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[本号の目次]
1. 調査三年目 - NHKのオファー
2. 調査三年目 - 静止画ロガーと動画カメラ
3. 調査三年目 - メカジキとメバチマグロの胃内容物
4. 調査三年目 - 全員集結
調査三年目 - NHKのオファー
調査を始めて三年目になる2004年には、それまで調査の基になっていた日本学術振興会から支給される科学研究助成費が途切れてしまった。「日本近海産中深層離底性大型頭足類の潜在生物量推定のための基礎的研究」として新たに申請した研究計画調書が残念ながら不採択となったのだ。金の切れ目が縁の切れ目というが、研究費がなければ小笠原に行くのも、磯部さんの第八興勇丸を傭船することも出来ない。今年の調査を諦めようと考えていたところ、最初の調査に同行したNHKの小山ディレクターから連絡がはいった。我々の深海カメラ調査を本格的に取材したいので、今年の予定を教えてほしいとのことである。今年は研究費が途切れたので、いったん中止と伝えたところ、旅費と傭船費をNHKが負担するので、深海カメラ調査を本格的に取材させてほしいと依頼された。渡りに船ということで、この年も9月末に内藤先生の静止画像ロガー2台と昨年の動画カメラを改良した1台を携えて小笠原父島に赴いた。NHKからは小山ディレクターと河野・岡本カメラマン、音響の関口さんの4名が参加することになった。
小笠原父島二見港に着岸した「おがさわら丸」
調査三年目 - 静止画ロガーと動画カメラ
例年のように磯部さんにお願いして第八興勇丸を出してもらい、マッコウクジラの群れがよく観察される父島南東沖に向かう。9月26日初日は、小笠原ホエールウォッチング協会の森さんを始めNHKスタッフ全員と船頭の磯部さん、新人の乗子の山下君と私の8名で船の上は大混雑である。静止画ロガーを800mと1000mの幹縄の先に吊るし、動画カメラを800mの幹縄に吊るし縦縄三本を投入する。その後5~6本の漁業用縦延縄も仕掛けてもらう。4~5時間ほど流した後、漁業用縦延縄、ロガーとカメラを順番に揚収して午後3時過ぎには港に戻ってくる。その足で小笠原ホエールウォッチング協会に向かい、機材を真水で洗ってから、PCに繋いで録画された静止画を取り出す。1台のロガーから500枚近くの静止画がPCのモニターに現れては消えていく。動画カメラの映像も同様に確認する。3台のデータを読み取り、明日に備えてバッテリーの交換やメンテナンスをし終わると、外はもう真っ暗である。初日から動画カメラの調子が悪く、森さんが手を貸してくれたが、調整にかなり手間取った。
父島南東沖の調査海域に向かう「第八興勇丸」
調査三年目 - メカジキとメバチマグロの胃内容物
調査二日目からはカメラマンの河野さん・岡本さん、音響の関口さんの3名は別働隊として、ダイビングボートを傭船してマッコウクジラやイルカ類などの水中撮影や父島周辺の景観を撮ることになった。一日中、船の上でじっと深海カメラの揚がってくるのを待っているのは、カメラマンの性に合わないのだろう。磯部さんの第八興勇丸には、乗子の山下君、小山ディレクターと私の4人が乗り込むことになった。天候に恵まれ連続して二日、三日、四日と深海カメラの調査を続けた。静止画ロガーにアカイカの姿は写るものの、ダイオウイカの姿は影も形も拝めなかった。一方、動画カメラは調子が悪く、いくら調整しても映像が得られず、四日目でお釈迦になった。漁業用縦延縄では、ヒレジロマンザイウオやソデイカを始め、吻の長さを入れると3mを超えるメカジキや丸まると太ったメバチが釣れあがってきた。メカジキの腹からは表皮が消化されたヒレジロマンザイウオが2尾、メバチマグロの腹からはソデイカの肉塊と消化の進んだミズウオと思しき魚類数個体が出てきた。
漁業用縦延縄で漁獲されたメカジキ(吻を入れると3mを超える)
メカジキの胃袋から出てきた餌(ヒレジロマンザイウオ?)
漁業用縦延縄で漁獲された丸まると太ったメバチマグロ
メバチマグロの胃袋から出てきた餌(ソデイカの肉塊、ミズウオの残滓?)
調査三年目 - 全員集結
調査五日目、9月30日も朝から快晴であった。この日は別働隊の面々もダイビングボートの都合が着かないということで、初日と同じように全メンバーが第八興勇丸に集結した。いつものように父島南東沖の調査海域に着くと、2台の静止画ロガーを800mと1000mの幹縄の先に吊るして旗と浮き球をつけて流した。その後、磯部さんと乗子の山下君が漁業用縦延縄を6本入れる。河野・岡本カメラマンがその作業を丁寧に撮影した。縦延縄を入れ終わると、旗に付いた瓶玉を順繰りに見て回り、動きの変わったものがあれば、何か付いたか引揚げて確認する。あとは他に、やることがない。昼飯の後にエンジンの騒音を止めて、磯部さんと雑談をする。小笠原での生活や自然、家族、来し方行く末など話のタネは尽きない。NHKのスタッフは、もしもの時のため潜水機材の準備を進めていた。正午を過ぎて、漁業用縦延縄を順々に揚収する。今日は、大した獲物は釣れなかったが真っ黒なテツビンと外套長が40㎝ほどのソデイカが揚ってきた。ついで、静止画ロガーの揚収を始める。まず800m幹縄のロガーを揚げた。その様子をカメラマンが逐次撮影する。800mのロガーに変わったことはなかった。次いで1000mの幹縄を巻き上げ始めた。
黒光りする体長50㎝ほどのヒレジロマンザイウオ
外套長40㎝ほどのソデイカ
・・・その12へ続く。
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その1:http://ch.nicovideo.jp/juf25sui/blomaga/ar1471337
*著者情報
【窪寺恒己(くぼでらつねみ)】
水産学博士 国立科学博物館名誉館員・名誉研究員 日本水中映像・非常勤学術顧問
ダイオウイカ研究の第一人者。2012年に世界で初めて生きたダイオウイカと深海で遭遇。
専門分野:海洋生物学/イカ・タコ類/ダイオウイカとマッコウクジラ/深海生物
主な著書:「ダイオウイカ、奇跡の遭遇」新潮社 2013年
「深海の怪物ダイオウイカを追え!」ポプラ社 2013年 他
詳しいプロフィールはこちら
www.juf.co.jp/seminar/kubodera/
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*頭足類の映像もあります
日本水中映像YouTube https://www.youtube.com/user/suitube7
*講演情報などもアップしています
日本水中映像FaceBook https://www.facebook.com/japanunderwaterfilms
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