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  • 第5話「狙われた里」後半パート 小説版

    2021-06-18 17:40


    本小説は、ニコニコ動画で公開された。「東方×ウルトラセブン 第5話前半」の動画の続編となる小説です。動画での完成が事実上不可能となったので、小説版として加筆修正を行い、公開に至りました。

    東方×ウルトラセブン第5話前半動画

    第5話を終わらせられなかったことに未練を残していたことと、ある事情でまとまった時間が取れるようになり、一気に執筆を終わらせました。
    小説版という形とはいえ、皆さんにお見せできる形にできたことは、個人的にはほっとしております。

    ちなみに本作は二次小説投稿サイト「ハーメルン」と同時掲載を行っています。
    内容は同じですが、ブロマガ終了後はこちらでご覧ください。
    →https://syosetu.org/novel/119038/8.html

    長々と前置き失礼いたしました。
    続きは後書きの方で述べさせていただきます。

    それでは本編をお楽しみください。



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    霊夢と魔理沙が和室で相対したのは、頭頂部が黄色、顔面が真っ赤で身体が青色の奇妙な怪物。

    頭がやたら大きく、両手は生えている筍のようにささくれ立っている。

    そんな怪物は、身体の大きさに合わない小さなちゃぶ台の前に鎮座している。

    「どうも初めまして、ハクレイのミコ。私はメトロン星から来た者だ。」

    そいつはちゃぶ台の前に二人が座るように促した。

    「アンタまさか……宇宙人!?」

    まずは霊夢が第一声、声を荒らげる。


    「とある事情でこの地球までやって来ていたが…いつの間にやらこの里に辿り着いたのでね。」

    メトロン星人は霊夢の慌てた様子などお構いなしに、マイペースに続ける。

    ーーーーーーーーーーーー


    一方、こちらはダンが忍び込んだ長屋の一室。

    そこにはダンにとってのかつての敵が、和室にちゃぶ台と同じ構図で佇んでいた。

    「やあ、待っていたよ。ウルトラセブン」

    「メトロン星人…やはりお前らの仕業か!」

    ダンもすぐに畳に座り、ちゃぶ台を挟んでメトロン星人と相対する。

    「まぁここまできたら、計画もあったもんじゃない。素直に全部話そう。」

    ーーーーーーーーーーーー

    メトロン星人は霊夢と魔理沙二人の前で、懸命に弁明を続けている。

    その光景は宇宙人の巨体と比べ、どうにも不釣り合いで、何とも珍妙な光景に映る。

    「今はこの里で、相棒と二人、慎ましく茶作りに励ませてもらっている」

    「何が慎ましくよ!」

    霊夢が再び声を荒らて、ちゃぶ台をドンと叩く。

    「この茶にこの変なの混ぜたのは、アンタらでしょ!」

    霊夢は眼兎龍茶の筒をちゃぶ台に叩きつける。

    「おや……これは……」

    するとメトロン星人は筒を持ち上げ、筒の帯をじっと見つめる。

    「この茶は試作中のモノじゃないか!」

    メトロン星人は片手を真上に突き出し、大仰に驚いて見せる。

    「は?試作?」

    霊夢が眉間に皺を寄せて聞き返す。

    「これを飲んだら、とんでもないことになる!
    これを売ってしまったのは誰だ?」

    「…大福屋の主人よ。」

    「ああ、なんということだ。せっかく隠しておいたのに。

    あろうことかお客様にそれを売ってしまったとは!」

    メトロン星人は分かりやすく頭を抱えて慌て出す。

    表情が読めない癖に、妙にわかりやすいやつだ。

    「白々しいなぁ。」

    「え?」

    ここでこれまでじっと黙っていた魔理沙が、初めて口を開く。

    「お前らこれで悪さをするつもりだったんだろ。

    じゃなきゃこんなに沢山試作品で作るもんか!」

    魔理沙は人差し指をビシッとメトロン星人に突き出して告げる。

    「それは大きな誤解だ。」

    「何が誤解だ!」

    霊夢と魔理沙の尋問は続く。


    ーーーーーーーーーーーー

    一方、こちらは
    ダンとメトロン星人。

    メトロン星人の一方的な独白が
    続く。

    「宇宙ケシの実を混ぜたら茶を渡すことで、邪魔な人間を狂わせていき、徐々に減らしていこうという計画だった。

    ただそれを使う前に、大福屋の主人に見つかって主人が売り払ってしまった。

    これが真相さ」

    長い独白を終えると、メトロン星人はちゃぶ台のお茶を一口飲む。

    険しい表情でそれを見つめるダン。


    「随分あっさりと認めるんだな。」

    「 …… で?」

    「は?」

    「それで?」

    メトロン星人は惚けたように聞き返す。

