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  • 【第157-158号】岩上安身のIWJ特報!イスラエル>アメリカ>日本、倒錯した偏愛の同盟 ~「パレスチナのすべての母親を殺せ!」と訴えるイスラエル女性議員>「ガザでどんな事件がありますか?」米国務省のシュールな会見>「価値観を共有する」虐殺に加担する日本

    2014-07-25 15:53  
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    ◆5時間差で重なった2つの「悲劇」
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     悲劇が重なった。偶然にか、狙いすましてのことか。今の時点では判然としないにしても、である。
     マレーシア航空機17便が内戦下の東ウクライナ上空で撃墜されたとされるのが、17日午後11時15分(日本時間)頃。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザへの地上軍侵攻に踏み切ったとされるのは、18日午前4時30分頃。
     一部では、マレーシア航空機撃墜に国際社会が目を奪われている間に、それを隠れみのにしてガザへの地上軍侵攻を決行したのではないか、という観測も流れているが、今のところ推測の域を出ていない。
     これまでであれば、東ウクライナやパレスチナで何が起きようとも、邦人の犠牲者が出ない限り、日本人は「他人事」ですませられたかもしれない。しかし、集団的自衛権の行使容認を安倍政権が閣議決定し、武器輸出三原則を解除して、武器の共同開発・生産・輸出を猛然と開始し始めた今、こうした事態を「他人事」として傍観することは許されない。
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    ◆24日現在、パレスチナ人の犠牲者はすでに759人超、負傷者4730人
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     イスラエル軍は8日からガザに空爆を行っていたが、「テロ行為を支えるインフラに著しい打撃を与える」として、地上部隊による作戦にふみきった。
     イスラエル国防軍によるガザへの攻撃作戦は熾烈を極め、AFPは、19日の時点で、パレスチナ側の死者が300人を超えたと伝えた。また、ロシア・トゥデイの報道によれば、7月20日の時点で、死者は355人にものぼったという。
    ※ガザ地区の死者300人超える
    (AFP、7月19日【URL】 http://bit.ly/1kIh3Pd )
     さらにAFPは7月20日の21時に配信した記事の中で、パレスチナ側の死者が410人になったことを伝えている。
    ※ガザ情勢、パレスチナ側の死者400人超える
    (AFP、7月20日【URL】 http://bit.ly/1qtVCcx )
     時間が経過するごとにパレスチナ側の犠牲者は増え続けている。21日午前6時18分配信のAP通信によると、この2週間で、少なくとも565人が死亡し、3600人以上が負傷。さらに24日配信のAFP記事では、死者数は759人、負傷者は4730人に膨れ上がっている。
    ※Gaza Death Toll Rises as Truce Effort Intensifies
    (AP、7/21 6:18【URL】 http://abcn.ws/1pyIVbj )
     イスラエル軍の攻撃は休むことがない。20日は日曜日だったが、ガザ地区における地上戦の規模を拡大。「作戦を拡大した。ガザ地区により多くの兵士を投入している」との声明を発表し、ガザ東部へと新たに地上部隊を投入した。
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    ◆国際法違反の病院への攻撃、犠牲者の3分の1以上が女性と子供
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    ※ガザ地区 イスラエル軍が地上戦拡大
    (NHK、7月20日【URL】 http://bit.ly/1sJ43Rg )
     イスラエル軍による攻撃は、身動きの取れない病人や医療関係者にも容赦なく向けられている。21日月曜日には、ガザ東部、デルバラ市のアル・アクサ病院がイスラエル軍により砲撃され、少なくとも5人が犠牲となった。病院への攻撃は、戦闘行為とは言えない。国際法にも違反し、人道的にも許されない虐殺である。
     1977年に署名された、陸上戦における武力行使を規定した「1949年8月12日のジュネーブ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書」では、衛生部隊や病院などの医療関係施設、医療目的の車両及び航空機を攻撃目標とすることを禁止している。
    ※ガザ、死者500人超す イスラエル軍 病院も砲撃
    (東京新聞、7月22日【URL】 http://bit.ly/1ttE4ux )
     また、The daily Star紙は、パレスチナ側のスポークスマンの話として、犠牲者のうちの3分の1以上が、女性と子供であると伝えている。24日にAFPが伝えたところでは、同地区で活動する人権団体は、死者の8割以上が一般市民だという。イスラエル軍が、いかに一般の市民を攻撃の対象としているかがうかがえる報道である。
     戦闘員ではなく一般市民、わけても女性と子供を殺していることに弁明の余地はない。明白な国際法違反であり、犯罪行為である。
    ※Bloody Sunday as 99 Gazans, 13 Israeli soldiers killed
    (The Daily Star、7/20【URL】 http://bit.ly/1ngb4W4 )
