他人の画像を転載するのは合法?違法?
最近日本でもアメリカでも、最も大きな話題を呼んでいるサービスとして多くの方々がまず思い浮かぶのは、恐らくPinterest(ピンタレスト)だろう。
Pinterestは、気にいった画像をウェブ上のボードに貼りつけるサービスで、ユーザーはカテゴリ設定し、写真を投稿する。その後、他のユーザーから様々なコメントがつくなど、写真をきっかけにコミュニケーションをとることができる。
そのおしゃれなインターフェース、使いやすいUI/UX, テーマ別に品質の高い写真が一つのページに集約される実用性等を理由に、女性を中心に急激に人気が高まっている。
参考記事: *女性ユーザーが凄い!「Pinterest」Pinterest
このサービスでは、Web上で見つけた自分の気に入った写真をテーマ別に並べて楽しむのが主な利用方法であるが、よく考えると、他人が権利を所有する写真ファイルを転載しているので、以前よりその合法性が気になっていた。プロが撮った写真を販売するGetty Imagesに代表されるようなストックフォトを無断で利用すれば権利違反になる可能性があるし、実際に賠償請求も行われている。
当社ブログに掲載したスタッフの撮った写真を、某大手航空会社が無断で企業ブログに転載したことで、彼にそれなりの額の賠償金が支払われたケースもある。
今回ご紹介するケースもPinterestの法的側面に注目した1人のアメリカ人の女性によるストーリである。
女性弁護士、クリステンの調査
彼女の名はクリステン。ある日彼女はPinterestの合法性を調査する事を思いついた。彼女は弁護士でありながら写真を撮るのが趣味であったのがきっかけである。結果的に、彼女は自分が発見した事実に驚愕し、最終的にはPinterestのボードを完全に閉鎖するまでに至った。
クリステンは以前に、フォトグラファー達がFacebook上での著作権違反を抗議しているのを目の当たりにした。Facebookが著作権の違反で騒がれるのに、Pinterestが騒がれないのはなぜか、と彼女は不思議に感じた。
彼女はPinterestの使用条件の詳細を確認する事にした。その結果、Pinterestが定めるところによると、ユーザー達がコピーあるいは再コピーするものに対しての全責任は、ユーザー自身にあることが明記されており、ユーザーが写真をPinterestに掲載する際には、自身がその写真を所有している、もしくは、写真に対するライセンス等、権利所有者からその行為に関する明確な許可を獲得してる必要がある事が分かった。
彼女曰く、「その時すぐに頭に浮かんだのは、私が最近他のサイトで手に入れ、Pinterestに掲載した、とても素晴らしい写真でした。その写真家へのクレジットを記載したとしても、恐らくどんなに頑張った所で、それらの写真を私が所有したり、ライセンス、合意書、リリース等の権利をその写真家から得ることはまず不可能なことだと思ったのです」
しかしPinterestは、写真のコピー、転載をむしろ奨励しているサービスの様に感じられる。その一方で、そのような行為が違法になる可能性があるという事は、クリステンには到底信じられなかった。彼女はさらに掘り下げていった。
著作権法とPinterest利用規約
彼女は連邦の著作権法に目を向けて、公正使用に関するセクションを見つけた。著作権を持つ作品を許可無しに使用しても良いのは、その作品を議論する、コメントする、報告する、教材に使う、リサーチに使用する際だけである。作品をコピーするというのはそのいずれのカテゴリーにも入っていない。
Pinterestユーザーにとってわずかな希望は、ケリー対アリバ・ソフト・コーポレーションの裁判の結果だ。とクリステンは書いている。
ひとりの写真家が、写真を無断で表示したという事で、あるサーチエンジンを起訴した。しかしその告訴は取り下げられる結果となった。サーチエンジン側の勝訴に終わったのは、写真のサムネイルを使用しただけで作品全体を使用したのではない、という理由からだった。
しかし、サムネイルだけの利用であっても、常に公正に使用されているとは必ずしも言えないだろう。もし作品の必要な一部だけがコピーされるのなら公正な使用と言えなくも無い。だがPinterestの場合はオリジナルの作品の全画を載せている。これは明らかな不正利用であると感じられた。
Pinterestの利用規約によると: 「あなたがこのサイト、アプリケーション、サービス、そしてサイトの内容へアクセスして使用する事によって生じるすべてのリスクは、あなた自身の問題だという事を認識して合意する」とある。
さらに、Pinterestはすべての非難や起こりえる起訴費用をそのユーザーに当てている。それにはこう書かれている: 「あなたは、Cold Brew Labsとその役員、ディレクター、従業員、エージェントがいかなるクレーム、債務、損害、紛失、そして出費とは無縁であると弁護,保障することに同意する。それには(ⅰ)サイト、アプリケーション、サービス、サイトの内容、へのアクセスと使用、(ⅱ)会員内容、 または(ⅲ)これらの規定に対する違反、などから生じる法的あるいは経理的な費用をも含む」
これはどういう事かというと、もし写真家が、あなたがPinterest上で画像を不法にコピーしたことであなたを起訴したとしよう。あなたは自分の弁護士だけではなく、Pinterestの弁護士にも支払わなければならない。それだけではない。被告は自身への罰金だけではなく、Pinterestの罰金も払わねばならない。
クリステンの出した結論
クリステンは、不法行為を可能にするという点でPinterestが以前に問題になったP2P型音楽ファイルシェアサービス、Napsterに似ているとする。度重なる裁判の後、破滅したのはNapsterだけではなかった。音楽をダウンロードした12才の少女達も起訴されたのである。
彼女は自身が出した結論として下記のように締めくくっている:
「私の最初の反応は多分あなた方と同じです。なぜ作品をコピーしてはいけないのか? 作者にクレジットを記載しているし、もっと彼らが世間に知られて欲しいと思っているだけなのに。もし誰かが私の写真を掲載してくれたとしたら、私はすごく嬉しいのです。でも思いました、それは私のフォトグラファー達に対する一方的な思い込みである可能性があると。ここでとても重要なポイントになるのは、法律的にも道徳的にも、どのような決断がなされるかは、私が決める事ではない、という事です」
その後彼女は自身のPinterestアカウントをクローズした。
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