ボカロPとして活躍しているクリエイターの方々にも、著作権に関する法的知識やその活用方法についてはだいぶ浸透してきたと思います。そこで今回は著作権ではなく「著作隣接権」についての話をします。

以前ニコニコ生放送でも、向谷実さんや、JASRACの菅原理事長、カラオケの鉄人の日野社長(当時:現 会長)、タイトー白石さん、そして EasyPopさん、FB777さん達にご参加をいただいて、「著作隣接権講座」を開催したことがありましたが(JNCAの前身である「浜町音楽ギルド」と「dwango」との共同主催)、その際も後半部分で「放送二次使用料」という言葉が出てきて、何人かの方々から「あれはどういう意味だったのですか」というお問い合わせをいただいておりました。

タイトルに「放送二次使用料等」と「等」という文字を加えたのは、「放送二次使用料」だけでなく「レンタル使用料」「私的録音・録画補償金」について説明したいという趣旨です(♪)※「私的録音・録画補償金」については次回に書きます。

昨今、ボカロPさんたちのCDや、歌い手さんたちのCD(音楽原盤)が、テレビやラジオで流れたり、レンタルCDショップに並べられたりしてきていると思います。

もちろんこれらの楽曲が使用される際の「著作権使用料」に関しては、その楽曲(の「音楽著作権」における「放送権」や「貸与権」)がJASRACやイーライセンス、JRCなどの管理団体にて管理されている場合には、放送やレンタルなどにおける「著作権使用料」は確実に徴収され、権利者の元に再分配されています。

しかし、音楽の権利は「音楽著作権」だけではなく「著作隣接権」というものがあるのです。そして、放送やレンタルなどに使用された「著作隣接権」の使用料は、JASRACやイーライセンス、JRCなどでは徴収・再分配することができません。

「著作隣接権」という言葉は一般の人にはほとんど初耳だと思います。すごーく簡単に言うと、「著作隣接権」=「CDを作った人の権利」「CDに収録された音源(詞や曲ではなく「音源」です)を作った人(音源を打ち込んだり、楽器を演奏したり)の権利」「CDに収録されたボーカルパートを唄った人の権利」というように書き換えられると思ってください。

通常は「著作隣接権」を持っている人=「著作隣接権者」は、「レコード会社」「音源制作者」「楽器演奏者」「歌手」などになります。

そして放送やレンタルにおいて使用された「著作隣接権」の使用料は、通常は次のような流れで「著作隣接権者」へ再分配されます。(すごーく大雑把に書いています)

■1■ 「CDを作った人」への「著作隣接権使用料」の再分配
(テレビやラジオなどの放送局、および、レンタルショップ)→ 日本レコード協会 → 各レコード会社

■2■「音源制作者」「楽器演奏者」「歌手」への「著作隣接権使用料」の再分配
(テレビやラジオなどの放送局、および、レンタルショップ)→ 芸団協CPRA → 各権利者

さて、ここまで書きましたが、ボカロPや歌い手についてこれらを当てはめてみます。

ボカロPが制作したCDにおいては、ボカロPは「CDを作った人」であり「音源制作者」であるわけです。また歌い手が「ボカロPの音源を借りて、そこに自分のボーカルを載せて、自分で(業者に頼み)CDを作った」場合、歌い手は「CDを作った人」であり「歌手」でもあるわけです。

つまり、ボカロPも歌い手も、自分の楽曲(ここでは音そのものを指しています)がテレビやラジオで流されたり、レンタルショップで貸し出された場合、上記の■1■と■2■の印税を受けることができるはずです。

さて、この文章を読んでいるボカロPさん、歌い手さんたちに質問です。皆さんは上記の印税をもらっていますか?

まずほとどんどのボカロPさんや歌い手さんは上記の■1■と■2■の印税をもらっていないと思います。(音楽業界にかなり詳しいボカロPさんや歌い手さんは受け取られている方もいます!)

さて、なぜこのようなことを書いたかというと、日本ネットクリエイター協会(JNCA)ではボカロPさんや歌い手さんたちに上記の■1■や■2■の印税をお支払する仕組みを作りたいと考えているからなのです。

遠い未来のことではありません、近い、本当に近い将来のことです。もともと日本ネットクリエイター協会(JNCA)は、こうした放送二次使用料等をボカロPさんや歌い手さんたちに再分配する仕組みをつくる、ことを設立目的として掲げているのです。

現在、各団体と調整を行っています。近日中に当該サービスのスタートをこのサイトに宣言できるようにしたいです!!