国内4大ソーシャルアプリ・プラットフォーム、mixi、GREE、mobage、Amebaを運営する4社の2012年7-9月期決算が出揃った。4サービスを取り巻く外部環境は、フィーチャーフォンからスマートフォンへの急激な移行、コンプリートガチャ(コンプガチャ)の規制実施、更には、アップルの「App Store」やグーグルの「Google Play Store」に続くアマゾンの「Appstore for Android」サービス開始など、まさに激変期にあると言えるだろう。このような状況を踏まえつつ、客観的な視点で各社の財務状況をレポートしたい。
なお,この分析レポートは,各社が投資家向けに公表している最新の決算報告,および広告代理店・クライアント向けに発行している媒体資料を主要な情報ソースとし、三菱UFJモルガン・スタンレー証券リサーチ資料「ソーシャルゲームの正体を探る」などを参考にしている。当記事においては,それらの客観的な数値に基づき、できる限り公平な視点で、各社の業績やサービスを比較することを心がけている。
■ 各社の最新四半期(2012年7-9月期)、全社業績比較について
まず、各社の最新四半期決算資料に基づき、企業としての財務分析からはじめよう。
売上・利益
上記チャートにおいて、「前期比」とは2012年1-3月期との比較、また「利益率」は営業利益率を示している。前期に続き、GREEは、コンプガチャ廃止の影響などにより対前期比で売上95%、営業利益83%と落ち込んだ。田中社長は会見で「「6月いっぱいコンプガチャなどの問題に社内リソースを使ってしまったため、売上に影響が出た。」と、影響を認めた一方で、足元の有料課金収入のペースは回復に向かっていることを公表している。前四半期より好転したDeNAは、売上106%、営業利益111%と、引き続き成長性でライバルを上回った。また、mixiは売上(前期比93%)、営業利益(前期比81%)と、ともに落ち込みが目立った。同様に、Cyber Agentも対前期比で売上116%と回復傾向であるものの、営業利益で82%と今四半期は落ち込む結果となっている。スマートフォンのメディア事業立ち上げに資源を注力したことが一要因と考えられる。なお、DeNA(ビッターズ事業など)、mixi(Find Job事業など)、Cyber Agent(広告代理事業など)の3社には、SNS以外の事業も行っている。それらを除き、SNS関連事業だけを抽出して、4社売上を時系列で俯瞰すると次のようになる。
SNS関連売上
SNS関連の売上で比較すると、前期に続きmobageの上昇及び、GREEの下降が顕著に現れ、mobageが他の追随を許さない独壇場と成りつつある。Ameba及びmixiに関しては前期同様の順位となっている。なお、この記事内で1Qとは1-3月期、4Qとは10-12月期をあらわしている。各社の売上減少の要因を把握するため、今期SNS関連事業売上を更に、課金売上と広告売上に分解して比較していく。
課金売上と広告売上の内訳
課金売上では、mobageとAmebaが前期比で増加。また、各社共に課金比率が高まる結果となっている。裏を返せば、前期同様、広告売上での苦戦が続いているということである。スマートフォン広告による売上の伸長ではカバーしきれないほど早く、フィーチャーフォン広告売上の減収が、急速に進んでいることが一要因となっている。
参考までに、端末の違いによる広告売上の推移を唯一詳細に開示しているCyber Agent のグラフを提示しよう。会社によって事情はまちまちだが、広告売上では長年培ったフィーチャーフォンの仕組みが活かせなくなってきたことや、ユーザーの動向が異なることなどを前提としながら見るようにしたい。
課金売上に関して、より詳細に各社の指標を把握するため、通常であれば、ARPU(Average Revenue Per Users、会員ひとりあたりの月売上高)などを調査したいところではあるが、GREEのユーザー数に関するデータが非公開のため断念せざるを得なかった。
例えばGREEでは、登録ユーザー数やページビュー、mixiではページビュー、Amebaではアクティブユーザー数といった具合に、各社重視していないKPI指標は、非公開化される傾向が高まっている。
■ 各サービスの海外展開について
各社の海外展開の状況だが、DeNAは、Google Playにおいて内製ゲーム「Ninja Royale」や「Blood Brothers」などが、上位20位以内にランキングされるなど、好成績を残しており、2012年7月の「mobage West」でのコイン消費は30 百万ドルの水準にまで到達したとのコメントがあった。サイバーエージェントは、子会社Cygames が開発した「Rage of Bahamut」が、米国のiPhone とGoogle Play の売上高ランキングで四半期連続で6位以内にランクイン。また、子会社アプリボットが開発した「Legendof the Cryptids」もiPhone の売上ランキングで上位に付け、海外売上高が2012年7~9月期に前四半期比で大きく伸びる結果となっている。グリーは、昨年4月に買収したソーシャルゲームプラットフォーム「OpenFeint」のサービスを12月に終了させ、「GREE Platform」への移行を促すなど、ソーシャルゲーム開発及び運営体制の更なる強化を目的に着々とことを進めている。OpenFeintは、昨年4月時点で5000以上のゲームが対応し、世界7500万ユーザーが利用していた。
文責 : 関根 健介、ソーシャルゲーム関連監修 : 岡村 健介、編集・校閲 : 許 直人、全体監修 : 斉藤 徹
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