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ネット炎上のメカニズム:ネット炎上の三要素(概要編)
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ネット炎上のメカニズム:ネット炎上の三要素(概要編)

2021-12-27 10:00

    「ネット炎上」はいつ始まった?

    下のグラフはGoogle Trendsで「ネット炎上 」というキーワードを調べた結果です。

     

    picture_pc_689697693499a262adbd1b7b10018ee1.png

    Google Trendsのスコアが初めて0でなくなったのは、2006年5月です。Google Trendsのスコアは、Google検索の結果ボリュームが最大であったタイミングを100とした相対的な数値です。つまり「ネット炎上 」という言葉は、Google Trendsでヒットし始めたこのころに使われ始めたと考えられます。

     

    グラフから、その後スコアは2009年前半まで上昇したのち、2011年前半までは停滞していることが判ります。2011年後半から人気度は高まる傾向にあり、ネット炎上という言葉が多用されるようになったことが伺えます。その後、2016年11月に一度スコアはピークを迎え、今年2019年5月に再びピークを更新しています。

     

    「5月にすごい炎上案件、何かあったかなあ・・・」

     

    思いつかないので、Googleで「ネット炎上」を検索してみました。すると、最初のページではNHKのドキュメンタリー「人生最大級のネット炎上」に関連する記事が数多く出てきました。

    これは弁護士の唐澤貴洋さんが長年にわたりネット上で誹謗中傷を受けた体験を番組にしたものです。

    【世界最大級のネット炎上】
    炎上弁護士、唐澤貴洋さんが受けた殺害予告は100万回以上。ジャスティン・ビーバーについで世界2位の数と言われる。
    唐澤弁護士が元加害者に対面。

    #逆転人生
    5/20(月)夜10:00~10:50(NHK総合)

    ▽HP動画https://t.co/Nuykrd4bUN

    ▽YouTubehttps://t.co/tGItJkMst8 pic.twitter.com/is8hbo2ce8

    — NHK大阪放送局 (@nhk_osaka_JOBK) May 15, 2019

    唐澤弁護士が誹謗中傷されている様子は、私でもネット上で目にすることが何度もありましたが、特に関係もない方なのでさほど気に留めることはありませんでした。当時、唐澤弁護士を名乗るなりすましアカウントから、挑戦的な発言もあったので、「なかなか好戦的な弁護士もいるなあ・・」程度の感想しか持ち合わせていませんでした。

     

    私も番組を視聴して、唐澤弁護士が被った理不尽な仕打ちに同情の念とともに、軽い気持ちで攻撃に参加した人々への強い憤りを覚えました。この番組を見た人なら、誰もがそのような感情をもたれることでしょう。それが、Google Trendsのスコアにも影響したのかもしれません。

     

    ところで、どうしてこのような現象を「炎上」という物理現象になぞらえるのでしょうか?今やマスメディアも当たり前のように「炎上」という言葉で形容して、事象を伝えるようになりました。

    きっと、この現象が「炎上(=燃焼)」という物理現象と同じと見做せる要件が整っているのではないでしょうか?試しに、対比をしてみたいと思います。

    燃焼の3要素

    この図は総務省消防庁のホームページに掲載されている「自衛防災組織等の防災要員のための標準的な教育テキスト」をもとに作成した火が燃えるために必要な要件(燃焼の三要素 )を示しています。図の通り、燃焼が継続するための「連鎖反応」を加えて燃焼の四要素と称します。

     

    この類の図は、理科の教材などでも紹介されていますので、皆さんもご存知かと思います。なお、「熱源」を「点火源」、「空気」を「酸素供給体」と記すケースも見られます。ここでは、消防庁のテキストの表現に準ずることとします。

     

    (1)可燃物
    燃える物のことです。木材、紙、多くの有機化合物等があります。

     

    (2)熱源
    可燃物と酸素との反応を起こさせるエネルギーのことです。燃焼のきっかけとなる火気、火花、静電気、摩擦熱等が該当します。

     

    (3)空気
    酸素の供給源となる燃焼を助ける物質のことです。燃焼を支える性質を持つため、支燃物ともいいます。

    炎上の3要素

    燃焼の三要素に倣い、図のようにネット炎上の三要素を考えてみました。

     

    (1)可燃物 ⇔ 話題
    ネット炎上において、口コミを通じて伝播するものが対応します。つまり、世間の関心を引く話題自体が該当します。

     

    (2)熱源 ⇔ 共感
    人々が話題に関心をもって話題を拡散させるモチベーション、すなわち人々が感じる共感がこれにあたるのではないでしょうか?話題に共感した人は、その話題に関する自らの意見を述べたり、話題を別の友人に教える行動をとります。このことで、拡散が広がってゆきます。

     

    (3)空気 ⇔ 拡散メディア 
    熱源を供給する場、すなわち話題が拡散する場です。多くの場合、TwitterやFacebook、5ちゃんねるなどのソーシャルメディアプラットフォームが該当します。Yahoo!ニュースなども記事のコメント欄が活況を呈しており、拡散メディアとしての存在感が増しています。マスメディアでも、ネットの記事をとりあがるケースも目立つようになり、拡散メディアとしてのパワーを発揮しています。

    以上より、可燃物、熱源、空気では、ネット炎上と乖離した印象がありますので、それぞれに相当する要件を、

     

    可燃物 ⇔ 話題、熱源 ⇔ 共感、空気 ⇔ メディア

     

    と呼ぶこととします。また、第四の燃焼要素である連鎖反応は、ネット炎上では「燃料投下」と称される新しく提供される話題が該当すると思われます。

     

    次稿では、このネット炎上の三要素を実際の炎上事案に当てはめてみたいと思います。

     

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