    ※パレスチナ側の死者、700人超に イスラエルがガザ攻撃続行
    (AFP 7/24【URL】 http://www.afpbb.com/articles/-/3021359)
     しかし、イスラエルのネタニヤフ首相は、批判を一切うけつけない。20日、記者会見で「ガザにあるハマスの施設に重大な損害を与えるまで作戦を続ける」と明言し、空襲と地上軍侵攻による軍事作戦を続ける考えを強調している。このままでは、パレスチナ側の犠牲者は膨らむ一方で、被害が果てしなく拡大する可能性がある。
    ※ガザ地区の戦闘 死者500人超える
    (NHK、7月21日【URL】 http://bit.ly/1k9oLam )
     これに対し、ガザに拠点を置くイスラム組織ハマスも、「イスラエル軍による地上侵攻の開始は危険な一歩だ。占領者は高い代償を払うことになる」とする声明を発表するなど、徹底抗戦の構えを見せている。
     国連機関によれば、5万人のパレスチナ人が攻撃を逃れ避難を求めている。国際社会では、ガザで1400人以上の死者(その多くが一般人)を出した2008~09年の空爆と地上戦の二の舞になるのではないかと、懸念の声が高まっている。
    ※2014/7/19 Anadolu Agency「Death toll of Israel's onslaught rises to 321」
    (【URL】 http://bit.ly/1u2cs3F )
    ※2014/7/19 BBC「Gaza conflict: Casualties mount amid fresh violence」
    (【URL】 http://bbc.in/1nKBACQ )
     オバマ大統領は21日、ホワイトハウスで声明を発表し、イスラエルによる軍事作戦によってパレスチナ側の市民に多くの犠牲者が出ていることについて、「深く懸念している」などと述べ、即時の停戦実現を求めた。オバマ大統領は「ガザとイスラエルの市民の死を防ぐため、停戦に力を注ぐべきだ」と語った。
    ※オバマ米大統領、即時停戦促す 犠牲増大に懸念
    (産経新聞、7月22日【URL】 http://on-msn.com/Wv2clG )
     他方オバマ大統領は、18日の時点で、ネタニヤフ首相と電話協議し、イスラエル側の「自衛」権を支持する考えを表明している。既に500人を超える死者を出しているイスラエル軍の侵攻を「自衛」だとしながら、犠牲者が出ていることについて「深く懸念している」と述べる。イスラエルの「自衛」の名のもとの暴力行使を支持しつつ、その死者数の増大については憂いてみせるのだ。
     イスラエルの侵攻は完全に正しい、しかし死者はこれ以上増えてはならない、とすれば、ハマスは抵抗をやめ、完全にイスラエルに屈服して停戦せよ、パレスチナ人はイスラエルに抵抗するな、という結論しか導き出せない。オバマ大統領が言外に繰り返しているメッセージは、結局のところ、パレスチナの完全屈服のすすめなのだ。
    ▲パレスチナ地図(著作者:現代企画室『占領ノート』編集班/遠山なぎ/パレスチナ情報センター)===================================
    ◆イスラエルが「テロ組織」呼ばわりして目の仇にするハマスは、選挙で選ばれた与党
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     経過をふり返ってみる。
     イスラエル軍がガザ全域に対する空爆を始めたのは、7月8日だった。ハマスの軍事拠点や、ハマス関係者の自宅などを標的として空爆を行っていると、イスラエルは称している。
     6月中旬以降、ガザからイスラエルへのロケット弾による攻撃が続いており、ガザの空爆はそれに対する報復措置であるというのが、イスラエルの主張である。
     イスラエルが目の仇にするハマスとは、何者なのか。
     イスラエル主義を掲げる国際的な政治組織・ムスリム同胞団のパレスチナ支部として設立された。正式名称は、イスラーム抵抗運動。その頭文字をとり、Hamasと略称される。イスラエルやアメリカからはテロ組織扱いだが、2004年12月のパレスチナ議会選挙で過半数の議席を獲得し、2006年1月のパレスチナ評議会選挙でも過半数を占めている。れっきとした政党である。ただし、その政党に軍事部門が併設されているところが、イスラエルやアメリカにとっては許せないのだ。
     イスラエルはハマスの拠点を攻撃すると主張しており、一般市民の犠牲を避けるよう努力していると言っているが、実際にはイスラエルの空爆による死傷者は、ハマスのメンバーだけにとどまらない。むしろ、子どもたちを含む一般市民の犠牲者の方が圧倒的に数が多い。
     空爆開始直後から、子供の犠牲者数の多さが懸念されていた。10日のワシントン・ポストの報道によると、少なくとも83人以上の人が死亡し、そのなかには16歳以下の子供が21人含まれている。ワシントン・ポストはこの83名の名前と年齢を公開している。そこには、1歳半の幼児まで含まれている。そして、空爆から10日が経過した18日には、死者は240人以上、負傷者の数も1600人以上に膨れ上がっている。
     これは地上軍侵攻前の犠牲者数である。前述したように、21日の時点で犠牲者は500人を超えており、その数はさらに刻一刻と増えていくと思われる。
    ※2014/7/10 ワシントン・ポスト「ガザで21人の子供が殺された」
    (【URL】 http://wapo.st/1oHhpbd )
    ※2014/7/9 ロイター「イスラエルのガザ空爆で23人死亡、長期化や地上侵攻の可能性も」
    (【URL】 http://bit.ly/1w7Bhak )
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    ◆32対759、吊り合わない「戦果」
