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  • 【第155-156号】岩上安身のIWJ特報!元米NSC高官が語る、秘密保護法の不当性と安全保障のこれから~モートン・ハルペリン氏インタビュー

    2014-06-20 21:12  
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     本日は、6月20日金曜日。国会の会期末である6月22日まで、残り2日と迫った。安倍総理は、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認を、今国会中に閣議決定しようと躍起になってきたが、「今国会では閣議決定しない」と、公明党との間で話し合いがつき(公明党が粘りをみせた、というポーズのためである)、閣議決定は7月4日に延ばされた。
     しかし、国会での審議を経ぬまま、与党協議のみで憲法の解釈を変更し、米国の意に沿うかたちで集団的自衛権の行使を容認することには何も変わりはない。
     公明党には、日米内外から圧力がかかっていた。ジャパン・ハンドラーの代表格の一人、マイケル・グリーン元米国家安全保障会議アジア上級部長は、6月1日、2日に来日し、ある自民党議員に以下のように語った、と6月14日付けの産経新聞は報じている。
     「東アジアで集団的自衛権を認めないのは中国共産党と日本共産党、社民党だけだ。公明党はどういう態度をとるだろうか・・・」
     この記事自体が、十分に脅しになったことだろう。
     また、小泉純一郎元総理の政治担当秘書をつとめた、現在は安倍政権のブレーンとして内閣官房参与の地位にある飯島勲氏は、6月10日にワシントンで講演し、公明党と創価学会の関係に揺さぶりをかけた。12日付けの朝日新聞は、以下のように報じている。
     「『公明党と創価学会の関係は政教一致と騒がれてきたが、内閣法制局の発言の積み重ねで政教分離ということになっている』。飯島氏は党と支持団体の関係は憲法の『政教分離原則』に反しないとする政府見解を説明しつつ、こう続けた。『法制局の発言、答弁が一気に変われば、「政教一致」が出てきてもおかしくはない』
     集団的自衛権の行使を禁じてきた従来の憲法9条の解釈について、安倍晋三首相は内閣の閣議決定で変えることができると明言する。しかし憲法学者からは、これが認められれば内閣の判断で他の条文解釈も自由に変えられるようになり、『憲法の空洞化』を招きかねないとの批判が出ている。
     政府の一員である飯島氏の発言は、こうした懸念を裏打ちし、露骨な圧力ともとれる」
     憲法解釈を内閣が恣意的に変更できるとする方が、本来間違っているのだから、公明党も創価学会も毅然と抗うべき場面だったはずである。しかし、公明党は結局、憲法の解釈による変更を認める方向へと寄り添っていってしまう。
     当初は抵抗する素振りを見せていた公明党は、結局のところ、どこまでも与党として自民党にくっついてゆく「下駄の雪」に過ぎなかった。公明党は、自民党の高村正彦副総裁による「新3要件」の提示を受け、事態を限定して容認する方向で最終調整に入った。
     安倍総理は5月15日、私的諮問機関「安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)」からの提言をうけ、赤ちゃんを抱いたお母さんやご老人のイラスト入りで、「米国の輸送艦で日本人が救出された時、その輸送艦が攻撃されたら、日本の自衛艦が防衛するのは当然ではないか」と情緒的に訴えた。
