先日、リクルートホールディングスが毎年主催している「MashupAwards」のプレイベントにおじゃましてきました。MashupAwardsとは昨年は466作品もの応募があった日本最大級の開発コンテストです。
審査基準は以下の通りで、事業性は含まれません。クリエイター達の自由な表現の「場」というのを大切にしているイベントです。
<審査の基準>
・アイデア・・・独自性、新規性、優れた着眼点、発展可能性
・完成度・・・実用性、ユーザビリティ、エンタテインメント性
・デザイン・・・芸術性、優れた表現技法
企業の中にいると、考え方が堅いので、事業性とかマーケット需要といった話になりがちで画期的なアイデアなどはなかなか生まれません。起業家を対象としたイベントも、事業性がないと高い評価は得られないため、発想には制限がかけられます。しかし、MahsupAwaredsは事業性が審査基準に入っていないため、発想に制限がなく「おもしろいものアイデア」が生み出される可能性がとても高いイベントになっていると思います。
流行るサービスはちょっとしたアイデアやUIの違いだったり、クリエイティブな面が大きく関係している気がしています。それが、大きな差別化になったりもします。ビジネスにすぐなるような作品は少ないですが、尖った感性や刺激をもらうには、Mashup Awardsはとてもいいイベントだと思っています。
ですので、今回は「Mashup Awards」を知ってもらうためにも、先日行われたプレイベントである『合宿型Mashup Camp Supported by StartupWeekend Japan ~この夏最大のHackathon〜』についてご紹介したいと思います。
「Mashup」とは、複数の異なる提供元の技術やコンテンツを複合させ、新しいサービスを作ることです。そのため、このイベントは様々な企業からAPIを解放してもらったり、コンテンツを提供していただくことで成立しています。
今回は、企業としてこのイベントに参加するメリットなどを中心にレポートしていきたいと思っています。
Mashup Awardsについて
まずは、今年の夏で9回目をむかえる「Mashup Awards」の特徴についてもう少し説明させてください。
<多数の協賛企業>
「MashupAwards」の特徴の一つは、協賛企業が多いことです。昨年は50以上もの企業からAPI提供をいただきました。今回のプレイベントも、APIパートナー/メンターとして6社の方々が参加し、協力団体は13団体以上となりました。
企業側のメリットとしては、
・自社APIを使ってもらえれば、自社サービスのユーザが増える
・尖った感性や刺激がもらえる(可能性がある)
・サービス認知を広められる
・API提供企業同士のつながりができる
・肩書きをぬきにした経験を積める
・社外の様々な人と接する機会が得られる
などがあげられます。
協賛企業にヒアリングする中で、各社口をそろえておっしゃるのが「API提供企業同士のつながり」に大きな価値を感じていることです。ビジネスにつながることはもちろんですが、ビジネス抜きでいろいろな仕事の話ができ、ほかの業界の話なども聞くことができ、とても刺激になるそうです。また、仲良くなることで、イベントに参加していること自体が楽しくなる効果もあるのだと思います。
またこのイベントは、参加者の人とのコミュニケーションの時間が多いため、肩書きを抜きにした個人力がためされるとのこと。その経験がつめることも大きなメリットとのことでした。
<多くのオフラインイベントから生まれる様々なMashup>
先ほども少し説明させていただきましたが、「Mashup Awards」は、様々な企業からAPIを解放してもらったり、コンテンツを提供していただくことで成立しています。ただ、「Mashup」という言葉にはAPIのMashupだけを指すのではなく、いろんなもの・こと・ヒトとのMashupを創出する「出会いの場」になって欲しいとの想いが込められているそうです。
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知らなかったAPIとの出会い
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アイデアとの出会い
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人との出会い
(エンジニア×デザイナ、エンジニア×プランナー、API企業の方×参加者、API企業の方×API企業の方)
を生み出すため、オンラインだけでなくオフラインでのイベントもとても大切にしています。昨年は地方にも多く足を運び、札幌、東京、福井、塩尻(長野)、名古屋、大阪、京都、広島、福岡の9都市で21回のイベント、それ以外に8回の予選(地方4、東京2,学生1・2次予選1)を実施しました。
開発イベントでありながら、オフラインイベントが多く実施されていることも「Mashupawards」の一つの特徴になります。