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     ハマスがロケット弾を撃ち込み、それに対してイスラエル軍が応戦しているのだから、おあいこだろう。喧嘩両成敗であり、どっちもどっちだ、という見方がある。しかし、「ロケット弾」「空爆」と並べると、同等の攻撃に聞こえるが、その「戦果」は、まったく同等ではない。不均衡である。
     10日時点でのアルジャジーラの報道によると、パレスチナ側の死者は88人、負傷者は数百人となったが、イスラエル側は2人の負傷者が出ただけであった。イスラエル側の死者はこの時点ではゼロだった。
     15日にはイスラエルとガザの境界にある検問所そばで、着弾したロケット弾の破片が市民を直撃し1人が死亡。18日には、地上戦によって、初めてイスラエル兵1人が死亡した。ついにイスラエル側に死者が出た。「ハマスはやはりテロリストなのだ!」、イスラエル側は色めきたったことだろう。しかし、現時点(24日)でパレスチナ人の死者は先述したように759人を超えており、イスラエル側の死者は32人となっている。
    32対759。どう見ても吊り合わない。攻撃力の差は歴然としている。イスラエル軍とハマスの戦いを、紛争と呼ぶにしても、それは極端に非対称で一方的な「紛争」である。
    ※2014/7/10 アルジャジーラ「イスラエルのガザ空爆が増し、死傷者数が増加」
    (【URL】 http://aje.me/TUZOTn )
     イスラエルによる空爆開始を受けて、日本政府は「ガザの一般市民に死傷者が発生している事態を深く憂慮」するという見解を7月9日に示している。
    ※2014/7/9 外務省サイト「最近のガザ情勢について(外務報道官談話)」
    (【URL】 http://bit.ly/1jNkzwJ )
     しかし、その「憂慮」の原因の一端を、自身も加担して作り出していることには触れていない。日本は、武器輸出三原則を廃し、集団的自衛権の行使が可能な国へ大胆にステップを刻んだ。今後、自分で種を蒔いた「憂慮」に繰り返し苛まれることは必至だ。
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    ◆ガザとは~その歴史的背景
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     ガザ地区は、パレスチナ地方の地中海東岸に位置する地域である。幅が10km、長さ約40kmの細長いかたちをしており、360平方km程度の狭い土地で、ここに170万人ものパレスチナ住民がひしめいている。北部の難民キャンプは、人口密度が世界一高いとも言われる。現在は、イスラエルによる占領が続いている。
     「ガザ地区」という土地の区分が仕切られたのは、1947年11月に国連のパレスチナ決議が出された年からである。現在のガザ地区の3倍ほどの広さだった。当時の地図を見ると、その広さがよく分かる。

    ▲UNSCOP(1947年9月3日)と国連臨時委員会(1947年11月25日)による分割案 この分割決議は、イギリスの委任統治を終わらせて、アラブ人とユダヤ人の国家をそれぞれ創り出すという内容になっていた。しかし、この内容はアラブ人側に著しく不利であるとして、パレスチナのアラブ人と周囲のイスラム国家は承認せず、パレスチナ地方で内戦が勃発し、それが周辺国を巻き込んで第一次中東戦争へとつながり、イスラエル建国に直結してゆくことになった。イスラエル建国とガザが「ガザ地区」として区画されたのは、ほぼ同時のことだったわけである。
     1949年の第一次中東戦争後にエジプト領となったが、1967年の第三次中東戦争以降はイスラエルが占領していた。1993年に合意された「パレスチナ暫定自治協定」にもとづいて、1996年、パレスチナ暫定自治政府が成立した。2005年にイスラエル軍はガザから撤退したが、先に述べたように、パレスチナでイスラム主義政党のハマスが選挙に勝利し、ハマス主導の自治政府内閣が成立すると、イスラエルは攻撃的姿勢を強め、再びガザを侵攻した。
     「ガザ地区」という閉域がなぜ発生し、イスラエルがそこを占領して、すし詰めになっているパレスチナ人たちに、執拗な攻撃を加えているのはなぜなのか、ということは、歴史を振り返らないと事情がみえてこない。
     古代、紀元前10世紀から紀元前6世紀にかけての約400年間、そして紀元前2世紀から紀元前1世紀の約100年間、カナンと呼ばれたパレスチナの地に、ユダヤ人の国家はたしかに実在したらしい。
     しかし、その後、ローマ帝国の支配と弾圧を受け、紀元前2世紀、135年の反乱も鎮圧され、ユダヤ人は離散し(ディアスポラ)、1900年にもわたる「不在」の時を重ねることとなった。その間、ビザンチン帝国、ササン朝ペルシア、そして、7世紀からはイスラム帝国、そしてオスマン帝国がこの地を統治した。その統治のもと、1300年にわたり、イスラム教のアラブ人たちがパレスチナの地で住み続けることなった。
     歴史を参照しながら、繰り返し問われるのは、「この土地は誰の土地なのか?」という問いである。ある時点での居住者に、永遠の所有権が保証されるという理屈は成り立たない。成り立たないからこそ、神が約束したという特権的な神話が持ち出されたり、むきだしの暴力が用いられたりする。
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    ◆シオニズムの誕生
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     他方、離散したユダヤ人たちの受難は長きにわたって続いた。キリスト教に根ざす偏見もマイナスに作用し、ヨーロッパにおけるユダヤ人への差別は、時と場所によって濃淡はあるにせよ、根深く続いた。
     フランス革命を皮切りに、ユダヤ人も市民権を得て「解放」されるが、解放された「ユダヤ人」が社会の表舞台で活躍し、力を得ると、嫉妬と畏怖の念から再び反ユダヤ主義が頭をもたげる。ソ連崩壊と、その後のユダヤ系オリガルヒと彼らへの非難も、同様のドラマの反復である。
