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  • 【第288-295号】岩上安身のIWJ特報!「英語化」が、日本社会を粉々に破壊する!? 新自由主義と「言語帝国主義」の野放図な拡大を阻止せよ! 九州大学准教授・施光恒氏インタビュー 第二弾

    2017-01-06 18:25  
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     11月8日に実施されたアメリカ大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したことにより、発効が絶望的な状況になったTPP。それにも関わらず安倍総理は、「あらゆる形態の保護主義に対抗する」「TPPの意義を米国にも強く訴えていく」などと述べ、今国会でのTPP批准にこだわり続けている。
     安倍総理はなぜ、もはや発効する見込みのなくなったTPPに、ここまで強いこだわりを見せるのだろうか。それは安倍総理が、日本全体の国益ではなく、経団連(会長・榊原定征 東レ相談役最高顧問)を中心とする一部大企業の利益しか考えていないためではないか。財界の面々に「TPPを成功させます!」と約束してしまった以上、いったん振り上げた拳をおろせなくなっているのではないか。
     あるいはオバマ政権が打ち出した「アジアへの基軸転回(Pivot to Asia)」が、台頭する中国を封じ込める「第2の冷戦」戦略であると早合点して、欣喜雀踊し、米国が中国を排除した経済ブロックを形成するなら、自国の市場を捧げてもよいから、ブロック形成の人柱に喜んでなりたいというのが、安倍総理らの心情なのかもしれない。
     いずれにしても、すでにTPPは「死んだ」。死亡宣告された条約の亡骸にしがみついて、「生き返らせるようにトランプ次期大統領を説得する!」と取り乱しているのが、安倍総理なのである。
     こうしたTPPへの異常とも言える固執から見えてくるのは、安倍総理の本質とは、国益を重視する真の意味の「愛国者」「ナショナリスト」ではなく、グローバリズムと新自由主義の信奉者ではないか、ということである。TPPだけでなく、消費税増税も日銀の金融緩和もGPIFのハイリスクな年金運用も、安倍総理が繰り出すあらゆる経済政策は、日本の「生活者」ではなく、大企業、特に米国発の一部グローバル大企業のほうを向いているとしか思えない。
     安倍総理の非愛国的な政策は、経済の分野だけにとどまらない。その最たるものが、小学校低学年から英語の授業を義務化し、大学の講義をすべて英語で行うとする、「英語化」政策である。
     一見、日本人が皆、流暢に英語が話せるようになれば、コミュニケーションの幅が広がり、英語圏の人々との交流も今以上に深まるように思える。しかし実は、この「英語化」は、明治時代以降、「翻訳」というプロセスを通じて涵養されてきた日本人の思考力、すなわち、日本語で読み、書き、考え、そして社会を形づくるという根底的な思考力を、「ビジネスの論理」に従って根本から破壊し尽くしてしまう、恐るべき政策なのである。
     著書『英語化は愚民化~日本の国力が地に落ちる』(集英社新書)で、この「英語化」の問題点を鋭く分析し、安倍政権の新自由主義的な政策に厳しい批判を加えているのが、九州大学准教授の施光恒氏である。施氏は、「英語化」の本質を「言語帝国主義」だと指摘。米国と英国が、グローバル企業のビジネスチャンスを非英語圏にまで拡大するため、明確な意図をもって推進しているのだと述べる。
     今月の「岩上安身のIWJ特報!」では、先月に引き続き、私が今年3月3日に行った施氏へのインタビュー第2弾のフルテキストをお届けする。非英語圏を「英語の通じる植民地」化し、そこからグローバル大企業がひたすら収奪を行うための仕組み――。それが、「言語帝国主義」たる「英語化」の本質である。新自由主義が全世界を覆い尽くすなか、必読のテキストである。(岩上安身)
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    ◆「日本をアメリカの51番目の州に」!? 憲法審査会で自民党・丸山和也参議院議員が信じがたい暴言!TPPと「英語化」を推進し、自ら進んでアメリカの一部になろうとする「対米従属派」の本音とは?◆
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    ▲九州大学准教授・施光恒氏
    岩上安身(以下、岩上)「皆さん、こんにちは。ジャーナリストの岩上安身です。『英語化が進んでいくということは、どういう未来を我々にもたらすのか』という切り口でお話をうかがってきた施光恒(せ てるひさ)先生へのインタビューですが、今日はその続編となります。
     ご著書である『英語化は愚民化 日本の国力は地に落ちる』(2015年、集英社新書)がベストセラーになっています。これは、単なる英語教育の本ではありません。『日本の国力は地に落ちる』というサブタイトルがついているように、実は政治的な問題だと施さんは主張されています。それでは施さん、よろしくお願いたします」

