【創作】ナツゾラ03-2 最後までの友達
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【創作】ナツゾラ03-2 最後までの友達

2014-10-16 02:51

     今日も今日とて、僕はミクちゃんと、二人のちびと遊んで過ごした。今日は飛び切りせわしない追いかけっこをして、子供の体力に、大人の僕は完全に参ってしまった。
     ゆーくんもみーちゃんも、ネジの切れないおもちゃのように、くるくると走り回り、きゃっきゃと笑っていた。僕にも同じように、疲れなど知らない時期があったのかと思うが、それははるか遠くのようで、なかなか想像できなかった。
     僕はあの子たちのように、くるくると走り、きゃっきゃと笑っていただろうか。
     あんなにも無邪気で、未来の不安もない時があったのだろうか。

     やがて追いかけっこは終わりを迎え、僕はベンチで休憩をすることにする。
     疲れて休む僕の視線の先で、ミクちゃんはみーちゃんをブランコに座らせ、押してやっていた。
     ちび二人も無限機関だが、ミクちゃんもよく付き合えるなと僕は思う。
    「なあ、栄人」
    「なんだよ坊主」
     腕を組んで、ふてくされたような顔でゆーくんが僕を見上げる。
     ゆーくんは生意気なガキだった。慕ってくれてはいるのだけど、おまえの言う通りにはならないぜという、ひねたところがありありと見える。だから僕も、可愛がってはいるのだけど、おまえなんて目じゃないぜという扱い方をしている。
    「おまえ、ミクのことが好きなのか?」
    「……はぁ?」
     唐突にませたことを聞くやつだった。見たところ、小学校にも上がらないような年齢だろうに。
     僕はそっと、ブランコ遊びに興じる少女たちに視線を送る。
     ミクちゃんに背を押され、みーちゃんはほんの数瞬の空中遊泳を楽しむ。戻ってきたミーちゃんの背にはミクちゃんの手が添えられ、ミクちゃんはまたみーちゃんを空に押し出す。
     それを繰り返す。それを何度も繰り返す。
     僕は彼女のことが好きだろうか?

     ――そういう感情は、まだないような気がする。

    「別にそういうのはないかな」
    「ふーん、そうかよ。じゃあせいぜい俺の邪魔はするなよな」
    「……なんだ?おまえミクちゃんが好きなの?」
     とんだ年上好きだと僕は思った。
     少なくとも、ゆーくんとミクちゃんは十歳は離れているだろう。年の差がそれだけあっても、果たして恋愛感情とは芽生えるものなのだろうか?
     いやでも、最近十歳差なんて珍しくもない気もするし……。
     それともこれはあれだろうか。幼稚園児が先生に恋をするとか、そういうのと同じなのだろうか。
     そういうのなら、僕の時にも流行ったものだ。ただし本当の恋愛感情ではなく、ほとんどの場合、憧れを勘違いしているのだけれど。
    「そんなわけないだろ」
    「ははあ、それじゃあみーちゃんのほうだな?」
    「……」
     僕が言うと、ゆーくんは顔を赤くする。非常にわかりやすい奴だ。
     ――というか邪魔をするなって、僕はみーちゃんを取ると思われてたのだろうか?
     ミクちゃんに気がいかないからって、あんな年下の女の子に手を出すことは絶対にないのだけど……。
    「内緒にしろよ」
     一言捨て置いて、ゆーくんはさっさと走って行ってしまう。
     やはり彼は、僕に釘を刺したかったらしい。
     恋は戦争とは言うけれど、それだってあんな小さな子供が、僕のような大人を心配しなければならないなんて、思っていたよりも戦場は荒れているのかもしれない。それならば僕は、なるだけ背中を撃たれないように留意しよう。
     ゆーくんは少女たちに合流して、ミクちゃんにかわってみーちゃんの背を押す係を交代している。
    「ミクはもう疲れただろ」
     ――とか言っているのが聞こえた。
     そして小さな体で、みーちゃんの背を押し、空中遊泳の手伝いを始める。本当にわかりやすい奴だ。
     しばらく休憩をして、輪の中に僕も加わる。
     男二人で少女をブランコに座らせ、かいがいしく接待をした。
     背中を押すと、少女たちはほんの数瞬の空中遊泳を楽しむ。戻ってきた少女たちの背には男たちの手が添えられ、男たちはまた少女たちを空に押し出す。
     それを繰り返す。それを何度も繰り返す。
     みんな笑っていた。
     楽しそうに笑っていた。

     それでいいと僕は思った。

     行ったり来たりするブランコは、時にスピードを上げ、角度を変え、弧を描いて往復した。
     男たちはただ少女たちの背中を押すだけだったけど、それで楽しかった。それが楽しかった。
     なんだかよくわからないけど、充実していた。

     汗をたくさんかき、喜色満面で僕らは過ごした。



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