    「この里、いや、地球から今すぐ出ていくんだ!」

    ダンは激しい口調で詰め寄る。


    「たしかに私たちは地球人に危害を加えようとした。

    ただそれはこの幻想郷のためさ」

    「人間を殺すことが幻想郷のためだと?」

    「自分たちだけが知性を持つのをいいことに、地球人たちは、自分の都合の良いように地球を作り変えたり、平気で汚したりする。

    この星の持つ自然と環境の価値を、まったく理解していない」

    メトロン星人は静かに憤る。

    「ここの人間たちは妖怪の支配下にいるおかげで、自然と共存できているがな。

    もっともいずれ、人間はこの幻想郷すら作り変えようとするだろう。

    そうならないために、害になりそうな人間を排除しようとしただけだ」

    「ふざけるな!」

    お前らの都合で罪もない人間を苦しめようとするのは許さないぞ!」

    ダンは立ち上がり、メトロン星人に詰め寄る。

    「そういう意味では、地球に害となる宇宙人を退治している君と私とで、相通じる所があるということだよ」

    メトロン星人も負けじと切り返す。


    「それはお前らの勝手な理屈だ!」

    「ウルトラセブン、君は何故そんなに地球人たちを守りたがる?」

    すると、鬼気迫るダンの表情が、一瞬ハッとなる。

    「随分とここの地球人共に冷たくされてるようじゃないか。

    ここの人間も外の人間も、君が必死になって守る価値のある存在には見えないがね。」

    「……お前らなんかに、地球人の価値が分かるか」

    やや苦々しくダンが返す。


    「………ふうん」

    メトロンの声は面白くなさげだったが、その表情は窺い知れなかった。


    ーーーーーーーーーーーー


    あの後、いくつかの問答のやり取りがあった。
    今は激しい口論で息を切らす霊夢と魔理沙と、相変わらずマイペースを崩さないメトロン星人いた。

    「いずれにせよ、アンタらにはここを出て行ってもらうわ」

    やや荒らげた息を正しながら霊夢が告げる。

    「アンタみたいな宇宙人が、この人間の里で暮らしていいわけないもの」


    「でも〜。
    せっかくこんな環境の良いところに来たんだから、残りの余生をここで暮らすのも悪くないかなぁって思っていたんだがねぇ」

    告げる霊夢の強い口調に飄々とした言葉で返される。今日何度と繰り返された光景である。

    「それは、出ていく気がないと言ってるの?」

    「……力ずくても出て行かせる気かい?」

    その時今日初めて、メトロンがすこし強い口調で話した。

    霊夢は一瞬たじろぐ。


    "もしや既に人里に何か仕込んでいるのでは?"


    という不安が一瞬過ぎった。

    霊夢にはこの宇宙人が一層不気味に見えた。


    ーーーーーーーーーーーー


    睨み合うメトロン星人とダン。

    「いずれにせよ、君に何を言われても、
    私はここを出てはいかないよ」

    ダン、意を決し、懐からウルトラ・アイを取り出す。
    しかし、

    「おっと、手荒な真似は止すんだな。

    この家には円盤が隠してある。勿論円盤にはミサイルも積んでいる」

    「……!」

    「ここで爆発したら、どうなるか。分かるだろう」

    表情の変わらないメトロン星人だが、どうも笑っているように見える。

    「ひきょう者め……」

    ダンはそう言って、ウルトラ・アイを懐に戻すのだった。


    ーーーーーーーーーーーー


    「おお!そうだ!

    こういう時にピッタリなものがあるじゃないか!」

    メトロン星人がその筍のような腕をわざとらしくポン、と叩く。

    「何だって?」

    魔理沙が怪訝な声を上げる。
    霊夢はじっとメトロン星人を見つめている。


    「ここでは何か揉め事があった時、お決まりの決闘方法があるだろう?

    そいつで決めようじゃないか」


    「まさか!?」

    驚きを見せる魔理沙と、尚も険しい表情の霊夢が口を開く。

    「……弾幕ごっこ。」


    「そうそう、それそれ。

    私と君とで弾幕ごっこをして、もし君が勝ったら、私たちは大人しくここを出て行こう。

    私たちが勝ったら、君は私たちがこの里で住むことを許可する。

    どうだい?」

    メトロン星人は相も変わらず飄々とした態度だ。

    魔理沙が霊夢の方を振り向きざまに言う。

    「おい霊夢。こいつらが本当に、こんな約束守ると思ってんのか?」

    霊夢は少し思案した後、口を開く。

    「いいわ。
    その条件、呑むわ」

    「おい霊夢!
    こいつを信用すんのか?」

    「掃除のおばちゃんは黙ってな。」

    「誰が掃除のおばちゃんだ!」

    メトロン星人の無遠慮な発言に、怒った魔理沙が立ち上がり、畳をドンと踏みしめる。

    「えっ…違うのかい?

