東海村の「J-PARC」で放射性物質が漏洩したというニュースを聞いて、最初はオメガ計画がテロでとどめをさされたのかと思ったが、素粒子を発生させる陽子ビーム取出装置が誤作動したそうで、その後の処置がまずかったという点でいま非難されている最中である。

 オメガ計画というのは、核変換技術によって寿命の長い核種を半減期の短い核種に変え、放射性廃棄物の寿命を縮めようというものである。これで地下に10万年も埋めておかなければならないという話もなくなるとされ、核廃棄物の処理問題を軽減するプロジェクトとして1980年代から研究が進められていた。だが、その後にどうなったのかよくわからない計画である。

 東北震災で核汚染の問題が起きたため、事態を解決する可能性のある研究ということでオメガ計画が思い出され、参議院議員の浜田和幸氏が研究のその後について文部科学省に問い合わせた。すると「データを紛失した」という返答があったという。

 詳しいことはうやむやなのだが、その後にどこかの局のニュースでオメガ計画への期待を膨らませるような話題が報じられたらしい。私はそのニュースを見ていないが、見た人の話によると、京都大学の御用学者が大風呂敷を広げていただけだという。とにかく研究に期待をもたせる内容だったというので、文部科学省がデータを紛失したという件と矛盾する。

 要するに、すべてはフィクションなのである。世のなかには、フィクションを現実だと思っている人と、そうでない人の2種類しかいない。核汚染問題が解決されますよという触れ込みで予算が確保されてきたり、夢の高速増殖炉と言って捕らぬ狸の皮算用を続けてきた手前、いまさら言い訳すらできなくなっている。そしてオメガ計画の残骸のようなものはいまもいちおう生きている。どこでやっているかといえば、京都大学と、今回事故を起こした東海村の「J-PARC」なのである。