     「同化」の困難を痛感したユダヤ人自身の中からも、自らの国家をもつ必要性がある、という声が高まり始めた。ここにシオニズムが登場する。
     19世紀末から、「パレスチナの地」でのユダヤ人国家建設を目指そうとするシオニズム運動が盛んになるとともに、パレスチナへのユダヤ人移民が加速していく。帝政ロシア領内ではポグロム(ユダヤ人虐殺)が多発し、フランスではユダヤ人のドレフュス大尉に対し、事実無根のスパイ容疑がかけられる事件(ドレフュス事件)が発生するなど、ヨーロッパでは反ユダヤ主義的な傾向が高潮した時代でもあった。
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    ◆入植ユダヤ人とパレスチナ・アラブ人の対立
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     1914年から1918年にかけて戦われた第一次世界大戦で、ドイツ側についたオスマン帝国は、英仏露を中心とする連合国に敗れ、帝国の体制は瓦解する。
     オスマン帝国が支配していたヨルダン川東岸と西岸の一帯が明け渡され、ひとまとまりとしてイギリスの委任統治下におかれるようになった。現代の「パレスチナ」という区画は、ここを起点とする。この当時、パレスチナの地には約60万人のアラブ人が住んでいたとみられる。彼らがパレスチナ・アラブ人=パレスチナ人としての意識を強めるのは、ユダヤ人の入植によって土地が侵食され、オスマン帝国というイスラムの大きな屋根が取り払われて以降のことだった。
     イギリスの委任統治領となったパレスチナには、さらに多くのユダヤ人が入植していった。一方、この間、パレスチナに住むアラブ人と、入植ユダヤ人との対立は、オスマン帝国の崩壊前後から次第に鋭さを増していった。不在地主から土地を買い、現地で耕作している農民を追い出す、といった入植ユダヤ人のやり方に反発が高まり、1920年にはエルサレムでパレスチナ人とユダヤ人が10人近い死者、数百人の負傷者を出す衝突事件が起きる。
     1929年には、有名な「嘆きの壁事件」が起こる。1929年8月、ユダヤ人の若者グループが、「嘆きの壁」にダビデの星と呼ばれる六芒星の旗を掲げたことに端を発し、イスラム教徒が反対集会を開き、その後、ユダヤ人の少年が殺される事件が起きて、暴力的な対立が全土に広がり、ユダヤ人133人、パレスチナ人116人が死亡する大事件となった。この事件が起きた29年当時には、パレスチナへのユダヤ人入植者の数は、15万6000人に達していた。
    さらに、1936年から39年にかけては、アラブ側による大規模な反乱が起こり、アラブ人、ユダヤ人、さらには取り締まりにあたっていたイギリス人の官憲にもそれぞれ多数の死者が出た。
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    ◆パレスチナ問題をこじれされたのは、イギリスの三枚舌外交が原因
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     事がこじれていったのは、イギリスにも大きな責任がある。
     第一次世界大戦時、イギリスはメッカのタ大守フサインに、パレスチナ地方を独立させると約束して、連合軍の協力を秘密裏に要請。この「フサイン・マクマホン協定」を信じて、フサインは、オスマン帝国に叛旗を翻して戦った。
     他方、イギリスのバルフォア外相は、シオニスト連盟会長のライオネル・ロスチャイルドにあてて、パレスチナにユダヤ人のためのナショナル・ホーム建設を認める秘密書間を送った。これが広く知られている「パルフォア宣言」である。イギリスとしては、富裕なロスチャイルドの懐から第一次大戦の戦費を引き出すのが目的だった。
     アラブ側とユダヤ側に、パレスチナの地を約束し、されに加えて、フランスとの間で、中東を英仏で分けあう秘密協定までかわしていた。「サイクス・ピコ協定」である。このイギリスの三枚舌外交こそ、パレスチナの悲劇と混乱を引き起こした原因である、といっても過言ではない。
     自らの三枚舌がまいた種とはいえ、1936年からのアラブの大蜂起には、イギリスも閉口し、調査団を派遣して「ピール報告書」をまとめる。両民族の混住・共存政策を放棄して、パレスチナの土地を分割し、20%もユダヤ人の植民地をする案を提案する。ユダヤ人もパレスチナ人も納得しない。他方、1933年にドイツで政権をとったナチスにより、ユダヤ人の弾圧が強まり、イスラエルへの移住者がますます増えて、両民族の人口は伯仲するようになった。1939年、イギリスは、紛争を鎮めるため、として、ユダヤ人の入植を制限する「マクドナルド白書」を発表した。
     その結果、どうなったか。ユダヤ人のシオニストらは猛然と反発し、委任統治者であるイギリスに対してもテロ活動を行うようになる。
     中核をになった武装組織のひとつは、ユダヤ人移民による入植地の自警団が1920年以降、組織化された「ハガナー」。イギリス軍の協力を受けて軍事組織化してゆき、のちにはイギリスの治安機関に対してもテロ攻撃を仕掛けるまでに、成長し、のちのイスラエル軍の基盤となったこの「ハガナー」の創設にかかわったのが、ロシア帝国領ポーランド生まれのユダヤ人、ダヴィド・ベン=グリオンである。イスラエルの初代首相であり、「イスラエル建国の父」と呼ばれている。
     彼は1906年にパレスチナに移住、労働者を組織して「ヒスタドルート」という組合もつくった。これが「マパイ」という政党になり、のちの労働党へと発展してゆく。
     また、テロ組織「イルグン・ツバイ・レウミ」の指導者だったメナヘム・ベギンも、のちにイスラエルの首相となる。「イルグン」の分派の「シュテルン」(「レヒ」とも呼ばれる)という組織を率いたイツハク・シャミルもまた、イスラエル首相となった。アリエル・シャロン前首相も、「ハガナー」出身である。
     1946年3月、イギリス当局がユダヤ人テロ組織を2500人逮捕する大捜索を行ったところ、同年7月、イギリス司令部が爆破され、90人のイギリス人が死亡した。