    ▲施光恒著『英語化は愚民化』(集英社新書)
    施光恒氏(以下、敬称略)「よろしくお願いいたします」
    岩上「またお時間を取っていただきまして、ありがとうございます」
    施「こちらこそ、ありがとうございます」
    岩上「前回、たっぷりとお話をうかがいましたところ、非常に反響がありました。今日はその話を振り返りつつ、さらにもう少し深く堀り下げた話もしていきたいと思います。
     その前に、今日はまずこの本をご紹介します。『日本がもしアメリカの51番目の州になったら――属国以下から抜け出すための新日米論』(2005年、日米問題研究会、現代書林)。この本は誰のタネ本かと申しますと、実はこの方、丸山和也議員(※1)の暴言の背景となった本なんです」
       
    ▲日米問題研究会『日本がもしアメリカ51番目の州になったら』
     
    ▲丸山和也衆議院議員
    岩上「知らない方もいるかもしれないので、説明します。2016年2月17日、参議院の憲法審査会で、自民党の丸山和也議員が、何と『例えば、日本がですよ。アメリカの第51番目の州になるということについて、憲法上どのような問題があるのかないのか』と発言しました。丸山さんは皆さんご存知の通り弁護士で、今は自民党の法務部会長です。
     この憲法審査会というのは、非常に重要なんです。安倍総理は『今度、参院選で3分の2を取ったら、必ず改憲発議をやる。わけても緊急事態条項をやる』と言っているわけです。ところが、野党議員から質問されると、それは答えない。『憲法審査会でご議論いただく』としか言わない(※2)。その『ご議論いただく場』ですから、ものすごく重要なんですよ。
     この丸山議員の質問は、政府委員として憲法学者を呼んでいて、その方々に、『憲法上問題がありますか。問題がなければ51番目の州になれますよね』と言っているということなんですよね。
     また、『今アメリカは黒人が大統領になっているんですよ。黒人の血を引く。これは奴隷ですよ、はっきり言って』とも言っています。しかし事実関係としては、オバマ大統領は、奴隷制時代に連れてこられたアフリカ系の人々の子孫ではないので、そういう意味でも間違いだし、論外です。
     彼は何を言いたかったかというと、アメリカにはたしかにかつて奴隷制があって、奴隷だったアフリカ系の人々、黒人がいる。オバマ大統領は違うけれども、『同系の人々の中から大統領になったんだから、日本が51番目の州になってしまえば、日本人が権力を握れる』ということなんですね」

    ▲オバマ氏一家(出典・WikimediaCommons)
    岩上「さらに『十数年前から日米問題研究会ということがありまして、それで本まで発表されているんですね』と言った。それがこの本なんです。けっこう漫画チックな本です。
     あとがきを見たら、『日米構造協議でぎゃあぎゃあ言われて、アメリカうざい』『アメリカうざいんだったら、もうアメリカになっちゃえばええやん。独立しているからガタガタ言われるんで、もうアメリカの一部になったらええやん』と書いてあります。
     『日本を立て直す特効薬としてアメリカが使えないのかという真剣半分、冗談半分の気持ちから、本書は誕生した。しかし、将来本当にアメリカとの合流が論じられるようになったらば、まことにもってシニカルな話である』で終わっているんですけれども、しかし今になって、憲法審査会という場でこれを本当に論じ始めているんです」
    施「事実上、そうなりつつありますもんね」
    岩上「この本の中に、『新合衆国作ればええやん』と仮定した地図があります。『ええやん』なんですね。アメリカは十数の州から始まって、どんどんどんどん西へ来て、そして太平洋を渡って、日本に開国を要求して、一応、国と国としてつき合っていたけれども、最終的に日本を叩いて、言ってみれば取り込んでしまった状態にある。『そんなら、一緒になってまえばええやん』という話で、これは、TPPとほとんど重なるのではないか。先生、どうですか。この『ええやん』というのは」