     しかし、安倍総理のこの説明が、国民をあざむく真っ赤な嘘だったことが明らかになっている。
     6月11日、民主党の辻元清美議員が外務委員会で、米国の国務省と国防総省の「避難民に関する合意書」を持ちだして政府を追及した。この文書の中で米国政府は、「国務省は外国政府と自国民の退避について、正式の協定を締結することを控えている」「各国は米国をあてにせず、自国民を救出せよ」と言及しているのである。
     つまり、米国の艦船は、日本人だろうと何人だろうと、外国人を救出しないのである。安倍総理が、解釈改憲による集団的自衛権行使容認のために持ちだした事例は、万が一にもあり得ないものなのだ。過去にも救出事例は一件もない。今後もありえない。しかも、辻元議員の質問にこたえて、その事実を国会で政府はなんとあっさりと認めたのである。
    ※辻元清美ブログ( 【URL】http://bit.ly/SOBvWV )
     安倍総理は、いったいなぜ、これほどまであからさまな嘘までついて、集団的自衛権の行使容認を急ぐのか。安倍総理は国会の答弁の中で、「年末に控えた日米ガイドライン改定のために急ぎたい」と述べている。このことからも、米国の意向を忖度していることは、火を見るより明らかだ。公明党は自民党にべったりくっついてゆく「下駄の雪」だが、自民党と日本政府は、米国のご意向であらば国民に嘘をついてでもつき従ってゆく「犬の尻尾」である。情けない話ではないか。
    ◆日本はどこの戦争に巻き込まれてゆくのか
     集団的自衛権行使容認をこれほどまで急ぐのは、武力行使の現場に自衛隊を赴かせる必要性が目前に迫っているからである、と考えるのが妥当である。日本人の血が流れたり、日本人が外国人の血を流したりする日は近い、と言わなくてはならない。
     では、集団的自衛権の行使により、日本の自衛隊員が赴くことになる戦場はどこか。現在のところ、2つの可能性が考えられる。
     ひとつは、内戦による激しい混乱が続く、ウクライナ東部だ。安倍総理は、4月末から5月初旬にかけての欧州歴訪で、NATOの軍事協力に参加するための下地作りに勤しんだ。
     そのNATOは、6月上旬から、バルト海沿岸で史上最大の軍事演習を行い、ウクライナ情勢で対立するロシアと軍事的緊張状態にある。自衛隊が集団的自衛権行使容認によってNATOの軍事行動の一翼を担うことになれば、おのずと、戦場となるウクライナ東部に派遣される可能性が強まる。
     もうひとつは、中東に派遣される可能性だ。こちらのほうが、より有力な候補と見られる。昨年、米国とイギリスが軍事介入を行う姿勢を見せ、ロシアの干渉によりぎりぎりの所で空爆が回避されたシリアは、いまだアサド政権側と反体制派との武力衝突が収まる気配を見せない。
     さらに、ここにきて急展開を見せているのが、イラク情勢だ。スンニ派の武装組織「イラクとシリアのイスラム国(ISIS)」が、イラク第2の都市モスル、ティクリートを次々と制圧し、首都バグダッドに迫っている。
     これに対してオバマ大統領は、6月12日、「いかなる選択肢も排除しない」と述べ、ISISが支配する地域への空爆も排除しない考えも示した。昨年のシリア危機再び、である。気の早い人は、第三次イラク戦争の始まりか、とすら言い出す人もいるし、イラクは解体され、クルド人と、シーア派と、スンニ派の人々の国に3分割されるのではないか、という声まであがっている。
     しかし、理不尽な暴力の横行に誰も彼もが鈍感になってしまったものだ、と思う。
     さんざん非難されたブッシュでさえ、イラクへ攻撃を行う際には、アルカイダとフセインのつながり(そんなものはなかったが)や、大量破壊兵器の存在(そんなものもなかったが)を、軍事侵攻の理由とした。でっちあげの旗であれ、戦争の大義を掲げてみせたのである。
