【創作】ナツゾラ16-1 放浪少女
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【創作】ナツゾラ16-1 放浪少女

2015-06-23 00:46

     ミライは家に居つかない少女だった。毎日毎日を、することも何もないのに、外に出て過ごすのだ。
     それは多分、居心地の悪さがそうさせるのだろう。
     ミライと夏子さんは、どこかぎこちないのだ。互いに接し方がよくわからずに、戸惑っているのだ。
     夏子さんはミライを嫌っているわけではないはずだ。
     僕のようなものを家族と言ってくれる夏子さんが、ミライを家族だと思わないわけがない。そしてそんな夏子さんが、簡単に家族を嫌うわけがない。
     きっと単に距離を測りかねているのだ。
     ミライは形だけとはいえ、ミクちゃんを奪っていった人なので、どうしていいのかわからないのだ。
     そしてそのおかげで、形だけとはいえミクちゃんが生きながらえているので、それもまた接し方に影響を与えているのだろう。
     ミライは、それに耐えかねているのだ。
     きっとミライだって、夏子さんとは仲良くしたいに違いない。
     唯一の家族なのだから、それも当然だ。
     だけど、彼女もまた、ミクちゃんを奪って行ったという身の上から、それができないのだ。
     そしていたたまれなくなり、毎日を無為に過ごすことになっているのだ。
    「ほんとうに、退屈な町ね」
     背の低い建物を眺めながら、歩きながらミライは呟く。
     頭上では、夏の名残のくっきりとした白い雲が、緩やかな風に流されていく。九月とはいえ、まだ夏の盛りの熱気が、いまだにこの町を支配していた。
    「――だろうね」
     不機嫌そうな表情で、ぶっきらぼうに言うミライに、僕もぶっきらぼうに答える。
     僕だって、ミライとの距離をつかみかねている一人だ。
    「あんたたちも、よくこんなところで毎日過ごしていたと思うわ」
     麦わら帽子の陰の中で、いつもの空色のワンピースを着たミライはぼやいた。
     本当にこの町は、退屈しのぎの一つもない。ミクちゃんと過ごした時は毎日がそれでも花やいでいたけれど、今はその花も枯れてしまった。
    「ミライはこの町が嫌いなのか――?」
     肩で風を切り、先を行く少女に、僕は尋ねてみる。
     僕は決して嫌いではない。のんびりしていて、いい町だと思う。退屈しのぎには恵まれていないが、自然があるから、だからそれでいいのだ。
     誰だったか、自然ならいくらでもあると言っていた。
    「――」
     ミライは返答をしなかった。
     てっきり彼女のことだから、思ってもなくてもはっきりと嫌いだと告げると思ったのだが、皮肉屋の彼女の口からは、なにも言葉は出てこなかった。
     日々は、そうして続いていく。
     続きに続けるための、ただの隙間の日々は、そうして続いていく。


     夏が終わって、秋が来るまでのわずかな隙間は――。



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