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大切なことはすべて矢沢永吉から学んだ!
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大切なことはすべて矢沢永吉から学んだ!

2013-05-30 11:59

    気が付いてみたらD社に入社してから9年以上経ちました(厳密に言えば、今はD社の子会社にいますが)。これまでに勤めていた会社や以前自分で作った会社で「切った張ったの交渉事」を行ってきたこともあり、D社に来てからもずーっと契約交渉関連の部門で働いています。

    今日はそんなワタシの「契約」に対する考えを書いちゃおうと思います。(超会議も終わり、JASRAC菅原理事長を招いての生放送も終わったので、ちょっと一息♪)

    D社というのはご存知のように「破天荒な面白い企画」や「オリジナルの技術力」を売りにしている会社です。そういう会社においては、企画者や開発者から見ると契約交渉の人間は「なんだかメンドクサイこと言う奴ら」として扱われることが多いようですねぇ。特にワタシの場合そんな感じで見られているようです。。。

    企画者から言えば「おれたちは面白いことを考え実行するのが仕事なんで、契約のことなんか知ったことか!」的な考えなのでしょう。面白いことを考え実行することは大いに結構なですが、そのような考えを持つ企画者とたまに雑談をする機会があるときに、ワタシは決まってある話をすることにしています。

    (巻き舌で矢沢永吉風の身振り手振りで)
    「ところでさぁ、君。矢沢永吉の《成りあがり》って本、知ってる?」
    という語り始めで(w)

    一応説明しておきますが、「成りあがり」というのは矢沢永吉の半生を描いた伝記のような本です。極貧の少年期にビートルズに触発されてビックになるために故郷広島から夜汽車に乗って上京し、そこでメンバーたちと出会っていくつかのバンドを経てキャロルを結成し、そして解散してソロになるまでの波乱に満ちた永ちゃんの生き方が描かれています。

    たいていの読者はこの本から「矢沢永吉のロックな生き方」を学んだんでしょうけど、ワタシはこの本から「矢沢永吉がなぜビックになれたか? それは彼が契約の重要性を理解したからだ」ということを学びました。

    「成りあがり」を読んだ永ちゃんフアンの中で、ワタシと同じ考えの人はあまりいないかもしれませんが。。。

    「成りあがり」のなかの「キャロル」の章には、キャロル結成から解散までのことが書かれていますが、ここでは矢沢永吉の音楽ビジネスに対する強い意志が描かれているのです。

    「印税計算もバチバチできるわ、方法論もある。アーティストの矢沢だけじゃなく、そういう面での矢沢も含めて、キャロルを持ち上げてきたんだ」

    上のセリフが最も印象的ですね。

    契約に関する具体的な例として、キャロルがレコード会社との契約における「契約期間」についても触れています。キャロルは当時プロデューサをしていたミッキー・カーチスの進めでレコード会社と「四年契約」で契約するのです。「四年契約」というのがどういう意味なのかを後に矢沢永吉は知り、大いに憤ります。

    「オレは、信頼しまくっていた人間に、こんな契約を結ばせられた」
    「売れれば、向こう四年間、安い印税率でバンバン稼がせる。キャロルの印税率ってのは、最低の最低だったね。出荷枚数の掛け率も非常識」

    こんな憤りのセリフが並んでいます。

    伸び盛りの新人アーティストなら「長い期間で同一条件が続く契約は結ぶべきではない」ということは、この手の契約を知っている人にとっては基本中の基本です。普通は「成りあがり」にも書かれているように二年契約でしょうし、急上昇に自信があるのなら、契約条件を毎年見直すことができる一年契約だってアリでしょう。

    「出荷枚数の掛け率」ってのいうのはおそらく「ジャケット控除」や「出荷控除」のことだと思います。これは現在のボカロPさんたちからも頻繁に問い合わせを受けてることです。。。

    「成りあがり」を読むと矢沢永吉が「革ジャン&リーゼントのロッケンローラー」でありながらも「音楽ビジネスと真剣に取り組んでいるミュージシャン」ということを痛感します。

    で、最初に戻りますが、「おれたちは面白いことを考え実行するのが仕事なんで、契約のことなんか知ったことか!」とワタシに言い張る(ま、直接は言わなくてもそんなそぶりを見せる)企画者に対してワタシは上のような矢沢永吉の逸話を紹介したのち、最後にこう続けるわけです。

    「いいかい、矢沢永吉ほどのアーティストでも《契約は大切》だって理解しているんだよね。だから彼はビックになれたんだ。君が今後もっとビックな企画者になりたいんなら、契約のことをちょっと真面目に考えてみるってのも、ま、悪くはないんじゃないかな。とにかく一度《成りあがり》を読んでみなよ」

    もちろん「巻き舌」で「矢沢永吉風の身振り手振りを交えて」語るのは言うまでもありません。

    最近では、「契約なんて興味ないっす」てきな感じのボカロPさんや歌い手さんたちに対しても同じようなことを言ってますし、ワタシの組織に配属された気の毒な(w)社員にもこの話をしています。

    「ビックなアーティストになりたいならさぁ、ビックな契約交渉担当者になりたいならさぁ、迷わず《成りあがり》をガツンと読んでみなよ。」

    ま、そういうことです。そこんとこ、ヨロシク。

    (文責 浜町音楽ギルド にへどん)https://twitter.com/nihedon_21

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