【創作】ナツゾラ15-4 不都合な適格者
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【創作】ナツゾラ15-4 不都合な適格者

2015-06-16 02:04

     さざ波が、防波堤を打つ。
     青い波は崩れて白い泡になり、そしてまた海へと帰っていく。

     そしてそれはまた波となり、崩れて泡になり――。

     言葉が継がれるまでの間、僕はその様子をじっと見ていた。
     ただただなんとなく、それをじっと見ていた。
    「なのに私が残ってしまって、滑稽な話よね。消えてしまいたいと言っていたあの子の希望を、叶えるしかないなんて、おかしな話よね」
    「――」
     僕はやはりなにも言えなかった。
     だって、言おうとしたことは矛盾していたからだ。
     結果、ミクちゃんは辛いことのない世界に行った。
     それはミライがミクちゃんを守ったということだ。

     だけど、それはミクちゃんの命を守りきれなかったということでもあるのだ。

     言葉には、どう整理していいのかが、わからなかった。
    「……仕方ないことなのかもしれない」
     迷った挙句に、僕はそう返した。
     それ以外に、言えることなんてきっとなかった。
    「――そうなのよね。だって、私に選択肢なんてないのだもの」
     またミライは苦笑いになる。
     泣きたいんだなと、僕は思った。
     泣けないんだなと、僕は思った。
     つらさを肩代わりしてきたミライは、泣きたくなるようなことを代わりに経験してきたミライは、それでもきっと泣かなかっただろう。泣く役目はミクちゃんだったのだから、ミライはずっと泣かなかっただろう。
     だから、彼女は泣けないのだ。
     多分彼女が一番愛し、大切にしてきた「本人」を失い、辛さの極致にあっても、だから落涙することは叶わないのだ。

     本当に辛いのは、だから多分ミライなのだろう。
     僕なんかよりも、きっとミライの方が辛いのだろう。


     わかっているのに、僕はきっとそれでも、優しくなれない――。



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