• 東方×ウルトラセブン side story4「八雲藍の困惑」

    2020-01-06 21:50




    side story4 「八雲藍の困惑」




    <他話リンクはコチラ>
    side story1→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1665976
    side story2→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1718980
    side story3→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1851941

    この小説は動画、東方×ウルトラセブンシリーズの外伝作品となります。

    内容的に東方×ウルトラセブン第5話のネタバレが多分に盛り込まれております。

    今回、5話制作が既定の期日よりも遅れたため、先に事前に描き終えていたこちらの外伝小説を公開いたします。

    ただし、本編の重大なネタバレを含んでおりますので、
    「動画で観るまで楽しみにしておきたい!」
    という方は本編の投稿を待ち、視聴後に、こちらの小説を読むことをおススメいたします。


    ちなみに本編の東方セブン5話の投稿予定は2020/1/20 19:00公開を予定しております。
    遅れて大変申し訳ございません。
    現在進捗は7割程度であり、完成させられることは間違いないのでご安心ください。




    今回の小説は、最初から最後まで八雲藍の一人称視点で進みます。

    ーーーーーー


    赤い顔に黄色の頭頂部。ぎょろりと突き出た目、

    白く、先端がささくれて分かれている腕。

    胸から腹にかけて奇妙に光る体の溝。

    赤くか細い上半身に青い下半身。


    そんな奴が今、我が主の屋敷で

    畳の上に正座し、深々とお辞儀をしている。


    「メトロン星から来たものだ、
    私は相棒と一緒 にこの幻想郷の人里で生活させてもらっている。

    貴女達が私たちの提案を受けてくれたことに、
    とても感謝している。」



    すると宇宙人は、

    傍らにあった紙袋を前に差し出す。


    「こちらはつまらないモノだが、受け取って欲しい」


    紙袋の中からは、数本の茶筒が覗いていた。


    「これはこれはご丁寧に、ありがとうございます」


    我が主、八雲紫いつもと変わらぬ笑みを浮かべる。


    その紙袋を私はゆっくりと受け取った。

    一瞥してから中身を改めたところ、

    どうやら本当に茶の筒だけが入っているらしい。



    ーーーーーー


    梅雨が明け、日差しが強く照りつけ始めるようになったある日。


    配下の狐がとある手紙を受け取った。


    差出人はなんと宇宙人と名乗るものからであった。


    これまで何体もの宇宙人と交戦してきたが、

    向こうから接触してくるのは初めのことだった。


    文面は以下の通りであった。



    『拝啓


    蝉の声が一層騒がしくなりました今日この頃、突然のお手紙に驚かれた事と思います。


    初めまして、私、メトロン星という遠い星から参った者でございます。


    先日、こちらの幻想郷に参りまして、緑映える山々に田園と多くの動植物に妖怪といった、
    多様な生物達に驚かされるばかりでした。


    さて、私共こちらに参り、人里での生活にも大分馴染んで参りました。


    そして、こちら幻想郷の領主とも言える妖怪の方々にご挨拶を済ませていないことに気が付きました。


    そこで、こちらの幻想郷の領主である妖怪の方々と親睦を深めたいと存じます。


    厚かましいお願いでございますが、

    私共を妖怪の方々のお宅にご招待いただけないでしょうか。


    こちら人里では妖怪の出入りが禁じられているとお聞きしました。


    そのため、私共の拠点としている里に妖怪の方々を招くことが残念ながら出来ないということを知りました。


    この幻想郷でお世話になっている私共が妖怪の方々をおもてなしできないのは痛恨の極みでございます。


    しかし、私共は是非とも妖怪の皆様と親睦を深めたいと存じます。


    何卒よろしくお願いいたします。


    敬具


    お返事は下記の里の私書箱までお願いします。


    ○×屋 私書箱 捨七番





    宇宙人とは思えない文面であった。文もきちんとした字体で書かれており、その高い知性を思わせる手紙であった。