    てっきり大きなホーキ持ってたから掃除屋の人かと」

    その魚のような顔では、おちょくっているのか、素で言っているのか判別しにくい。

    魔理沙はメトロン星人を睨めつけながら口を結んだ。


    ーーーーーーーーーーーー


    「君にチャンスをやろう。」

    暫く押し黙っていた両者だが、メトロン星人が急に口を開く。

    「これから私の相棒と博麗の巫女とで弾幕ごっこをする。

    もし巫女が勝ったら、私たちはここを出ていく。

    彼女ともそういう約束をしている。」


    「もし霊夢が負けたら?」

    「その時はウルトラセブン、君がここを出ていくんだ」

    ダンは目を見開く。

    「君が負けたら、君の正体を里の者にばらす。
    そうすれば君もここにはいられないだろう。

    そして勿論、君がこの勝負に介入するのもなしだ。」

    暫しの沈黙の後、ダンがゆっくりと口を開く。

    「……わかった。
    ただし、約束を破ったら、容赦しないからな。」

    「それじゃあ、我々は彼女らの仕合を、ここから見守ろうじゃないか」

    するとメトロン星人は傍らにあったモノの布を降ろす。

    すると頭に2本のアンテナのついた、小型のブラウン管テレビが現れた。

    メトロン星人はリモコンでスイッチを入れる。

    すると、間もなくその白い画面の中から、二つの紅い頭が顕になっていく。


    ーーーーーーーーーーーー


    「ただし!私が勝ったら、この里、いやこの幻想郷から出ていく。これでいいわね!」


    「よろしい!
    それじゃあ表へ出たまえ。」




    霊夢とメトロン星人は、人里の中心からやや外れた路地で向かい合っていた。


    空は紅く染まり始めており、西陽が二人を眩しく照らしていた。


    その傍らには心配そうに見つめる魔理沙と、何処からともなく現れた八雲紫がいた。


    「……話は聞いておりました」


    「紫」

    霊夢が警戒した表情で呼びかける。

    「私がその勝負、立会人になりましょう」

    「ああ、よろしく頼むよ」

    霊夢はメトロン星人と紫のやり取りから、二人の間に何らかの話し合いがあったことを察する。

    (紫とも話をつけてるなんて……。随分と手回しがいいのね)

