせ、ご都合主義であります。
国が地方財政の困窮の原因を都市と地方の財政力格差に問題をすりかえてい
ることは明らかです。前の法人事業税の暫定税率の時に言われたけれど、地方
の自治体で、国がぶら下げる毒まんじゅうを食べないようにすることが大事で
す。
法人事業税の暫定税率の時に、毒まんじゅう議論が出た。危ないよと。これ
を食べちゃうと毒まんじゅうだよということなんです。今回もまた毒まんじゅ
うをぶら下げられてるのに、今、慌てて食べようとしているところが多い、お
かしな話だ。財源がないから地方にそのしわ寄せをするんじゃなくて、まず国
は歳出の抑制、規律、財政規律をきちんと持って、3兆円も不用額が出ている
ということについて、まず反省しなければいけない、その金をどうするのだと
いうことをまず、先決だということです。
*
「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp
猪瀬直樹の新着情報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■掲載情報
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ューが掲載されます。
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張現実」が書き換える未来地図」が掲載されました。
・11月5日発行『財界』に、「“時間”の市場を開拓することで需要を創り、
東京の潜在力掘り起こしを世界にアピールしていく」が掲載されました。
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