    この手紙は、里の外れにある稲荷の像の前に供えられていたものだった。私の配下の狐の1匹がそれを発見した。


    発見時、ご丁寧に、手紙と一緒に油揚げが数枚のせてあったらしい。
    その油揚げは紛失し、この手紙が私の下に届けられた。


    ……もう少し口に入れる前に思うことはないのだろうか。


    私はその手紙を一見し、すぐに主である八雲紫に見せた。


    主は真剣な表情で手紙を見ていた。



    その後の調べによると、

    他の妖怪諸勢力にもこのような手紙を送ったらしい。








    このことは、大変由々しき事態である。



    手紙にはこの宇宙人が里に住んでいると書かれている。


    妖怪をはじめとした人外が人里に住み着くことは幻想郷のルールに明確に反する。


    寺子屋の半人半獣や、座敷童子の連中など昔から里に居着いているものは例外で認められてはいる。

    しかし、里で妖怪が人間を襲ったり、悪巧みをしたとなれば、博麗の巫女などに退治されるのがお決まりである。


    妖怪の本分は人間に恐れを抱かせることにある。諸勢力はあの手この手でバレないように人間の里にこっそり忍び込み、虎視眈々と人間への影響力を高めるべく、暗躍している。



    そんな中、ぽっと出の宇宙人が里に居座っているなどと堂々と宣言することは、我々妖怪への挑発ともとれる行動である。


    この手紙が妖怪の諸勢力に渡ったということは、大きな火種となりかねない。


    加えて、他の妖怪勢力が宇宙人騒動に介入して欲しくないというこちらの思惑もある。


    宇宙人に対抗するのは、私達と

    博麗霊夢、モロボシ・ダンのみで良い。


    他の妖怪に介入され、事態をややこしくすることは避けたいのが本音である。


    紫様はすぐにこの手紙の返事を認め、

    手紙の主を招き、その真意を探ることに決めた。


    ーーーーーー


    「粗茶ですが、どうぞ」


    私は盆の上から宇宙人の前に茶の入った湯飲みを差し出す。


    「これはこれは、どうも」


    宇宙人はハサミのような手で器用に湯呑みを持ち上げ、フーフーと冷ましながら茶を飲む。


    「ふふ、地球の茶は気持ちが落ち着きますなぁ」


    この宇宙人、茶を飲む一連の動作といい、相当地球の生活に慣れているようだ。


    「それで……貴方には、大事なご用がおありなんじゃありませんか?」


    紫様が普段の軽い調子で本題に切り込む。




    「いや、そんな大層な用事ってわけでもないんだ。


    ちょっと雑談がてら、この幻想郷について話し合いたいと思ってね」


    宇宙人は軽い調子で話を始める。



    「この幻想郷は、実に素晴らしい。


    私が思うに外の世界とは違い、

    この世界が素晴らしい点が二つある。


    一つは、この美しい環境。


    日本というクニの原風景。


    宇宙広しといえど、

    これだけ開発や汚染されていない

    森や山を見るのは初めてだ。


    外と完全に隔離されているおかげだろう。


    そして、これを実現しているのが

    もう一つの素晴らしい点。



    妖怪が人間を支配していることだ。




    この世界は外と違い、妖怪が支配を握っている。


    人間は自分たちが地球の種族の中で一番の頭脳を持っていることを鼻にかけすぎている。


    せっかくの貴重な森や山を開発し、川や海、大気を汚す。

    他の種族のことなど気にもしない。



    その点、君らは分をわきまえている。


    人間より君たち妖怪のほうが支配者として相応しい」



    ゆっくりと背筋を撫でられたような、

    気色の悪い感覚だ。


    コイツなんかに褒められても全然嬉しくない。


    人間のことに関しては共感するところがないでもないが。


    そもそも、幻想郷で妖怪が人間を支配しているというのは語弊がある。


    妖怪と言えど、一口に言えるものでもない。



    しかし、紫様はそんな宇宙人の幻想郷観について口出しはせず、じっと彼の話に耳を傾けている。


    宇宙人は茶を一口飲み、

    喉を潤してから話を続ける。



    「ただし、不満もあってね。

    もっと人間をきちんと管理すべきじゃないかな。


    例えば外の世界の人間は動物園とかいうモノを作って他の動物を飼っている。


    ここの人間も檻の中に入れてきちんと管理したほうがいいんじゃないか?