    霊夢は警戒した表情を崩さないが、この宇宙人の妙な手回しの良さに感心してまう。

    紫は二人の間に立ち、この仕合の取り決めを確認する。

    「 これから弾幕ごっこの勝負を始めます。

    もしメトロン星人さんが勝ったら、霊夢は彼らにこの里に今後も留まることを許可する。

    もし霊夢が勝ったら、大人しくあなた方は幻想郷を立ち去る。

    これでよろしいですね。」

    「構わないよ。」

    「いいわ。」

    双方紫の取り決めに頷いた。

    「それではご両名、ご準備を」


    霊夢は右脚を後ろに下げ、右手にはお祓い棒を持ち、今にも飛びかからんとする体勢だ。

    対するメトロン星人はだらんと両腕を下ろし、一見すると弛緩しているような体勢。


    紫は二人が戦闘体勢になったことを確認すると、紫色の艶やかな扇子をゆっくりと振り上げる。










    「ではーーーー、始め!」

    紫は声と共に団扇を振り下ろす。




    いきなり、メトロン星人の両腕の奥が煌めいた。


    下ろしていた腕を霊夢に向けると、その穴から数々の光の玉が霊夢へ向けて放射される。

    彼の腕はバルカン砲のようになっていたのだ。


    しかし霊夢の反応も疾かった。
    瞬時に夕空へ跳び上がると、退魔針をメトロン星人が居る場所へ一斉に投げつけた。


    メトロン星人、飛び上がってこれを回避する。

    そこから空中戦が始まった。


    まずメトロン星人がまたしても両腕を霊夢に向ける。


    すると今度は両腕から、やけに発光する長めのレーザーを発射する。

    単調な動きのため、初撃を霊夢、素早い動きで回避する。

    「スペルカード発動!
    『秘技!スペースサイリウム』ってね」

    すると突然大音量で音楽が流れ始める。

    幻想郷には不釣り合いなメタリックなBGMと、女性ボーカル特有の高音が人里中に響き渡る。

    見ると、霊夢たちが先程まで問答していた屋敷の屋根が崩れ落ち、中から銀杏を二つ合わせたような巨大な円盤が、ゆっくりと上昇を始めている。

    どうやらこのBGMの音源はこの円盤かららしい。

    曲がAメロに入ると同時に、メトロン星人の攻撃が始まる。

    「かーがーやーけミーラーイー」

    メトロン星人は両腕のレーザーを放出させながら、曲に合わせて踊るように光るレーザーをグルグルと棒のように廻し始める。

    夕空に黄色の閃光が乱舞する。

    霊夢、このレーザーを縄跳びの縄を跳ぶかのように潜り抜けていく。

    一見珍妙な動きだが、規則性がない訳ではない。

    霊夢メトロン星人の動きを読み切り、この時限式スペルカードを乗り切った。


    BGMが終わると、メトロン星人はレーザーを打ち終わり、次のスペルカードへ移行する。

    「秘薬 ポッピングシード」

    メトロン星人がスペルカードを名乗ると、BGMを流す為に静止していた円盤から無数の光弾が発射される。

    レーザーほど弾速は速くないが、広範囲に整列するように放たれた赤い光弾は、空中で一時静止する。

    すると、まるで飛び散った木の実のように、人里の夕空を真横に飛び跳ねる。

    霊夢は空中を飛び跳ねる光弾を回避しつつ、躱しきれない光弾をお祓い棒で打ち消していく。

    「おい!あんな円盤使うなんていいのか!」

    霊夢とメトロン星人の弾幕勝負を見守っていた魔理沙が、近くにいた紫に噛み付く。

    「あれはメトロン星人のサブウェポンのようなものです。別にルール違反でもないわ」

    紫はじっと霊夢の姿を見つめている。


    しばらく膠着状態が続いたが、次第に円盤からの光弾の弾幕が薄くなり始める。

    防戦一方だった霊夢も、この機に乗じて距離を詰める。


    「メトロン家相伝!ちゃぶ台返し」

    メトロン星人は次なるスペルカードを発動させる。

    またしても円盤から弾幕が発射される。
    しかしその弾は、まるでちゃぶ台のような形をしている。

    発射されたちゃぶ台弾は、まるで無重力の中を飛んでいるようにぐるぐると回りながら散っていく。

    夕空一面に無数のちゃぶ台が散らばっている、という異様な光景が広がる。

    霊夢はこのやたら面の広い弾丸を回避するため、少し後退することを余儀なくされる。

    円盤から発射されたちゃぶ台弾は、ゆっくりと回転しながら霊夢を囲むように集まり始める。

    このままでは多数のちゃぶ台に霊夢が押し潰される!
    そう思われたが、霊夢はちゃぶ台の合間の微妙な隙間を潜り抜けていく。

    ちゃぶ台弾は高速で回転している訳ではない。あくまでも無重力を飛んでいるかのようにゆっくりとした回転だ。

    そのゆっくりとした回転によりできた隙間を霊夢は潜り抜け、再びメトロン星人に近づいていく。

    霊夢はある程度メトロン星人の近くまで接近すると、いきなり高速で霊札を放つ。

    メトロン星人はこれを素早い動きで回避する。咄嗟の攻撃を回避したメトロン星人であったが、霊夢はちゃぶ台弾幕の囲いを完全に突破してしまい、意味をなさなくなっていた。

    メトロン星人はちゃぶ台弾幕を消滅させると、空中で霊夢と向き合い、こう言い放つ。


    「それでは"LASTWORD"といこうか」


    メトロン星人はまたしても円盤から光弾を発射させる。先程の光弾よりも高速で弾幕が厚い。

    「サンセットバラージ」

    無数の光弾が霊夢に向けて発射される。しかも紅色の弾幕であり、夕焼け空に溶け込み回避を困難にする。


    霊夢の苦しい戦闘が続く。