先ほど記述した企業側のメリットの最初の3つは参加(API提供)することで得られるメリットですが、残り3つはオフラインイベントに参加することでさらに得られるメリットになります。
合宿型Mashup Campで発表された15作品
では、次に、先日行われたプレイベント『合宿型Mashup Camp Supported by StartupWeekend Japan ~この夏最大のHackathon〜』についてご紹介していきたいと思います。
このイベントは、モノづくりを愛する起業家達のためのコワーキンクグオフィス「MONO」で、7月19日(金)~21日(日)の3日間(といっても実質は2.5日間)で行われました。2.5日間という短い期間に、集中してサービスを開発し競い合う「ハッカソン形式」のイベントで、以下の二つのテーマが与えられました。
①ソフト部門/スマートコミュニケーション
②ハード部門/ハードウェア×ハッカソン
それぞれのテーマに最優秀賞が与えられ、最優秀賞を獲得すると、開発支援金10万円とともに、夏からはじまる「Mashup Awards 9」の一次予選が免除されます。
それでは、まずは最優秀賞を獲得した2作品をご紹介したいと思います
<ソフト部門の最優秀賞>
作品名:「すくすくシネマ」 / チーム名:gummy
子供の日常を5秒の動画を撮りためて、後でまるで映画のように子供の成長を振り返ることができる成長動画サービスです。
動画にはちょっとしたコメントもつけられ、あとで見る際には、日付とコメントも表示されます。将来的には、バースデーカードとして、20年後には結婚式で・・・家族の愛情が丸ごと残る世界を作りたい!という言葉でプレゼンを締められました。
デモでは、チームの一人が赤ちゃんプレイで成長している様を実演しそれを撮影。これが会場で大ウケでした(笑)。プレゼンにクリエイティビティ(おもしろさ)が求められるのもMashupAwardsの特徴の一つです。
すくすくシネマは発表の際の審査員からの質問も
・離れて暮らしている祖父母からは動画のニーズは高いです
・ジオタグつけて思い出の場所もわかるようにするといいですね
・継続してためるインセンティブがあるともっといいですね
と前向きな意見が多く、もう少し時間をかけるともっともっとよくなる可能性をとても秘めている作品と感じました。おめでとうございます。
<ハード部門の最優秀賞>
作品名:「vinclu(ウィンクル)」 / チーム名:vinclu(ウィンクル)
地球上どこにいても、相手を感じることのできる非言語コミュニケーションガジェットです。
手のひらサイズの青い鳥のガジェット(ウィンクル)を、大切な人のいる方角に向けると鳴いたり、光ったりします。遠距離の恋人の場合、男性が会いたいなっておもったとき、彼女の住んでいるカナダにウィンクルをむけると光り、彼女もむけていたらさえずりあうというサービスで、GPS・方位・角度センサーで向きを算出しているとのこと。恋愛だけでなく、待ち合わせや、人混みや遊園地などではぐれたときなどに使うこともできます。
審査員の先生からは、「テクノロジー的には、いろんなセンサーを使い、それを2.5日で作り込んでいた技術力を評価。そして、コンセプトも高く評価しました。この作品のコンテキストは人と人とのつながりをどのように扱うかだと思いました。非言語コミュニケーションをハードルなくやってもらうところがLINEなどで本来求められていること。コンテキストを実装に自然に持ち込まれていた点が良かったです。なでるとそれがつたわるなど、非言語コミュニケーションを突き詰めていくともっとよくなると思います。」との総評でした。おめでとうとざいます。
<その他の作品>
今回のイベントでは15作品が制作され、発表されました。惜しくも最優秀賞を逃したそれ以外の13作品を簡単に紹介したいと思います。
1. CollaBuilder/ソフト部門
ハッカソンや勉強会イベントのアイデア共有・チームビルディングを支援するサービス。他の人のアイデアを閲覧することができる。Goodが五つ以上貯まるとプロジェクトがスタートします。
2. Brand Pit/ソフト部門
SNSに投稿された企業ロゴをウォッチして、誰が、いつ、どこで、どんなブランドに、どのように接したかを可視化し、分析するサービス。自社ブランドだけではなく、他社ブランドとの比較も見ることができ、最終的には、Googleアナリティクスのようにグラフィカルに見ることができます。
3. 充電ロマンス/ハード部門
ハードウェア×エロ×Twilioがコンセプトのハードエロガジェット。エロデバイスの充電が完了したら、自分の電話にTwilioから電話が掛かってきます。「Twilio」とはクラウド電話APIサービスで、インターネット上から、電話を送受信したり、アップロードした音声を再生したり、プッシュ音入力によるナビゲーションができるサービスです。音声コンテンツは「koebu」でエロセリフを急募(笑)。今回はサンプルとしてTENGA社の製品(iroha)を使って作られています。
充電トリガーでアクションというアイデアは面白いですね!