    こんな杜撰な管理方法では、いずれここの人間も、外の世界のように

    自分たちの都合のいい場所に作り変えてしまうかもしれない。


    僕たちはそれを防ぐための、ちょっとしたお手伝いをしようとしたまでさ」




    この宇宙人、相当人間のやっていることが気に食わないらしい。


    しかし、人間を檻の中に閉じ込めるなど、随分乱暴な考えだ。


    やはり、こんな奴をいつまでも里に居座らせる訳にはいかない。




    我が主は、いつもの笑みを浮かべながら、

    少し間を置いてこう続けた。


    「貴方は幻想郷について、大きな勘違いをなさっています。


    そんな環境では、私達にとって意味がないのです。


    あくまで現況が、今の幻想郷にとって最良の状態なのです」


    紫様は淡々と諭すように話をする。


    すると宇宙人は惚けたように首を傾げる。


    「ふうん……。

    そういうものなのかね。」



    ここで引き下がるような奴はこんな所にやって来ないだろう。


    問題は何を要求してくるかだ。



    宇宙人は変わらぬ調子で尚も続ける。




    「しかし、私たちは方針を変えるつもりがないんだ。


    そこで、この幻想郷らしい決闘方法で、

    私たちのことを認めてもらおうと思っているんだ。」






    そこでピタリと空気が張り詰める。






    幻想郷らしい決着方法。





    思い当たる節は一つしかない。

    まさかそんなことも知っているとは……。


    珍しく紫様も少し面食らった様子である。




    「それは、もしや……弾幕ごっこのことを仰っているのですか?」





    紫様は少し戸惑いつつ当て推量をする。


    「そう、それだ。」


    宇宙人はわざとらしくささくれた腕を差し出す。


    「その弾幕ごっこをこの幻想郷の代表者として、決着をつけようと思う。


    貴女たちにはその勝負の相手をするか、立会人になっていただきたい。」





    急な提案だ。


    これが妖怪相手なら日常茶飯事だ。しかし、今回は得体の知れぬ宇宙人が相手である。





    「どうだろうか?」


    宇宙人の申し出に、

    紫様は少しの間手を顎に乗せて逡巡する。




    しばらくして、紫様は顔を上げた。


    「わかりました。


    その勝負、受けさせていただきます。」


    紫様はご決断なされた。


    となると相手はやはり……





    「また、勝負の相手は、博麗の巫女、

    博麗霊夢と戦うのが宜しいでしょう。


    「ほう、そうか。」


    宇宙人はそれが誰なのか見当がついているような反応を返した。


    コイツは博麗の巫女のことも頭に入っているようだ。



    「いずれ霊夢は、必ず貴方の所に現れます。

    その時に勝負の申し入れをすれば、彼女は受けるでしょう。


    ただし、一つだけ条件があります。


    この幻想郷の人里に人間以外の者が住むのは

    禁忌とされています。


    もし、貴方が負けた場合、人里から出ていくことをお約束下さい。


    そうすれば、

    私も勝負の立会人になることをお約束いたします。」


    「そうか。分かった。その条件でいいだろう。」


    「ありがとう。それでは、お暇させていただこう。お茶も美味しかったよ。」




    -----



    宇宙人は、配下の狐に連れられ帰路についた。


    私は、今度の対談で浮かんだ疑問を素直に紫様にぶつけた。



    「紫様、あんな勝負お受けしてよろしいのですか」


    すると紫様は厳しい目付きで答える。


    「相手が弾幕ごっこに乗るとしたら、私たちがその勝負を止めることはできないわ。


    こうして立会人として勝負を見守り、

    公平な勝負を担保するのが関の山ね。


    弾幕ごっこは"正当な"幻想郷の決闘方法なのだから」


    「しかし……」


    「あら、藍。貴女は霊夢が負けると思ってるの?」


    「万に一つということもあります。


    それに、相手は宇宙人です。何をしてくるか……」


    紫様はいつの間にか取り出した扇子をはためかせる。


    「相手も明確なルール違反はしてこないでしょう。それでは弾幕ごっこをする意味がない。


    それに、ここで負けるようなら、博麗霊夢は『その程度だった』ということでしょうね。」



    それを聞いて私ははっと驚いた。


    紫様の言葉の端々にはある種の残忍さが感じられたのだ。


    私は忘れていた。


    このお方は、いざとなればあの博麗霊夢でも容赦はしないのだ、と。


    「もしそうなった時は……。

    その時はその時ね」


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  • 東方×ウルトラセブン side story3「密談」

    2020-01-06 01:11


    ※本作は以前に小説投稿サイト「ハーメルン」に投稿した小説になります。
    コチラのブロマガに投稿し忘れていたので投稿します。
    Twitterで告知していた新作はこの後に投稿します。

    <他話リンクはコチラ>
    side story1→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1665976
    side story2→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1718980

    東方×ウルトラセブン第4話の外伝エピソードその2となります。

    東方セブン4話のネタバレを含みます。
    そのため、動画を視聴してから本文を読むことをおススメします。




    本来は動画版4話のラストに挿入する予定でしたが、
    登場人物の動きが少なく、冗長な展開になってしまうことや、
    動画時間の都合などでカットした部分になります。


