●怪談の闇を見るの巻

[マスメディアと心霊の関係・その3]

 お役所の怪談というのが話題になったのは、1990年代の終わり頃である。98年に当時の大蔵官僚が金融スキャンダルに巻き込まれ、相次いで自殺したのがきっかけだった。

 役所の中庭に呪われた自殺の名所があって、表沙汰にされていない自殺者も多数に上るという話だったが、これが平時の話題であれば、純粋に怪談として受け止められたかもしれない。学校の怪談もあればお役所の怪談もあるということで、通常の怖い話の域を出ることなく流布しただろう。しかし、現実はすでにそういう時代ではなくなっていた。

 長銀の破綻は将門首塚の祟りだという話もあったが、当時私はその手の言説にも興味を持てなかった。山一證券や長銀が潰れただけならまだしも、私の身近でも中小企業が次々と貸しはがしにあって、知っている人も自殺した。不透明な死に方をした大蔵官僚や銀行マンよろしく、私の身近にも