後ろ向きのカメラが搭載された電脳メガネで、後ろで想定しておいたシチュエーションが発生した時にだけ、お知らせしてくれます。例えば会いたい人がうしろにいた時(大好きなメアリーとか)、会いたくない人がいた時(上司とか)がいたらメガネが光るなどの通知がきます。
5. GIFMAGAZINE/ソフト部門
クリエイティブなGifアニメをレコメンドされ、たくさん観れて、コレクションできるサービス。リッチコンテンツを消費するにはgifアニメはとても優秀です。UIもかなり出来上がったものが発表されました。審査員の方からは「Gunosyなどのように決まった時間に厳選された数個を送ってくれたらみるかも」というアドバイスも。
6. Four Beat/ハード部門
受付が一つしかないけれど、座っている席が決まっていないコワーキングスペース向けの受付システムです。受付に来ると、スマホの画面にコワーキングスペースで作業している人の顔写真が表示され、ボタンを押すとTwilio経由でその人の携帯が呼び出されます。離席していても、TwilioAPIには、保留機能があるので将来的にはその対応も予定しているとのこと。
小型の人型ロボットRAPIROとTwilioを組み合わせ何かする!というテーマをもってイベントに参加。Twilioで音声認識、音声合成を実装し、田舎のおじいちゃんおばあちゃんがラピロと話す。・・・など作りたかったとのことでしたが、時間が足らず実装を断念。とりあえず音声でラピロが右や左に動いたり止まったりするように実装され、それをデモされてました。
8. ミャウシンセ/ハード部門
球体に iPhone をいれ、転がすといろいろサウンドが再生されるという、ねこじゃらし型シンセサイザー。時間がなかったので、デモとして転がすと様々な猫の鳴き声が出るアプリを実装。
9. Poun/ソフト部門
書き込んだコメントが40秒後に消えるサービス。そのことで、テキストでありながらリアルのコミュニケーションを促進します。残したい場合は「3Dプリンタで出力して物理的に残す」とのこと。「ログはシステム上にはいっさい残さず物理的に残す」という、消すこだわりを表現しながらも、逃しているニーズをちょっと対応しているネタ的(非現実的)アイデアがMAっぽくって個人的にはとても気に入りました。
10. Twilio Girls/ソフト部門
女の子(友達、女子高生、おばちゃん)が電話で悩みを聞いてくれるサービス。音量のボリュームを判断して、音声ファイルをランダムで返し、相槌を打ってくれるという仕組み。
返事の内容とか、機械的に返されている言葉だから…とかはあまり重要でなく、「相槌のセンス」の設計ができていれば、返答におもわず笑ってしまったり、聞いてもらっている気持ちになったりして「利用してみてよかった」って気持ちをクリエイトできそうですね。
11. Fawst/ソフト部門
スマホのバーコードで商品情報ポータルページに簡単アクセスできる、商品情報まとめアプリで、目指すのは最初に使ってもらうアプリになること。ECサイト、オークションサイトの利用率を上げたいと思っているとのこと。また、競合商品のページに自社商品を挟み込む「攻めの広告」が可能!