    ---

    「出ていきなさい!!」


    「……わかった」


    障子が開く音の後に、ゆっくりと畳を踏みしめる足音が聞こえ、
    障子の閉じる音が響く。


    足音が遠ざかっていく。

    音が消えると、代わりにすすり泣く声が響く。



    「何よ、何よ……。

     私は博麗の巫女なの……。

     こんなことで負けてらんないのよ……ううっ……」







    襖を一枚隔てた先の廊下。

    廊下の襖の傍に立っていた者が、ひっそりと耳をそばだて、神妙な顔をしていた。

    茨木華扇。

    彼女はここでの一部始終のやり取りを聞いていたようだった。

    彼女は一通りの事が終わったと察すると、
    踵を返し、その場を後にしようと静かに廊下を進む。

    大きな音を出さぬよう、慎重に足を進める。
    彼女は俯きながら、今度のことについて思案しているようだった。

    しかし、そのおかげで正面に現れた珍客に気づけなかった。



    「困ったものよね。
     ーーーー天才というのも」



    華扇は驚いて顔を上げる。

    声を上げそうになるが、それは正面の何者かに口を塞がれたことによって防がれた。

    口から手をどかすと、華扇は正面の相手を見つめる。

    暗闇に眼を慣らすと、金髪の少女が微笑みながら、
    突き立てた人差し指を唇に宛がっているのが見えた。


    「 八雲紫……」


    華扇が小声で正面の相手に呟く。

    名を呼ばれた少女はゆっくり唇から人差し指を下ろすと、
    離れた襖の向こうに目を配り、伏し目がちに独演を始める。


    「彼女は恐ろしい才能の持ち主……。
     故にこれまで真の敗北というものを、味わって来なかった。
     
     だから、いざそれに直面した時、とても脆い……。
     彼女は今、とても困惑しているのね、初めて直面する挫折に」


    八雲紫の独演が終わった後、

    突然の来客から落ち着きを取り戻した華扇は、
    少しの間難しい顔で思案した後、意を決し彼女に質問を投げかける。


    「ところで妖怪の賢者さん、
     貴女に聞きたいことがあるの」

    「何かしら?」


    「単刀直入に質問するわ。
    これまでに異変を起こしているのは妖怪ではなく、宇宙人。そうよね。」

    「ええ、そうよ」


    紫は数秒間思案した後に返答した。


    「そしてあの青年、ウルトラセブンとかいう巨人の正体も宇宙人、よね?」

    「……あら、気がついたのね」


    華扇は意を決して問い掛ける。
    紫は表情一つ変えないが、その視線が次第に厳しくなる感覚を華扇は感じた。


    「貴女が彼を連れてきた」

    「ええ」

    「何故宇宙人を幻想郷へ?」

    「妖怪の能力が宇宙人に通用しないかもしれない。これはご存知?」

    「初耳です」


    突然の紫の発言に、華扇は一瞬目を丸くする。


    「それに宇宙人は私たちの想像を超えるような力を持っている。
     さらにその力は私たちが忌み嫌っている科学力、相性が悪すぎるわ」


    すると紫の背面に空間のスキマが現れ、紫は一瞥することなくそこに腰かけて続ける。


    「彼らに対抗する為には、外の世界でかつて地球を守っていたウルトラセブン――
     彼の力が、どうしても必要なのよ」

    「あの巨人は何が目的?」


    華扇は慎重に口を開く。


    「彼はあくまで善意でこの幻想郷を
     守りたいと言っているわ」

    「善意?
     あなたの命令で動いているわけじゃないの?」


    「彼と私はあくまで対等な関係よ」

    「彼が幻想郷の脅威になる可能性は?」

    「ゼロではないわ」

    「そんな存在をよく幻想郷に入れたわね」


    華扇は厳しい口調で紫を非難する。
    紫は毅然とした態度で続ける。


    「どうしても彼の力が必要なのです。
    この幻想郷のために」


    華扇は険しい表情で紫を見つめる。
    紫は依然飄々とした態度である。


    「それじゃ、私から。
     貴女に2つほど"お願い"があるの」

    「お願い?」


    唐突な紫の発言に、華扇は身を強張らせる。


    「ええ、お願いよ。
     まず、ダンさんがウルトラセブンであることは秘密にして欲しいの」

    「秘密、ねぇ」


    華扇は怪訝な声で応える。


    「もう一つはーー。
     今回の異変は宇宙人などではなく、妖怪の仕業だった、ということにして欲しいの。

     そして、これから起こる異変もね」

    「妖怪の仕業に?」

    「ええ。
     もっとも、ただの人間には妖怪と宇宙人の区別ができるとは思っていないけれど」


    紫はどこからともなく取り出した扇子を開き、はたはたと扇ぐ。
    華扇は尚も警戒した表情を崩さずに続ける。


    「貴女のお願いを聞くことにどんな利益があるのかしら?」

    「あら、貴女も無暗に揉め事を起こしたり、騒ぎを大きくすることは本意ではないでしょう?

