コマースや人材や旅行などのバーティカルサイト、教育や消費材、金融系やBtoBサイトなど、いろいろデータを見ながらお仕事させていただきましたが、1億以上PVの大規模メディアサイトも何度かお仕事させていただきました。
その時やったことや課題認識などは、現在のコンテンツマーケティングの効果把握、特に “エンゲージメント”、”リテンション” について通ずる部分もあると思い、このブログ記事にてまとめます。
(この記事では “メディア” は、自他共に “メディア” であると認めるサイトを指しております)
当時のメディア集客における環境/背景
(今もですが)当時ヤフトピの威力は絶対的で、多くのメディアサイトは、Yahoo! JAPAN経由のトラフィックにかなり依存していました。Yahoo! から大量のユーザーが流れて来るため、PVは大きく稼げてよいのですが、過半数のユーザーはその記事だけを読んでYahoo! に戻る状態でした。
この状況は、次の課題が存在することを意味しました。
- Yahoo! への過度な依存リスク(Yahoo! の方針変更によりトラフィックを失う可能性)
- サイト訪問ユーザーが、”自社メディアを認識していない” (Yahoo!ニュースだと思って見ている)
- 一見さんばかりで、ユーザーが自社メディアに定着しない
メディアのコンテンツ評価指標:スティッキネス
Yahoo! さんからの大量のトラフィック自体はまったくもって課題ではありませんので、「サイト訪問ユーザーが ”自社メディアを認識していない” 」「一見さんばかりで、ユーザーが自社メディアに定着しない」の2点に絞りました。
状況を数値で把握し、打ち手を講じるもしくは判断材料を得るために、”コンテンツ” について、”スティッキネス” と当時呼んでいたポイントを中心に調べました。
(回遊性の向上、視認性の観点などもありますが、その部分は割愛し、今回はあくまでコンテンツ評価に絞って書きます)
メディアのコンテンツ評価指標としてのスティッキネス
“スティッキネス(stickiness)”は、粘っこいとかしつこいといった意味ですが、コンテンツがどの程度ユーザーを引きつけておけるか、といったポイントを重視しました。
この “スティッキネス” を、さらに2つに分解し、短期的には直帰率と、中期的にはその後のリピート率、に分けてコンテンツ群の数値を把握しました。
スティッキネス:直帰率
Yahoo! から来たユーザーが、その記事だけ見てYahoo! に戻ってしまうのを避けたいのだから、1ページ以上クリックさせたい、といった観点から直帰率(非直帰率)をチェックしました。
コンテンツ群ごと、例えば政治記事群、スポーツ記事群、エンタメ記事群、アイドル記事群、といった括りでページをグルーピングして、Yahooから来たユーザーの直帰率をチェック。コンテンツ間で比較し、コンテンツ群による直帰率の傾向の違いがあるかを探りました。
またコンテンツのジャンル/内容とは別に、記事のレイアウト別の直帰率も調査しました。
具体的には、
- 記事トップに写真がある or 記事途中(ファーストビューより下)にある or 写真なし
- 男性についての記事 or 女性についての記事
- 記事下のおすすめ記事は静的な記事リンク or 編集が個別に選んだURLか
など、確か10以上の要素によって記事をセグメントし、数百記事の直帰率を一つ一つ把握して分類、もうワンクリックされる記事レイアウトを調べ、サイトに来たユーザーに直帰されない、もうワンクリックさせるために調査と工夫を凝らしました。
スティッキネス:新規ユーザーのリピート率
スティッキネスとして、短期的な観点の直帰率だけでなく、中期的なリピート率をチェックしました。ただし、単なるリピーターを見るのではなく、”そのコンテンツを通じて自社サイトを認識し、その結果としてリピートすること(自社サイトに定着すること)” が、スティッキネスであると定義しました。
そのため、コンテンツ群ごとに、当該コンテンツに直接流入した新規ユーザーが、その後一定期間内にリピートする率をチェック指標としました(今思えば、コンテンツ群の初回接触ユーザーごとのコホート分析をしていました)。