     ところが、オバマは、空爆のための理由をとりつくろうことすらしない。イラクは独立した主権国家のはずである。その国の内部の内乱、内戦に対し、一方のサイドに空爆を敢行することに、何の理屈も用意せず、何のためらいもみせない。なぜ誰も、国際法違反であると、オバマに教えてやらないのだろうか?
     集団的自衛権の行使を容認するということは、米国による空爆の危機に瀕するシリアやイラクのような中東諸国に対して、自衛隊が派遣される可能性がある、ということなのである。もちろん、テロによる報復を受けることは覚悟しなくてはならない。必要ならばそれも仕方ない、断固として戦うべきだ、という声が出ることはわかっている。 だが、誰と戦う? ついこの間まで、ホルムズ海峡やペルシャ湾に掃海艇を出せ、と言われていたのは、イランを「仮想敵」とした戦闘だったはずだ。それが今や、ISISの台頭で、シーア派のイランが色めき立ち、あげく、仇同士だったはずの米国とイランが急接近している。誰が敵で誰が味方か、めまぐるしく変わるこの世界で、主体性なく、同盟軍に追随してゆくことだけを意味する集団的自衛権の発動での武力行使がどれだけ愚かしいか、わからないのだろうか。
    ◆大義もなく、国益もない戦争という愚行に突入するための準備
     愚行を遂行するには、目を閉じ、耳をふさぎ、頭で考えるのをやめなくてはならない。そうでなければ遂行できない。
     そう考えてみると、この集団的自衛権行使容認とセットにして、昨年末に日本版NSCが発足し、さらに、国民の広範な反対の声にもかかわらず、昨年12月8日に特定秘密保護法が強行裁決された理由がわかるというものである。これから日本は、大義もなければ国益もない、愚行中の愚行である戦争に突入する。そのために、目と耳と頭を奪う必要があったのだ。
     特定秘密保護法が、日本の民主主義の根幹を揺るがす”稀代の悪法”であることを、IWJはこれまで繰り返し報じてきた。特定秘密保護法は、国民の「知る権利」の尊重をうたった国際ルール「ツワネ原則」にも違反している。
     「ツワネ原則」とは、50項目から「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」の通称。「安全保障のための秘密保護」と「知る権利の確保」という対立する2つの課題の両立を図るため、世界70カ国以上から500人を超える専門家により議論され、2013年6月に南アフリカの都市・ツワネで採択された。
     5月上旬、その「ツワネ原則」の作成に深く関わった元米国防総省高官であるモートン・ハルペリン氏が来日し、各所で行われた集会やシンポジウムに参加した。
     ハルペリン氏は、「ツワネ原則」の作成者である以前に、国防総省の高官であり、米国の戦争遂行の司令部となるNSC(国家安全保障会議)の元高官でもある。安全保障上の機密保護にも自ら携わった。そうした「タカ派」的な経歴をもつハルペリン氏ですら、日本の秘密保護法をみて、たまりかねたように「日本の秘密保護法は21世紀の民主国家における最悪の秘密保護法制である」と批判の声をあげた。
     来日したハルペリン氏は、特定秘密保護法だけでなく、日本の原発政策と核保有、歴史修正主義、憲法改正などの動きについて、米国政府がどのように考えているか、日本の各界各層に対して、広くメッセージを投げかけた。
     外交・安全保障政策のプロフェッショナルが、日本を「戦争のできる国」に作り変えようとする安倍政権に対して強い警鐘を発する、必読のインタビューである。
     