    霊夢は光弾の弾幕を回避しつつも時折霊札を投げつけメトロン星人を狙うが、命中しない。

    メトロン星人は霊札を回避しつつも時折腕からバルカン砲やレーザーで霊夢を狙い、手数の多さで霊夢を圧倒していく。

    その時、夕陽が雲間に隠れて空が暗くなる。夕陽は間もなく沈み、空は夜の闇に包まれる。そうなれば視界は悪化し、手数の少ない霊夢は益々不利になってしまう。



    そんな不安を他所に、霊夢がアクションを起こす。

    霊夢は思い切り上空に飛び上がると、メトロン星人の上を飛び越えるように、放物線を描いて宙返りをする。

    メトロン星人は突然のことに驚いて霊夢が飛び越えた方向を振り返る。


    すると霊夢の背後から、眩いばかりの夕陽の光がメトロン星人の眼に飛び込んでくる。

    丁度雲間に隠れていた夕陽が、姿を表したのだ。

    その光に一瞬、メトロン星人の意識が奪われる。





    勝負を決すにはその一瞬で十分だった。



    次の瞬間。
    メトロン星人の顔に霊札が叩きつけられ、その身体は真っ逆さまに落下した。


    メトロン星人の身体は、ボンっという大きな音を立て、人里外れの畑に頭の先だけ埋まるように不時着した。


    決着。



    霊夢の勝利は、誰の目にも明らかであった。


    ーーーーーーーーーーーー


    「……ははっ、ハーッハッハッハ」



    弾幕ごっこの一部始終をテレビで観ていたメトロン星人とダンだったが、

    相方のメトロン星人が畑に墜落するのを目撃すると、急に笑いだした。

    「負けちゃったか」

    「おい。約束通り、出ていくんだろうな。」

    ダンは霊夢が勝ったことにひとまず安堵するが、目の前のメトロン星人に対しての厳しい態度は崩さない。




    「あーあ。そいじゃ!」

    メトロン星人はそれに答えず、ふざけたように挨拶すると、

    「とお!」

    天井を突き破り、空中に飛び出す。


    「おい!待て!」


    ダンはメトロン星人を追いかけるべく、
    ウルトラ・アイを取り出す。

    「デュワッ!!」

    ダンは光に包まれ、ウルトラセブンの姿に変身する。


    ーーーーーーーーーーーー


    畑に頭が埋まったメトロン星人であったが、自力で畑から脱出し、パンパンと頭の土を払っている。

    「やれやれ、参ったよ。」


    そこに鋭い形相の霊夢が飛んで近づいてくる。

    手にはお祓い棒と札が握られており、「まだやるのか」と言い出しそうな構えだ。


    さらに何処からともなく紫が現れ、箒に跨った魔理沙もこちらに近づいてくる。



    「あーあー。私の負けだ。

    見事だった。ハクレイのミコよ、約束通り、私達は大人しくここから立ち去るよ」

    メトロン星人は両腕を上に掲げながら無抵抗のポーズを取る。


    すると円盤から光が放たれ、メトロン星人の身体はその光の中に消えていく。


    その直後、光の柱が現れ、その中からウルトラセブンが現れる。

    同時にもう一体の飛行していたメトロン星人が、先程と同様に円盤の光に包まれて消えていくのが見えた。



    セブンは円盤に向き合う。

    円盤はセブンの周りを旋回するようにゆっくりと浮遊する。

    円盤はセブンへ向け、一方的に宣告する。


    「私たちは約束は守る。しかし、ウルトラセブン。君のやっていることは単なる人間贔屓でしかない。

    地球と人類、どちらが価値あるものなのか、そのことをよく考えるがいい」



    そう告げると、円盤はセブンから離れ、夕陽の向こうへと飛び去って行く。


    セブンと霊夢は、円盤が空の向こうに消え去るまで、じっとその行く先を見つめていた。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    要望があればシリーズ終了の後書き、未公表の設定などを書く予定です。
    お暇な方はご覧ください。


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  • 東方×ウルトラセブン side story4「八雲藍の困惑」

    2020-01-06 21:50




    side story4 「八雲藍の困惑」




    <他話リンクはコチラ>
    side story1→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1665976
    side story2→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1718980
    side story3→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1851941

    この小説は動画、東方×ウルトラセブンシリーズの外伝作品となります。

    内容的に東方×ウルトラセブン第5話のネタバレが多分に盛り込まれております。

    今回、5話制作が既定の期日よりも遅れたため、先に事前に描き終えていたこちらの外伝小説を公開いたします。

    ただし、本編の重大なネタバレを含んでおりますので、
    「動画で観るまで楽しみにしておきたい!」
    という方は本編の投稿を待ち、視聴後に、こちらの小説を読むことをおススメいたします。


    ちなみに本編の東方セブン5話の投稿予定は2020/1/20 19:00公開を予定しております。
    遅れて大変申し訳ございません。
    現在進捗は7割程度であり、完成させられることは間違いないのでご安心ください。