     テロはイスラム過激派の「専売特許」ではない。テロを手段として用いるという点では、ユダヤ人の側が、はるかに「先行」していたのである。
     ともあれ、イギリスは音を上げた。第二次世界大戦後につくられたばかりの国連に、解決をゆだねることになった。結局、国連も1947年、分割案を出したが、「ピール案」よりはるかにユダヤ人側に有利な内容だった。総人口140万人のうちの45万人、3分の1の人口のユダヤ人にパレスチナの土地の57%を分け与えるという内容だった。
     この内容にアラブ側は激しく反発し、パレスチナ地域は内戦状態に陥る。
     翌年1948年には、エジプト、ヨルダン、イラク、シリアのアラブ諸国を巻き込んだ戦争へと突入。当初は数で勝るアラブ側が有利だと見られたが、停戦期間中に第二次大戦の中古兵器を多数入手したイスラエル軍が反撃に転じた。イスラエル優勢の状態の中、1949年1月から停戦交渉が開始され、パレスチナ地域の8割近くがイスラエル領となった。
     イスラエル側にとっては、この第一次中東戦争の勝利によって、独立・建国の礎を手に入れることとなった。しかし、他方では、この戦争によって70万人とも言われるパレスチナ難民が発生することにもなった。
     パレスチナ難民にとってこの戦争とは、「ナクバ(大破局)」の記憶に他ならない。離散していたユダヤ人は約束の地を手にしたが、もとの居住者だったパレスチナ人たちは、逆に離散の運命をたどることになったのだ。現在のガザ侵攻の惨劇は、その延長線上で起きている出来事なのである。
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    ◆隠されていたイスラエルの「民族浄化」
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     最も重要なことは、難民が発生し、離散させられていった過程である。かつては、この過程が曖昧にぼやかされていた。世界中が混乱していて十分な注意を払えなかった時期だ。第二次大戦の直後であり、戦争中は伏せられていたナチスによるユダヤ人のホロコースト政策が、次々に明らかになり、世界中に衝撃を与えていた時代である。
     また、パレスチナでは、内戦があり、周辺国を巻き込んでの中東戦争まで戦ったのだ。相当の戦乱があり、人々は戦渦をまぬがれようと逃げまどって、意図せぬ結果として、70万人もの難民が発生したのだろうと、多くの人が考えてきた。イスラエルもまた、パレスチナの住民たちが自ら立ち去ったのだと説明していた。
     しかし、現在では、一次史料が公開され、パレスチナ住民が自発的に土地を離れたというイスラエル側の主張が事実ではないことが、明らかになっている。
     イスラエルの歴史学者イラン・パペは、自国の政治指導者が犯した過ちを直視し、パレスチナ難民を生み出した1948年の惨事を「ナクバ」という受け身的な表現で呼ぶのではなく、「民族浄化」と主張すべきだと論じている。
     2007年3月に来日したイラン・パペ教授が行った講演が『イラン・パペ、パレスチナを語る―「民族浄化」から「橋渡しのナラティヴ」へ』というタイトルの書籍にまとめられている。その中で、パペ氏は、「私はこの講演を、『レッド・ハウス』と呼ばれた、テルアヴィヴの町にある建物についての話から始めたい」と切り出す。
     「1948年3月のある寒い午後、この建物の二階で、シオニズム運動の11人の指導者と軍司令官らが、パレスチナの『民族浄化』を、言い換えれば100万人のパレスチナ人を家屋から、農地から、職場から、故郷から、もろともに追放することを決定しました。
     この11人の男たちのなかでも最も有力なのは、イスラエル国家の建国の祖であり、初代首相であった、ダヴィッド・ベン=グリオンです」
     指導部は、このパレスチナ人の民族浄化という決定を、軍事旅団に指令として下した。3月の終わりから、ユダヤ軍はパレスチナ人を計画的に追放し始めた。この作戦の完了には6ヶ月から7ヶ月が費やされたという。
     「ユダヤ人指導層はすでに1948年2月に、つまりはイスラエル国家の創建に先立つ3ヶ月前から、パレスチナ人の追放作戦を開始していました。それはある日、地中海岸に面する5つの村を排除することから開始されました」
     5つの村とは、キサーリヤ(カイサリヤ)、ヒルバ・ブルジ、サアサ、ダーリヤ・ルーハー、キーラ。
     「驚かされることには、イギリスは、まだ当時治安維持の責任を有していたにもかかわらず、干渉をせず、ユダヤ人たちが5つのパレスチナ人の村の住民を大小のトラックに乗せ、アラブ諸国との国境を超えて彼らを放置するのを、やりすごしました」
     統治責任のあったイギリスには、この「民族浄化」を見て見ぬふりをし、やりすごしたという。
     イスラエルの武装集団は、「パレスチナ人全体を体系的に排除し始めることを決定」した、という。
     「彼らは、各村の人びとだけにとどまらず、都市や町の人びとまでも効率的に排除しました。(中略)彼らは、ある一日でハイファの町から7万5000人の人びとを追放しました。1948年4月21日のことです。そして建国後には、ほぼ同数のパレスチナ人をヤーファの町から追放しました。イスラエル国家の建設を前に、30万人のパレスチナ人が自らの家から追放されたのです」
     アラブ世界がイスラエルに戦争を仕掛け、パレスチナ人に退去するように呼びかけたために、難民問題が発生した、というのがイスラエルの公式見解だが、実際には、戦争が開戦される以前に、すでにパレスチナ人の半数が、ユダヤ人組織によって難民化させられていたのであり、イスラエルは残りの半数を追放するために、戦争を利用したのだ、とイラン・パペ氏は述べる。
     「戦争によってパレスチナ人が難民になったのではありません。イスラエルがパレスチナに対する民族浄化を企図したことによって彼らは難民になったのであり、戦争はパレスチナ人の難民の原因なのではなく、そうした結果を生み出すための手段だったのです。