  • 【第152-154号】岩上安身のIWJ特報!ウクライナで何が起こっているのか~米国の思惑とロシアの思惑 ロシアNIS経済研究所・服部倫卓氏インタビュー

    2014-06-12 15:40  
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    第152・153・154号
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               岩上安身のIWJ特報
     ウクライナで何が起こっているのか~米国の思惑とロシアの思惑
               ロシアNIS経済研究所・服部倫卓氏インタビュー
    ----------------------------------------------------------------------
     5月25日、ウクライナで大統領選挙が行われた。当選したのはペトロ・ポロシェンコ氏。「チョコレート王」として知られる富豪である。新しい大統領が選ばれたことによって、ウクライナの情勢は落ち着いていくのかとも思われたが、雲行きはどうも怪しい。
     ロシアへの侵入が行われたクリミアの「奪還」を、本気かどうかはともかく公表している。実際に武力をもってクリミアの「奪還」を「実行」しようとしたら、間違いなくロシアとウクライナの間で戦争が頻発し、他国も巻き込まれていくだろう。大きな嵐の予感がぬぐえない。
     この半年をふり返ってみよう。
     ヤヌコビッチ元大統領がEUとの連合協定の締結を見送ったことをきっかけとして、昨年11月から始まったウクライナの首都キエフでの反政府デモは、今年2月になって武力闘争へと発展し、とうとうヤヌコビッチ政権打倒へと至った。
     日本では大雪に見舞われ、山梨県を筆頭に東日本大震災で大雪害が起きていた時期である。ロシアのソチで冬季五輪が開催されていた時期であった。週末、五輪観戦に夢中になっていた安倍総理が、雪害対策に乗り出さず、高級天ぷらを食べていて批判された時期でもあった。
     同じ頃、ロシアのプーチン大統領は、ソチ五輪のホスト国の元首として身動きがとれず、キエフの動きに素早い反応ができなかった。そういうタイミングでの「政権転覆」だった。
     キエフの独立広場での運動によって、暫定政権が樹立されたが、同時に、親欧米の路線に反発する親ロシア派の人々の動きも活発になった。そのひとつの現れが、3月に住民投票を経て行われたクリミア自治共和国とセヴァストーポリ特別市のロシア編入である。
     4月になると、ウクライナの東部では、親ロシア派住民が市庁舎などの建物を占拠し、それを鎮圧しようとするウクライナ軍との闘いが繰り広げられた。
     情勢がますます緊迫していく中で、5月2日、ウクライナ南部のオデッサでは大虐殺事件が起こった。親ロシア派住民が立てこもった建物が放火され、少なくとも、40人以上の市民が死亡したのである。犠牲者の中には、女性も含まれていた。放火は右派勢力によるものとみられているが、右派勢力からはひとりの逮捕者も出ていない。法治システムが破綻していることを端的に示す事件である。
     5月25日の大統領選後も事実上の「内戦」状態が続き、26日にはドネツク空港を占拠した親ロシア派勢力に対してウクライナ軍が攻撃し、40名以上が死亡した。ウクライナは東西で分裂状態が続き、ひとつの国家として機能していくことが危ぶまれている。
     このウクライナ危機は、日本にとって対岸の火事ではありえない。
     安倍総理は5月15日、私的諮問機関「安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)」からの報告書提出を受け、記者会見を行い、解釈改憲による集団的自衛権行使容認に向け、公明党との間で与党協議を開始することを表明した。
     公明党との与党協議は、6月10日現在のところ、難航しているようにみえる。閣議決定の文言に「集団的」の文言を入れることに難色を示し、連立からの離脱をもちらつかせる公明党に対し、安倍総理と自民党の高村正彦副総裁は、あくまで強気の姿勢だ。6月10日、安倍総理は、閣議決定の文案に「集団的自衛権」と明記する意向を高村副総裁に伝え、今国会の会期中、6月20日(金)に閣議決定する考えを示した。あと10日である。
    ※「集団的」明記を指示=安倍首相、20日閣議決定目指す
    (時事通信、6月10日【URL】 http://bit.ly/1ijFhye ) 公明党の抵抗がどこまで続くかわからない。自民党は公明党が連立を解消しても、衆参ともに単独で過半数を占めている。さらに、新たなパートナー候補として、日本維新の会を「分割」した石原慎太郎前共同代表の率いる石原新党の合流も取り沙汰されており、自民党が折れて妥協する可能性はほとんどない。
     加えて、「決定的」ともいえる報道が、同じく6月10日に流れた。”憲法の番人”として、憲法の解釈を司る内閣法制局が、これまでの解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定の原案を、既に了承していると共同通信が伝えたのである。公明党が踏ん張ってこれたのは、内閣法制局の憲法解釈があってのこと。「公明党は、与党協議における後ろ盾を失ったかたちだ」と共同は論じた。
     事実であれば、日本政府は歴史的な分岐点を踏み越えたことになる。
    ※法制局、閣議決定原案を了承 集団的自衛権容認へ転換
    (東京新聞、6月10日【URL】 http://bit.ly/1oHHXv6 )
     ここまでゴリ押しして安倍総理が、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認を急ぐ理由は何なのか。ひとつには、安倍総理自身が国会でも答弁しているように、年末に改定される日米ガイドラインに間に合わせるためであると考えられるが、もうひとつ、隠された理由として、NATOの軍事行動に自衛隊を参加させようとの思惑があるのではないか。
     安倍政権は、5月9日、集団的自衛権の行使の対象国は、同盟国である米国に限らないことを明らかにした。
    ※集団的自衛権、行使対象国絞らず 米国以外も、政府方針
    (朝日新聞、5月9日【URL】 http://bit.ly/1u1uYDX )

     安倍総理は4月末から5月上旬にかけて行われた欧州歴訪の際、ベルギーの首都ブリュッセルのNATO本部を訪れ、ラスムセン事務総長と会談した。安倍総理はNATO本部での演説で、「積極的平和主義」の名目のもと、解釈改憲による集団的自衛権行使容認の必要性を強調した。
    ※安倍首相、NATOとの新連携協定に調印
    (ロイター、5月7日【URL】 http://bit.ly/1mAIPid )