    今回の小説は、最初から最後まで八雲藍の一人称視点で進みます。

    ーーーーーー


    赤い顔に黄色の頭頂部。ぎょろりと突き出た目、

    白く、先端がささくれて分かれている腕。

    胸から腹にかけて奇妙に光る体の溝。

    赤くか細い上半身に青い下半身。


    そんな奴が今、我が主の屋敷で

    畳の上に正座し、深々とお辞儀をしている。


    「メトロン星から来たものだ、
    私は相棒と一緒 にこの幻想郷の人里で生活させてもらっている。

    貴女達が私たちの提案を受けてくれたことに、
    とても感謝している。」



    すると宇宙人は、

    傍らにあった紙袋を前に差し出す。


    「こちらはつまらないモノだが、受け取って欲しい」


    紙袋の中からは、数本の茶筒が覗いていた。


    「これはこれはご丁寧に、ありがとうございます」


    我が主、八雲紫いつもと変わらぬ笑みを浮かべる。


    その紙袋を私はゆっくりと受け取った。

    一瞥してから中身を改めたところ、

    どうやら本当に茶の筒だけが入っているらしい。



    ーーーーーー


    梅雨が明け、日差しが強く照りつけ始めるようになったある日。


    配下の狐がとある手紙を受け取った。


    差出人はなんと宇宙人と名乗るものからであった。


    これまで何体もの宇宙人と交戦してきたが、

    向こうから接触してくるのは初めのことだった。


    文面は以下の通りであった。



    『拝啓


    蝉の声が一層騒がしくなりました今日この頃、突然のお手紙に驚かれた事と思います。


    初めまして、私、メトロン星という遠い星から参った者でございます。


    先日、こちらの幻想郷に参りまして、緑映える山々に田園と多くの動植物に妖怪といった、
    多様な生物達に驚かされるばかりでした。


    さて、私共こちらに参り、人里での生活にも大分馴染んで参りました。


    そして、こちら幻想郷の領主とも言える妖怪の方々にご挨拶を済ませていないことに気が付きました。


    そこで、こちらの幻想郷の領主である妖怪の方々と親睦を深めたいと存じます。


    厚かましいお願いでございますが、

    私共を妖怪の方々のお宅にご招待いただけないでしょうか。


    こちら人里では妖怪の出入りが禁じられているとお聞きしました。


    そのため、私共の拠点としている里に妖怪の方々を招くことが残念ながら出来ないということを知りました。


    この幻想郷でお世話になっている私共が妖怪の方々をおもてなしできないのは痛恨の極みでございます。


    しかし、私共は是非とも妖怪の皆様と親睦を深めたいと存じます。


    何卒よろしくお願いいたします。


    敬具


    お返事は下記の里の私書箱までお願いします。


    ○×屋 私書箱 捨七番





    宇宙人とは思えない文面であった。文もきちんとした字体で書かれており、その高い知性を思わせる手紙であった。


    この手紙は、里の外れにある稲荷の像の前に供えられていたものだった。私の配下の狐の1匹がそれを発見した。


    発見時、ご丁寧に、手紙と一緒に油揚げが数枚のせてあったらしい。
    その油揚げは紛失し、この手紙が私の下に届けられた。


    ……もう少し口に入れる前に思うことはないのだろうか。


    私はその手紙を一見し、すぐに主である八雲紫に見せた。


    主は真剣な表情で手紙を見ていた。



    その後の調べによると、

    他の妖怪諸勢力にもこのような手紙を送ったらしい。








    このことは、大変由々しき事態である。



    手紙にはこの宇宙人が里に住んでいると書かれている。


    妖怪をはじめとした人外が人里に住み着くことは幻想郷のルールに明確に反する。


    寺子屋の半人半獣や、座敷童子の連中など昔から里に居着いているものは例外で認められてはいる。

    しかし、里で妖怪が人間を襲ったり、悪巧みをしたとなれば、博麗の巫女などに退治されるのがお決まりである。


    妖怪の本分は人間に恐れを抱かせることにある。諸勢力はあの手この手でバレないように人間の里にこっそり忍び込み、虎視眈々と人間への影響力を高めるべく、暗躍している。



    そんな中、ぽっと出の宇宙人が里に居座っているなどと堂々と宣言することは、我々妖怪への挑発ともとれる行動である。


    この手紙が妖怪の諸勢力に渡ったということは、大きな火種となりかねない。


    加えて、他の妖怪勢力が宇宙人騒動に介入して欲しくないというこちらの思惑もある。


    宇宙人に対抗するのは、私達と

    博麗霊夢、モロボシ・ダンのみで良い。


    他の妖怪に介入され、事態をややこしくすることは避けたいのが本音である。


    紫様はすぐにこの手紙の返事を認め、

    手紙の主を招き、その真意を探ることに決めた。


    ーーーーーー


    「粗茶ですが、どうぞ」


    私は盆の上から宇宙人の前に茶の入った湯飲みを差し出す。


    「これはこれは、どうも」


    宇宙人はハサミのような手で器用に湯呑みを持ち上げ、フーフーと冷ましながら茶を飲む。


    「ふふ、地球の茶は気持ちが落ち着きますなぁ」


    この宇宙人、茶を飲む一連の動作といい、相当地球の生活に慣れているようだ。


    「それで……貴方には、大事なご用がおありなんじゃありませんか?」


    紫様が普段の軽い調子で本題に切り込む。




    「いや、そんな大層な用事ってわけでもないんだ。


    ちょっと雑談がてら、この幻想郷について話し合いたいと思ってね」


    宇宙人は軽い調子で話を始める。



    「この幻想郷は、実に素晴らしい。


    私が思うに外の世界とは違い、

    この世界が素晴らしい点が二つある。


    一つは、この美しい環境。


    日本というクニの原風景。


    宇宙広しといえど、

    これだけ開発や汚染されていない

    森や山を見るのは初めてだ。


    外と完全に隔離されているおかげだろう。


    そして、これを実現しているのが

    もう一つの素晴らしい点。



    妖怪が人間を支配していることだ。




    この世界は外と違い、妖怪が支配を握っている。


    人間は自分たちが地球の種族の中で一番の頭脳を持っていることを鼻にかけすぎている。


    せっかくの貴重な森や山を開発し、川や海、大気を汚す。

    他の種族のことなど気にもしない。



    その点、君らは分をわきまえている。


    人間より君たち妖怪のほうが支配者として相応しい」



    ゆっくりと背筋を撫でられたような、

    気色の悪い感覚だ。


    コイツなんかに褒められても全然嬉しくない。


    人間のことに関しては共感するところがないでもないが。


    そもそも、幻想郷で妖怪が人間を支配しているというのは語弊がある。


    妖怪と言えど、一口に言えるものでもない。



    しかし、紫様はそんな宇宙人の幻想郷観について口出しはせず、じっと彼の話に耳を傾けている。


    宇宙人は茶を一口飲み、

    喉を潤してから話を続ける。



    「ただし、不満もあってね。

    もっと人間をきちんと管理すべきじゃないかな。


    例えば外の世界の人間は動物園とかいうモノを作って他の動物を飼っている。


    ここの人間も檻の中に入れてきちんと管理したほうがいいんじゃないか?