     建国前後を通じて、イスラエルは合計で約500の村、11の町を破壊し、ほぼ100万人のパレスチナ人を難民としました。(中略)追放されることをパレスチナ人が拒んだ場合にはいつでも、虐殺、レイプ、略奪、投獄が伴いました」
     目撃者はいくらでもいて、報道も報告もあったが、誰が何を語っても、「プロパガンダであり、嘘をつくたぐいの人びと」として扱われた。すなわち「世界は何も起こっていなかったことに決めた」のである。これが「ナクバ」と呼ばれる出来事の本質である。世界中の有力な国々の政府とメディアが沈黙を貫くことで、ユダヤ人テロ組織は「民族浄化」を堂々と敢行し、その土台の上にイスラエルを建国することに加担したのである。
     世界が、パレスチナにおける民族浄化を非難も糾弾もしなかったために、世界がイスラエルに重要なメッセージを与えることになってしまった。そのメッセージとは、「ユダヤ国家が、パレスチナ人に対し、民族浄化をしても、あるいはパレスチナ人に対してどんな好き勝手なことをしても、世界からの批判を免れることができる」というメッセージである。
     イラン・パペ教授は、そのメッセージを受取った結果、「西岸地区をガザ地区においては今日も同様の手法が用いられている」とズバリ、現在進行形のガザの問題について、その本質に切り込んだ。「何をしても許される」。こうした確信が、イスラエルに、決して手をゆるめることなく、「民族浄化」を継続し続ける動機を与えている。
     「それよりはるかに重要なのは」と、パペ教授は続ける。「ユダヤ国家のイデオロギーが、その形成過程で世俗に与えた影響」であり、イスラエルの教育システム、政治システム、文化システムが、イスラエル人に対して幼い頃から死ぬまでずっと与え続けているメッセージ」であると述べる。
     「そのメッセージとは、『イスラエルにおける生とシオニズムの目標とは、イスラエル国家とみなしている領土内にパレスチナ人が存在するかぎりは、成就されることがない、というものです。(中略)。イスラエルのユダヤ人である私たちが、教育を通して、メディアを通して受け取る基本的なメッセージとは、『私たち個人の生、厳密には私たちの集合的な生ではなく、個人の生は、私たちの神話のなかにパレスチナ人が存在することによって、満たされず、完成されず、全うされない』
     なんとおそるべきニヒリズムであろうか。
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    ◆入植地拡大により奪われたパレスチナ人の自由
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     1867年の第3中東戦争に勝利したイスラエルは、軍事占領下に置いたヨルダン川西岸とガザ地区への入植を開始。軍の後ろ盾により、パレスチナ人から土地を没収し、入植地は拡大する。入植地といっても、テルアヴィヴやエルサレムといった大都市へ勤務するユダヤ人のための住宅地という性格が強かったという。こういった入植地では、公共住宅が低価格で提供され、道路が整備されるなど快適な暮らしが約束されていた。
     現在、ガザには170万人のパレスチナ人が住んでいる。イラン・ジャパニーズ・ラジオは、次のように述べている。
     「人種差別政権イスラエルは、ガザに住む170万人のパレスチナ人の基本的権利を無視しており、これにより、住民は往来の自由を奪われ、適切な収入を伴う職業にもつけず、さらには衛生や教育設備を享受することができていません」。
    ※2014/7/10 イラン・ジャパニーズ・ラジオ「イスラエル原発の近くにパレスチナのミサイル着弾」
    (【URL】 http://bit.ly/1mCMw9b )
     2005年に当時のシャロン首相が、ガザ入植者の撤去を決定した。しかし、ハマスという「テロリスト組織」が、選挙という手続きを踏んでパレスチナ自治政府で政権につくと、イスラエルは攻撃姿勢をよりあからさまにとりはじめる。
     2008年から2009年にかけてのガザ紛争では、大規模な空爆の後に、地上軍が投入され市街戦に突入。パレスチナ側で1300人以上が犠牲となり、その大半が一般市民だった。また2012年11月には「防衛の柱」と名付けられた作戦をイスラエル軍が展開し、ハマスのロケット弾攻撃を阻止するという名目のもと、ガザ地区に大規模な空爆を行った。
     「テロリスト」を叩くという目的でイスラエル軍が実施する攻撃作戦が、常にガザ市民を巻き込む結果となる構造は、今回の一連の空爆でもそのまま引き継がれている。
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    ◆空爆の口実に利用された、誘拐された子供たちの命~マレーシア航空機撃墜事件と似た構図
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     7月8日の空爆開始の、その前にさかのぼってみよう。
     今回の衝突のきっかけとなったのは、6月30日に、イスラエルの少年3人の遺体が発見されたことだった。3人は6月12日にヒッチハイクをしているときに誘拐されたとみられており、その遺体が、イスラエルの占領下にあるパレスチナ自治区ヘブロン近郊で見つかったのである。イスラエルのネタニヤフ首相は、この事件をハマスの犯行であると一方的に断定し、報復宣言をした。ハマス側はこの事件について関与を否定している。
     なぜハマスが子供を誘拐し、殺害する理由やメリットがあるのか、その点は少しも明らかではない。これは、同時進行で起きている東ウクライナ上空でのマレーシア航空機撃墜事件とよく似た構図である。
     マレーシア航空機の墜落事故が起きてすぐに、ウクライナの要人は親ロシア派の武装勢力が撃ち落としたと断定し、非難した。親ロシア派は否定しており、言い分は平行線をたどっている。真相はまだわからない。しかし、民間人を載せた第三国の民間航空機を、故意に撃墜しなくてはならない理由やメリットが、親ロシアの分離独立派にあるだろうか。どこにも見いだすことはできない。誤射か、あるいは相手に罪をなすりつけて開戦の口実にする「偽旗作戦」か、そのどちらかの可能性はまだ排除できない。