12. ラフアウト/ソフト部門
5つのおもしろ動画をランダムに5秒づつ流して、顔認識で笑った画像を評価。 面白いコンテンツを投稿したユーザは、どのぐらいみんなが笑ってくれたかがわかることができます。
13. PayFor/ソフト部門
良いことをしたと思った経験をみんなで共有する”Pay it Forward”がテーマのサービス。”ActionTree”によりあなたのしたイイことが誰かの喜びになっていることが実感できる、心で感じる体験型アプリ。ささいな喜びがつながっているのが可視化されます。
いかがだったでしょうか?おもしろい着眼点のサービスはありましたか?2.5日間という短い期間だったため、さすがにぶっとんだ作品はなかったですが、アイデア帳にメモしたいものが一つでもあるといいなっと思います。
こういったイベントへ企業が期待できることは、アウトプット(出来上がった作品)ではなく、新しい考え方、新しい視点、新しい使い方など自分たちだけでは思いつかないアイデアや、普段では出会えない人とのつながりだと思っています。
「Mashup Awards9」の正式なリリースは8月下旬頃で、今年も昨年と同じぐらいのオフラインイベントを各地で実施する予定とのことです。詳細はMashupAwardsのFBページのほうでアナウンスされるかと思います。
今年はどんなアイデア作品が応募されてくるのか、今から楽しみです。
蛇足:めんどくさいこというよ
自分のことはなかなか自分ではわからないものです。人から聞いて初めて自分の新しい一面に気付くことも少なくないはずです。それと同様で、外部からの意見を聞くこと、外部との交流は、自分の強みを再確認する上でもとても重要だと感じています。それは企業も同様です。
先日参加した勉強会では、日本の良さについて再認識させられました(【短編】TheWave湯川塾講義:ゲストは一般社団法人元気ジャパン渡邉賢一さん)。日本人は日本が海外で評価されていることをあまり理解していないように思います。今海外では、日本語自体がかっこいいと思われており「non Japanese Japanese」が流行っているそうです。Parisでは「K-pop」のことを「Korean J-pop」といわれて日本人ではない人が日本語をサビの部分だけ歌うのがかっこよく思われているそうです。
Adobeの調査で、おもしろい調査結果があります。日本以外の国の人は、東京が一番クリエイティブな都市だとおもっているのに、日本人だけがNYが一番だと思っているというデータです(P21)。
日本の中にいるだけでは、とても理解ができないことですよね。
自分たちの強みは自分たちの殻に閉じこもっていただけではわかりません。自分たちでは当然ということは、ほかの人にとっては「宝」だったりもします。
それを発見することがビジネスチャンスだったりもします。
社内の人材だけで新規事業について考えることは、今の時代ナンセンスなんじゃないでしょうか?というか社内の閉じられた環境の中だけでは、新しい発想が出てくる気が私にはしません。ただ、だからといってこういったイベントを自社で企画・運営していくことはとても大変かと思います。なので、既にあるイベントを活用しながら、企業の外の人と接する機会を増やし、一緒に考えるような時間を作っていくことが、今後はとても重要になってくるのではないかと思ったりします。
オープンな姿勢で、外部の人から意見をもらったり、刺激を取り入れる手段の一つとして、個人でがんばっている人たちが集まるイベントやコミュニティとのコラボレーションをしてみてはいかがでしょうか?
今回のイベントをsupportしていただいた「StartupWeekend」も、先日日本ではじめて企業が協賛した形でのテーマ型イベント「Startup Weekend Tokyo E-Commerce」を開催していました。
個人でがんばっている人たちと企業とがマッチングされる場がもっと増え、お互いにとっていい刺激の場となり活性化されていくといいなっと思います。
by 鈴木 まなみ