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  • 【第225-234号】岩上安身のIWJ特報!安倍政権の歴史修正主義に加担するNHK ~「公共放送」としての本来の姿を取り戻すことはできるか 元NHKプロデューサー・永田浩三氏インタビュー

    2015-12-01 16:06  
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     NHKはどうなってしまったのか。そして、これからNHKはどうなってしまうのだろうか――。
     2012年末に第二次安倍政権が発足し、元日本ユニシス会長の籾井勝人氏が会長に、作家の百田尚樹氏や埼玉大学名誉教授の長谷川三千子氏ら、安倍総理の「お友達」が経営委員に就任して以降、NHKはいちじるしく「偏向」し、しかも巧妙な世論操作を行う報道を繰り返している。
     9月19日未明に「可決・成立」してしまった集団的自衛権の行使容認にもとづく安全保障関連法案に関しては、国会における重要な審議をほとんど中継していなかったにもかかわらず、特別委員会において、委員ではない議員や秘書が乱入して委員長を取り囲み、強行に採決らしきものを行った場面は中継し、委員ではない与党議員や秘書らの異常な行動に対しては、目の前で繰り広げられているにもかかわらず、まったく批判を加えず、すぐさま「法案が可決した」と既成事実化を図るような速報を打った。
     特に、この間のNHKの「偏向」ぶりは、従軍慰安婦問題を中心とする歴史認識の分野において極まっている。
     籾井勝人会長は、2014年1月の就任会見で、「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」と発言。従軍慰安婦問題について、「戦争をしているどこの国にもあった」「なぜオランダには今も『飾り窓』があるのか」などと発言し、批判を浴びた。
     今年2015年の新年のあいさつでは、アベノミクスを支持する旨を述べ、政治的な「中立性」や「不偏不党」の原則に外れた発言と批判を浴びた。また、
    政治風刺を効かせたお笑い番組については、「個人名をあげて、色々お笑いのネタにするのはちょっと品がないんじゃないか」などと政権に対する批判を込めた風刺を封じ込める姿勢をうかがわせ、NHK会長としての自覚と見識を問われることとなった。
     これらの「問題発言」に関して籾井氏は、何度も国会に参考人として呼ばれて事情を聞かれることになったが、現在に至るまで謝罪も撤回もしていない。
     問題発言を繰り返しているのは、籾井氏だけではない。
     経営委員の一人だった作家の百田尚樹氏(2015年2月末に任期満了で退任)は、2014年1月に行われた東京都知事選で立候補した田母神俊雄氏の応援演説をした際、他の候補者を「人間のクズ」などと罵倒した。また、元社会党党首の土井たか子氏が亡くなった際には、「土井たか子は売国奴だった」などと誹謗中傷するツイートを投稿してもいる。
     百田氏の暴言は、NHK経営委員を辞任した後も続いた。今年、6月25日に行われた自民党若手議員による勉強会で、百田氏は琉球新報と沖縄タイムスを指し「沖縄の2つの新聞は潰さないといけない」などと発言した。
     同じくNHK経営委員の長谷川三千子氏に関しては、1993年に朝日新聞東京本社内で自殺した右翼活動家・野村秋介氏を礼賛する追悼文を発表していたことが明らかとなっている。右翼によるテロを肯定するような極右思想の持ち主が、現在のNHK経営委員の座に居座っているのだ。
     こうしたなか、NHKを批判する動きが、NHKの内と外の両方から沸き起こってきている。2014年8月21日には、NHK退職者有志が集まり、籾井勝人会長の辞任を求めて記者会見を行なった。また、市民がNHKを包囲し、安倍政権に肩入れするNHKの偏向報道を糾弾する抗議行動を行なった。
     このような批判の声にも関わらず、自民党情報通信戦略調査会放送法の改正に関する小委員会は、9月24日、NHKへの受信料支払いを義務化する方向で検討を開始すると報じられた。NHKはこれまで、国民の税金で運営される「国営放送」ではなく、自発的に国民が支払う受信料で成り立つ「公共放送」であったからこそ、権力との間に距離を作ることができる、とされていた。
     しかし、受信料が義務化され、実質的に強制徴収の税金化がされると、NHKは「国営放送」となり、権力の宣伝機関と化す可能性が高くなる。このままでは、NHKの報道の「大本営発表」化がますます進むのは、必至の情勢だ。