     同様に、3人の子供の誘拐事件を、ハマスが積極的に引き起こす理由も見当たらない。政治的背景のない犯罪者による犯行かもしれないし、あるいは「偽旗作戦」かもしれない。もしくは、単発・偶発的に引き起こされた事件が、ハマス攻撃の口実として政治利用されているのかもしれない。
     しかし、イスラエル当局は、そうは考えなかった。疑いをかけられたハマスが犯行を否認しているにもかかわらず、ハマス所属の2人を犯人と断定し、ハマスのメンバーなどパレスチナ人600人を拘束した。イスラエル当局は、市民の住居に強引に押し入り、市民を次々と乱暴に連行していった。暴力的に拘束した。その模様は、イスラエル側のメディアでも堂々と報じられた。3人の少年の殺害に600人が関わったと考えるのは不自然きわまりない話で、明らかに過剰な捜査である。
     しかも一国のトップのネタニヤフ首相が、真相究明の前に報復宣言を出してしまっているのだから、これはそもそも公正な司法警察の捜査活動ではなく、政治的・軍事的な弾圧とみなすべきであろう。
    ※2014/7/5 朝日新聞「少年誘拐殺害事件で衝突激化 イスラエル・パレスチナ」
    (【URL】 http://bit.ly/1r16xtu )
     7月1日に行われたイスラエル人の少年3人の葬儀では、参列者の一部が「アラブ人に死を」と叫んだ。その翌日の7月2日、痛ましいことに、東エルサレムで16歳のパレスチナ人の少年が誘拐され、生きたまま火をつけられて殺される事件が起った。憎しみが憎しみを呼び、怒りが拡大していった。
    ※2014/7/5 マアン・ニュース・エージェンシー「公式発表:検死の結果、パレスチナ人少年は生きたまま焼かれたことが分かった」
    (【URL】 http://bit.ly/1y0qkdp )
    ※2014/7/7 ハフィントン・ポスト「パレスチナ人の少年、生きたまま火で焼かれる? イスラエルとの間で『憎悪の連鎖』」
    (【URL】 http://huff.to/1lYm7yl )
     7月4日に行われたパレスチナ人少年の葬儀では、参列者がイスラエルの警官と衝突し、70人以上の負傷者が出た。
    ※2014/7/5 産経新聞「少年殺害『憎悪の連鎖』 イスラエルとパレスチナ、武力の応酬に発展」
    (【URL】 http://on-msn.com/1qpvBXq )
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    ◆ワールドカップを観戦中、カフェごと吹き飛ばされた若者たち
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     ネタニヤフ首相は「イスラエルはテロリストを攻撃している」と明言する。だが、これは結局のところ「イスラエルの攻撃の対象となったものはすべてテロリスト」ということであり、実際には、無差別攻撃の正当化に他ならない。
     「テロとの戦い」で犠牲となるのは、一般市民である。APが伝える、ガザ地区南部の都市・ハーンユーニス(ハンユニス)の空爆直後の様子をとらえた映像が、そのことをよく物語る。
     映し出されるのは、怒号の中、廃墟となった市街地を逃げ惑う人々、路上に仰向けに倒れ起き上がれない人、そして瓦礫の中に閉じ込められた人を救出しようと集まる市民たちの姿だ。音声からは、子供のものと思われる叫び声も聞こえてくる。
    ※2014/7/8 AP「Raw: Israeli Airstrike Kills 10 in Gaza Strip」
    (【URL】 http://bit.ly/1zUijsk )
     ガザへの暴力が、ワールドカップの期間中に始まったことも忘れるわけにはいかない。地球が「フットボールの惑星」となった夏の一ヶ月の間、サンパウロでも、東京でも、ベルリンでも、そしてガザにおいても、人々はサッカーボールの行方に夢中になっていた。
     10日、海岸沿いのカフェに対して空爆があり、ワールドカップの中継を観戦していた市民9人が犠牲になった。イスラエル軍が標的としているのは、彼らの発表によれば、テロリストの拠点の他、ロケット弾発射台、武器庫、訓練施設、トンネルなどに限られている。それにもかかわらず、カフェが空爆されたのだ。
     この日行われていたのは、準決勝のオランダ対アルゼンチン戦だった。我々と同じように、メッシやロッベンに声援を送っていた、サッカーを愛する普通の市民の頭の上に爆撃が敢行されたのである。
     犠牲者の中には26歳と24歳の兄弟が含まれていた。2人の葬儀には数百人の会葬者が集まった。兄弟の近所に住む男性によれば、2人は戦闘員ではなく漁師だった。この男性が葬儀で「本当の報復はライフル、ロケット弾、自分たちの力によってもたらされる」と述べた時、会葬者たちは神を賛美する言葉で応えたという。
    ※2014/7/10 Middle East Eye 「World Cup fans killed in Gaza as bomb hits cafe」
    (【URL】 http://bit.ly/TWGF3i )
    ※2014/7/10 New York Times「In Rubble of Gaza Seaside Cafe, Hunt for Victims Who Had Come for Soccer」
    (【URL】 http://nyti.ms/VQmLc3 )
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    ◆孤児と身体障害者の施設をピンポイント爆撃したイスラエル空軍