     これは妖怪と人間の為にやっていることよ。
     貴女にも理解してもらえると信じているわ」


    紫は笑みを浮かべながらそう告げると、扇子を折りたたみ、スキマから立ち上がった。


    「それじゃ、これからも"ご協力"お願いしますわ」


    そう言い終えると、紫はスキマの中へと消えていった。


    取り残された華扇は、
    長い廊下に誰もいなくなったことを確認すると、再び長い思慮に耽った。







    長考から華扇は顔を上げると、
    先刻まで紫がいた空間を睨み付ける。


    そして、小声だが、しっかりとこう宣言した。



    「八雲紫、貴女がどう判断しようと、彼は私の手で見極める。

     彼がどんな目的で、ここに来ているのか。


     彼の本性は何者なのかを」





    ほのかに月明かり差し込む灰色の廊下は、
    返事代わりに静寂を渡してきた。


    ---
  • 東方×ウルトラセブン side story2 「射命丸文の手記」 

    2019-01-12 00:244

    <他話リンクはコチラ>
    side story1→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1665976
    side story3→https://ch.nicovideo.jp/izumisyuuta/blomaga/ar1851941#-

    この小説は動画、東方×ウルトラセブンシリーズの外伝作品となります。

    内容的に東方×ウルトラセブン第3話と第4話のネタバレが多分に盛り込まれております。

    未見の方は、そちらをご覧になってからお読みになることをおススメします。





    今回の小説は、最初から最後まで射命丸文の一人称視点で進みます。

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    東方セブンSide Story2


    「射命丸文の手記」


    本当は記事にしたいところだが、

    とても出来そうにないので

    いつかどこかで使えるよう、

    備忘録としてここに書き留めておく






    妖怪の山の円盤と怪物騒ぎから数日が過ぎた。

    今回の件は我々天狗にとっては苦々しい結果となった。




    宇宙人とかいう存在が幻想郷に入り始めたのは、恐らくこの半年ほどだ。

    今年の春頃、妖怪の間に「妖怪でない異形のモノが潜んでいる」という噂が立ち始めた。

    丁度その頃、あの八雲紫が妖怪の山にやってきた。


    後に聞くところによると

    勝手にスキマを開いて大天狗様の屋敷に上がり込んできたらしい。


    そこで八雲紫は


    ・宇宙人、及びその存在が疑われるものは刺激せず、

    博麗の巫女に対処を一任すること


    このことを半ば脅しのように

    約束させられたらしい



    大天狗様もこれには大変ご立腹の様であった。


    だが私達天狗がいくら束になろうが

    元支配者の鬼や八雲紫クラスの大妖怪が

    本気を出せば抵抗できるはずもない。


    悲しいことに天狗の誰しもがアタマでは理解していることである。

    その辺は面子というものもあるので、誰も口にはしないが。


    あの八雲紫に真っ向から渡り合えるとしたらあの巫女くらいなものだろう。


    普段は遺恨を残さぬよう、ここまで荒っぽく出てくることは無い筈だが、

    その点では異例である。


    さらに八雲紫はよく分からない

    条件を付け加えた。


    博麗神社にある外来人の青年が来るが、そいつには決してちょっかいを出さぬように、と


    当初の一同の反応は

    誰だそいつは?