     そのNATOは、ウクライナ東部の混乱をめぐり、ロシアに対して強硬な姿勢を崩していない。ウクライナはNATOの加盟国ではないが、6月3日には、国防相理事会を開き、ポロシェンコ政権の軍事能力向上に向けた包括的な支援を行うことで合意した。
     さらにVoice of Russiaが伝えるところによると、ウクライナ近郊で、米国、英国、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、カナダ、ラトビア、リトアニア、エストニアの約5000人の兵士が参加する、バルト三国史上最大のNATOの軍事演習が始まったという。
    ※ウクライナ近郊でバルト三国史上最大のNATOの演習始まる
    (Voice of Russia、6月10日【URL】 http://bit.ly/1u0XxBF )

     ウクライナをめぐり、ロシアとNATOは、まさに一触即発の状態であると言える。集団的自衛権の行使を容認し、日本を「戦争のできる国」に作り変えるということは、万が一、ウクライナを主戦場とする戦争が勃発した場合、日本の自衛隊も参戦する可能性があることを意味する。
     その意味で、ウクライナ情勢は、日本にとって対岸の火事であるどころか、今まさにそこに迫った、緊急事態なのである。
     親ロシアと親欧米のあいだで揺れ続けるウクライナだが、この背景には破綻寸前の経済という問題があり、さらには多民族国家ウクライナの成り立ちという歴史的背景がある。こうした背景をふまえて、これからウクライナがどうなっていくのか。今号の「IWJ特報!」では、3月20日に行った、ロシアNIS貿易会・ロシアNIS経済研究所の服部倫卓氏のインタビュー全文をお届けする。
    【インタビューのポイント】
    ・ウクライナの経済的困窮ーーリーマンショック以降急激に落ち込んでいたウクライナ経済。国外からの支援を必要としており、EUに頼るのかロシアに頼るのかでウクライナ国内は揺れていた。経済破綻の理由と経緯はどのようなものだったのか。
    ・歴史的背景ーーウクライナは多民族国家であり、国内で文化圏・言語圏が分かれている。ソ連からの独立後、ひとつの国家としてのアイデンティティを確立させてきたが、今後どうなっていくのか。
    ・極右武装勢力の台頭ーーキエフの反政府デモで台頭してきた極右武装勢力。現在もウクライナ東部の親ロシア派勢力の鎮圧のために活動を続けている。この極右武装勢力はどのような影響を及ぼすのか。
    ・ロシアとアメリカの対立ーーロシアにとって要所であるクリミア、セヴァストーポリがロシアに編入された。ウクライナは、西側のNATO諸国とロシアとに挟まれている。ロシアの思惑と、アメリカの思惑はウクライナにどのような影響を与えるのか。===================================
    ◆歴史的に主権国家としての歴史性が乏しい「新興独立諸国」としてのウクライナ◆
    ===================================
    ▲服部倫卓氏