    こんな杜撰な管理方法では、いずれここの人間も、外の世界のように

    自分たちの都合のいい場所に作り変えてしまうかもしれない。


    僕たちはそれを防ぐための、ちょっとしたお手伝いをしようとしたまでさ」




    この宇宙人、相当人間のやっていることが気に食わないらしい。


    しかし、人間を檻の中に閉じ込めるなど、随分乱暴な考えだ。


    やはり、こんな奴をいつまでも里に居座らせる訳にはいかない。




    我が主は、いつもの笑みを浮かべながら、

    少し間を置いてこう続けた。


    「貴方は幻想郷について、大きな勘違いをなさっています。


    そんな環境では、私達にとって意味がないのです。


    あくまで現況が、今の幻想郷にとって最良の状態なのです」


    紫様は淡々と諭すように話をする。


    すると宇宙人は惚けたように首を傾げる。


    「ふうん……。

    そういうものなのかね。」



    ここで引き下がるような奴はこんな所にやって来ないだろう。


    問題は何を要求してくるかだ。



    宇宙人は変わらぬ調子で尚も続ける。




    「しかし、私たちは方針を変えるつもりがないんだ。


    そこで、この幻想郷らしい決闘方法で、

    私たちのことを認めてもらおうと思っているんだ。」






    そこでピタリと空気が張り詰める。






    幻想郷らしい決着方法。





    思い当たる節は一つしかない。

    まさかそんなことも知っているとは……。


    珍しく紫様も少し面食らった様子である。




    「それは、もしや……弾幕ごっこのことを仰っているのですか?」





    紫様は少し戸惑いつつ当て推量をする。


    「そう、それだ。」


    宇宙人はわざとらしくささくれた腕を差し出す。


    「その弾幕ごっこをこの幻想郷の代表者として、決着をつけようと思う。


    貴女たちにはその勝負の相手をするか、立会人になっていただきたい。」





    急な提案だ。


    これが妖怪相手なら日常茶飯事だ。しかし、今回は得体の知れぬ宇宙人が相手である。





    「どうだろうか?」


    宇宙人の申し出に、

    紫様は少しの間手を顎に乗せて逡巡する。




    しばらくして、紫様は顔を上げた。


    「わかりました。


    その勝負、受けさせていただきます。」


    紫様はご決断なされた。


    となると相手はやはり……





    「また、勝負の相手は、博麗の巫女、

    博麗霊夢と戦うのが宜しいでしょう。


    「ほう、そうか。」


    宇宙人はそれが誰なのか見当がついているような反応を返した。


    コイツは博麗の巫女のことも頭に入っているようだ。



    「いずれ霊夢は、必ず貴方の所に現れます。

    その時に勝負の申し入れをすれば、彼女は受けるでしょう。


    ただし、一つだけ条件があります。


    この幻想郷の人里に人間以外の者が住むのは

    禁忌とされています。


    もし、貴方が負けた場合、人里から出ていくことをお約束下さい。


    そうすれば、

    私も勝負の立会人になることをお約束いたします。」


    「そうか。分かった。その条件でいいだろう。」


    「ありがとう。それでは、お暇させていただこう。お茶も美味しかったよ。」




    -----



    宇宙人は、配下の狐に連れられ帰路についた。


    私は、今度の対談で浮かんだ疑問を素直に紫様にぶつけた。



    「紫様、あんな勝負お受けしてよろしいのですか」


    すると紫様は厳しい目付きで答える。


    「相手が弾幕ごっこに乗るとしたら、私たちがその勝負を止めることはできないわ。


    こうして立会人として勝負を見守り、

    公平な勝負を担保するのが関の山ね。


    弾幕ごっこは"正当な"幻想郷の決闘方法なのだから」


    「しかし……」


    「あら、藍。貴女は霊夢が負けると思ってるの?」


    「万に一つということもあります。


    それに、相手は宇宙人です。何をしてくるか……」


    紫様はいつの間にか取り出した扇子をはためかせる。


    「相手も明確なルール違反はしてこないでしょう。それでは弾幕ごっこをする意味がない。


    それに、ここで負けるようなら、博麗霊夢は『その程度だった』ということでしょうね。」



    それを聞いて私ははっと驚いた。


    紫様の言葉の端々にはある種の残忍さが感じられたのだ。


    私は忘れていた。


    このお方は、いざとなればあの博麗霊夢でも容赦はしないのだ、と。


    「もしそうなった時は……。

    その時はその時ね」


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  • 東方×ウルトラセブン side story3「密談」

    2020-01-06 01:11


    ※本作は以前に小説投稿サイト「ハーメルン」に投稿した小説になります。
    コチラのブロマガに投稿し忘れていたので投稿します。
    Twitterで告知していた新作はこの後に投稿します。

    <他話リンクはコチラ>
    side story1→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1665976
    side story2→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1718980

    東方×ウルトラセブン第4話の外伝エピソードその2となります。

    東方セブン4話のネタバレを含みます。
    そのため、動画を視聴してから本文を読むことをおススメします。




    本来は動画版4話のラストに挿入する予定でしたが、
    登場人物の動きが少なく、冗長な展開になってしまうことや、
    動画時間の都合などでカットした部分になります。