    ▲『日本がもしアメリカ51番目の州になったら』に掲載されている地図
    施「私は、丸山さんの発言は動画で見ました。オバマさんが奴隷の子孫だというような暴言以外にも、いろいろと問題があると思います。日本が51番目の州になったら、安全保障の問題や安保法制の議論も、もう全部なくなってしまいます」
    岩上「全部米軍だから」
    施「全部、米軍だから、そういう問題もなくなるし、と言うんですよ。これはすごい問題だと思うんですね」
    岩上「大問題ですね」
    施「国会議員なのに、日本が、例えば経済的な利益にしろ、いろいろな利益をアメリカに収奪されるとか、脅しをかけられるとか、そういうアメリカに日本の地位を脅かされるということを、まったく考慮していないということが、一つの問題ですね。
     もう一つ、今回の安保法制に関しては、自衛隊が米軍の下請けになる可能性がある。日本がアメリカの51番目の州になったら、まさに日本人がアメリカの司令官の命令でどこかに行かなければならなくなる。そこで軍事行動をする必要が出てくるという話になるわけですから、『51番目の州になれば何の問題もないではないか』などという発言は、やはり問題で、もっと突っ込むべきだと思います。
     また、これもすごく頭にきたんですけれども、政府の借金の問題について、『日本が51番目の州だったら、政府の借金がこんなに膨れることもなかっただろう』と言うんですね。なぜかといえば、アメリカだったらもっときちんとマネージメントしていたはずだと」
    岩上「『自民党が長期政権をしいた挙句、こうなったんでしょ』ということをすっ飛ばして、『我々は愚かだから、よそから社長を引っ張ってこよう』と、カルロス・ゴーンさんを呼んでくるかのような言い方ですよね」
    施「日本の国会議員なんだから、もっと責任意識を持ってほしい。それに、半分は日本人を馬鹿にしているんじゃないかという感じがするんですよ。こんな発言をしてしまったら、やはり国会議員としてまずいろうと思います。
     『アメリカにしてもらえば、経済の問題も全部うまくいっていた』とか、『拉致も起きなかっただろう』とか、丸山さんはそういうことも言っているんですね。もういい加減にしろと思います。国会議員なんだから、もっと拉致問題に共感を持ってほしいし、安保問題についても問題意識を持ってほしいと思います。この『51番目の州』ということをメディアは問題にしませんでしたが、メディアにももう少ししっかりしてほしいと思います」
    岩上「いやあ、日本のメディアは、わかっていてスルーですよ。この本は、サブタイトルに『属国以下から抜け出すための新日本論』とあるんですね。この本の著者たちは、日本が属国状態だと十二分に認識していて、その上で、抜け出すことよりは、より密着したほうがいいんじゃないか、距離を取るよりは密着したほうが、抱きついて一体化しちゃえばいいんじゃないかという話です」
    施「うーん、冗談の本としてはいいのかもしれませんが・・・」
    岩上「『ブッシュ萌え~』とか言っています。発想の転換とも言っているんですけれども、これはあくまで半分冗談だと、でもシニカルな話だと言っていたのが、もはや冗談として受け止められていない」
    施「そうですね。ただ、この本の著者たちがまだましだと思うのは、日本が属国だという意識を持っていることです。そこは冷静に見ているというところは、まだましではないかと思うんですね」
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    (※1)丸山和也議員:1946年、兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒業。元法務官僚、弁護士、タレント、政治家。2000年から日本テレビ系の『行列のできる法律相談所』に出演している。2007年7月の第21回参議院選挙に自由民主党公認で比例区に出馬し、初当選。
     国会では、「死刑執行は死刑囚本人が執行のボタンを押せるようにしろ」と提案したことがある。ツイッター上では「いわゆる民主主義は第一次世界大戦の戦勝国を正当化するために作り出された用語であることを学問的に知った」と発言している。
     2016年2月17日、参議院の憲法審査会においての発言は以下の通り。
     「例えば、日本がですよ、アメリカの第51番目の州になるということについてですね、憲法上どのような問題があるのか、ないのか。例えばですね、そうするとですね、集団的自衛権、安保条約はまったく問題になりません。…日本州の出身が米国の大統領になるって可能性が出てくるようなんですよ。…いまアメリカは黒人が大統領になっているんですよ。黒人の血を引くね。これは奴隷ですよ…」
     この発言に対する批判を受け、丸山議員は発言を撤回し、参院憲法審査委員を辞任した。
     岩上安身は取材を申し込んだが、断られた。ところが岩上のツイートに反応し、丸山議員がリプライ。岩上が「では、なぜリプライしないのか」と返すと、また黙り込んでしまった。
    ・岩上安身の2016年10月16日のツイート(http://bit.ly/2gF2OTH)
    (※2)『憲法審査会でご議論いただく』としか言わない:2014年6月に、改憲手続きを確定させる改正国民投票法が成立した。11月6日には、衆院憲法審査会で、共産党を除く与野党7党が大規模災害や感染症拡大などの緊急事態に対処するための「緊急事態条項」を審査会の議題に取り上げることが提案された。緊急事態の例には、大地震や感染症のパンデミック(世界大流行)や有事などが挙げられていた(参照:産経ニュース、2014.11.6【URL】http://bit.ly/2ePPWoR)。
     2016年7月の参院選で、改憲に前向きとされる勢力が3分の2を超え、国会での発議が可能な状況になった。7月11日、参院選投開票日の翌日、自民党総裁として記者会見した安倍首相は「憲法審査会で、どの条文をどう変えるべきかを議論すべきだ」と語った(参照:毎日新聞2016年9月13日 東京夕刊【URL】http://bit.ly/2g2LpVP)。