     
  • 【第147-151号】岩上安身のIWJ特報!キリスト教の「神話」のベールを取り去り、「史的イエス」の実像に迫る 上村静氏インタビュー

    2014-06-10 19:16  
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    第147・148・149・150・151号
    ----------------------------------------------------------------------
               岩上安身のIWJ特報!
     キリスト教の「神話」のベールを取り去り、「史的イエス」の実像に迫る
                          上村静氏インタビュー
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     人類史上、イエス・キリストほど、数多くの人に知られ、影響を与えた人物はいない。キリスト教徒でなくてもイエスの名を知っているし、敬意を払うべき人物と思っている。
     同時に、イエスを教え広め伝えるキリスト教についても、私たちは多くのことを知っていると思っている。異教徒の日本人もクリスマスを祝うし、西暦を用い、ローマ法王や教会やイスラエルや聖書などについて、断片的な知識やイメージを思い浮かべることができる。
     だが、本当に我々はイエスとは何者で、キリスト教とはどんな宗教か知っているのだろうか?
     キリスト教はユダヤ教から派生し、世界宗教に成長したが、自らのルーツであるユダヤ教に対して、今日的な表現で言えば「ネガティブ・キャンペーン」を繰り返し、反ユダヤ主義に「燃料」を注ぎ込んできた。それはなぜなのか?
     また、日本人の多くはユダヤ教についてほとんど知らないにもかかわらず「ユダヤ人」については、キリスト教の欧米社会の歪んだプリズムを通じたステロタイプなイメージを即座に思い浮かべることができる。実物のユダヤ人に会ったことすらないのに、「シオン賢者の議定書」という偽書の内容をうのみにして、「ユダヤが支配する世界の裏の真実」とやらを得意気に語ってみせる人は決して少なくない。
     基本的な事実を確認しておこう。
     イエスはユダヤ人だった。彼はユダヤ教の伝統にのっとった上で、自身の教えを人々にさとした。彼自身は「キリスト教」という新宗教を創始するつもりはなかったし、実際、立教や改宗の宣言もしていない。
     では、イエス・キリストの行動や、彼を育くんだユダヤ教の教えから、私たちが今日何を学ぶことができるのだろうか。
     イエス・キリスト自身は何を説いて、その後のキリスト教はどのように確立していったのだろうか、そしてキリスト教を生み出したユダヤ教とはどのような教えなのだろうか。
     ユダヤ学・聖書学が専門で、『宗教の倒錯』(岩波書店、2008.09)、『キリスト教の自己批判~明日の福音のために』(新教出版社、2013.10)などの著書がある上村静氏に、2013年12月25日、クリスマスの日に話をうかがった。
     イエスも、ユダヤ教も、キリスト教も、過剰に装飾されたり歪められたりしている。上村氏はその覆いをはぎとり、実際存在した一人の人間イエス、「史的イエス」の実像に焦点をあて、その姿を浮かびあがらせながら、ユダヤ教とキリスト教の実態にも迫った。
     上村氏は、キリスト教・ユダヤ教がどのようなものであるかを説明するだけではなく、「勝ち組・負け組」イデオロギーで全てが語られつつある現代を生きる私たちが、それらから学ぶべき点があることを指摘する。
     そのひとつが、紀元前三世紀頃に著されたユダヤ教の思想書「コヘレトの書」だ。そこでは、生きていることそれ自体が「贈り物」だという思想が語られている。生きていることが「贈り物」だというのは、生きていること自体に価値があり、肯定すべきものであるということだ。私たちは、人生に過剰なまでに意味や目的、そしてお金や権力を求めがちだが、コヘレトに言わせればそれは「余剰」でしかない。
     また、「神によって生かされている」という考えは、「私たちは関係性の中で生きている」と言い換えることができると上村氏は語る。
     人は、自らの意志によって生まれるのではなく、受動的に生まれる。このことは、「生まれる」が受動態の言葉であることにもよく表れている。私たちは自ら「生きる」のではなく、「生かされている」。つまり、人は、自然の中で生かされているし、まわりの人たちの存在によって生かされている。こうしたことに気がつくことが大事だと上村氏は指摘する。
     
     イエス・キリストの実像やキリスト教・ユダヤ教の教えの中に、現代の私たちが生きる上でヒントとなりうるものが含まれていることを教えるインタビューである。
    【インタビューのポイント】
    ・イエスはどのように生まれ、どのように生きたのか――発見された古文書、ユダヤ人のとらえ方、キリスト教教会の教えなどから「史的イエス」がどのような人物であり、「信仰のイエス」がどのように作り上げられていったのかを検証する

    ・キリスト教とユダヤ教――キリスト教の根底には世界中の人がキリスト教徒になったときに世界平和が訪れるという思想があり、積極的に布教するのに対して、ユダヤ教はユダヤ教徒が律法を守っていればいつか世界が救済されるという、自ら積極的には布教しない宗教である
    ・コヘレトの思想――人は誰でもいつか死んでしまうから虚しい。だが、生きていることそのものが「贈り物」であり、「飲んで食べて、妻と人生を見つめること」は幸いであるとコヘレトの思想は教える
    ・ユダヤ人は国を持たずに2500年残ってきた――ユダヤ人は国家を持つことを放棄してきからこそ、長い間生き残ることができた。「マッチョな国家」を持たないところに、現代の日本が学ぶべき点があるのではないか
    ===================================
    ◆イエス・キリストとは何者か◆
    ===================================