    というものだったが、


    果たしてこの後に、その青年の存在が浮かび上がることになる。







    それから暫く後、幻想郷で人妖が消えるという異変が起きる。


    奇しくも哨戒天狗の一人もこの件に巻き込まれることになったのだが、


    私達が注視したのが、

    この騒ぎが宇宙人のものだということ。

    またこの異変の解決したのが、

    ある1人の外来人の青年と謎の赤い巨人だということだ。


    謎の巨人は空の彼方へ消えたそうで、

    件の青年は博麗神社に居候することになった。


    私は異変の後、すぐにこの青年を調べるよう、上から命令された


    私としては本件はこれ以上ないスクープであり、彼を独占取材できる口実となるわけで、

    願ったり叶ったりであった。


    彼、モロボシ・ダンによると、

    今、幻想郷には多くの宇宙人が潜んでおり、彼らの脅威から幻想郷を守る必要がある。


    そのため、かつて外の世界の防衛軍に所属していた自分が、八雲紫から宇宙人対策を

    任されている…とのこと。

    彼が人間ではないことは、話すうち、その印象を強くした。


    人間ではないが、もっと強大な力を秘めており、我々妖怪が関わるべきでない存在……。

    八雲紫が彼を特別扱いするのも頷ける。




    餅は餅屋、蛇の道は蛇、宇宙人には……ということであろうか。


    上にこのことと、彼の正体について自分の印象含め報告すると、
    私はすぐさま記事の制作作業に入った。


    新聞記者の私としては、真実を公表することが重大な責務だと思っているからだ。


    公表して、どんな騒ぎが 起こるのか見てみたいという、邪な好奇心からでは

    「決して」ない。


    とにかく八雲紫にバレる前に記事を書きあげて流してしまえ。

    すぐに書きあげてしまえば、さすがに見つかるまい。


    記事はすぐに書きあげ、印刷作業も無事に終わり、後は配るだけ……。






    しかし、認識が甘かったようだ。


    バラ巻く寸前に、八雲紫にバレてしまったのだ。


    印刷済みの新聞は全てスキマに回収された。

    つまり、掛かった印刷代はすべておじゃんになったということである。


    言わば、私は見せしめにされたのだ。

    あの外来人に下手に首を突っ込むと容赦しない、と。


    この強引で陰湿なやり方には殺意を覚える。

    結局は黙る他ないが。


    後からこのネタを追っていた他の天狗たちは、このことを聞いて

    皆一様に怖じ気付いたようで、


    すべて八雲紫の指示通りの内容の記事に書き換えられた。

    いわゆる検閲である。


    八雲紫の指示は以下のようなものだ。


    ・外来人のモロボシ・ダン

    についての記事は一切書かないこと


    ・宇宙人の仕業という見解は

    各紙統一せず、ぼかして書く事



    この指示に違えば、どうなるか分かっているな。

    ということである。


    結局、多くの天狗が膝を屈し、

    八雲紫の指示に不承不承従うこととなった。



    これでは報道の自由などない。

    私は一記者としてこの件に非常に憤りを感じたのであった。



    さて、それからしばしも立たぬうち、

    私たちの山にも宇宙人が現れる。


    事件の始まりは、

    河童の工房から次々と揮発油が盗まれるという事件が発生したことだった。


    河童たちが騒いでいることから事件は露呈した。

    周辺に出入りしていたのが河童だけだったので、

    容疑者は必然的に河童のみに絞られた。

    身内の取り締まりにしか張り切りどころのない哨戒天狗たちが、

    ここぞとばかりに警備の強化や犯人探しに躍起になっていた。


    その数日後のある日の夜、

    哨戒天狗たちがドタバタと騒がしいので、

    知り合いの哨戒天狗の重い口を割らせると、

    燃料庫の警備を厳重にしていたにも関わらず、どうやらまた揮発油が盗まれたらしい。

    何やら犯人は光学迷彩装置を悪用して、見張りの哨戒天狗たちを不意打ちにしたとのことだ。

    あれだけ張り切っていたわりにまともに警備すらできないとは情けない。



    どうも気になるのでその哨戒天狗、

    犬走椛と共に犯人探しに向かう。


    見晴らしの良い高所で遠目が利く椛に犯人たちを捜させると、

    やがて迷彩を切った犯人たちを発見したというので、

    言われた場所へと急行する。


    そこでは河童が二匹、大八車から燃料缶を下ろそうとしていた。

    どうして盗みを働いたのか、問い質そうとすると、銃を持って抵抗してきたため、

    思いっきり吹き飛ばしてやった。


    すると、地面に落ちると同時に河童共の姿は液体のように解け、

    ドロドロに溶けてしまった。

    どうやらこの河童たちは、偽物にすり替えられていたらしい。


    その後改めて止められた大八車と燃料缶の場所を見ると、

