【創作】放課後ペパーミント07【再掲】
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【創作】放課後ペパーミント07【再掲】

2014-06-25 02:53

     そして日々は続いていく。
     それからのわたしは怖いもの知らずだった。
     サエコとの関係を前進させたことにわたしは喜びを感じ、幸せを感じ、そう――その時は敵なんぞいないとまで思っていたのだ。人前でいちゃいちゃするのには抵抗はあるものの、手をつなぐことくらいは、たやすいことになってしまっていたのだ。
     唐突にキスをされたって、
    「やめなさいよ、あんた」
     ――と、たしなめる程度で済むくらいなのだ。
     もっとも、顔が赤らんで、嬉しさを隠せないのは致し方のないことだけれど。

     表面上には、わたしたちはきっとなにも変わらなかっただろう。
     常にべたべたとくっついて、公然のカップルとして出来上がっていて、周囲に冷やかされて、わたしは心ならずもそれを否定して――。
     今までだってそんな調子で、だから表面上には、わたしたちに変化は見られなかったのだ。
     だけれど、内面では確かにつながりを大きくしていたのだ。

     たくさんのデートをわたしたちは重ねた。
     これまでだって休日になるたびに出かけていたので、本当に変化のないことなのだけれど、友達から飛び出したわたしたちには、すべてが変わって目に映るのだった。

     世界は彩りを強調して見えるのだった。

     このころになると、もう遊ばれているという感覚はなくなる。
     サエコはただストレートに意志を伝えてきていたのだと、わたしはただ思うようになる。

     そう、茶化すようだったのはただ単純に無邪気だったからで、彼女は本当にわたしのことを愛してくれていたと――。

     そしてとことんまで、わたしは幸せに上気しているのだった。
    「世界のほとんどは、甘いものでできていると私は思うのよね」
     ある日に何気なくサエコは言った。そして、
    「私とあなたの間にあるのも、砂糖で作られた赤い糸だったのよ。私には、最初からそれが見えていたのだわ」
     ――と、綺麗な顔に笑みを湛えて、優しい声色で続けるのだった。
     話が抽象的すぎて、いったいなにを言っているのか、わたしには理解ができなかった。
     サエコはそういうやつなのだ。自分の言葉ですべてを伝えようとするから、無邪気にそんなことをするから、だからわたしは茶化されているのだと思っていたのだ。

     だけれどそれは、本当は彼女の愛情表現なのだ。

     だから今のわたしは、よくわからなくてもよくわかる。
     そうなのだ。
     きっと世界は甘いものでできているのだ。

     甘ったるい、とびきりの幸せに満ちているのだ。
     小指からはキラキラと、粉雪のようにパウダーシュガーを舞い散らせ、赤い糸が見えているのだ。
     サエコが言うならそうだと思ったし、わたしの疑問なんて、些細なものだと思えた。

     それでいい。きっと、それでいいのだ。

     それでいいのだ、すべてのことは。


     うつろわぬ愛のさなかに二人はいて、そしてすべてはサエコの意のままで――。

     わたしは単に、彼女に追従するまでだ。


     そうしてまた、幸せに日々は推移して――。

     あの日を迎えた。

     それは刺激的な放課後の、まるでペパーミント・アイスクリームみたいな放課後の、その分岐点となる一日で――。


     本当のサエコを、カワカミサエコを、わたしは知る。



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