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     12日の空爆では、北部ガザにある孤児と身体障害者のための慈善施設が標的の一つとなり、2人の女性が死亡した。この慈善施設が空爆されたのは、誤爆ではない。イスラエル空軍はこの慈善施設に標的を定め、正確に爆撃を敢行した。イスラエル軍が殺害しようと狙ったのは、彼女たちが生活していた部屋の上に住んでいた2人の「テロリスト」だったが、両者ともその場に居合わせなかった。
     死亡した2人を含め、この施設には合計8人が暮らしていた。そのうち4人は空爆を生き残ったものの、ひどい重傷を負った。残りの2人はたまたま週末を親類と過ごすために施設を離れており、無傷ですんだ。
     空爆をおこなった無人機は、まず始めに警告射撃をしたというが、身体に障害を抱えて、素早い身動きなどとれるはずもない女性たちにとって、その「警告」がいったい何を意味したのだろうか。
    ※2014/7/12 Telegraph「Israel kills two handicapped Palestinian women in air strike on home for disabled」
    (【URL】 http://bit.ly/1wjluFp )
    ※2014/7/12 BBC「Israel-Gaza conflict: Home for disabled hit in Beit Lahiya」
    (【URL】 http://bbc.in/1rjAl2p )
     イスラエル軍は、標的の破壊の前に、迫撃砲により「屋根をノックする」ことで知られている。しかし、以下の映像を見る限り、「ノック」から爆撃までの間に住民が安全な場所まで逃げる余裕がどれほどあるのか、疑問を感じざるをえない。しかも、こんな「挨拶」でさえ、常におこなわれるわけではないのだ。「挨拶」抜きの、出し抜けの空爆も決して珍しくない。イスラエル軍にいつもマナーとエチケットに気を遣うように期待するほうが無理というものだ。
    ※2014/7/11 Haaretz「Israel's 'roof knocking' in Gaza captured on video」
    (【URL】 http://bit.ly/1rei2eI )
    ※2014/7/11 Mondoweiss「Terror in Gaza: 57 seconds after ‘warning,’ Israel destroys a house」
    (【URL】 http://bit.ly/U2KAM4 )
     他にもイスラエル軍は、この侵攻作戦が「自衛」と言うにはあまりにも無理がある強力な兵器を使用している。17日、ガザ地区ハン・ユニスの東部の村で、イスラエル軍が「フレシェット弾」を使用したことが明らかとなった。
    ※2014/7/20 the guardian「Israel using flechette shells in Gaza」
    (【URL】 http://bit.ly/WmnSjQ )
     「フレシェット弾」とは、1発の弾の中に多数の釘のような先鋭物を詰めたもので、アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体は「非人道的な兵器」であるとしている。
    ▲フレシェット弾(the guardianより) 英紙ガーディアンによると、イスラエル軍のスポークスマンは、この「フレシェット弾」を使用したことを否定していないという。イスラエル軍は確信犯的に、非人道的な兵器をパレスチナの市民に向けているのである。これが戦争犯罪でないはずがない。彼らは「何をしても許される」と確信していたのだ。
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    ◆白紙となった停戦協議
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     14日、エジプト政府が停戦案を提示した。停戦案の中身は、「徐々に戦闘を縮小させ、15日午前9時(日本時間同日午後3時)を期限に双方が軍事行動を一時停止し、その後の停戦の道筋を話し合う」というものだった。
     しかし、ハマスは強情だ。「いかなる停戦案も受け入れない」との声明を発表してこれを拒否。イスラエル側もいったんは停戦案に合意して軍事行動を抑えたが、「ハマスなどの武装勢力はロケット砲弾47発を撃ち込んできた」として、6時間後に合意を撤回。停戦案は白紙となった。
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    ◆ビーチで遊んでいた子供が砲撃の犠牲に
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     ハマスが停戦案を拒否したことを口実に、イスラエル軍は15日以降、空爆を強化していった。イスラエル軍はガザ北部や東部の住民約10万人に対し、16日朝までに自宅からガザ市へ避難するよう警告を発した。
     そんななか、16日にガザの海岸でサッカーをしていたパレスチナ人の子供4人が、イスラエル軍の砲撃により死亡した。この悲劇は海外のニュースで報じられ、国際社会で大きな批判を呼んでいる。イスラエルの中道左派系メディア「ハアレツ紙」ですら、この模様を詳細に報じている。
    ※2014/7/16 ハアレツ紙「An eyewitness account of the attack that killed four children on Gaza beach」
    (【URL】 http://bit.ly/1pixSTm )

    ※AFP「イスラエルの砲撃で子供4人が死亡、複数の負傷者も」(youtube動画)
    (【URL】 http://bit.ly/1qNs19T )
    ※2014/7/16 Reuters「Four Palestinian Children Killed, Official Says」
    (【URL】 http://bit.ly/1r47SOL )