     昨年8月に『NHKと政治権力』を出版した元NHKプロデューサー・永田浩三氏は、慰安婦問題をめぐる2001年の番組改変事件を切り口に、NHK幹部と自民党との癒着を糾弾し続けている。
     永田氏はインタビューの中で、戦後、戦争責任を自らに問い、リベラルな一面を持っていたNHKと、読売新聞をはじめとする民間の報道機関の来歴について語った。また、戦後70年を迎えた今年、安倍政権との結びつきを強め、その歴史修正主義を助長する日本のマスメディアを警戒しつつ、ローカルメディアとともに、思想の多様性を担保したマスメディアの可能性について持論を展開した。▲永田浩三氏===================================
    ◆いてもたってもいられず、記者会見を開催~籾井会長の辞任と罷免を求めるNHK退職者有志たち。NHKのOB1500人が署名を提出◆
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    岩上安身(以下、岩上)「ジャーナリストの岩上安身です。東京はあいにくの雨。一日、秋の長雨のようです。そんな中、本日は永田浩三さんにお越しいただきました。私の手元に『NHKと政治権力――番組改変事件当事者の証言』(※1)、そしてこちらのほうに、『NHKが危ない! ―「政府のNHK」ではなく、「国民のためのNHK」へ』(※2)が飾ってあります。 これは非常に重要で、大変興味深い本です。この本を読むと、『今日のNHKの体たらくはどういうことなのか』『どうして安倍政権が介入してくるんだ』『どうして経営委員や経営委員長にあれほどガラの悪い連中が居座っていられるんだ』『どうして、番組、あるいは報道は明らかにおかしなことをしているんだ』といった様々な疑問が解けていきます。
     そしてその疑問は、今日起きたことではなく、安倍晋三という政治家を一つの軸にして、NHKはいつも締めあげられてきた、その流れを振り返ると、何十年も前まで遡りうるということなんですね。
     そうしたNHKが政治介入をされてきた歴史の本のご著者であります、永田浩三さんに本日はいらしていただいております。よろしくお願いいたします」
    永田浩三氏(以下、永田・敬称略)「よろしくお願いします」
    岩上「永田さんはNHKに1977年に入局され、ディレクター、あるいはプロデューサーとして数々の素晴らしいお仕事をされてこられました。とりわけ、『クローズアップ現代』では、制作と編集長をされていたわけですね」
    永田「我々が職場で呼んでいたのは『編責』と言うのですが」
    岩上「『へんせき』の『せき』はどういう字ですか?」
    永田「責任の責ですね」
    岩上「編集責任者ですね」
    永田「『クローズアップ現代』は、報道局と制作局、両方にコアのチームがあって、そのなかで制作局の経済社会情報番組というグループがあるのですが、そこの『編責』でした。『統括』というふうに呼んでいますが、それをしていました」
    岩上「国谷裕子キャスターとともに、『クローズアップ現代』で菊池寛賞を共同受賞されていらっしゃいますよね」
    永田「これは一つのめぐり合わせみたいなものです。クローズアップ現代が始まって22年になります。そのなかで、様々な話題の番組を作ってきて、その評価が定まった時期に、たまたま私がそういう立場にいて、国谷さんがもちろんメインなのですが、我々スタッフも合わせて、ご相伴に預かったということですね」
    岩上「そんな長い時間かけて謙遜しなくていいですよ(笑)」
    永田「いやいや、そうです」
    岩上「ご謙遜でした。皆さん、スルーしてください(笑)。それから、『ETV2001』という番組の編集長も務められ、その後、NHKを退職されてのち、2009年からは、武蔵大学社会学部教授を務めておられます」
    永田「はい、そうです」
    岩上「ご本もお書きになり、大学の先生もされています。ある意味、落ち着いた生活をされているはずなのですが、最近、決起をされました。IWJも中継をしました。
     これは、『NHK退職者有志が籾井会長の辞任と罷免を求めます』(※3)という大きな抗議の声を上げた会の記者会見です。元NHKの職員のみなさんが、NHKの経営委員会に対して、籾井会長の辞任を勧告しました。2014年8月21日の夏のことでした。『NHKと政治権力』というこの本が出た同じ頃ですね」
    永田「そうです」