     ▲上村静氏
    岩上安身(以下、岩上)「皆さん、メリークリスマス。クリスマス特別企画として、本日は、いつもとちょっと趣の違った番組をお届けしたいと思います。
     本日のお客様には、肩書がありません。職業は『上村静』。上村静さんにお越しいただきました。
     ご著書を先に紹介します。『旧約聖書と新約聖書』(※1)、『キリスト教の自己批判 明日の福音のために』(※2)、『宗教の倒錯 ユダヤ教・イエス・キリスト教』(※3)、そして、これは翻訳ですけれども、ペーター・シェーファーさんという人が書いた『タルムードの中のイエス』(※4)という本があります。『タルムード』とは、ユダヤ教の聖典ですね。これは、その中に描かれている、ユダヤ教側から見たイエスについての本ですけれども、すごく刺激的で面白い本です。
     上村さん、本日はよろしくお願いいたします」
    上村「よろしくお願いします」
    岩上「上村さんとは、初めてお会いします。このインタビューを始める前に、打ち合わせで、『肩書をどうするか』という話をしました。一応、ここにある本の中では、ユダヤ学、聖書学専攻となっています。しかし一般の人には、ユダヤ学、聖書学という学問があるということ自体、馴染みがないと思います。学歴を申し上げますと、東京大学大学院人文社会系研究科宗教学宗教史学専攻満期退学、ということです。
     それから、ヘブライ大学で博士号を取られています。イスラエルのヘブライ大学へ留学していたんですね。
     キリスト教を研究しているというよりは、ユダヤ教を研究しているということですか。どちらも、ということですか」
    上村「元々は、キリスト教の研究をしていたのですけれども、キリスト教を知るためには、ユダヤ教を知らないといけないので、ユダヤ教を研究していきました。その結果、キリスト教は、ユダヤ教およびユダヤ史の一部であるということが分かりました。だから、結局、両方研究することになりました」
    岩上「ここに、『ふしぎなキリスト教』(※5)という本があります。橋爪大三郎さんと大澤真幸さんの対談本で、2012年の新書大賞第一位を取った本です。私もたくさん付箋を並べて、精読しました。大澤さんが質問して、キリスト教、ユダヤ教のことに大変お詳しい、橋爪さんが主に答える形になっていますが、ユダヤ教とキリスト教とは何かということについて書かれています。その違いは何かというと、冒頭でいきなり、『ほとんど変わりません』と言われているんですね。
     一般に、ユダヤ教とキリスト教はものすごく対立している、キリスト教世界で、ユダヤ教徒はずっといじめられてきた、反ユダヤ主義はキリスト教の中に根がある、などといわれてきましたが、実はキリスト教は、ユダヤ教の一部ということなんでしょうか」

    上村「そうですね。一部だからこそ、逆にその本体が憎くてしょうがない、ということだと思います」
    岩上「分派ということですか」
    上村「そうですね。そして、本家争いをしている。どう見ても、ユダヤ教が本家なのに、分派のキリスト教が、『うちこそが本家だ』と言い張る。本家がなければ分派もないんですけれども、本家があると、自分たちはいらなくなってしまう。そこで、キリスト教が常にユダヤ教に対して、アンビバレントな感情を持ち続けているということですね」
    岩上「なるほど。肩書紹介の時点で、いきなり話が核心のところに行ってしまいました。ユダヤ教とキリスト教は、ある意味、一体として理解しなくてはいけないということですね。
     今日はクリスマスシーズンということで、まずイエス・キリストとはどういう人だったのかというお話から、バックグラウンドをうかがおうかと思います。
     世界人類史を総覧して、イエス・キリストほど人類に影響を与えた人はいないんじゃないかと思います。本人が影響を与えたとともに、後世の人たちが、彼をそのような存在に宣伝してきたとも言えるのかもしれません。いずれにしても、大変大きな影響力を持つ人物ですよね。
     我々はいろいろなことをあまりにも知らないので、一神教と簡単に片づけているんですけれども、そこを全然理解していないので、勉強していきたいと思います。まずは入り口として、イエス・キリストという人は、どういう人だったのでしょうか」
    上村「どういう人だったのか(笑)」
    岩上「さすがに日本人でも、キリスト教がどのように、イエス・キリストという人について教えているか、概略は皆知っていると思うんです。とにかく救世主で、とんでもなく偉い人、つまり、神様の一人だと。あるいは神の分身? 神そのもの? この辺りがちょっとわかっていないので、教えていただきたいのです。
     馬小屋でマリアから生まれたと言われますが、マリアはなぜか処女懐胎なのです。私としてはまず、この処女懐胎ということが信じがたい。多くの人は、あまり深く考えないで、『まあまあ、偉い人の話だし、昔の話だし、神話でしょ』と言って片づけると思うんですね。
     とにかく処女懐胎で生まれた人で、愛を説いた人で、厳しい律法というか、民衆をルールで縛るような人たちに、『ルールを多少破る人がいても、皆、罪を持っているでしょう』という寛容を説いた人じゃないか。
     そのあげく、なぜかユダヤ人から疎まれて、十字架に磔にされてしまう。その当時は、ローマ帝国の時代で、ローマの支配が強かった。ローマとユダヤ、それからその中の一員としてのイエスの関係が、一般的な日本人はよくわからないと思います。そもそも、キリストはユダヤ人だと言うと、『え?』と言う人はまだまだいます」
    上村「ああ、いるんですね」
    岩上「ほとんどの人がそうだと思います。そして、死後に復活した、とされています。この復活が特別な意味を持っているから、これまでの旧約聖書の歴史とは一時代を画す新しい時代が始まり、新約聖書の時代が始まって、新しい人類史が始まるという話になる。その教えは新しい教えで、キリスト教と名づけられた。だいたい皆、こんなふうに理解しているんじゃないかと思います。
     こうした、イエス・キリストとは何かというところから、まずお話をスタートしていただきたいと思っています。同時に、今日の我々の生きている時代を考えていきたいと思います」
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    (※1)『旧約聖書と新約聖書』(新教出版社、2011.05)出版社による紹介:聖書とは何か、どんな