    ---

    「出ていきなさい!!」


    「……わかった」


    障子が開く音の後に、ゆっくりと畳を踏みしめる足音が聞こえ、
    障子の閉じる音が響く。


    足音が遠ざかっていく。

    音が消えると、代わりにすすり泣く声が響く。



    「何よ、何よ……。

     私は博麗の巫女なの……。

     こんなことで負けてらんないのよ……ううっ……」







    襖を一枚隔てた先の廊下。

    廊下の襖の傍に立っていた者が、ひっそりと耳をそばだて、神妙な顔をしていた。

    茨木華扇。

    彼女はここでの一部始終のやり取りを聞いていたようだった。

    彼女は一通りの事が終わったと察すると、
    踵を返し、その場を後にしようと静かに廊下を進む。

    大きな音を出さぬよう、慎重に足を進める。
    彼女は俯きながら、今度のことについて思案しているようだった。

    しかし、そのおかげで正面に現れた珍客に気づけなかった。



    「困ったものよね。
     ーーーー天才というのも」



    華扇は驚いて顔を上げる。

    声を上げそうになるが、それは正面の何者かに口を塞がれたことによって防がれた。

    口から手をどかすと、華扇は正面の相手を見つめる。

    暗闇に眼を慣らすと、金髪の少女が微笑みながら、
    突き立てた人差し指を唇に宛がっているのが見えた。


    「 八雲紫……」


    華扇が小声で正面の相手に呟く。

    名を呼ばれた少女はゆっくり唇から人差し指を下ろすと、
    離れた襖の向こうに目を配り、伏し目がちに独演を始める。


    「彼女は恐ろしい才能の持ち主……。
     故にこれまで真の敗北というものを、味わって来なかった。
     
     だから、いざそれに直面した時、とても脆い……。
     彼女は今、とても困惑しているのね、初めて直面する挫折に」


    八雲紫の独演が終わった後、

    突然の来客から落ち着きを取り戻した華扇は、
    少しの間難しい顔で思案した後、意を決し彼女に質問を投げかける。


    「ところで妖怪の賢者さん、
     貴女に聞きたいことがあるの」

    「何かしら?」


    「単刀直入に質問するわ。
    これまでに異変を起こしているのは妖怪ではなく、宇宙人。そうよね。」

    「ええ、そうよ」


    紫は数秒間思案した後に返答した。


    「そしてあの青年、ウルトラセブンとかいう巨人の正体も宇宙人、よね?」

    「……あら、気がついたのね」


    華扇は意を決して問い掛ける。
    紫は表情一つ変えないが、その視線が次第に厳しくなる感覚を華扇は感じた。


    「貴女が彼を連れてきた」

    「ええ」

    「何故宇宙人を幻想郷へ?」

    「妖怪の能力が宇宙人に通用しないかもしれない。これはご存知?」

    「初耳です」


    突然の紫の発言に、華扇は一瞬目を丸くする。


    「それに宇宙人は私たちの想像を超えるような力を持っている。
     さらにその力は私たちが忌み嫌っている科学力、相性が悪すぎるわ」


    すると紫の背面に空間のスキマが現れ、紫は一瞥することなくそこに腰かけて続ける。


    「彼らに対抗する為には、外の世界でかつて地球を守っていたウルトラセブン――
     彼の力が、どうしても必要なのよ」

    「あの巨人は何が目的?」


    華扇は慎重に口を開く。


    「彼はあくまで善意でこの幻想郷を
     守りたいと言っているわ」

    「善意?
     あなたの命令で動いているわけじゃないの?」


    「彼と私はあくまで対等な関係よ」

    「彼が幻想郷の脅威になる可能性は?」

    「ゼロではないわ」

    「そんな存在をよく幻想郷に入れたわね」


    華扇は厳しい口調で紫を非難する。
    紫は毅然とした態度で続ける。


    「どうしても彼の力が必要なのです。
    この幻想郷のために」


    華扇は険しい表情で紫を見つめる。
    紫は依然飄々とした態度である。


    「それじゃ、私から。
     貴女に2つほど"お願い"があるの」

    「お願い?」


    唐突な紫の発言に、華扇は身を強張らせる。


    「ええ、お願いよ。
     まず、ダンさんがウルトラセブンであることは秘密にして欲しいの」

    「秘密、ねぇ」


    華扇は怪訝な声で応える。


    「もう一つはーー。
     今回の異変は宇宙人などではなく、妖怪の仕業だった、ということにして欲しいの。

     そして、これから起こる異変もね」

    「妖怪の仕業に?」

    「ええ。
     もっとも、ただの人間には妖怪と宇宙人の区別ができるとは思っていないけれど」


    紫はどこからともなく取り出した扇子を開き、はたはたと扇ぐ。
    華扇は尚も警戒した表情を崩さずに続ける。


    「貴女のお願いを聞くことにどんな利益があるのかしら?」

    「あら、貴女も無暗に揉め事を起こしたり、騒ぎを大きくすることは本意ではないでしょう?

     これは妖怪と人間の為にやっていることよ。
     貴女にも理解してもらえると信じているわ」


    紫は笑みを浮かべながらそう告げると、扇子を折りたたみ、スキマから立ち上がった。


    「それじゃ、これからも"ご協力"お願いしますわ」


    そう言い終えると、紫はスキマの中へと消えていった。


    取り残された華扇は、
    長い廊下に誰もいなくなったことを確認すると、再び長い思慮に耽った。







    長考から華扇は顔を上げると、
    先刻まで紫がいた空間を睨み付ける。


    そして、小声だが、しっかりとこう宣言した。



    「八雲紫、貴女がどう判断しようと、彼は私の手で見極める。

     彼がどんな目的で、ここに来ているのか。


     彼の本性は何者なのかを」





    ほのかに月明かり差し込む灰色の廊下は、
    返事代わりに静寂を渡してきた。


    ---