    岩上「『本当にNHKはおかしい。いくらなんでも変じゃないか。NHKの経営者は何をやっているんだ』ということで、応じない場合は放送法に基づいて罷免するよう、NHKの退職者の方々が要望書を提出したということですよね。
     この要望書に賛同した、元職員であるNHKのOB 1500人を超える方々が署名されたわけですね。そこに永田さんも署名され、お声を上げられた、とお聞きしております。
     この模様はIWJも中継しましたし、アーカイブで見ることもできます。『これまで、政府が右というのを左とは言えない』『慰安婦制度はどこの国にもあった』などと籾井会長は公言しています。やはり、ここでもこの慰安婦問題が出てくるんですね。政治課題や社会問題で、議論が分かれるような問題は、世の中に多々あると思います。慰安婦問題もそのひとつです。ところが、籾井会長はあっさりと政府の立場に与してしまうんですね。
     私のような世代は、『慰安婦問題というものは、もう終わった問題だ』と思ってきました。もちろん、『日本はひどいことをした。それは謝罪するべきである』とも思っています。そして、『将来に渡って同様のことを繰り返さない』という形で、ずっと傷や怨恨の残っているアジア諸国に対して、『申し訳ない』とも思っています。
     そして、『私たちは慰安婦を抱えたまま、侵略戦争するような国家にはもう二度となりません。間違ってもならないから、そこはご理解していただきたい。これから仲良くやっていただきたい』とアジア諸国に向けて言っていくものだと思っておりました。
     私たちが、韓国や中国の若い世代、中年の世代の方に接したときに、そういう話が絡まったときには、必ず私たちの世代は、過去の世代とは違い、『私たちの世代はそんなこと(侵略戦争)はしないから』ということを、個人としても繰り返し言ってきたような気がします。おそらく永田さんも同じような思いではないか、と思います。
     それが、いま大変大きく揺らいでいます。そういうふうに揺るがそうと、仕掛けてきている右派の政治家、右派の言論人、右派の財界人、あるいは右派の官僚たちがいて、「戦後の常識」を揺さぶり、さらにNHKという巨大メディアを揺さぶっています。
     外部からの圧力だけでなく、メディアの内部にも、右派ジャーナリスト、右派言論人、右派ディレクター、右派プロデューサーといった連中もいるのでしょうが、そうした声が日増しに大きくなった挙句、今、籾井さんのような人がトップに立つという体たらくになっています。
     このご本を書かれたのも、その原点となるある事件がきっかけであろうと思います。今日のNHKの状況に、もういても立ってもいられないとお声を上げられた、その経過やきっかけをお話し願いたいと思います」
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    (※1)永田浩三著『NHKと政治権力――番組改変事件当事者の証言』(岩波現代文庫) 出版社による紹介文:政権党有力政治家が2001年にNHK最高幹部に「圧力」をかけることで、慰安婦問題を扱った「ETV2001」は著しく改変された。担当プロデューサーによる苦渋に満ちた証言は、この事件の全過程を照らし出し、放送現場で戦時性暴力をどう取り上げるべきかであったかを問いかける。公共放送NHKによる政権党への癒着を厳しく批判する( 参照:Amazon【URL】http://amzn.to/1vr8PG0)。
    (※2)池田恵理子・戸崎賢二・永田浩三共著『NHKが危ない! ―「政府のNHK」ではなく、「国民のためのNHK」へ』 出版社による紹介文:ここまで来た政治介入人事。 危機の進行は止められるのか!? 国民のための公共放送を取り戻すために何が必要か! 番組作りの最前線にいた元NHKディレクターとプロデューサーが緊急提言する( 参照:Amazon【URL】http://amzn.to/1vr9cAd)。
    (※3)「籾井氏は会長として相応しくない、恥ずかしい」という思いで一致したNHKの元職員らが2014年8月21日、NHK経営委員会に対し、籾井会長に辞任を勧告し、応じない場合は放送法に基づいて罷免するよう求める要請書を賛同する1500人の元職員の名簿と合わせて提出した(2014/08/21 「これはメディアの堕落だ」NHK退職者1500人が籾井会長の辞任、罷免を求めてNHKに要請書を提出【URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/163032)。