    成り立ちをしているのか、聖書に収められている諸々の書物は何を伝えているのか、旧約と新約、ユダヤ教とキリスト教の関係は――等々、聖書に関する基本的な疑問に、気鋭の聖書学者が徹底的に答える。 また41個の強力「コラム」は、一歩踏み込んだ知識を提供し、聖書の奥深さを面白く伝えてくれる。聖書解説書の決定版であり、最強の入門書である。(【URL】
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    (※2)『キリスト教の自己批判〜明日の福音のために』(新教出版社、2013.10)出版社による紹介:ユダヤ学・聖書学に精通する著者による講座「旧約聖書と新約聖書――『聖書』とはなにか」(日本クリスチャン・アカデミー/早稲田奉仕園共催)の講義ノートを基にして渾身のキリスト教批判を展開し、イエスの福音のラディカルさから現代社会と教会を見直す問題作。著者のこれまでの研究と思索のエッセンスをまとめた1冊。(【URL】http://amzn.to/1i9yOWG)
    (※3)『宗教の倒錯〜ユダヤ教・イエス・キリスト教』(岩波書店、2008.09)出版社による紹介:“いのち”を生かすはずの宗教が、なぜ殺戮と抑圧を生むのか。イスラエル民族神話の成立からキリスト神話の成立へ。連続と断絶、継承と相剋の壮大なドラマのうちに、救済を語る宗教にはらまれた、転倒のメカニズムを探る。(【URL】http://amzn.to/1iUVITN)

    (※4)『タルムードの中のイエス』(岩波書店、2010.11)出版社による紹介:背教者とされ、新しいカルトを創設した男、魔術によって癒し、偶像崇拝のかどで石打ち刑に処された娼婦の息子、彼は、永遠に地獄に囚われている…転倒されたイエス像は、キリスト教の中心を撃とうとする洗練された闘いの跡であり、緻密に構想された対抗神話である。ここに読み取れるものとは何か。ユダヤ教文献の校訂・翻訳の蓄積を踏まえ、いずれにも偏することのない学問的立場から、宗教間闘争の実像に迫る。反ユダヤ主義を超えるために。(【URL】http://amzn.to/1dJMCdC)

    (※5)『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書、2011.05)出版社による紹介:キリスト教がわからないと、現代日本社会もわからない――。イエスは神なのか、人なのか。GODと日本人の神様は何が違うか? どうして現代世界はキリスト教由来の文明がスタンダードになっているのか? 知っているつもりがじつは謎だらけ……日本を代表する二人の社会学者が徹底対論!(【URL】http://amzn.to/1dJMU4l)

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    ◆太陽の祭りに重ねあわせたキリストのミサ=クリスマス◆
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