    どうやらこの先の洞窟に燃料を運び込もうとしていることが分かった。



    その洞窟の入り口はとてつもない力で無理やり中をこじ開けられた様な形跡があった。

    私がその洞窟の中を進んでいくと、

    巨大な青色の皿のようなものが見えた。

    さらに近づくと、それはどう見ても洞窟内には不自然な無機質な物体であった。


    私は、その物体を見てピンときた、

    これが外の世界で度々噂になっているという円盤ではないかと。

    確か以前、外から流れ着いた「少年ふあん」という雑誌に載っていた、

    円盤というものの形に似通ったものを感じたからである。

    宇宙人の騒ぎが起きているという現状とも合致する。


    私はその洞窟を後にし、

    この件をすぐに上司たちに申し入れた。


    数日間に渡る長い話し合いの末、

    上からは博麗の巫女にこの件を任せるよう依頼せよ、という命令が私に下された。

    ただし、モロボシ・ダンという青年にはこのことを伝えるな、ということも併せて

    それには正体不明の青年を山に入れたくないということに加え、以下の事情がある。


    一時は八雲紫にやり込められた我々天狗であるが、その反発は根強い。

    ただ言いなりになるのは癪であるが、かといって命令に反するのも具合が悪い。

    また、追い出しはしたいが、できれば宇宙人とあまり接触したくない。


    そこで、命令には反せず博麗の巫女には宇宙人退治を依頼し、

    状況が巫女優勢となった所で我々天狗が一斉に円盤に襲い掛かる。

    そうして我々だけで宇宙人退治が出来ることを示す、

    ということで天狗たちの意見がまとまった。


    宇宙人という存在の様子を見るべしという慎重な意見と、

    自力で倒したという事実を作り、天狗の面子を取り戻せという意見、両面に配慮した裁量だ。


    いずれにせよ、出来るだけ早く、八雲紫に介入される前に事を進めたい。


    それ故に、なるべく博麗霊夢を焚き付け、早急に手を出させる必要があった。


    私はその意図を汲み取り、モロボシ・ダンがいない時を見計らい、博麗霊夢に近づいた。

    そこで宇宙人の話を持ちかけた。更にあの巫女に博麗の巫女としての面子というものを

    焚き付け、あの外来人に頼り辛い空気を醸成した。


    日頃から傍若無人に振舞う巫女への当てつけという意味合いがあったわけでは断じてない。

    断じて。


    案の定、博麗霊夢は言伝を残すでもなく、すぐにこちらについてきた。好都合である。

    その場にいた白黒が横着にも着いてきたが、問題は無い。




    その後、例の洞窟まで巫女を案内する。

    守矢の風祝と、勝手について来る白黒を連れて。


    守谷の風祝は大して戦力になるとは思っていないが、

    何も言わないのでは山頂の神社の神様が五月蝿いので声を掛けた。

    円盤が居ると声掛けた時に、

    東風谷早苗の今にも襲いかからんとする

    あの異様な食い付きは、

    今思い返しても気色悪かった。


    洞窟に3人を案内する間、

    どうも白黒と風祝はいつもの遊びと勘違いしているようなので、

    これは殺し合いなのだ、と釘を刺してやった。


    遊び感覚で犬死されても困る。

    せめて相手の実力が測れる程度には接戦してもらわねばならない。

    簡単に死なれると後味も良くない。


    その点、流石に巫女は弁えているようだったが。


    かくして、巫女、風祝、魔女による円盤退治が始まった。

    我々天狗は折を見てその戦闘に割って入る、

    筈だった。




    結果的には、我々天狗は傍観することしかできなかったのである。

    何しろ、衝撃の展開の連続であった。


    巫女たちと円盤の激闘。

    追い込まれた円盤から飛び出したのは巨大な鳥のような怪物。

    そいつは鷹のように広い翼を持ちながら、脚がなく、動く達磨のようにのそのそと動く

    気色の悪い怪物だ。


    巫女と風祝と魔法使いの必殺技を避けもせず、正面から受け止めてみせる怪物。

    一瞬の油断により怪物と円盤の挟み撃ちに遭い、撃墜される巫女。

    巫女は仙人に救われる。

    しかし直後煙が立ち込め、その中から、

    突如として、2本足で立つ、牛のような角をもった巨大な化け物が現れる。


    鳥の化け物と牛の化け物による激しいぶつかり合いが繰り広げられ、

    妖怪の山はかつてないほどに激しく鳴動する。


    そのうち牛の化け物は口から火を噴いて鳥の化け物に襲い掛からんとしたが、

    鳥は巨大な両翼をバッタバッタと羽ばたかせると

    嵐とも見紛うほどの大風が巻き起こり、牛の口から出た炎は大風に乗り、

    牛の体へと逆戻りしてしまった。


    これには熱くてたまらぬと牛の怪物は谷中に倒れこみ、

    駄々っ子のように手足をばたつかせた。


    駄々っ子とはいえ、五重の塔よりも高く、東大寺の大仏を優に超す巨体である。