この指標により、例えばレースクイーンの写真コンテンツは、訪問あたりPVは稼ぐものの、サイトへの定着、つまりリピーター化への貢献は非常に少なく、一方で訪問あたりPVは少ないものの、リピーター化に高い割合で貢献するのが政治/経済コンテンツだったりと、PVだけをチェックしていたら評価と判断を誤るような結果も目にしました。
※追記:その頃は、メディア運営者が重視するほぼ唯一の指標がPVでした。トラフィックの中期的な意味合いは、滅多に議論にのぼることはありませんでした。
メディアのコンテンツ評価指標:リピート頻度
コンテンツ評価として、スティッキネス以外に、コンテンツ群ごとのユーザーリピート頻度も調べました。初回ユーザーがサイトに再訪問した後、どの程度サイトに来続けてくれるかが、ユーザーを “エンゲージする” コンテンツかどうかの判断材料としました。
コンテンツ群毎のリピート頻度では、例えば野球の結果速報などはユーザーのリピード頻度はかなり高く、ランキング系は(今週のランキングなど)その頻度に合わせてユーザーをサイトに連れてくるものでした。
こういった分かりやすいものの他に、コンテンツ群ごと(更新ニュース系/コラム系/特集企画系/システムで生成されるコンテンツ系/タイアップ系 × 各ジャンル)にリピート頻度(一定期間における平均リピート回数)の違いを把握し、どのコンテンツにより力を入れ、どのコンテンツはストップするかの判断材料としました。
コンテンツマーケティングの目的としてのエンゲージメント
コンテンツマーケティングは、もちろんそれを行う背景や目的があるわけですが、日本のマーケターがあまり着目していない一方で、USマーケターが意識するのが、エンゲージメントであり、カスタマーロイヤルティ/リテンションです。
※ アメリカでは、コンテンツマーケティングの目的として、4番目に来るのがエンゲージメント(64%)です。
※ 日本では、ロイヤリティ向上:39%、エンゲージメント向上:24%と、コンテンツマーケティングの目的として重視されていません。
参考:日本のBtoC企業のマーケター約100名によるコンテンツマーケティング調査レポート
上述したメディアの課題「サイト訪問ユーザーが ”自社メディアを認識していない” 」「一見さんばかりで、ユーザーが自社メディアに定着しない」の対応の方向は、「自社メディアを認識してもらい」「自社メディアに定着するユーザーを増やす」であり、それは “エンゲージメント” であり ”リテンション” であるとも言えます。
【補足】メディアのコンテンツ評価指標を取得/把握するための手間
こういう目的のため/こういうことを把握するために、こういった指標をチェックすべきだと、机上で説明する分には簡単なのですが、それをどの程度簡単に取得できるかは別の話です。
当時の私は、外部の人間の立場にて、状況を把握/分析して改善案や選択肢を提示することを求められたため、手間のかかる分析をそれなりの時間をかけて行うことができましたし、数値は1回取得すれば、その仕事としては事足りました。
しかしながら、メディアを運営する/コンテンツマーケティングを継続的に進める中では、最低でも月次、できれば週次くらいで必要データをチェックする必要はあるでしょうが、そのために必要以上の作業や手間がかかっては本末転倒です。
例えば、スティッキネスとして把握した直帰率も、リファラーをYahooでセグメントし、コンテンツのグルーピングもタグをカスタマイズして、ページ生成と同時にグルーピング計測できるようにしたりと手間でした(GoogleAnalyticsでできるかどうかは未確認)し、その集計期間もいくつものパターンでチェックを繰り返しました。
今回まとめた指標が、あなたが担当するサイトやコンテンツマーケ施策の評価として有効な場合でも、まったく同じ指標をチェックすることは多分難しいでしょうから、現実的に把握できる指標をもってコンテンツ評価を行う形になるように思います。
今回の記事が、コンテンツマーケティングの、エンゲージメントやリテンションの観点での効果指標の検討の役に立てば幸いです。
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">by 清水 昌浩