【創作】ナツゾラ03-1 最後までの友達
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【創作】ナツゾラ03-1 最後までの友達

2014-10-11 05:20

     背中の重みが心地よかった。よほど気に入られて、信頼されているのだと感じられてうれしかった。
     背中で眠る少女の髪が、風に揺られて僕の首筋をくすぐる。
     大きな存在がそこにはある。
     僕にとって、とても大きな存在が。
     彼女は、天久ミクは、僕の中で日に日に大きくなっていて……。

     こんなにも信じてくれる存在に出会ったことはなかったから、僕は彼女を大事にしたいと思うのだった。
     出会って間もないのに、背負われて安らかに眠る少女を大事にしたいと思うのだった。

     今日も陽が暮れる。
     週に一度の帰宅日に、僕はミクちゃんを背負って家路につく。

     さっきまで一緒に隣り合い、防波堤に座って語り合っていた彼女は、いつの間にか肩にもたれて眠ってしまった。
     一日一生懸命に遊んで、体力を使い果たしたのだろう。なんの警戒心もなく、僕の肩で彼女は眠ってしまった。
     だから僕はそっと彼女を背負い、天久家へと、慎重に歩を進める。
     彼女を起こさないように帰り着くのが、今の僕に与えられた命題だ。

     あの日に出会った防波堤。
     帰宅日に、彼女はそこに歩を進めた。
     療養所から出て、迷わずに歩く彼女に、僕はただついていくだけだった。
     そうして、二人で防波堤までたどり着いた。
     ミクちゃんは両手を広げ、バランスを取るように防波堤の上を歩き、やがてちょこんとそこに座る。
     僕はなぞるように彼女と同じところに足を置いて歩き、そしてちょっとだけ離れて隣に座る。
     風が僕とミクちゃんの髪の毛を遊ばせ、流れ去っていく。海から吹き上げて、そして山のほうへと過ぎていく。
     いつもより少しだけ騒がしい海は、小さく白く波を立て、波音がとめどなく聞こえてくる。
     ふと視線を送ると、ミクちゃんは空を見上げていた。
     上空は風が強く踊っていて、雲の流れが速かった。
     地上をのんびり過ごす僕たちを、彼らはどう思っているのだろうか。暢気なものだと笑っているだろうか。
     僕らには僕らで悩みがあるのだけれど、それは彼らには知らぬことだろう。
     それに彼らにだって、いつ散り散りに消えてしまうのかという、大きな悩みがあるのだろうし。
     ぼんやりと、思いをはせる。
     変わってしまった日常へ、思いをはせる。

     一日の賑やかな流れ。
     ほんの少し前までは、ありえなかった僕の安らぎ――。



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