    怪物の周りの木々は次々と巨大な手足になぎ倒されていった。


    すると牛の怪物は、現れた時と同じように煙のように消え、

    代わりにあの「うるとらせぶん」とかいう赤い巨人が現れた。


    今度は赤巨人と鳥の怪物の闘いが始まる中、

    八雲の式である狐が円盤に向かって火を放つ。


    するとまもなく円盤の周りから火の手が上がり、

    円盤が空に浮き上がっていった。


    浮きあがった空からは、

    次々と大きく亀裂が入った空間の切れ間が円盤を取り囲む様に現れ、

    巨大な弾幕が絶え間なく円盤に向かって降り注いだ。


    こんな芸当ができる妖怪は、八雲紫において他ない。

    とはいえ、これはやり過ぎではないか、流れ弾がポンポン山に降り注いでいる。


    妖怪の山は2体の巨体による激しい戦闘と、

    降り注ぐ大量の弾幕の雨により、山肌はボコボコ、木々は次々となぎ倒され、

    逃げ惑う動物や妖怪たちとで阿鼻叫喚の地獄絵図となった。


    降り注ぐ弾幕や怪物が起こす大風を必死で避けていると、

    山中から立ち上がった光の矢が円盤を貫き、

    谷の中に落ちていき、火を噴き上げるのが見えた。


    どうやら白黒が八卦炉を使ったらしい。


    すると背後で猛烈な光が弾けるのが見え、一瞬眩すぎる光が視界を包んだ。

    視界が開けてくると、鳥の怪物が地面に横たわり、真っ黒に焼け焦げているのが見えた。

    そして赤い巨人は飛び上がり、遥か彼方へ飛び去って行った。


    あとで聞くところによると、赤き巨人が太陽の光を肩の甲冑に集め、

    十字に手を組むと、そこから撃ちだされたとてつもない光が鳥の怪物を襲ったそうだ。



    青天の真昼にも拘わらず、特大の雷が落ちたような衝撃であった。

    青天の霹靂とはまさにこのことであった。





    この間、我々天狗は、どうしていたかといえば、

    円盤を追い詰めたところまでは想定内であったが、

    鳥の怪物が現れてからは驚天動地の出来事の連続に指揮系統は混乱。

    今や遅しと円盤退治に躍起になっていた天狗共も呆然とするばかり。

    戦闘が激しさを増してくると、

    怪物たちが起こす大風や炎、空から降り注ぐ弾幕を避けるので精一杯であった。




    円盤や怪物たちの戦闘が終わると、

    私たちの前には、荒れ果てた山と、円盤の残骸、焼け焦げた巨大な鳥の死骸が

    残っていた。

    私たち天狗は、山中に残っていた火災の消火、残骸の片づけ、なぎ倒された木々の処理、

    ボコボコになった山肌の埋め合わせ、といった後始末を行う羽目になった……



    その後の山の復旧作業にはやがて八雲紫やその式神たちが協力に入り、

    特に廃棄物の処理に大きな助力となった。

    しかしこれで八雲紫に大きな貸しを作ることになった。

    我々天狗は面子を取り戻すどころか、

    逆に八雲紫に頭が上がらなくなってしまったのである。

    これにはどうにも歯がゆい事態である。



    結局、今回の騒動は、宇宙人の脅威というものを辛くも味わさせれる出来事となった。


    今回の件で宇宙人の実力を身をもって知らされた我々天狗であるが、

    未だに謎は多く、八雲紫もその情報の多くを開示しようとしない。

    我々天狗にも多少は外の世界の情報を探る手立てがあるのだが、

    外の世界との行き来が平易である八雲紫一派に情報収集能力で敵うはずもない。


    残された円盤の残骸も、幻想郷には過ぎた技術と、

    全て八雲紫がスキマで回収してしまった。


    しかし、一番の問題は、あのウルトラセブンとかいう赤き巨人が、

    八雲紫の配下にあるかもしれないということである。

    あの強烈な光を放つ光線は、我々天狗どころか、

    幻想郷を滅ぼすには十分過ぎる威力があった。

    もし、あの巨人が八雲紫の従僕であるならば、

    最早八雲紫がこの幻想郷を支配しているに等しい。


    だが、更に恐ろしいのは、あの巨人が八雲紫の配下ですらない場合である。

    今でこそ宇宙人やその手先の怪物と戦ってくれる都合の良い存在であるが、

    そのうち我々妖怪の素性が知れて、いつその矛先がこちらに向かってくるとも知れない。

    最悪幻想郷の存亡に関わる事態にも発展しかねない。


    また、八雲紫の動向から察するに、モロボシ・ダンとかいう青年とあの赤き巨人には

    何か繋がりがあると見るべきだろう。あの青年には迂闊に手を出すべきではない。


    今回の一件で改めて思い知らされたが、

    宇宙人の存在に実力や情報で八雲紫を上回れない以上、

    当面は八雲紫の意向に無条件で従わざるをえないだろう。

    歯向かえば、次にどんな痛い目に遭うか分かったものではない。


    しかし、ただで転ぶこの射命丸文ではない、いつの日かこの内容の記事を書き上げ、

    必ずや八雲紫に一泡ふかせてやる。




                                星と夏と土の年 葉月