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どっかの世界のおーさまのおはなし
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どっかの世界のおーさまのおはなし

2016-02-10 06:59

    厨二臭い短編がiPhoneに書き溜めてあったので中途半端だけど投下しときますね。














    王は緩やかな動作で背凭れに体重を掛けた。
    足を組んで玉座に座る様は傲慢であると取られ兼ねない態度であるの にも関わらず、そうである事が当然であるように感じさせる。村民、戦士、騎士、賢者。烏合の衆と成り果てた万を超える人々は口を噤んでいく。噤まざるを得 なかった。鳥ですら囀りを止め、竜ですら身を屈ませた。

    それを成したのはただ一人のニンゲン。

    空間を塗り替えて行くような濃密で圧倒的な覇気が世界を覆っていく。

    喧々囂々としていた人々が物音一つ立てる事無く静まり返った様を一瞥し、一つ頷くと荘厳な所作で"王"は宣った。

    「私は君臨する。如何なる王位も簒奪し、三千世界総てを支配する。我が身の背に影は無く、我が身の先に跡は無い。故に平伏し付き従え無辜の民よ。私は世界を切り拓く」

    熱狂に震えていた大気は静まり返り、死んだ森に佇んだかのように奇妙な沈黙を齎している。

    その場に居る誰もが王を見ていた。魅せられていた。

    僅かな間を置き、囁くように穏やかな声で言の葉を綴る。

    「覇 道で無く、王道で無く、邪道で無い。我が征く道は天外の理。我が身無しで歩く事は叶わない。私が王だ。私が神だ。私が造物主だ。総ての者よ、我に平伏せ。 我に跪け。我を崇めよ。我を讃えよ。貴様等の酸いも甘いも幸も不幸も財も債も悦楽も苦渋も希望も絶望も愛憎総て我がモノだ。さぁ、管理された神の世界を始 めよう」

    王の口は歪に吊り上げ、諸手を上げる緩慢とした動きですら覇気の重圧を強め数多の者共の身体を軋ませた。

    「ふ…ふざけるな…ッ!ふざけるなァッ!!」

    それが皮切りだった。怒号とも知れない、叫び声とも知れない声が王に向かって殺到した。

    「そ、そうだッ!!何が神の世界だッ!!」

    「俺たちは俺たち自身のモンだッ!!テメェなんかのモンじゃねぇ!!」

    異常な重圧の中、数多の者が轟々と声を上げ続けた。重圧を跳ね除けようと、己は挫けぬのだと。

    己の存在を証明するかのように。

    罵倒すら入り始めた人々の声を耳にし、それでも尚、王は口元を歪めた。

    「控えよ、弱者よ」

    溶岩の様にふつふつと燃え上がっていた熱気は一瞬にして凍り付いた。ありとあらゆる生物が口を閉ざし、呼吸を止め、音を止めた。

    くつくつと嗤い、王は宣う。

    「抗いたくば抗うが良い。何時、如何なる時も貴様等の挑戦を受けてやろう。力を以て証明せよ。貴様等の生命は己の価値を誇る程には価値が有るのだと。力無き者に生の価値は無い。」

    一度言葉を区切ると、緩んだ口元を固く閉めた。緩やかに目を瞑り、数秒の沈黙が訪れる。

    王は静けさを愛おしむようにゆっくりと目を開いた。

    刹那、先程とは比にならない程の重圧が万民を襲った。

    惜しげも無く放たれた途方も無い威圧に、場に居合わせた全ての者が膝をつかざるを得なかった。

    己が信じる神に懺悔するかの様に、人々は膝をつき上体を下げ手を地につけた様を見て満足したと言わんばかりに再度口角を吊り上げる。

    「私は君臨する。遍く物を統べてやろう」

    その言葉に反旗を翻す事が出来る者はいなかった。ただ王の高笑いが響き渡り、その哄笑を血反吐と苦虫を噛み締めた様に顔を歪めながら跪く以外に出来る事は何一つとしてなかった。

    そして一つの世界は終焉を迎えた。

    たった一人のニンゲンの手によって。



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