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⌘ 2015年06月04日発行 第0849号
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■■■ 日本国の研究
■■■ 不安との訣別/再生のカルテ
■■■ 編集長 猪瀬直樹
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http://www.inose.gr.jp/mailmag/
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日本の「安心・安全」はどうして成り立ってきたか――。敗戦・占領、再武
装、復興の象徴・東京五輪警備……。民間警備会社の黎明期の秘話から戦後史
の謎を解き明かす猪瀬直樹の意欲作「民警」が「週刊SPA!」誌上で大好評
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号「水面下で跋扈した日本版CIA構想」から、ほんのさわりをお届け!
「初代内閣官房調査室長で、『戦後をつくった政治家』吉田茂の周辺でいく
つもの修羅場をくぐってきた村井順は、自身が組織委員会のトップを務めた
東京五輪が終わったあと、吉田に『警備会社をつくりたい』と申し出、了承
を得た――」
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「水面下で跋扈した日本版CIA構想」
赤坂の綜合警備保障の白いビルの応接室で創業者村井順からバトンを引き継
いでいる息子で警察官僚出身の村井温会長に訊ねた。
「お父上は、日本が連合国軍の占領から独立するためにサンフランシスコ講和
条約締結してから、内閣官房調査室を立ち上げ、内調の初代室長にも就任しま
すね。いま盛んに日本には対外情報機関が必要だという議論が出ています。I
SISにより日本人が人質にされた際に、政府には何の情報もないではないか
とね」
「ええ。当時もそういう議論がありまして、父は政府に情報機関が必要である
と、吉田首相に提言したようです。そのころ日本版CIA構想について水面下
で練られていた時期なのです」
松本清張が、連合国軍の占領期に起きた謀略めいた幾つかの事件について『日
本の黒い霧』シリーズを書いた。その後、サンフランシスコ講和条約が発効し
て日本が独立を果たすまでの出来事を『深層海流』という小説にまとめた。『深
層海流』は小説だから実名ではないが、内調室長の村井順とおぼしき人物が、
急遽、更迭されたとある。それも任命した吉田首相自身によって。
なぜか。それが民間警備業の創業とどう結びつくのか。
サンフランシスコ講和条約発効(昭和27年4月28日)の1カ月ほど前、村井
は吉田首相にこう述べた、と記している。
「世界の情勢はまことに厳しく、現在も隣の朝鮮半島で戦争がつづいています。
独立した日本はその進路を誤ると踏み潰されてしまいます。弱い兎が長く大き
な耳を持ち、原野のなかを生き抜いているように、弱小国日本も立派な情報機
関を持ち、世界から情報を集め、それを正しく分析し、判断して国家戦略の資
料にしなければならない」
そう進言すると吉田首相は「わかった」と直ちに内閣調査室の設置を命じた、
と。もっともこれは村井自身の説明であり、真相はもっと複雑で、日本版CI
A構想の水源はもう少し深い場所から沸き出していた。
弱い兎は長い大きな耳を持つ、とは最小限の軍事力しか持たない代わりに、
情報機関を重視するという意味合いである。
内調をつくる、という提案は村井のオリジナルなのかどうか、である。そう
ではないだろう。吉田首相自身、経済復興を優先した“軽武装論”を信条とし
ていたからである。
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「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp
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